やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序にかえて
 人口の高齢化とともに,日本における糖尿病の患者数は増加の一途をたどっています. 平成25年12月に厚生労働省が公表した平成23年国民健康・栄養調査によると,糖尿病の患者数は推計で950万人,糖尿病の患者と糖尿病予備群の合計は2,050万人にも及んでいます.しかも,高齢の糖尿病患者は著しく増加しており,60歳以上の男性の約25%,女性でも約14%が医療機関で糖尿病ないしは糖尿病の予備群であると指摘されたことがあると報告されています.私たちの施設でも,外来に通院している2型糖尿病患者の平均年齢は65歳を超え,80歳代の患者が全体の11%を占めています.
 糖尿病患者の増加や高齢化などを背景として,糖尿病診療を担当する医師・医療スタッフの仕事は,単なる血糖値の管理にとどまるのではなく,社会的に多くの問題を抱え,多臓器の疾患を合併・併発した糖尿病患者をきめ細かく診療し,包括的なケアを行うことに重点が置かれるようになってきました.
 私たちは診療の現場で,多くの診療科からさまざまなコンサルテーションを受ける毎日を送っています.手術を控えた糖尿病患者の周術期の管理,静脈栄養,経腸栄養を行っている患者の血糖コントロール,腎機能障害,肝機能障害を伴った患者の代謝管理,感染症への対応,精神的な問題への対応,小児期,青壮年期,老年期などのライフステージに応じたマネジメントなど…バラエティに富んだコンサルテーションの内容に対して,迅速で的確な対応を行うことが求められています.
 今回の別冊プラクティスでは,他科からのコンサルテーションにいかにして効果的な対応を行うかについて,森 保道先生を中心とした『プラクティス』の全編集委員が,文字どおり「総力を挙げて」考え抜いたものを読者の皆様に提供することになりました.プラクティカルで読みやすいコンサルテーションブックを作成しようと考え,サイズも従来のB5判から皆様により使いやすいであろうA4判変型に変更し,ひとまわり大きくしてみました.
 読者の皆様が,他科からコンサルテーションを受けられたときに,本書を手に取っていただき,一つひとつの論文のエッセンスをくみ取って,今まで以上にスムーズな対応を行っていただくことができれば,編集に携わったものとしてこれ以上の喜びはありません. 2014年3月
 NTT東日本札幌病院 糖尿病内分泌内科
 吉岡成人
 序にかえて(吉岡成人)

I 総論
はじめに〜他科からのコンサルテーションを受けてまずすること
 (石黒喜美子・森 保道)
周術期のコンサルテーション
 (西村明洋・安田大二郎・長澤 薫・森 保道)
糖尿病患者の末梢静脈栄養
 (長澤 薫)
糖尿病患者の中心静脈栄養
 (岩本真彦・植木浩二郎)
薬剤による耐糖能異常
 (石黒喜美子)
低血糖の原因精査
 (及川洋一・島田 朗)
II 各論
肝疾患(肝炎,NASH/NAFLD,肝硬変)
 (瀬尾千顕・西村理明)
膵疾患(膵炎,膵がん,自己免疫性膵炎)
 (藤山 隆・五十嵐久人・伊藤鉄英・蝸チ一)
腎疾患(腎炎のパルス療法,腎移植の周術期管理)
 (渡部ちづる)
慢性腎不全,透析(血液透析,腹膜透析)
 (馬場園哲也)
内分泌疾患(先端巨大症,クッシング症候群,原発性アルドステロン症)
 (竹重恵子・関戸貴志・駒津光久)
血液疾患
 (江本政広)
重症感染症
 (加賀英義・田村好史)
消化管疾患,胃瘻,腸瘻
 (福岡勇樹・成田琢磨)
妊娠糖尿病,糖尿病合併妊娠
 (黒瀬 健)
泌尿器科
 (松久宗英)
精神科
 (峯山智佳・野田光彦)
小児の糖尿病
 (佐藤詩子)
高齢者の糖尿病
 (横田美紀・吉岡成人)
終末期・緩和期の糖尿病ケア
 (三浦義孝)

 あとがき(森 保道)