2月11日(土),熊本市国際交流会館大ホールにて,スタディグループKDM(熊本デンティストミーティング)発足30周年記念発表会が開催された(大会長:永田省蔵氏/熊本県開業).
KDMは,1982年に故・添島義和氏を顧問に発足したスタディグループであり(会員数24名.代表:山口英司氏/熊本県開業),このたび発足30周年を迎え,「症例経過から探る臨床の方向性―インプラントとどう向き合うか―」をテーマに,インプラントの歯科臨床における位置づけを再考し,これからのインプラントのより効果的な活用法を模索する試みが行われた.

「セクション1:インプラント症例の経過から学んだこと」(発表者:林康博氏・河野生司氏・山口英司氏・永田省蔵氏・東克章氏・坂口倫章氏)
本セクションでは,インプラントの長期経過症例の報告とともに,同会の実施した疫学調査に基づくインプラントの生存率をはじめとするデータから,インプラント治療のもつ「光と影」についての考察が行われた.
高い生存率が報告される一方で,経過のなかで生じるトラブルの傾向の考察から,インプラント治療では,天然歯列では起こり得ない予期せぬトラブルが起こる可能性を常に含む治療であることがあらためて強調された.特にパラファンクションを有する症例においては,インプラントが口腔内に存在することによる力の動態の整理と,そのコントロール方法の確立が今後の課題であることが指摘された.
インプラント治療の成否の判断について,インプラント自体の生存率のみならず,インプラントの応用による欠損拡大の抑制効果の視点で長期経過症例を検証するスタンスは,これからのインプラント治療の評価指標として重要なポイントと考えられた.
「セクション2:臨床における歯根膜の意義を見直す」(発表者:出口大平氏・境大助氏・小林裕介氏・東克章氏・高木雅子氏)
本セクションでは,インプラント治療を選択する前に、「歯根膜」の存在を最大限に活用すべきシチュエーションについて,パーシャルデンチャーや自家歯牙移植の長期経過との比較から検討が行われた.さらに,一般的には重度の歯周疾患によりHopelessと考えられるであろう症例であっても,徹底的なプラークコントロールによって保存が可能であることが長期症例によって示された.
インプラントを用いるべきか,インプラント以外の方法を選択すべきかについては,さまざまな要素が考慮される必要があるが,歯根膜があるからこその可能性を最大限に考慮した治療計画がまずは最優先されるべきであるとの同会のスタンスが確認された.
「セクション3:有効なインプラントの使用法を模索する」(発表者:鳥巣猶喜氏・渡邊祐康氏・栗原健一氏・冨永祐司氏・高木公康氏・栃原秀紀氏・松田光正氏)
本セクションでは,天然歯=歯根膜の保存を最優先にした治療を行うなかでの,必要最小限の応用について提言が行われた.
特にパーシャルデンチャーの支台としてのインプラントの応用との提言は,固定性補綴であるが故に生じたと考えられるさまざまなトラブルを回避できる可能性をもった視点であり,今後さらなる検証が求められるところと考えられた.
また,高度の臼歯部咬合崩壊症例においては,最後方歯をインプラント同士の咬合にすることで咬合崩壊の抑制効果が得られるとの視点が示されたほか,インプラントを応用した際の咬合面形態やガイドの付与,咬合面に用いる材質などの検証も展開された.
さらに,4名の若手会員(宮本徳郎氏・市川康裕氏・坂口賢氏・松原崇士氏)によるポスター発表も行われ,多くの聴衆の目を惹いた.

すべてのプログラムを通し,「可能な限り天然歯の保存を中心とした治療計画を最優先するなかで,必要最小限のインプラントの応用を検討すべき」であるとの同会のメッセージが強調された.
患者さんとの長いかかわりを前提とした,まさに「地域に根差す開業歯科医(GP)が取り組むインプラント治療の姿」についての問題提起であったとの印象ももった.