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東京歯科大学創立120周年記念学術講演会・第289回東京歯科大学学会開催される

 2010年5月8日(土),9日(日)の両日に渡って,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて標記講演会・学会が開催された.本会は,1890年に本邦初の歯科医学教育機関「高山歯科医学院」として開学した同校の120周年記念事業の一環として開催されたもので,学内外から3,000人以上が来場した.

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 1日目には,薬師寺 仁氏(同大学副学長)の開会挨拶にはじまり,口腔科学研究センターシンポジウム「口腔アンチエイジングによる生体制御」が開催された.本シンポジウムでは,阿部伸一氏(同大学口腔科学研究センター・解剖学講座),渋川義宏氏(同大学口腔科学研究センター・歯周病学講座),加藤靖浩氏(同大学口腔科学研究センター,慶應義塾大学医学部薬理学講座),石原和幸氏(同大学口腔科学研究センター・微生物学講座),松坂賢一氏(同大学口腔科学研究センター・臨床検査学研究室)らが登壇し,口腔筋機能,顎関節,口腔細菌叢等の口腔内の加齢変化とその制御の可能性について,最新の研究をもとに解説を加えた.つづいて行われれた基調講演では,「未来の歯科医療としての歯科再生療法」と題して,辻 孝氏(東京理科大学総合研究機構,東京歯科大学客員教授)が人為的な細胞誘導によって再構築された歯胚を利用した再生歯研究の現状が解説したほか,歯根膜を介して歯槽骨と連結し,知覚を感じうる再生歯の誘導に成功した事例を取り上げながら,人体への応用の可能性と今後の展望が語られた.

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 午後に行われた特別講演「iPS細胞を用いた再生医学・疾患研究」においては,岡野栄之氏(慶應義塾大学医学部生理学教室)が,皮膚の線維芽細胞等に遺伝子を導入することによって誘導される「iPS細胞」を用いた再生医学について講演.同分野の第一人者である京都大学・山中伸弥教授との共同研究の実績をもとに,再生医学が21世紀の医学の1つの潮流になること,様々な病気の疾患モデルを作成できることから,疾患のメカニズム解析や新薬開発等に有用であることなどが示唆された.また,国際シンポジウム「40年を迎えたインプラントの光と影」では,John A.Jansen氏(Radboud University Medical Center)が,インプラント治療後のインプラント表面と骨の結合について解説を加えたほか,Regina Mericske-Stern氏(University of Ben)が,無歯顎の高齢患者に対しては,インプラントを支台としたオーバーデンチャーがQOLを向上させるとしたうえで,口腔ケアを自立して行えなくなった高齢者に対するインプラントケアの体制を整えていく必要があると述べた.また,武田孝之氏(東京都・武田歯科医院)は,「長期経過例から考えるこれからのインプラント治療」と題し,加齢に伴う患者さんの全身状態・口腔内の変化を見据え,口腔内の変化を受け入れながらQOLの維持に努めることの重要性を示した.

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翌2日目午前中には,国内シンポジウム「食に関わる口腔機能」が開催された.最初に笹野高嗣氏(東北大学大学院 歯科研究科口腔診断学分野)が「味覚とくに「うま味」感覚の重要性について」と題して講演.高齢化の進展にともなって味覚障害,なかでも「うま味」に障害をきたす患者さんが増加していると述べ,基本4味(甘み,酸味,苦味,塩味)にならった診断法を紹介するとともに,唾液分泌を増加させることが治療のポイントであるとして,漢方薬の利用や,うま味刺激による治療の試みを紹介した.続いて,杉谷博士氏(日本大学生物資源科学部獣医学科)が「唾液線からの水とタンパク質の分泌の仕組み」をテーマに,唾液線を構成する腺房細胞がどのようなメカニズムで,神経からの伝達物質の刺激を受け,水およびタンパク質を分泌するかについて,最新の研究成果を交えて紹介した.川野 仁氏(東京都神経科学総合研究所発生形態研究部門)は「脳の摂食調節機構とその異常」のタイトルで,近年,メタボリックシンドロームとの関連で注目を集めている摂食機能を調節するホルモンについて講演.視床下部のニューロンに含まれ,摂食促進作用を有するMCHと摂食抑制作用を有するα-MSH,脂肪から分泌され,肥満とも関わりが深いとされるレプチンなどについて解説した.最後に澁川義幸氏(同大学生物学講座)が「食・テクスチャーの神経基盤:脳における口腔内体性感覚発現」と題して講演.大脳皮質の一次体性感覚野における,口腔内再現領域の分析から始まり,口腔内に幻覚症を有した症例では,二次体性感覚野が障害されていたことなどを示し,口腔内の感覚情報の大脳での処理過程を考察した.
 齲蝕,歯周病以外のさまざまな口腔内のトラブルを訴える患者が増加するなかで,その診断,治療の現状と将来展望を示す内容とあって,総合討論では会場から多くの質問が寄せられ,シンポジストとの間で盛んなディスカッションが行われた. 

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 午後からは,ウィーン少年合唱団のコンサートに続いて,市民公開フォーラム「本当に怖い歯周病! 歯周病が糖尿病を狙っている」が開催された.
 最初に,松岡健平氏(東京都済生会中央病院)が「歯周病と糖尿病の不思議な関係-シンフォニーになったメタボリックシンドローム」と題して講演.メタボリックシンドロームが「死の四重奏」とも呼ばれ,心筋梗塞の危険性を高めることは広く知られてきたが,近年,それに加え,歯周病を初めてとして,睡眠時無呼吸症候群,脂肪肝などもメタボリックシンドロームと関連することが明らかになりつつあることを紹介した.続いて,西村英紀氏(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)が「歯周病はお口の病気」をテーマに,歯周病が糖尿病の合併症であるのみならず,歯周病が糖尿病の進行を早める恐れがあることが明らかになったと述べ,歯のみならず全身の健康のための歯周病予防について,その具体的な方法を解説した.コメンテーターのデヴィ・スカルノ夫人は娘が受けた根管治療の話や,親交のあった佐渡ヶ嶽親方が患っていた糖尿病の話を交えながら,糖尿病,歯周病について正しい知識を身につけることの重要性などを語った.
 2日間にわたり多彩なプログラムが展開された本講演会は,大いなる盛り上がりをみせたまま閉会した.

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