はじめに
リハビリテーションにたずさわるスタッフに,一般的な知識としてどの程度まで骨・関節のX線像の理解が要求されるのかということは大変難しい.長い期間整形外科を学んできた筆者は,ついつい「X線を参考にしてプログラムを組むように」などと処方に注意を入れてしまうが,さて理学療法士,作業療法士がどれだけX線を参考にすることができているかということになると,必ずしも十分であろうという確信をもてない.
しかし考えてみると,X線像を読むということは一種の診断的な行為であって,それを参考にしてプログラムを組めなどというのは少々行きすぎた処方のようにも思えて迷うこともある.とはいうものの医者の立場で考えると,たとえば骨折や関節の疾患ではX線の知識がなくては到底患者を扱うことはできないことで,その点からすれば,少なくとも直接的な判断をくだす必要はないとしても,それに基いて出された処方を理解する上で,ある程度X線を読む力ももっていてほしいというのが実感である.また脳血管障害のような一見骨・関節のX線像とは関係のないような疾患でさえ,異所性の骨化や骨粗鬆症が問題となることがあるのであるから,回復stageや,失行,失調などの難しい症状の評価もさることながら,X線像で「評価」する勉強も必要といえないことはないとも思う.
リハビリテーションが日本で盛んにいわれるようになってすでに久しい.その間,対象とした疾患として,脳性麻痺や脳血管障害の後遺症など神経疾患が多いという理由もあって,そのアプローチの手技が整形外科的なものから神経生理学的手法に移ってきていることは事実である.このことは,治療手技の進歩として大変喜ばしいことである.しかしちょっと心配なのは,最近病院に来られる理学療法士,作業療法士の実習生の話などをきいていると,知識が少しそちらに偏ってしまっていないかと感じることである.ときには骨のX線写真をみるのははじめてという人たちがいるのには驚かされてしまう.したがって,同じ関節の拘縮でも麻痺の患者と関節を手術したものとでは治療計画が根本的に違うことなどが理解しにくいらしい.骨・関節の手術後のケアが一日の単位で組まねばならない必然性などがよくわからない.
この書の目的の1つは,これらの人たちに骨・関節のX線像に慣れていただくことにある.リハビリテーションの領域で比較的遭遇しやすい疾患を選んだのはそのためである.したがって,炎症性の疾患や腫瘍などの高度に診断的要素のあるものはすべて割愛した.また,書名が「読み方」とはなっているが,できるだけ読み方という技術的なものに偏らないで,その疾患を理解するのにX線がどのように役立つのかを知っていただくよう重点をおいたつもりである.
この本は1977年4月にリハビリテーション・クリニクスのシリーズで出版され,その後一度も改訂されないまま今日まで増刷を重ねてきた.骨そのものが変化するわけではないのでそれはそれでよいと思っている.ただ,その間CTやMRIなどの画像診断の手法が著しく進歩しこれらの画像との関係を論ずる必要性が出てきている.また,膝関節の全置換術など治療技術がめざましく進歩した領域の写真の追加も必要と思われるが,そのようなことを考えても基本の基本は変わるものではない.
幾年も前より,リハビリテーション・クリニクスのシリーズの見直しがあって,この本が別だてになることは伺っていた.しかし諸般の事情で前の版を大きく改訂することはできなかった.今回は一部レントゲン写真を追加して新装版として出版することとなった.
また,出版にあたっては医歯薬出版株式会社にはご協力を頂き心から感謝申し上げる.
2001年12月
著者 大田仁史
リハビリテーションにたずさわるスタッフに,一般的な知識としてどの程度まで骨・関節のX線像の理解が要求されるのかということは大変難しい.長い期間整形外科を学んできた筆者は,ついつい「X線を参考にしてプログラムを組むように」などと処方に注意を入れてしまうが,さて理学療法士,作業療法士がどれだけX線を参考にすることができているかということになると,必ずしも十分であろうという確信をもてない.
しかし考えてみると,X線像を読むということは一種の診断的な行為であって,それを参考にしてプログラムを組めなどというのは少々行きすぎた処方のようにも思えて迷うこともある.とはいうものの医者の立場で考えると,たとえば骨折や関節の疾患ではX線の知識がなくては到底患者を扱うことはできないことで,その点からすれば,少なくとも直接的な判断をくだす必要はないとしても,それに基いて出された処方を理解する上で,ある程度X線を読む力ももっていてほしいというのが実感である.また脳血管障害のような一見骨・関節のX線像とは関係のないような疾患でさえ,異所性の骨化や骨粗鬆症が問題となることがあるのであるから,回復stageや,失行,失調などの難しい症状の評価もさることながら,X線像で「評価」する勉強も必要といえないことはないとも思う.
リハビリテーションが日本で盛んにいわれるようになってすでに久しい.その間,対象とした疾患として,脳性麻痺や脳血管障害の後遺症など神経疾患が多いという理由もあって,そのアプローチの手技が整形外科的なものから神経生理学的手法に移ってきていることは事実である.このことは,治療手技の進歩として大変喜ばしいことである.しかしちょっと心配なのは,最近病院に来られる理学療法士,作業療法士の実習生の話などをきいていると,知識が少しそちらに偏ってしまっていないかと感じることである.ときには骨のX線写真をみるのははじめてという人たちがいるのには驚かされてしまう.したがって,同じ関節の拘縮でも麻痺の患者と関節を手術したものとでは治療計画が根本的に違うことなどが理解しにくいらしい.骨・関節の手術後のケアが一日の単位で組まねばならない必然性などがよくわからない.
この書の目的の1つは,これらの人たちに骨・関節のX線像に慣れていただくことにある.リハビリテーションの領域で比較的遭遇しやすい疾患を選んだのはそのためである.したがって,炎症性の疾患や腫瘍などの高度に診断的要素のあるものはすべて割愛した.また,書名が「読み方」とはなっているが,できるだけ読み方という技術的なものに偏らないで,その疾患を理解するのにX線がどのように役立つのかを知っていただくよう重点をおいたつもりである.
この本は1977年4月にリハビリテーション・クリニクスのシリーズで出版され,その後一度も改訂されないまま今日まで増刷を重ねてきた.骨そのものが変化するわけではないのでそれはそれでよいと思っている.ただ,その間CTやMRIなどの画像診断の手法が著しく進歩しこれらの画像との関係を論ずる必要性が出てきている.また,膝関節の全置換術など治療技術がめざましく進歩した領域の写真の追加も必要と思われるが,そのようなことを考えても基本の基本は変わるものではない.
幾年も前より,リハビリテーション・クリニクスのシリーズの見直しがあって,この本が別だてになることは伺っていた.しかし諸般の事情で前の版を大きく改訂することはできなかった.今回は一部レントゲン写真を追加して新装版として出版することとなった.
また,出版にあたっては医歯薬出版株式会社にはご協力を頂き心から感謝申し上げる.
2001年12月
著者 大田仁史
はじめに
第1編 部位別X線像
I 脊椎
A 頸椎
1.正常像
正面像
側面像
脊柱管の前後径
斜位像
最大前後屈像
2.頸椎部の疾患
変形性脊椎症
椎間板ヘルニア
後縦靱帯骨化症
B 腰椎
1.正常像
正面像
側面像
斜位像
2.腰椎部の疾患
脊椎分離症
潜在性脊椎披裂
腰仙移行椎
骨性の側彎症
変形性脊椎症
強直性脊椎炎とフォレスティール病
骨粗鬆症
椎間板ヘルニア
II 肩甲帯および上肢
A 肩関節
B 肘関節
C 手関節および手部
1.手関節
2.手指
III 骨盤帯および下肢
A 股関節
1.正常像
大腿骨上端部の骨梁
2.股関節部の疾患
変形性股関節症
変形性股関節症の手術
全関節置換術
無腐性壊死
ペルテス病
臼蓋形成不全
先天性股関節脱臼
先天性股関節脱臼のいろいろな診断法
B 膝関節
1.正常像
2.膝関節部の疾患
変形性膝関節症
側副靱帯損傷
十字靱帯の損傷
3.関節包
4.膝にかかるいろいろな力
5.膝の動揺性と固定
C 足関節および足部
1.正常像
足関節
足部
いろいろな計測法
2.足の疾患
扁平足
第2編 疾患別X線像
IV 慢性関節リウマチ
1.病理変化とX線像
2.関節の変化
肩関節
手関節および手指
股関節
膝関節
足関節
足趾
V 骨折
骨折の治癒機転
膝関節の拘縮
大腿骨頸部骨折
骨頭の変形
内反変形
骨癒合がなくても歩ける
特発性の骨折
股関節にかかる力
一枚のX線写真から
VI 骨系統疾患の一例―モルキ氏病
X 線像の所見から
VII 片麻痺
骨粗鬆症
肩の亜脱臼
異所性骨化
過矯正による足関節の損傷
短下肢装具とX線像
脳卒中片麻痺と側彎症
VIII 対麻痺
腰椎の骨折
骨粗鬆症による骨折
頸椎の脱臼骨折
頸椎後縦靱帯骨化症
脊柱管狭窄
いわゆる“むち打ち”機転による頸髄損傷
胸郭の変形
異所性骨化
膀胱結石
付録 子どもの正常X線像図
脊椎
肩関節
肘関節
手
股関節
膝関節
足関節
足趾
さくいん
第1編 部位別X線像
I 脊椎
A 頸椎
1.正常像
正面像
側面像
脊柱管の前後径
斜位像
最大前後屈像
2.頸椎部の疾患
変形性脊椎症
椎間板ヘルニア
後縦靱帯骨化症
B 腰椎
1.正常像
正面像
側面像
斜位像
2.腰椎部の疾患
脊椎分離症
潜在性脊椎披裂
腰仙移行椎
骨性の側彎症
変形性脊椎症
強直性脊椎炎とフォレスティール病
骨粗鬆症
椎間板ヘルニア
II 肩甲帯および上肢
A 肩関節
B 肘関節
C 手関節および手部
1.手関節
2.手指
III 骨盤帯および下肢
A 股関節
1.正常像
大腿骨上端部の骨梁
2.股関節部の疾患
変形性股関節症
変形性股関節症の手術
全関節置換術
無腐性壊死
ペルテス病
臼蓋形成不全
先天性股関節脱臼
先天性股関節脱臼のいろいろな診断法
B 膝関節
1.正常像
2.膝関節部の疾患
変形性膝関節症
側副靱帯損傷
十字靱帯の損傷
3.関節包
4.膝にかかるいろいろな力
5.膝の動揺性と固定
C 足関節および足部
1.正常像
足関節
足部
いろいろな計測法
2.足の疾患
扁平足
第2編 疾患別X線像
IV 慢性関節リウマチ
1.病理変化とX線像
2.関節の変化
肩関節
手関節および手指
股関節
膝関節
足関節
足趾
V 骨折
骨折の治癒機転
膝関節の拘縮
大腿骨頸部骨折
骨頭の変形
内反変形
骨癒合がなくても歩ける
特発性の骨折
股関節にかかる力
一枚のX線写真から
VI 骨系統疾患の一例―モルキ氏病
X 線像の所見から
VII 片麻痺
骨粗鬆症
肩の亜脱臼
異所性骨化
過矯正による足関節の損傷
短下肢装具とX線像
脳卒中片麻痺と側彎症
VIII 対麻痺
腰椎の骨折
骨粗鬆症による骨折
頸椎の脱臼骨折
頸椎後縦靱帯骨化症
脊柱管狭窄
いわゆる“むち打ち”機転による頸髄損傷
胸郭の変形
異所性骨化
膀胱結石
付録 子どもの正常X線像図
脊椎
肩関節
肘関節
手
股関節
膝関節
足関節
足趾
さくいん