やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 日本法医学会が異状死ガイドラインを提示したのは1994年であったが,その3年後である1997年に医歯薬出版株式会社から,前書である「事例による死亡診断書・死体検案書記載のてびき」(取健彦,佐藤喜宣,大島徹 著)が出版され,それから既に23年が経過している.この間に都立広尾病院事件(1999年)や福島県立大野病院事件(2004年)が発生し,診療関連死に関連して異状死に関する様々な議論がされ,異状死届出のあるべき姿については混乱が生じていたと思われる.そうした混乱の中2019年に厚生労働省から「医師による異状死体の届出の徹底について」と題した通達が発せられ,混乱もひと段落ついたように感じられる.そこで,本書では,改めて,異状死届出についての留意点を纏めつつ,前書の特徴であった,死因の種類別ごとにいくつかの代表ケースを載せ,各例を見開きの状態に構成し,理解しやすいように各事例における注意点,問題点を見開きの右側に掲載するという構成を踏襲した手引書を作成することとした.本書の作成にあたっては,東京大学法医学教室と千葉大学法医学教育研究センター,国際医療福祉大学法医学教室の医師らが熱い議論を重ねて編集されたものであり,関係した皆様には心からの感謝を申し上げたい.
 本書が,一般臨床医のみならず,医学部・歯学部学生にとって,死亡診断書・死体検案書の作成の手引きとして活用されることを祈るとともに,司法関係者や法曹界の方々にとっても参考として活用いただければ幸いである.
 2020年2月
 著者を代表して 岩瀬博太郎
 序(岩瀬博太郎)
第I編 死亡診断書・死体検案書の基礎知識
 死亡診断書・死体検案書の役割
 死亡診断書と死体検案書の使い分け
 異状死届出についての考え方
 診療関連死についての異状死届出の留意点
 死亡診断書・死体検案書の「変更」
 死亡診断書・死体検案書の作成法
 column 1 原死因はどのように決まるの?
 column 2 世界の死亡証明
第II編 事例でみる記入例とその解説
A 死因の種類からみる死亡診断書・死体検案書
 A-1 病死及び自然死
  (1)急性心筋梗塞(病院内)
  (2)誤嚥性肺炎(介護施設内)
  (3)胃癌(自宅療養中)
  (4)くも膜下出血(自宅での突然死)
 A-2 交通事故
  (1)横断中に乗用車が衝突し,轢過
  (2)歩行者が自動車に接触(事故7 日後の死亡)
  (3)漁船が遊覧船と衝突
 A-3 転倒・転落
  ・屋根からの転落
 A-4 溺水
  ・海水浴中の溺死
 A-5 煙・火災・火焔
  (1)民家火災
  (2)一酸化炭素中毒
 A-6 窒息
  ・餅の誤嚥による窒息
 A-7 中毒
  ・急性アルコール中毒
 A-8 その他の不慮の外因死
  (1)熱中症
  (2)地震災害
 A-9 自殺
  ・縊死
 A-10 他殺
  (1)夫が妻を殺害
  (2)子どもの虐待死
 A-11 その他及び不詳の外因
  (1)結束バンドで自絞死?
  (2)自殺か事故か不明の中毒
 A-12 不詳の死
  (1)山林で発見された高度腐敗死体
  (2)独居男性の死
  (3)駐車中の車両内での死亡
B テーマから考える死亡診断書・死体検案書
 B-1 子どもの死
  ・乳児の突然死
 B-2 妊産婦の死
  ・分娩中の失血死
 B-3 死後画像からみる
  (1)死後CTが有効な事例
  (2)死後CTが危険な事例-1
  (3)死後CTが危険な事例-2
 column 3 法医放射線科医のつぶやき 前編
 column 4 法医放射線科医のつぶやき 後編
 B-4 労働関連死
  ・業務中の転落死
 B-5 災害やテロ
  (1)航空機事故
  (2)連続爆破事件
 B-6 薬物の影響下の死
  ・覚醒剤常用者のくも膜下出血
 B-7 浴槽内での死亡
  ・風呂桶内の溺没

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