やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに―本特集にあたって
 今月号では,細胞診における非腫瘍性細胞の多様性(バリエーション)についての特集をお届けします.
 細胞診の大きな目的は,細胞塗抹標本から悪性腫瘍細胞を見つけ出すことです.具体的には,細胞塗抹標本上のすべての細胞を鏡検し,そのなかから悪性腫瘍細胞を見つけ出します.腫瘍には悪性腫瘍と良性腫瘍がありますが,良性腫瘍のなかには悪性腫瘍細胞との鑑別に苦慮するものもあり,日々の細胞診でそのような症例を経験することもあるかと思います.また,良性・悪性の境界病変に位置づけられている疾患もあります.
 細胞診で良性・悪性を含めた腫瘍細胞や境界病変の細胞を検出するためには,非腫瘍性細胞を理解し,そのバリエーションを知ることが大切です.これらについては,ある程度は積み重ねにより経験則を得ることができますが,この特集を読んでいただくことで,知識を整理することができるでしょう.さらに,経験の少ない,あるいは未経験の臨床検査技師の方が,細胞診を学ぶきっかけにもなると思います.
 本特集では,非腫瘍性細胞の解剖学的・組織学的コメントとともに,非腫瘍性細胞のバリエーションを解説いただきます.また,特に大切と思われる良性腫瘍についても取り上げていただきました.執筆陣は,いずれも経験豊富な細胞検査士です.
 本特集を,日々の細胞診にお役立ていただけることを願っています.
 監修 廣井禎之(順天堂大学 医療科学部 臨床検査学科)
特集 細胞診における非腫瘍性細胞のバリエーションをみる
  はじめに―本特集にあたって
  (廣井禎之)
 1.婦人科領域(子宮頸部,子宮体部,卵巣)
  (古田則行)
 2.呼吸器領域(喀痰,気管支洗浄液・擦過)
  (柿沼廣邦)
 3.体腔液(胸水・腹水・心嚢液)
  (丸川活司)
 4.乳腺
  (葉山綾子)
 5.泌尿器領域(精嚢腺,尿管,尿細管上皮細胞)
  (堀口絢奈・鷹橋浩幸)
 6.リンパ節
  (大久保文彦)
 7.甲状腺
  (鈴木彩菜)
 8.唾液腺
  (加藤 拓・浮ヶ谷匡恭・久山佳代)
 9.消化管(食道,胃,小腸・大腸)
  (田路奈津子)
 10.胆管・胆嚢,膵臓
  (町田知久)
 11.口腔領域
  (福田雅美)

Editorial―今月のことば
 新入職員の皆さんへ
 (野木岐実子)

話題―NEWS&TOPICS
 ALT>30U/Lはかかりつけ医受診を
 (吉治仁志)
 10年ぶりの改訂となった『血尿診断ガイドライン2023』
 (油野友二・佐藤妃映)

MT Seminar
 超音波検査でみるSOS/VOD
 (岩井孝仁・西田 睦・後藤秀樹)
 シリーズ 日常のなかの例外・トラブル対応
 4.採血時トラブル対策
 (中村和奏・小野佳一)

FOCUS
 子宮頸がん検診と精密検査
 (笹 秀典)
 不妊治療と臨床検査技師の役割
 (立木 都)
 骨髄検査と関連する最近のライソゾーム病診断
 (岡嶋一樹・村山 圭・酒井規夫・井田博幸)

From LABO
 熊本県心血管エコー図検査標準化プロジェクト(K-CHAP)の取り組み
 (宇宿弘輝)

臨床検査Q&A
 ツァンク試験での注意点や細胞像鏡検のコツなどがあれば教えて下さい.
 (古賀文二・古賀佳織)

Information
 日本医療検査科学会第38回春季セミナー
 第29回第1種ME技術実力検定試験
 お詫びと訂正

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 MTパズル
 編集後記・次号予告