第2版 はじめに
漢方薬が日常の診療に定着した現在,中医学も市民権を得つつある.中医学はとりつきは面倒であっても,根気よく学習すれば必ずそれだけの成果が得られるために,次第に受け入れられ滲透したと思われる.
現在の中国では,教科書的なレベルのものはもちろん,各種の専門分野の深いレベルに至るまで,さまざまな中医学関係の書籍が次々と刊行されて,新たな発展の趨勢を示すとともに,古典の復刻も漸増しており,中国の厖大な歴史と底力をみせつけられる感がある.
中医学は,自然界と調和しながら生命活動を営む存在として人体をとらえ,生理的・病理的な現像を注意深く観察したうえで,自然界の現象になぞらえて意味づけし抽象するとともに,自然界の事物を用いて治療を行い,抽象した内容ならびに治療の適否などを判断・評価・修正しながら次第に認識を深めてきた.そのために,「生きもの」としての人体を総合的・全体的にうまくとらえ,自然界の事物である金石・草根木皮を用いた,自然で無理のない「治療医学」の体系を形成している.医学上のさまざまな認識は,書籍として後世に残され,少なくとも2000年の歴史的経過を経て,歴代のさまざまな医家が批判・訂正・賛同・強調を行いながら評価し,現在に至っている.それゆえ,現代の場においても十分評価できる内容であることは疑いない.ただし,漏れなくすべてを継承できているわけではなく,価値ある認識が埋もれている可能性が大いにあり,新たな実践による新たな認識を得るとともに,「温故知新」による発展を心がけるべきであり,より高度の「中医学」の完成をめざす努力がはらわれることを期待している.
西洋医学は分析的で細分化した物質面での実証を重んじ,個々の臓器・器官・組織のふるまいをもとに人間の全体を機械論的にとらえ,個別よりも普遍性に重点をおいている.それゆえ,外科や救急医学のように人間を機械として扱う面では高度の成果をあげてはいるものの,現実に悩める「生きもの」としての個人にとっては,大きな救いになるとは言いがたい.診断医学としては優れているが,「治療医学」の体系としては非常に幼稚であり,純粋な結晶といった自然界には存在しない薬物を使用して副作用を不可避的にかかえたり,いつまでたっても当面手に入れた「手段」に依存するだけの行きあたりばったりの医術しか行えていない.今後は巨大な砂上の楼閣にならないような方向性をみつけるべきであり,その大きな助けとして「中医学」が存在すると考えている.
本書は第1版と同様に,中医学という医学大系を,できるだけ本来の面目を保ちながら整理し,西洋医学的な解釈を加えて,医師・薬剤師のための入門書とすることを意図している.中医学と西洋医学では切り口が全く異なるので,西洋医学的な病理の解釈や病名には不備が多いと考えられ,第2版編集にあたって十分配慮を加えたが,その面ではご容赦願いたい.中医学の観点に主体をおいて,医学の認識を変更し修正していく方が,今後の実りが大きくなると考えられる.できれば,本書をきっかけに中医学に本格的に参入されることを望みたい.
神戸中医学研究会は既に20年を越える歴史をもち,この間真面目に研鎖を積んできたつもりであり,本書が医学の発展に寄与できるように念じている.ただし,なお認識の誤りが存在する可能性は否定できないので,多方面からご批判をいただければ幸いである.
1999年 神戸中医学研究会
漢方薬が日常の診療に定着した現在,中医学も市民権を得つつある.中医学はとりつきは面倒であっても,根気よく学習すれば必ずそれだけの成果が得られるために,次第に受け入れられ滲透したと思われる.
現在の中国では,教科書的なレベルのものはもちろん,各種の専門分野の深いレベルに至るまで,さまざまな中医学関係の書籍が次々と刊行されて,新たな発展の趨勢を示すとともに,古典の復刻も漸増しており,中国の厖大な歴史と底力をみせつけられる感がある.
中医学は,自然界と調和しながら生命活動を営む存在として人体をとらえ,生理的・病理的な現像を注意深く観察したうえで,自然界の現象になぞらえて意味づけし抽象するとともに,自然界の事物を用いて治療を行い,抽象した内容ならびに治療の適否などを判断・評価・修正しながら次第に認識を深めてきた.そのために,「生きもの」としての人体を総合的・全体的にうまくとらえ,自然界の事物である金石・草根木皮を用いた,自然で無理のない「治療医学」の体系を形成している.医学上のさまざまな認識は,書籍として後世に残され,少なくとも2000年の歴史的経過を経て,歴代のさまざまな医家が批判・訂正・賛同・強調を行いながら評価し,現在に至っている.それゆえ,現代の場においても十分評価できる内容であることは疑いない.ただし,漏れなくすべてを継承できているわけではなく,価値ある認識が埋もれている可能性が大いにあり,新たな実践による新たな認識を得るとともに,「温故知新」による発展を心がけるべきであり,より高度の「中医学」の完成をめざす努力がはらわれることを期待している.
西洋医学は分析的で細分化した物質面での実証を重んじ,個々の臓器・器官・組織のふるまいをもとに人間の全体を機械論的にとらえ,個別よりも普遍性に重点をおいている.それゆえ,外科や救急医学のように人間を機械として扱う面では高度の成果をあげてはいるものの,現実に悩める「生きもの」としての個人にとっては,大きな救いになるとは言いがたい.診断医学としては優れているが,「治療医学」の体系としては非常に幼稚であり,純粋な結晶といった自然界には存在しない薬物を使用して副作用を不可避的にかかえたり,いつまでたっても当面手に入れた「手段」に依存するだけの行きあたりばったりの医術しか行えていない.今後は巨大な砂上の楼閣にならないような方向性をみつけるべきであり,その大きな助けとして「中医学」が存在すると考えている.
本書は第1版と同様に,中医学という医学大系を,できるだけ本来の面目を保ちながら整理し,西洋医学的な解釈を加えて,医師・薬剤師のための入門書とすることを意図している.中医学と西洋医学では切り口が全く異なるので,西洋医学的な病理の解釈や病名には不備が多いと考えられ,第2版編集にあたって十分配慮を加えたが,その面ではご容赦願いたい.中医学の観点に主体をおいて,医学の認識を変更し修正していく方が,今後の実りが大きくなると考えられる.できれば,本書をきっかけに中医学に本格的に参入されることを望みたい.
神戸中医学研究会は既に20年を越える歴史をもち,この間真面目に研鎖を積んできたつもりであり,本書が医学の発展に寄与できるように念じている.ただし,なお認識の誤りが存在する可能性は否定できないので,多方面からご批判をいただければ幸いである.
1999年 神戸中医学研究会
中医学の特徴
統一体観
弁証論治
基礎理論
気・血・津液・精
臓腑
経路
病因と病変
陰陽について
五行について
四診
望診
聞診
問診
切診
弁証論治
八綱弁証
気血弁証
臓腑弁証
病邪弁証
外感熱病弁証
治療法則
治則
治法
弁証論治を具体的に運用するために
統一体観
弁証論治
基礎理論
気・血・津液・精
臓腑
経路
病因と病変
陰陽について
五行について
四診
望診
聞診
問診
切診
弁証論治
八綱弁証
気血弁証
臓腑弁証
病邪弁証
外感熱病弁証
治療法則
治則
治法
弁証論治を具体的に運用するために