CASE3.なぜか見えた血流
膵臓の超音波内視鏡検査(EUS)のドプラ画像では,脾静脈と思われる血管内に血流シグナルが見られるが,同部位の病理組織標本では脾静脈が潰れてしまっている.どうして血流シグナルが見られたのだろうか?
若 杉:技師さん自身が超音波検査の価値を知り切っていないっていうことがあるんですよね.
市 原:うーん,そういうこともあるかもしれませんね.
若 杉:CTみたいなモダリティと比べて,たとえばエコーで「胆嚢を見るうえでいいこと」って何だろうと考えると,層構造が区別できる,病巣深部低エコーも見えるなど,CTやMRIでは読めないデータがあるんですよ.でも技師さんって,意外と病巣深部低エコーの存在を知らなかったりするんです.
長谷川:検査技師さんは特にそうかもしれません.CTやMRIを見る機会が少ないので,「他のモダリティと比べてどうか」という差がわかりづらいんですよね.
若 杉:でも,超音波検査を行っている技師さんの8割は臨床検査技師さんなんですよ.ところが,施設によっては,新人の指導にあたってくれる人の数も少なくて,手探りで勉強して検査している状況です.それだと,超音波検査の真価や限界を知るのは難しい.病理報告書を読んでも,単純に「合っていた」「間違っていた」で終わっちゃったりします.やっぱりこういう「対比」は大切ですよね.
市 原:なるほど.
長谷川:「誤診じゃない誤診」も,「正診だと思っていた誤診」もあるんですよね.今回の症例のように.
市 原:対比ってそういうところを救いますよね.
若 杉:症例は多面体ですから.一つの見方で解釈しなければいけないってことはありませんし,いろいろな視点でアプローチできればいいですね.
※この鼎談は,月刊『Medical Technology』44巻6号(2016年6月号)に掲載されている「対比で読み解く 超音波画像と病理組織像」の“おまけトーク”です.本編は雑誌をご覧ください! →掲載号ページへ