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第22 回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会開催される
 9月23日(金),24日(土),朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター(新潟県)にて標記学術大会が「摂食嚥下リハビリテーションの新たなる挑戦 ─ これからの20年を考える ─ 」をテーマに開催され,2日間で多職種にわたる6,000名超の参加者を集めた(大会長:井上 誠氏/新潟大).また本大会開催に先立ち,9月22日午後には第1回「日韓ジョイントセッション」が開催され,国内にとどまらずアジア諸国からも参加者を集めた.

 初日の会長講演では,井上 誠氏(同前)が「摂食嚥下リハビリテーションの新たなる挑戦に向けて」と題し登壇.本大会テーマを支えるコンセプトとして,「高次脳機能」「生理学」「咀嚼嚥下」「身体機能」「新たな治療選択」「未来」という6つのキーワードを挙げ,各キーワードとリンクするプログラム(講演)を紹介した.
 パネルディスカッション1「舌圧検査を使いこなそう!─臨床から研究まで─」では,津賀一弘氏 (広大),小野高裕氏 (新潟大)が座長兼演者として登壇.小野氏は,舌圧検査は嚥下障害の診断の精密化・効率化につながり,適応食品の開発およびリハの適用基準の決定に有用であるとまとめた.津賀氏は,PAP作製時に保険導入された舌圧検査の基本を解説.JMS舌圧測定器の仕組みや費用を具体的に提示し,まずは本検査の周知徹底,さらにPAP製作時以外にも活用されることが検査普及に必要だとした.続く,福岡達之氏(広島国際大学)は言語聴覚士の立場からの臨床活用について,佐々木 誠氏 (岩手大)は舌圧測定器をゲームコントローラーに応用したシリアスゲームの開発について紹介した.
 会長指定講演1「咀嚼を考える」では山田好秋氏(東歯大口腔科学研究センター)が登壇.「30回咀嚼」が提唱される所以を探りつつ,食物によって咀嚼回数は変わるため,回数にとらわれずなるべくゆっくりと味わって咀嚼すること,それにより脳がよく働くこと,咀嚼により頭がよくなることはないが,脳機能が高まること等を,聴衆者が興味をもち理解しやすいようやさしく簡明に解説した.
大会長・井上氏
 二日目のシンポジウム2「咀嚼を理解する」では,増田裕次氏(松歯大),池邉一典氏(阪大),古屋純一氏(医科歯科大),柴田斉子氏 (藤田保健衛生大)が登壇.増田氏は「咀嚼運動のメカニズム」をテーマに,咀嚼運動の特徴やpremotor neuron(前運動ニューロン)の働きを解説,自校で取り組む「カムカムメニュー」も紹介した.池邉氏は「歯と栄養と全身の健康についての疫学的検討」をテーマに,医学,歯学,心理学による学際研究・SONIC Study(健康長寿研究)を紹介し,咬合力が栄養,運動機能,認知機能に大きな影響を及ぼしている研究結果を提示した.古屋氏は「咀嚼と嚥下における義歯の役割」として,義歯は咀嚼だけでなく嚥下にも役立っていること,同一人物における義歯装着の有無による嚥下様相の違いをVFおよびVE動画で視覚的に提示し,元気なうちからよい義歯を準備しておくことの重要性を訴えた.柴田氏はこれまで考えられてきた摂食嚥下のモデルについて再整理した上で,自身が開発に携わったプロセスリード(大塚製薬)の臨床活用法を紹介した.
シンポジウム2の演者・(左から)柴田氏,古屋氏,池邉氏
 シンポジウム3「20年後の嚥下リハ─未来を予測し、今から我々ができること─」では,堀 一浩氏(新潟大),武原 格氏(化学療法研究所附属病院)を座長に,鈴木健嗣氏(筑波大),小林 宏氏(東京理科大学工学部機械工学科),西出 香氏(TNOオランダ応用科学研究機構),岡本隆嗣氏(西広島リハビリテーション病院)が登壇.鈴木氏は嚥下音を利用して嚥下機能を計測,モニターする頚部装着型機器(GOKURI,PIKARI)について,小林氏は直接観察できない嚥下運動を体現する嚥下ロボットを用いた嚥下機能シミュレーションの可能性と,その他のリハビリ分野で活用されているロボット(搾乳器,脱糞器,マッスルスーツ等)について,工学分野の参入例を紹介した.西出氏は3Dフードプリンターを用いた食の創作の可能性について,TNO研究チームと産学パートナーが取り組んできた知見と開発技術を紹介した.岡本氏は医師の立場で,「摂食嚥下障害者に対する今後の地域リハビリテーション」について解説した.
 その他,招待講演1~4では,本領域の第一線の研究者・臨床家である,Shaheen Hamdy氏(マンチェスター大),Callum Ross氏(シカゴ大),Pere Clave氏(バルセロナ自治大,ヨーロッパ嚥下障害学会会長),Rebecca Z. German氏(オハイオ医科大)といった海外演者が揃った.
会場内の様子
本学会に向け発行された書籍,ほか
多くの参加者で賑わった書籍ブース
 次回学術大会は,2017年9月15日(金)~16日(土),千葉県・幕張メッセにて開催予定(大会長:市村久美子氏/茨城県立医療大),第2回「日韓ジョイントセッション」は韓国にて開催される.また,日本,米国,ヨーロッパの嚥下学会が共同で設立するWorld Dysphagia Summitの,第1回大会は2017年9月21~22日,バルセロナにて開催予定である.

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