序
1978年のイギリスにおける体外受精の成功以来40年が経過し,1983年の我が国における成功後,現在までに出生した体外受精児は48万2,627人を数え,2015年の総出生数100万5,677人のうち,実に5万1,001人が生殖補助技術(ART)の応用によると報告されています.日本産科婦人科学会のデータによると,19.7人に1人(日産婦ARTデータブック2015年より)が体外受精で生まれた子供になります.そして2010年には,ノーベル医学・生理学賞をイギリスのロバート・G・エドワーズが受賞されて8年が経過しました.
2005年7月20日に「不妊ケアABC」が発刊されて以来,本書は生殖医療に携わる数多くの医療従事者や学生の皆様にご愛読いただいて参りました.初版発刊から既に13年が経過し,医療を取り巻く環境も徐々に変化して参りましたことから,この度改訂版を発刊させていただくことになりました.大変好評をいただいております「カラーイラスト 生殖医療」は内容を改訂し本書のトップに残し,それぞれのChapterは一部執筆者を変更し最新の内容も加えさせていただきました.また本年,国の定めるがん対策推進計画にもその必要性が掲げられました「がん・生殖医療」を,新Chapterとして加えております.同様に好評をいただいております「Q&A50」も内容を一新して本書の最後を飾っております.初版の序に記されております,『ARTクリニックは,生殖医学の基礎によって支えられていなければなりませんが,医師,ナース,エンブリオロジスト,カウンセラー,コーディネーターなどの協力によるチーム医療によって,初めて対応できる領域となっています.その意味において,コメディカルのスタッフは「医師が現在何をしているのか」ということに常に関心を抱き,また,臨床に必要な生殖医学の基礎知識をマスターしていくことが要求されてきます.本書は,チーム医療のための「不妊ケアABC」として,先ず,生殖医学の必須知識を解説し,さらに,日常の外来で多い質問に平易に答えるという「Q&A」の項を付加して,より実践的なケアの指導テキストとして,お役に立つことを心掛けました.』という本書の主旨を継承し,引き続き臨床の現場でチーム医療としての不妊ケアを提供できるよう,文字通り不妊ケア指導書の旗手たらん書として生まれ変わりました.初版発刊時にも危惧されておりました我が国の少子高齢化の問題が今後ますます厳しくなる現状で,平成の時代も終わり新たな時代の到来と共に新たな「命」を繋ぐことができるよう,本書「新 不妊ケアABC鈴木秋悦/久保春海[編]」が少しでも皆様のお役にたつことができれば幸甚です.
日常の診療でご多忙な執筆者の先生方には,素晴らしいご寄稿を賜り誠にありがとうございました.衷心より御礼申し上げます.また,発刊にあたり多大なるご援助とご助言をいただきました医歯薬出版第一出版部の五十嵐陽子氏に深謝申し上げます.
編者,ならびに編集協力者一同
2019年(平成31年) 1月
1978年のイギリスにおける体外受精の成功以来40年が経過し,1983年の我が国における成功後,現在までに出生した体外受精児は48万2,627人を数え,2015年の総出生数100万5,677人のうち,実に5万1,001人が生殖補助技術(ART)の応用によると報告されています.日本産科婦人科学会のデータによると,19.7人に1人(日産婦ARTデータブック2015年より)が体外受精で生まれた子供になります.そして2010年には,ノーベル医学・生理学賞をイギリスのロバート・G・エドワーズが受賞されて8年が経過しました.
2005年7月20日に「不妊ケアABC」が発刊されて以来,本書は生殖医療に携わる数多くの医療従事者や学生の皆様にご愛読いただいて参りました.初版発刊から既に13年が経過し,医療を取り巻く環境も徐々に変化して参りましたことから,この度改訂版を発刊させていただくことになりました.大変好評をいただいております「カラーイラスト 生殖医療」は内容を改訂し本書のトップに残し,それぞれのChapterは一部執筆者を変更し最新の内容も加えさせていただきました.また本年,国の定めるがん対策推進計画にもその必要性が掲げられました「がん・生殖医療」を,新Chapterとして加えております.同様に好評をいただいております「Q&A50」も内容を一新して本書の最後を飾っております.初版の序に記されております,『ARTクリニックは,生殖医学の基礎によって支えられていなければなりませんが,医師,ナース,エンブリオロジスト,カウンセラー,コーディネーターなどの協力によるチーム医療によって,初めて対応できる領域となっています.その意味において,コメディカルのスタッフは「医師が現在何をしているのか」ということに常に関心を抱き,また,臨床に必要な生殖医学の基礎知識をマスターしていくことが要求されてきます.本書は,チーム医療のための「不妊ケアABC」として,先ず,生殖医学の必須知識を解説し,さらに,日常の外来で多い質問に平易に答えるという「Q&A」の項を付加して,より実践的なケアの指導テキストとして,お役に立つことを心掛けました.』という本書の主旨を継承し,引き続き臨床の現場でチーム医療としての不妊ケアを提供できるよう,文字通り不妊ケア指導書の旗手たらん書として生まれ変わりました.初版発刊時にも危惧されておりました我が国の少子高齢化の問題が今後ますます厳しくなる現状で,平成の時代も終わり新たな時代の到来と共に新たな「命」を繋ぐことができるよう,本書「新 不妊ケアABC鈴木秋悦/久保春海[編]」が少しでも皆様のお役にたつことができれば幸甚です.
日常の診療でご多忙な執筆者の先生方には,素晴らしいご寄稿を賜り誠にありがとうございました.衷心より御礼申し上げます.また,発刊にあたり多大なるご援助とご助言をいただきました医歯薬出版第一出版部の五十嵐陽子氏に深謝申し上げます.
編者,ならびに編集協力者一同
2019年(平成31年) 1月
カラーイラスト 生殖医療(イラスト原案:松波和寿)
精巣/精子の発生/卵の成熟/不妊症の主な原因/月経周期と各期に行う検査/人工授精/体外受精─胚移植の流れ/採卵/受精
胚のグレード/胚盤胞のグレード/全胚凍結ガラス化法/胚移植/着床/顕微授精/AHA/胚盤胞移植/卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
おもな略語
Introduction はじめに
少子高齢社会における不妊ケア(久保春海)
Chapter 1 生殖医療の基礎
生殖器の解剖と機能
1 男性生殖器(小林秀行)
2 女性生殖器(片桐由起子,高島明子)
生殖の生理
1 月経周期調節と性ホルモン(小林真以子,岡田英孝)
2 生殖に関連する症状(山下能毅)
生殖に伴う検査法
1 内分泌検査法(梶原 健)
2 内視鏡検査法(河野康志,楢原久司)
3 超音波検査法(河野康志,楢原久司)
Chapter 2 妊娠の生理
妊娠の成立
1 精子の形成(谷口久哲)
2 卵子の形成(佐々木拓幸,浜谷敏生)
3 受精(佐々木拓幸,浜谷敏生)
4 着床(木村文則)
5 黄体(木村文則)
妊娠の維持と胎児(草開 妙,齋藤 滋)
1 妊娠維持メカニズム
2 妊娠に伴う母体免疫能の変化
3 不妊症と免疫
Chapter 3 生殖の病態(不妊症)
不妊症概論(橋俊文)
1 不妊症の定義
2 不妊症の病態
3 不妊症の分類
4 不妊症の原因
5 不妊症の頻度
不妊症の診断(齊藤和毅)
1 女性不妊症の診断
2 男性不妊症の診断
不妊症の治療(石川智則)
1 女性不妊症の治療
2 男性不妊症の治療
不妊症の予防(五十嵐秀樹)
1 予防可能な不妊要因
Chapter 4 生殖補助医療(ART)の実際
ARTに関する知識
1 ARTの歴史(鈴木秋悦,門上大祐,森本義晴)
2 ARTの基礎知識(福田愛作,門上大祐,森本義晴)
ARTの実際
1 ART実施前の検査(松田和洋,門上大祐,森本義晴)
2 卵巣予備能(Ovarian reserve)と卵巣刺激法(門上大祐,森本義晴)
3 採卵(福田愛作,門上大祐,森本義晴)
4 媒精(西 弥生,門上大祐,森本義晴)
5 顕微授精(西 弥生,門上大祐,森本義晴)
6 胚の選別と胚移植(吉田 淳)
7 黄体補充(小田原 靖)
8 胚盤胞移植(蔵本武志,門上大祐,森本義晴)
9 胚凍結,凍結胚移植スケジュール(向田哲規,門上大祐,森本義晴)
10 アシストハッチング(AHA)(門上大祐,森本義晴)
11 TESE・MESA(岡田 弘,門上大祐,森本義晴)
12 卵子提供,代理母(門上大祐,森本義晴)
Chapter 5 不妊症と手術
1 腹腔鏡下手術(小林未央,岩瀬 明)
2 卵管鏡下卵管形成術(福田愛作)
3 男性不妊症の手術(小宮 顕,滑川剛史,加藤繭子,川村幸治,今本 敬,市川智彦)
Chapter 6 不妊治療のその後
1 流産(鴨下桂子)
2 異所性妊娠(久野貴司,志賀尚美)
3 多胎(前沢忠志)
4 先天異常(川井清考)
5 静脈血栓塞栓症(太田邦明)
6 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)(銘苅桂子)
Chapter 7 不育症
(福井淳史)
1 不育症とは
2 不育症のリスク因子とその検査法
3 不育症の治療法
4 不育症の心理ケア
Chapter 8 不妊症ケアの医療チーム
1 エンブリオロジスト(沖津 摂)
2 不妊症看護認定看護師(小松原千暁)
3 IVFコーディネーター(安藤寿夫)
4 心理カウンセリング(平山史朗)
5 遺伝カウンセリング(竹下直樹)
6 フィナンシャル・ソーシャル・コーディネーター(三井 啓,森本義晴)
7 不妊患者に対する「不妊治療勉強会」のあり方(塩谷雅英)
Chapter 9 がんと生殖医療
1 わが国におけるがん・生殖医療の実情(古井辰郎,寺澤恵子,菊野享子,志賀友美,山本晃央,森重健一郎)
2 男性がん患者におけるがん・生殖医療(湯村 寧)
3 女性がん患者に対するがん・生殖医療(堀江昭史)
4 小児に対するがん・生殖医療(高江正道,鈴木 直)
5 がん・生殖医療における心理ケア(小泉智恵)
6 がん・生殖医療における看護ケア(高橋奈津子)
7 がん・生殖医療における薬剤師の役割(米村雅人)
View in the future おわりに
不妊ケアの将来展望(森本義晴)
Appendix 付
・不妊の統計(齊藤英和)
・不妊領域における薬剤の知識(西原卓志,森本義晴)
・必要な倫理的知識(北井啓勝)
不妊ケアに関するQ&A 50
索引
精巣/精子の発生/卵の成熟/不妊症の主な原因/月経周期と各期に行う検査/人工授精/体外受精─胚移植の流れ/採卵/受精
胚のグレード/胚盤胞のグレード/全胚凍結ガラス化法/胚移植/着床/顕微授精/AHA/胚盤胞移植/卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
おもな略語
Introduction はじめに
少子高齢社会における不妊ケア(久保春海)
Chapter 1 生殖医療の基礎
生殖器の解剖と機能
1 男性生殖器(小林秀行)
2 女性生殖器(片桐由起子,高島明子)
生殖の生理
1 月経周期調節と性ホルモン(小林真以子,岡田英孝)
2 生殖に関連する症状(山下能毅)
生殖に伴う検査法
1 内分泌検査法(梶原 健)
2 内視鏡検査法(河野康志,楢原久司)
3 超音波検査法(河野康志,楢原久司)
Chapter 2 妊娠の生理
妊娠の成立
1 精子の形成(谷口久哲)
2 卵子の形成(佐々木拓幸,浜谷敏生)
3 受精(佐々木拓幸,浜谷敏生)
4 着床(木村文則)
5 黄体(木村文則)
妊娠の維持と胎児(草開 妙,齋藤 滋)
1 妊娠維持メカニズム
2 妊娠に伴う母体免疫能の変化
3 不妊症と免疫
Chapter 3 生殖の病態(不妊症)
不妊症概論(橋俊文)
1 不妊症の定義
2 不妊症の病態
3 不妊症の分類
4 不妊症の原因
5 不妊症の頻度
不妊症の診断(齊藤和毅)
1 女性不妊症の診断
2 男性不妊症の診断
不妊症の治療(石川智則)
1 女性不妊症の治療
2 男性不妊症の治療
不妊症の予防(五十嵐秀樹)
1 予防可能な不妊要因
Chapter 4 生殖補助医療(ART)の実際
ARTに関する知識
1 ARTの歴史(鈴木秋悦,門上大祐,森本義晴)
2 ARTの基礎知識(福田愛作,門上大祐,森本義晴)
ARTの実際
1 ART実施前の検査(松田和洋,門上大祐,森本義晴)
2 卵巣予備能(Ovarian reserve)と卵巣刺激法(門上大祐,森本義晴)
3 採卵(福田愛作,門上大祐,森本義晴)
4 媒精(西 弥生,門上大祐,森本義晴)
5 顕微授精(西 弥生,門上大祐,森本義晴)
6 胚の選別と胚移植(吉田 淳)
7 黄体補充(小田原 靖)
8 胚盤胞移植(蔵本武志,門上大祐,森本義晴)
9 胚凍結,凍結胚移植スケジュール(向田哲規,門上大祐,森本義晴)
10 アシストハッチング(AHA)(門上大祐,森本義晴)
11 TESE・MESA(岡田 弘,門上大祐,森本義晴)
12 卵子提供,代理母(門上大祐,森本義晴)
Chapter 5 不妊症と手術
1 腹腔鏡下手術(小林未央,岩瀬 明)
2 卵管鏡下卵管形成術(福田愛作)
3 男性不妊症の手術(小宮 顕,滑川剛史,加藤繭子,川村幸治,今本 敬,市川智彦)
Chapter 6 不妊治療のその後
1 流産(鴨下桂子)
2 異所性妊娠(久野貴司,志賀尚美)
3 多胎(前沢忠志)
4 先天異常(川井清考)
5 静脈血栓塞栓症(太田邦明)
6 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)(銘苅桂子)
Chapter 7 不育症
(福井淳史)
1 不育症とは
2 不育症のリスク因子とその検査法
3 不育症の治療法
4 不育症の心理ケア
Chapter 8 不妊症ケアの医療チーム
1 エンブリオロジスト(沖津 摂)
2 不妊症看護認定看護師(小松原千暁)
3 IVFコーディネーター(安藤寿夫)
4 心理カウンセリング(平山史朗)
5 遺伝カウンセリング(竹下直樹)
6 フィナンシャル・ソーシャル・コーディネーター(三井 啓,森本義晴)
7 不妊患者に対する「不妊治療勉強会」のあり方(塩谷雅英)
Chapter 9 がんと生殖医療
1 わが国におけるがん・生殖医療の実情(古井辰郎,寺澤恵子,菊野享子,志賀友美,山本晃央,森重健一郎)
2 男性がん患者におけるがん・生殖医療(湯村 寧)
3 女性がん患者に対するがん・生殖医療(堀江昭史)
4 小児に対するがん・生殖医療(高江正道,鈴木 直)
5 がん・生殖医療における心理ケア(小泉智恵)
6 がん・生殖医療における看護ケア(高橋奈津子)
7 がん・生殖医療における薬剤師の役割(米村雅人)
View in the future おわりに
不妊ケアの将来展望(森本義晴)
Appendix 付
・不妊の統計(齊藤英和)
・不妊領域における薬剤の知識(西原卓志,森本義晴)
・必要な倫理的知識(北井啓勝)
不妊ケアに関するQ&A 50
索引