やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 関節神経学的治療法(articular neurological therapy:ANT)は,関節受容器に刺激を加えることによって運動機能を改善する方法である.この方法は関節運動学的アプローチ(AKA)-博田法を用いてもなお不足する従来の運動療法の欠陥を補う技術で,AKA-博田法に関連して開発された.
 ANTの開発は,1992年の失行,失認を考慮した脳卒中の新しい運動療法および機能訓練法の開発に始まったといえる.2002年,半ば偶然に,関節受容器を刺激すると運動機能に何らかの反応が出るのではないかとの思いに至り,AKA-博田法で発見された関節と関連痛の部位の反応を調べた.最初に軟部組織の弛緩が認められ,次いで筋収縮力増大が発見された.これらを臨床で利用し,関節受容器は運動機能の調節と密接な関係があることが認識され,2004年に脳卒中の新しい運動療法と統合し,関節神経学的治療法が確立した.ANTの臨床効果は絶大で,脳卒中を初め,脊髄損傷,神経疾患,骨関節疾患などに対し,従来の運動療法では想像さえできない好結果をもたらした.治療効果は運動機能に限らず,高次脳機能にまで及ぶことも発見されている.その技術と臨床応用は『関節運動学的アプローチ(AKA)-博田法 第2版』(2007年,医歯薬出版)に記載されているが,それだけでは技術の習得は困難で,動画の作成が熱望されていた.
 本DVDはその要望にこたえるべく,AKA-博田法DVDの姉妹編として作成された.AKAのDVDと同様に,3画面により術者の手の動きだけでなく全身がわかるように工夫されており,手の位置は「骨指標」(静止画像)でも示した.ANTの技術はAKA-博田法の技術と関係が深く,AKA副運動技術を習得すれば,ANTの基本技術の習得は比較的容易である.しかし,AKAと違って治療対象が移動する技術もあり,臨床的にはAKAよりも難度が高いといえる.現在,医療界に限らず,物造りの世界でも難しい技術は拒絶される傾向がある.しかしながら,治療者はこのような高度な技術を習得してこそ,初めて専門職とよばれることができる.
 最後にDVD撮影にご協力いただいた,宇部リハビリテーション病院の理学療法士,作業療法士諸氏に厚くお礼申し上げます.また,DVD作成に熱意をお示しくださった医歯薬出版の関係者の方々に心から感謝いたします.
 2011年5月
 博田節夫
 序
I 関節神経学的治療法(ANT)とは
II 基本事項
 1.関節受容器
 2.治療関節
 3.治療効果
 4.強さと治療頻度
III 手技と臨床応用
 1.椎間関節
  1)C/T1
   (1)座位
   (2)背臥位
   (3)立位
  2)T
   (1)座位
   (2)背臥位
  3)T
  4)T
  5)L
  6)L/S1
 2.仙腸関節
 3.胸鎖関節
   (1)座位
   (2)背臥位
 4.第2胸肋関節
 5.胸郭圧迫
   (1)座位
   (2)立位
 6.骨盤圧迫
 7.肩関節
  1)側方牽引
   (1)座位
   (2)立位
  2)下方牽引

 ●DVDの使い方