Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第19回 米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナー開催される

 1月11日(日),虎ノ門ヒルズ(東京都港区)にて,第19回米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナーが,225名の参加者のもと開催された(会長:二階堂雅彦氏/東京都・二階堂歯科医院).「天然歯を守るための知識と技術」を統一テーマとし,10名の演者より,さまざまな切り口より天然歯保存へのアプローチが紹介された.

DSCF1545_二階堂先生.jpg 
会長・二階堂氏

 午前の部では,まず冨岡栄二氏(東京都・冨岡歯科医院)は,骨縁下欠損の病態とその対応についてのエビデンスを整理し,各種治療法の評価について現時点でのコンセンサスを確認した.
 藤川謙次氏(東京都・藤川歯科医院)は,骨移植を伴う歯周外科治療をテーマに,臨床例を中心にその治療効果を紹介した.成功の秘訣は術前管理,フラップデザイン,移植材選択,骨欠損形態等であるとし,特に各種移植材の新生骨内での経過に関するメカニズムの紹介・考察では会場の注目を集めた.
 宮下裕志氏(東京都・EPSDC宮下歯科)は,「本当にエンド治療で天然歯を維持出来るのか?」とのテーマにて講演.日本国内のエンド治療の現状に触れるとともに,再治療による歯質の切削の害を強調.機械的配慮と生物学的配慮に基づくエンド治療の必要性,不要なエンド治療をなくすためのアプローチが求められているとした.
 文野弘信氏(DIO文野矯正歯科)は,歯周病を有する患者に対する歯周病専門医と矯正専門医による,いわゆるインターディシプリナリーアプローチのポイントを実践的に解説した.特に重度歯周病患者における矯正治療の威力を示す症例報告は,会場の大きな関心を呼んだ.
 加治彰彦氏(東京都・半蔵門ファミリア矯正歯科)は,同じく矯正専門医の立場から,「歯並びをよくすることで齲蝕や歯周病にかかりにくくなります!」といったキャンペーンの文献的な根拠を改めてリサーチし,実際にはメリットとデメリットが存在し,それをふまえた適切な治療計画が求められることを強調.矯正専門医による「矯正治療のリスク」への言及は,説得力をもつものであった.

AM演者_DSCF1559.jpg
午前の部の演者(左から,富岡氏,藤川氏,宮下氏,文野氏,加治氏)

 午後の部では,西堀雅一氏(東京都・西堀歯科医院)は,メインテナンスの継続があれば,天然歯は歯科医師が思っている以上に抜けないことを症例から報告.また,咬合への介入はそのタイミング次第で治療を簡潔にも複雑にもすることを強調した.
 佐藤康訓氏(東京都・佐藤デンタルオフィス)は,天然歯の保存に関しては,長期的には術式による差は小さく,臨床家は多くの引き出しの中から適切なアプローチを選択し提供する知識が求められるとした.
 武居 純氏(神奈川県・タケスエ歯科医院)は,治療計画の立案に際しては,メリットが多い選択肢が採用されるのではなく,デメリットが少ない選択肢が治療計画に採用されることを,ボストン大学での経験とともに紹介し,場内の若手ドクターへ向け,常に3パターンの治療計画を考え提案する訓練の重要性等を訴えた.
 神作拓也氏(東京都・神作歯科医院)は,「周囲天然歯を考慮したインプラント治療計画」とのテーマで講演.インプラント治療後の残存天然歯の予後についての報告は少なく,症例ごとのリスクの判断の重要性を訴えた.
 藤本浩平氏氏(東京都・藤本歯科医院)は,天然歯の保存と抜歯の判断においては,"機能的に残せるか"との基準によるべきであると強調.天然歯の保存が一口腔としての予知性を阻害するリスクに言及.症例ごとに予知性を診断できる能力が臨床医に求められるとまとめた.

PM演者_DSCF1559.jpg
午後の部の演者(左から,藤本氏,神作氏,武居氏,佐藤氏,西堀氏)

 天然歯の保存・抜歯の判断,介入の程度・時期については,生物学的条件以外にもさまざまな要素が複雑に絡むことから,臨床医としてのスタンスが問われる時代にあることを共有する有意義な1日であった.

会場風景DSCF1563.jpg
会場内の様子

 

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年5月>
2829301234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930311
2345678
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号