2010年5月29日(土),30日(日)の両日,夢天神ホール(福岡市)において,船越歯周病学研修会30周年記念講演会が開催された.同会は主宰の船越栄次氏(福岡県開業)が,タフツ大学大学院,インディアナ大学大学院で学んだ歯周治療の知識・技術を普及する目的で1980年に創設され,今年で30周年を迎える.この間,ベーシックコースに加え,マスターコース,インプラントアドバンスコースも設置され,受講生は2,500名に達する.
今回の講演会では,「いかにして私たちは成功したか」をテーマに,糸瀬正通氏(福岡県開業),下川公一氏(福岡県開業),山﨑長郎氏(東京都開業),藤本順平氏(東京都開業),河原英雄氏(福岡県開業)の5人の演者を迎え,船越氏を含めた6人で2日間にわたり,講演が行われた.

初日は,船越氏の開会挨拶に続いて,6人の演者が歯科医師人生の歩みを紹介.具体的な目標を持って努力を続けること,一人ひとりの患者さんに誠実に向き合うこと,良き師(メンター)・良き友と出会うこと,などが大切であると述べ,歯科を取り巻く環境の厳しさが喧伝されているが,歯科医師には多くの魅力があるとし,若手歯科医師の奮起を促した.

2日目は各演者がそれぞれ得意とするテーマで講演.
船越氏は開業からの30年の歯周治療を総括し,切除療法,組織再生療法(GTR法),生物学的再生療法(エムドゲイン,PRP)とほぼ10年単位で主な治療法を変えてきたと述べ,今後の10年はCT,ピエゾサージェリー,レーザーなどの活用でより患者さんに優しい治療を目指すと述べた.糸瀬氏はバイオセラムインプラントの時代からの臨床経験の蓄積を元に,予後不良例からインプラント治療のリスク要因を考察し,徒な適応拡大を戒めた.下川氏は近年,氏が注力している咬合治療でのスマイルトレーニングの重要性について講演.スマイルによって神経・筋機構のリラクゼーションを図ることが,咬合の不調和に起因する不定愁訴の改善に有効であることを解剖学,発生学等の知見もふまえて解説した.

昼食を挟んで,山﨑氏は専門医との協同作業によるインターディスプリナリートリートメントによって,高度な審美修復を図った症例を供覧.美しい写真の数々が聴衆を魅了した.また,CT,マイクロスコープ,CAD/CAMを新“三種の神器”と称し,今後,歯科治療をさらに進化させるであろうと述べた.藤本氏は臨床的なテーマからは離れ,歯科臨床と歯科医の説明責任“Accoutability”と題して講演.歯科医療が高度化し,新たな治療法,治療材料が次々と世に出されるなかで,患者側にもニーズの高度化,多様化が生じているとし,歯科医師に求められる説明責任について,実証的な研究も含めて解説した.総括講演を行った河原氏は,高齢社会の到来を迎え,歯科の基本である咀嚼機能の回復こそが,今,最も求められているとし,歯科界の変革の必要性を訴えた.
わが国を代表する著名な臨床家が一堂に会して,2日間にわたって講演を行う貴重な機会とあって,会場は立ち見が出るほどの盛況で,30周年の記念にふさわしい充実した講演会となった.
