Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

日本歯科衛生学会 第9回学術大会開催される

 9月13日(土)~15日(祝)に,大宮ソニックシティ(さいたま市大宮区)において,標記学術大会が開催された(大会長:丸山恵子氏/公益社団法人埼玉県歯科衛生士会会長).「8020 健康長寿社会の実現を目指して」がメインテーマに掲げられた本会には,歯科衛生士をはじめとする1,900名余が参加し,会員発表は169演題を数えた.

 大会初日の13日には,「介護保険施設における口腔ケアの充実」「周術期における病院・診療所連携」「有病者歯科領域における臨地実習教育」「歯科衛生士法一部改正」の4つのテーマのもと,ワークショップが行われ,それぞれのグループで事例報告・討議がなされた.

DSC_0005.JPG

DSC_0030.JPG

 

 14日の教育講演1「よく噛んで認知症予防」では,小野塚 實氏(日本体育大学)が「噛む」という行為と脳との関係について,豊富な研究例をもとに解説した.MRIを用いて咀嚼時の脳のはたらきを測定した実験の結果などを紹介し,噛むことが脳の前頭前野や海馬を活性化して認知機能を向上させることや,ストレスの軽減にもつながることなどを説明.「噛むことが認知症予防につながる」と述べ,脳科学の視点から,口腔機能を維持・向上させることの必要性を訴えた.

DSC_0093.JPG

 

 特別講演「歯科保健とスポーツ」では,安井利一氏(明海大学)が,東京オリンピックの開催も決定し,ますます国民的関心の高まりをみせるスポーツに対して,歯科がどのようにかかわっていくべきかを,長年スポーツ歯学に携わってきた自身の経験を交えつつ論じた.咬合がさまざまな競技のパフォーマンスに与える影響から,スポーツによる外傷の深刻さとそれを防ぐためのマウスガードの必要性まで,スポーツにおける歯科の重要性を強く認識させる講演であった.

DSC_0143.JPG

 

 最終日の15日には,シンポジウム「高めよう歯科医院の力,引き出そう歯科衛生士の力」が開かれた.まず,深井穫博氏(深井歯科医院・深井保健科学研究所)による「生きる力を支える歯科医療・口腔保健―高めよう歯科医院力―」と題した基調講演が行われ,日本における長寿化と歯科医療ニーズの変遷から,健康施策の動向を概説.健康長寿と口腔保健を結ぶエビデンスを紹介しながら,今日の歯科医療の意義を説いた.また,社会に求められる歯科医院力として,保健(予防)と医療の一体的取り組みや多職種協働を挙げ,歯科衛生士をはじめとする医療従事者の知識や技術の向上を目指し,進化していくことの重要性を再確認した.

DSC_0163.JPG

 続いて,高橋未哉子氏(高橋矯正歯科クリニック),小林明子氏(小林歯科医院),村上恵子氏(村上歯科医院)が登壇.矯正歯科専門医院に勤める高橋氏は,口腔筋機能療法(MFT)によって咀嚼・嚥下・発音といった口腔機能が改善された小児期~青年期の症例を紹介.MFTの目的と意義について解説しながら,人にとって「歯は道具」であり,患者さんがこの道具を適切に使えるよう歯科医院が指導・啓発していかなければならないと強調した.
 小林氏は,「インプラントは歯を失った人にとっての第2の歯である」とし,患者さんのQOLに大きくかかわるインプラント治療においては,術前から術中,その後のメインテナンスを通して歯科衛生士の介入が欠かせないものになっていると述べた.歯周病や全身疾患を抱える患者さんへのインプラント治療症例を提示しながら,着実に長寿化が進んでいる現状に言及.今後の課題として,歯科衛生士同士や歯科診療所同士の連携,ひいては地域,行政といったさまざまな連携の重要性を訴えた.
 村上氏は「生涯を通じたメインテナンス」と題して講演.高齢者の症例と自身の担当経験から,メインテナンス時に留意すべき高齢者の身体的,精神的な特徴を挙げ,歯科衛生士によって行われるべき細やかな対応を解説した.また,生涯にわたるメインテナンスとはセルフケアを支援することであり,患者さんが前向きに「自分の歯で噛みたい」と思えることにつながる支援を目指すべきと語った.

DSC_0197.JPG

 最後には,演者4名と,コメンテーターとして茂木美保氏(住友商事株式会社 歯科診療所)が登壇し,ディスカッションが行われた.

 

 県民フォーラムでは,佐藤 弘氏(西日本新聞社編集企画委員)が「口は命の入り口,心の出口~食卓の向こう側に見える未来~」と題して講演.「食育」の視点から,現代の子どもを取り巻く食の事情に言及.独自の調査報告と見解を交えながら,子どもの未来を守るために必要なことを,ユーモアたっぷりに解説した.また,歯科医療の本質は歯を「治す」ことではなく,「長くみる」ことにあると述べ,「あなたのおかげで病気が予防されたと患者さんに感謝される小さな喜びにこそ,医療の本質があるのではないか」と歯科衛生士にエールを送り,締めくくった.

DSC_0212.JPG

 


 さまざまな医療連携のあり方が問われるなか,歯科衛生士が社会に何を求められ,専門職としてどのように応えていくべきか,各所で活発な議論が交わされた本会は盛況のうちに終了した.次回は,2015年9月20日(日)~22日(祝),札幌コンベンションセンター(札幌市白石区)にて行われる予定.

 

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年5月>
2829301234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930311
2345678
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号