7月19日(土),20日(日),東京歯科大学水道橋校舎(東京都千代田区)にて,第23回日本歯科心身医学会総会・学術大会が,240名の参加者を集め開催された(大会長:山根源之教授・東歯大オーラルメディシン).
近年,臨床現場においてますますその必要性を増す心身医学的アプローチ.特にシンポジウム「歯科医療現場から歯科心身症医学を再考する」では,これまで歯科心身医学がなかなか浸透してこなかった構図の分析から,普及のための具体的な課題まで,幅広いディスカッションが行われた.

とりわけ,稲光哲明教授(福歯大・心療内科)は,心身相関を含めた歯科心身症についての生物学的な病態解明が必須との前提のもと,自律神経を切り口とした舌痛症の病態解明の研究動向を報告された.また谷川浩隆氏(JA長野厚生連安曇野病院・整形外科)は,同じ外科系診療科として整形外科と歯科は共通項が多く,外科系診療科だからこそできる心身医学的アプローチの可能性について提言された.
また安彦善裕教授(北医大・個体差医療センター)は,ロンドン大学での経験を基にした同学の「口腔内科相談外来」の名称が,従来の診療科枠組みのなかではすくい上げられなかったであろう歯科心身症患者の受け皿となりうる可能性について,同外来の3年間の実績をもとに言及された.藤澤政紀教授(明海大・歯科補綴)は,「補綴装置にどのように手をつけるべきか」とのテーマのもと,可逆的アプローチを原則とした補綴治療の実例を呈示され,訴えの根拠が少ない場合における,事前説明と不安軽減の必要性を強調された.
ワークショップ「“歯科心身症診療ガイドラインの策定”について」では,まず基調講演として黒崎紀正名誉教授(東医歯大)が,ガイドラインが科学的根拠ばかりに拘泥することへの懸念と,司法の場での規範とされることによる歯科医師の裁量権との関係性についての危惧など,限界を理解したうえでのガイドライン策定が望まれると提言された.そのうえで豊福 明教授(東医歯大・頭頸部心身医学)より,ガイドライン作りの第一歩として,歯科特有の疾患との位置づけのもとで「歯科心身症」をとらえ「診断」していくための試案が提示され,ガイドラインのあるべきスタンスを中心に,会場を交えたディスカッションが展開された.
シンポジウムでディスカッションされた歯科心身医学が抱える課題への取り組みと,ワークショップで試案が提示されたガイドラインの策定とが両輪となって有機的に動き出すことで,本学会が歯科界に大きなインパクトを与えうる可能性を感じた.

なお,次回大会(第24回日本歯科心身医学会総会・学術大会)は,「第1回日本心身医学5学会合同集会」として,2009年6月6日(土),7日(日),東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催される.