はじめに
名取俊二
だいぶ前のことであるが,ドイツの免疫学者Jan Kleinの書いた“免疫学におけるヒト中心的排他主義”という論文が岩波書店の『科学』に掲載されたことがあった.たしかに免疫学はヒトの免疫を理解するために発展した学問であるが,これまでの研究があまりにもヒト中心的になりすぎたのではないかという反省も込めて,無脊椎動物の生体防御システムの研究の重要性を指摘した内容だったように記憶している.免疫学の歴史がどこから始まったかについてはいろいろな意見はあるだろうが,おおかたは18世紀後半に活躍したイギリスの医師Edward Jennerをもって嚆矢とするようである.Jennerが乳絞りの女から,一度牛痘に感染して治癒すると天然痘に感染することはないという経験則を聞いて,種痘を発明した話はあまりにも有名である.
19世紀後半になって,Louis Pasteurによりワクチンの概念が確立された.Pasteurはニワトリコレラの病原菌(Pasteurella multocida)を発見し,この菌の感染防御のためのワクチンを発明したが,このワクチンの発明には2つの偶然が重なったといわれる.当時のフランスは,研究者といえども夏休みをとるのが当たり前で,Pasteurは菌の培養液を実験室に放置したまま休暇に入った.休暇明けに,この菌液をニワトリに注射したところ,コレラは発病するものの病状はきわめて軽く,すぐに治癒してしまった.たまたま菌を放置したためにattenuation(弱毒化)という状態が出現したわけである.そこで,Pasteurは新鮮な菌を使って感染実験をしようとしたが,これもまた,たまたま新しく購入したニワトリの数が足りなかった.そこで,一度病気が治癒したニワトリも合わせて使用し,一度病気が治癒したニワトリのみが病原菌に対する抵抗性を獲得していることを発見した.Pasteurは弱毒化した菌の懸濁液をvaccineとよび,ワクチン接種によって感染が防御できることを示した.
細菌の感染により病気が起こるのは細菌のつくる毒素(toxin)に起因することをはじめて示したのは,Pasuteurの弟子のEmile RouxとAlexandre Yersinによるジフテリア毒素の発見であった.そして,この発見はEmil von Behringと北里柴三郎による血清中の抗毒素の発見へとつながり,その本体はやがて,抗体という概念で統一されるようになった.抗体が蛋白質であることが明確に証明されたのは1926年のことである.これで,体液性の蛋白質である抗体が免疫応答に関与することが明らかになった.
一方,生体防御反応に細胞が関与することをはじめて示唆したのはロシアの動物学者Elie Metchnikoffである.ヒトデの幼生のなかを動きまわるマクロファージを発見し,この細胞が異物を捕食する働きがあるのではないかと考えた.そして,この細胞が幼生の皮下に刺したバラの棘のまわりに集まるのをみて自分の考えが正しかったことを確信した.これは無脊椎動物の話であるが,その後Almorth WrightとStewart Douglasにより,哺乳動物の末梢血の白血球が細菌を捕食すること,抗体存在下にこの捕食作用が有意に増強されることが定量的に示され,免疫応答における細胞の関与が明確になった.
このようにして1950年代までに,哺乳動物の免疫系には,(1)主として抗体によって担われる体液性免疫と,(2)主としてマクロファージとリンパ球によって担われる細胞性免疫という2つのシステムがあることが一般的に認められるようになった.20世紀後半の50年で抗体産生の仕組みが解明され,それに携わるリンパ球の種類や機能,その機能を調節するサイトカインがつぎつぎと発見された.そして,細部については未解決の部分が多々あるものの,免疫系の全体像がほぼ明らかになった.そういう意味では現在の免疫学は成熟期に入ったといってよいであろう.これは哺乳動物の免疫の話である.
ところで,地球上に棲息する動物種の数はおよそ120万種といわれるが,そのなかで脊椎動物の占める割合はたったの3.6%である.抗体をつくることができるのは脊椎動物に限られるので,動物種の95%以上が抗体以外の生体防御機構を備えていることになる.Jan Kleinの批判はまさにこの点を指摘したものである.近年,innate immunity(自然免疫)という言葉をよく聞くようになった.これはadaptive immunity(適応免疫)に対する対語で,すべての生物に備わっている感染防御手段のことである.抗体産生能のない無脊椎動物の生体防御機構はすべてinnate immunityとして理解される.ところが最近,innate immunityのなかで働く異物認識のレセプター(Toll様レセプター)からのシグ iルがさまざまのサイトカインの産生を促すことから,innate immunityとadaptive immunityが密接にリンクしていることが明らかになりつつある.
この連載では,そういう状況を踏まえて,もう一度動物界における免疫系の進化を整理してみることにした.Edward Jenner以来延々と続いてきた哺乳動物の免疫系の最先端が語られることはいうまでもないが,鳥類や魚類,原索動物や節足動物の免疫系についても取り上げることとした.一般に免疫というと抗体の特異性や免疫記憶を伴う哺乳動物の免疫のことであるが,この連載では無脊椎動物も入るので,免疫を感染に抵抗する能力というふうに広い意味に解釈していただきたいと思う.また,執筆者の都合もあるので,連載の順序にはかならずしも統一がないことをあらかじめお断りしておきたい.
名取俊二
だいぶ前のことであるが,ドイツの免疫学者Jan Kleinの書いた“免疫学におけるヒト中心的排他主義”という論文が岩波書店の『科学』に掲載されたことがあった.たしかに免疫学はヒトの免疫を理解するために発展した学問であるが,これまでの研究があまりにもヒト中心的になりすぎたのではないかという反省も込めて,無脊椎動物の生体防御システムの研究の重要性を指摘した内容だったように記憶している.免疫学の歴史がどこから始まったかについてはいろいろな意見はあるだろうが,おおかたは18世紀後半に活躍したイギリスの医師Edward Jennerをもって嚆矢とするようである.Jennerが乳絞りの女から,一度牛痘に感染して治癒すると天然痘に感染することはないという経験則を聞いて,種痘を発明した話はあまりにも有名である.
19世紀後半になって,Louis Pasteurによりワクチンの概念が確立された.Pasteurはニワトリコレラの病原菌(Pasteurella multocida)を発見し,この菌の感染防御のためのワクチンを発明したが,このワクチンの発明には2つの偶然が重なったといわれる.当時のフランスは,研究者といえども夏休みをとるのが当たり前で,Pasteurは菌の培養液を実験室に放置したまま休暇に入った.休暇明けに,この菌液をニワトリに注射したところ,コレラは発病するものの病状はきわめて軽く,すぐに治癒してしまった.たまたま菌を放置したためにattenuation(弱毒化)という状態が出現したわけである.そこで,Pasteurは新鮮な菌を使って感染実験をしようとしたが,これもまた,たまたま新しく購入したニワトリの数が足りなかった.そこで,一度病気が治癒したニワトリも合わせて使用し,一度病気が治癒したニワトリのみが病原菌に対する抵抗性を獲得していることを発見した.Pasteurは弱毒化した菌の懸濁液をvaccineとよび,ワクチン接種によって感染が防御できることを示した.
細菌の感染により病気が起こるのは細菌のつくる毒素(toxin)に起因することをはじめて示したのは,Pasuteurの弟子のEmile RouxとAlexandre Yersinによるジフテリア毒素の発見であった.そして,この発見はEmil von Behringと北里柴三郎による血清中の抗毒素の発見へとつながり,その本体はやがて,抗体という概念で統一されるようになった.抗体が蛋白質であることが明確に証明されたのは1926年のことである.これで,体液性の蛋白質である抗体が免疫応答に関与することが明らかになった.
一方,生体防御反応に細胞が関与することをはじめて示唆したのはロシアの動物学者Elie Metchnikoffである.ヒトデの幼生のなかを動きまわるマクロファージを発見し,この細胞が異物を捕食する働きがあるのではないかと考えた.そして,この細胞が幼生の皮下に刺したバラの棘のまわりに集まるのをみて自分の考えが正しかったことを確信した.これは無脊椎動物の話であるが,その後Almorth WrightとStewart Douglasにより,哺乳動物の末梢血の白血球が細菌を捕食すること,抗体存在下にこの捕食作用が有意に増強されることが定量的に示され,免疫応答における細胞の関与が明確になった.
このようにして1950年代までに,哺乳動物の免疫系には,(1)主として抗体によって担われる体液性免疫と,(2)主としてマクロファージとリンパ球によって担われる細胞性免疫という2つのシステムがあることが一般的に認められるようになった.20世紀後半の50年で抗体産生の仕組みが解明され,それに携わるリンパ球の種類や機能,その機能を調節するサイトカインがつぎつぎと発見された.そして,細部については未解決の部分が多々あるものの,免疫系の全体像がほぼ明らかになった.そういう意味では現在の免疫学は成熟期に入ったといってよいであろう.これは哺乳動物の免疫の話である.
ところで,地球上に棲息する動物種の数はおよそ120万種といわれるが,そのなかで脊椎動物の占める割合はたったの3.6%である.抗体をつくることができるのは脊椎動物に限られるので,動物種の95%以上が抗体以外の生体防御機構を備えていることになる.Jan Kleinの批判はまさにこの点を指摘したものである.近年,innate immunity(自然免疫)という言葉をよく聞くようになった.これはadaptive immunity(適応免疫)に対する対語で,すべての生物に備わっている感染防御手段のことである.抗体産生能のない無脊椎動物の生体防御機構はすべてinnate immunityとして理解される.ところが最近,innate immunityのなかで働く異物認識のレセプター(Toll様レセプター)からのシグ iルがさまざまのサイトカインの産生を促すことから,innate immunityとadaptive immunityが密接にリンクしていることが明らかになりつつある.
この連載では,そういう状況を踏まえて,もう一度動物界における免疫系の進化を整理してみることにした.Edward Jenner以来延々と続いてきた哺乳動物の免疫系の最先端が語られることはいうまでもないが,鳥類や魚類,原索動物や節足動物の免疫系についても取り上げることとした.一般に免疫というと抗体の特異性や免疫記憶を伴う哺乳動物の免疫のことであるが,この連載では無脊椎動物も入るので,免疫を感染に抵抗する能力というふうに広い意味に解釈していただきたいと思う.また,執筆者の都合もあるので,連載の順序にはかならずしも統一がないことをあらかじめお断りしておきたい.
はじめに 名取俊二
Introduction
1.主要組織適合遺伝子複合体のゲノム構造の謎を解く―ゲノムが語る自己非自己識別システムの歴史 笠原正典
Genome organization of the major histocompatibility complex:What does it tell us about the origin of the self-nonself discrimination system?
■ヒトゲノムにはHLAとパラロガスな遺伝領域が,すくなくとも3カ所存在する
■MHC領域の形成に関与したブロック重複はいつ起こったのか
■ブロック重複と適応免疫系の出現
■MHC領域の形成に寄与したブロック重複とゲノム重複の関係
■MHC領域はどのようにして形成されたのか
2.マクロファージの発生と分化 内藤 眞・長谷川剛
Development and differentiation of macrophages
■マクロファージの個体発生
■成熟個体におけるマクロファージの分化
3.造血プロセスに現れるT,Bリンパ球進化の足跡 桂 義元・河本 宏
Phylogenic process of T and B cell development expressed in the hematopoietic process
■T,B細胞とはどのような仕事を任されている細胞か
■T,B系列はそれぞれM系列を伴って分化する
■TCRとIgの由来
■T,B細胞への進化をどう考えるか
4.B細胞の系統発生 浴野成生
Phylogeny of B cell in an immune system
■免疫グロブリンの系統発生
■B細胞の多様性獲得機構の系統発生
■リンパ組織とB細胞分化の場の系統発生
■B細胞の分化・多様化
5.免疫学的側面からみた樹状細胞の系統発生的進化 稲葉カヨ
Immunological aspect of dendritic cell development in phylogenetic evolution
■樹状細胞同定の指標
■樹状細胞の分布と特性
■系統発生からみた樹状細胞
6.補体は生体防御の中心であった―補体レクチン経路の進化 藤田禎三・遠藤雄一
Evolution of the lectin complement pathway
■免疫系における補体の役割
■補体活性化の認識分子
■認識分子に結合するセリンプロテアーゼ
■MASPファミリーの分子進化
■補体系の起源
7.NK細胞の系統発生―“missing self”認識の起源を求めて 反町典子
Evolution of NK cells
■NK細胞とは?―その性状と機能
■NK細胞の系統発生
■NK細胞の進化でNKレセプターとMHC classIはどう関係してきたか
8.免疫系細胞表面のレクチンの進化と多様性 入村達郎
Evolution and diversity of lectins expressed on cell surfaces in the immune system
■はじめに―糖鎖とレクチンは併行して進化した
■C型レクチン
■I型レクチン
■S型レクチンとT細胞の活性化
■R型レクチン
9.LPSおよびLPSアゴニストの認識・識別にかかわる分子 川崎清史・西島正弘
The molecules that are involved in LPS and LPS agonist discrimination
■リポ多糖類(LPS)
■生体のLPS認識応答機構
■LPSアゴニスト―タキソール
■タキソールのLPS様作用の認識応答にかかわる分子,TLR4とMD2
■タキソールのLPS様作用感受性の種差
■タキソール識別におけるMD2の機能
■タキソール識別にかかわるMD2のアミノ酸
10.自然免疫にかかわるレセプター 佐藤慎太郎・審良静男
Receptors for innate immunity
■哺乳類におけるTLRファミリー
■TLRを介したシグナル伝達経路
■TLRファミリーの機能
■アダプター分子MyD88
11.鳥類の免疫系―ニワトリのB細胞とT細胞の多様性の形成メカニズム 高橋富久・茂呂 周
Avian immune system
■B細胞の分化とFabricius嚢
■ニワトリの抗体遺伝子の構造
■抗体遺伝子の多様性の形成
■ニワトリ分泌型IgAとJ鎖
■T細胞の分化と胸腺
■ニワトリのTCR
■ニワトリTCR遺伝子と再編成
12.魚類の生体防御系 中村弘明・菊池慎一
Defense system of fish
■非特異的防御
■特異的防御
13.免疫系進化におけるV(D)J DNA組換え機構の出現 黒澤良和
Appearance of V(D jJ recombination system in the immune system during evolution
■円口類には抗体は存在しない
■軟骨魚のMHC classI分子はヒトに匹敵する高い多型性を示す
■軟骨魚に免疫系の主役分子はすべて存在する
■Rag1とRag2分子によるDNA再編成機構
■免疫系におけるランダム配列の意味
■免疫系誕生のシナリオ
14.円口類の生体防御系 藤井 保
Host defense system in the cyclostomes
■原始的補体系
■三本鎖構造のヤツメウナギC3
■変則的多鎖構造のメクラウナギC3(HC3)
■補体様蛋白質はHC3の分解産物
■ヤツメウナギB因子と同MASPの原始性
■生体防御を担う細胞群
■今後の課題
15.原索動物(ホヤ)の生体防御機構―ヒトの自然免疫の起源を探る 安住 薫・横沢英良
The host defense mechanisms of ascidians
■マボヤの生体防御機構の全体像
■マボヤ血球 フ食作用とオプソニン
■マボヤ血球のシグナル伝達系
■21世紀のホヤの免疫学
16.昆虫免疫―ショウジョウバエからみえる自然免疫の普遍性と異物多様性への対応 倉田祥一朗
Insect immunity
■昆虫の生体防御機構―細胞性反応(cellular response)と体液性反応(humoral response)
■抗菌ペプチドの発現誘導機構
■パターン認識分子
17.カブトガニC反応性蛋白質の構造と機能の多様性 川畑俊一郎
Structural and functional diversities of C-reactive proteins in horseshoe crabs
■C反応性蛋白質
■ヒトCRP
■カブトガニCRPの機能多様性
■カブトガニCRPの構造多様性
18.軟体動物の生体防御機構 山崎正利・飯島亮介
Host defense system of Mollusca
■軟体動物の細胞性防御機構
■アメフラシ類の細胞傷害蛋白質
■細胞傷害蛋白質の特徴
■アメフラシ類の抗細菌・抗真菌因子
19.甲殻類の生体防御機構におけるあらたな展開 高橋計介・森 勝義
Recent developments in the host defense mechanisms in crustaceans
■新規の抗菌ペプチドpenaeidin
■penaeidinの構造
■penaeidinの生体内での局在
■penaeidinの抗菌活性
20.両生類の生体防御系―アフリカツメガエルが教えてくれたこと 栃内 新
Evolution of amphibian defense system
■両生類とはどのような生きものか
■両生類の獲得したもの
■両生類の生体防御システム
■発生学から免疫学へ
■自己寛容性の獲得
■成体抗原に対する寛容性誘導
■変態後の幼生抗原に対する不寛容
■胸腺の発生と造血幹細胞
■造血幹細胞に由来しないマクロファージ
■サイドメモ
ゲノムパラロジーとパラロガス領域
マクロファージの分化の多様性
MLPアッセイ
生体防御レクチン
ウイルスとNK細胞
抗原提示細胞とPAMPs
遺伝子変換(gene conversion)
魚類の心臓と生体防御
円口類(無顎動物)
自然免疫(innate immunity)
急性期蛋白質(acute-phase protein)
EST解析による免疫関連遺伝子の検索
細胞追跡実験と細胞マーカ
Introduction
1.主要組織適合遺伝子複合体のゲノム構造の謎を解く―ゲノムが語る自己非自己識別システムの歴史 笠原正典
Genome organization of the major histocompatibility complex:What does it tell us about the origin of the self-nonself discrimination system?
■ヒトゲノムにはHLAとパラロガスな遺伝領域が,すくなくとも3カ所存在する
■MHC領域の形成に関与したブロック重複はいつ起こったのか
■ブロック重複と適応免疫系の出現
■MHC領域の形成に寄与したブロック重複とゲノム重複の関係
■MHC領域はどのようにして形成されたのか
2.マクロファージの発生と分化 内藤 眞・長谷川剛
Development and differentiation of macrophages
■マクロファージの個体発生
■成熟個体におけるマクロファージの分化
3.造血プロセスに現れるT,Bリンパ球進化の足跡 桂 義元・河本 宏
Phylogenic process of T and B cell development expressed in the hematopoietic process
■T,B細胞とはどのような仕事を任されている細胞か
■T,B系列はそれぞれM系列を伴って分化する
■TCRとIgの由来
■T,B細胞への進化をどう考えるか
4.B細胞の系統発生 浴野成生
Phylogeny of B cell in an immune system
■免疫グロブリンの系統発生
■B細胞の多様性獲得機構の系統発生
■リンパ組織とB細胞分化の場の系統発生
■B細胞の分化・多様化
5.免疫学的側面からみた樹状細胞の系統発生的進化 稲葉カヨ
Immunological aspect of dendritic cell development in phylogenetic evolution
■樹状細胞同定の指標
■樹状細胞の分布と特性
■系統発生からみた樹状細胞
6.補体は生体防御の中心であった―補体レクチン経路の進化 藤田禎三・遠藤雄一
Evolution of the lectin complement pathway
■免疫系における補体の役割
■補体活性化の認識分子
■認識分子に結合するセリンプロテアーゼ
■MASPファミリーの分子進化
■補体系の起源
7.NK細胞の系統発生―“missing self”認識の起源を求めて 反町典子
Evolution of NK cells
■NK細胞とは?―その性状と機能
■NK細胞の系統発生
■NK細胞の進化でNKレセプターとMHC classIはどう関係してきたか
8.免疫系細胞表面のレクチンの進化と多様性 入村達郎
Evolution and diversity of lectins expressed on cell surfaces in the immune system
■はじめに―糖鎖とレクチンは併行して進化した
■C型レクチン
■I型レクチン
■S型レクチンとT細胞の活性化
■R型レクチン
9.LPSおよびLPSアゴニストの認識・識別にかかわる分子 川崎清史・西島正弘
The molecules that are involved in LPS and LPS agonist discrimination
■リポ多糖類(LPS)
■生体のLPS認識応答機構
■LPSアゴニスト―タキソール
■タキソールのLPS様作用の認識応答にかかわる分子,TLR4とMD2
■タキソールのLPS様作用感受性の種差
■タキソール識別におけるMD2の機能
■タキソール識別にかかわるMD2のアミノ酸
10.自然免疫にかかわるレセプター 佐藤慎太郎・審良静男
Receptors for innate immunity
■哺乳類におけるTLRファミリー
■TLRを介したシグナル伝達経路
■TLRファミリーの機能
■アダプター分子MyD88
11.鳥類の免疫系―ニワトリのB細胞とT細胞の多様性の形成メカニズム 高橋富久・茂呂 周
Avian immune system
■B細胞の分化とFabricius嚢
■ニワトリの抗体遺伝子の構造
■抗体遺伝子の多様性の形成
■ニワトリ分泌型IgAとJ鎖
■T細胞の分化と胸腺
■ニワトリのTCR
■ニワトリTCR遺伝子と再編成
12.魚類の生体防御系 中村弘明・菊池慎一
Defense system of fish
■非特異的防御
■特異的防御
13.免疫系進化におけるV(D)J DNA組換え機構の出現 黒澤良和
Appearance of V(D jJ recombination system in the immune system during evolution
■円口類には抗体は存在しない
■軟骨魚のMHC classI分子はヒトに匹敵する高い多型性を示す
■軟骨魚に免疫系の主役分子はすべて存在する
■Rag1とRag2分子によるDNA再編成機構
■免疫系におけるランダム配列の意味
■免疫系誕生のシナリオ
14.円口類の生体防御系 藤井 保
Host defense system in the cyclostomes
■原始的補体系
■三本鎖構造のヤツメウナギC3
■変則的多鎖構造のメクラウナギC3(HC3)
■補体様蛋白質はHC3の分解産物
■ヤツメウナギB因子と同MASPの原始性
■生体防御を担う細胞群
■今後の課題
15.原索動物(ホヤ)の生体防御機構―ヒトの自然免疫の起源を探る 安住 薫・横沢英良
The host defense mechanisms of ascidians
■マボヤの生体防御機構の全体像
■マボヤ血球 フ食作用とオプソニン
■マボヤ血球のシグナル伝達系
■21世紀のホヤの免疫学
16.昆虫免疫―ショウジョウバエからみえる自然免疫の普遍性と異物多様性への対応 倉田祥一朗
Insect immunity
■昆虫の生体防御機構―細胞性反応(cellular response)と体液性反応(humoral response)
■抗菌ペプチドの発現誘導機構
■パターン認識分子
17.カブトガニC反応性蛋白質の構造と機能の多様性 川畑俊一郎
Structural and functional diversities of C-reactive proteins in horseshoe crabs
■C反応性蛋白質
■ヒトCRP
■カブトガニCRPの機能多様性
■カブトガニCRPの構造多様性
18.軟体動物の生体防御機構 山崎正利・飯島亮介
Host defense system of Mollusca
■軟体動物の細胞性防御機構
■アメフラシ類の細胞傷害蛋白質
■細胞傷害蛋白質の特徴
■アメフラシ類の抗細菌・抗真菌因子
19.甲殻類の生体防御機構におけるあらたな展開 高橋計介・森 勝義
Recent developments in the host defense mechanisms in crustaceans
■新規の抗菌ペプチドpenaeidin
■penaeidinの構造
■penaeidinの生体内での局在
■penaeidinの抗菌活性
20.両生類の生体防御系―アフリカツメガエルが教えてくれたこと 栃内 新
Evolution of amphibian defense system
■両生類とはどのような生きものか
■両生類の獲得したもの
■両生類の生体防御システム
■発生学から免疫学へ
■自己寛容性の獲得
■成体抗原に対する寛容性誘導
■変態後の幼生抗原に対する不寛容
■胸腺の発生と造血幹細胞
■造血幹細胞に由来しないマクロファージ
■サイドメモ
ゲノムパラロジーとパラロガス領域
マクロファージの分化の多様性
MLPアッセイ
生体防御レクチン
ウイルスとNK細胞
抗原提示細胞とPAMPs
遺伝子変換(gene conversion)
魚類の心臓と生体防御
円口類(無顎動物)
自然免疫(innate immunity)
急性期蛋白質(acute-phase protein)
EST解析による免疫関連遺伝子の検索
細胞追跡実験と細胞マーカ