やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版改訂の序
 「食べ物と健康」分野と関連して,平成27年には2つの大きな変更があった.
 第1点は,2月に「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改訂検討会」の新報告書が出されたこと,第2点は,年末の12月25日に「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」が発表されたことである.
 さらに平成26年6月に最終改正のあった「食品表示法」の第4条(食品表示基準の策定等)に従って,「食品表示基準」が平成27年内閣府令第10号として発令された.また,食品表示法の制定と同時に「機能性表示食品」が新設された.
 今般の本書第3版への改訂にあたっては,上述の変更点と整合するように第2版の各項を再検討した.
 特に日本食品標準成分表の改訂は大きな「できごと」で,成分表の本表編以外に,「アミノ酸成分表編」,「脂肪酸成分表編」および「炭水化物成分表編」も出されたことから,本文中の各食品の成分量等,2015年版(七訂)に準拠するよう書き換えた.
 一方,新たなガイドラインは5年前と比べて中項目,小項目の一部が変更されている.「食品の機能」の中で二次機能の小項目の一つとして「水分」が入れられている.水分は一次機能成分とは言えないが二次機能(とも無関係ではないが)成分に入れるのは少し納得のいかない点があり食品に含まれる多量成分の一つでもあることから,本書では栄養成分の後に「非栄養成分」として入れることにした.
 毒性成分についても(食品衛生学で毒性を中心に学習するが),本書では食品の一成分として取扱い,含有食品や毒性作用機構等,より詳しく記述している.
 食品成分の保存・加工に伴う変化や成分間の相互反応については,一次機能の各成分の項に続けて記述しているテキスト等もあるが,本書では食品成分を十分に理解した後で学習する方が理解しやすいと考え,独立した章とした点は第2版と変えていない.
 本書の第3版への改訂にあたり,ご協力いただいた共著者の先生がた,ならびに医歯薬出版担当者にお礼申し上げます.
 2017年1月
 編著者 長澤治子



第2版改訂の序
 本書の第1版が2004年(平成16年)に上梓されてから早7年が経過した.
 第1版の編集方針であった「基本はガイドラインに準拠しながらも体系的,効率的に学習できるように」章立てを工夫し,「豊富で緻密な内容」となるように努めたことに対して高い評価を頂き,第7刷まで増刷をすることができた.特に後者は共著者の先生方のご尽力の賜物であり,この場をお借りしお礼申しあげたい.
 今般,管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)が改定されたことに合わせて,従来にも増してより精選された内容となるよう,一部を改変することにした.
 この間に,食品に関連する研究では,特に三次機能成分の作用メカニズムの解明がめざましく進展した.その成果は今般の改定ガイドラインにも反映され,三次機能の小項目が,「消化管内で作用する機能」と,「消化管吸収後の標的組織での生理調節機能」に二分されている.また分析技術の進歩に基づいて,食品成分表の収載項目も増加し,より直接的な方法により測定された数値が収載されることになった.さらに消費者庁が新設され,食品の表示制度や規格基準も改定されている.
 これら第1版以降の新たな事項をもれなく記述すると自ずと紙面が増加することになり,総ページ数の都合上,第1版巻末に配していた「SELF CHECK」は,残念ながら第2版では削除せざるをえなくなった.一方で本書を「食品小事典」のような使い方もできるように,索引を第1版より充実させた.ガイドライン用語を赤字で表記したことは第1版を踏襲している.
 第1版と同様第2版が大いに活用され,社会に求められる,食の知識豊かな管理栄養士の輩出に役立てば幸いである.
 第2版の上梓にあたり,共著者各位,ならびに医歯薬出版担当者に感謝申し上げます.
 2012年3月
 編著者 長澤治子




 栄養士法の一部改正により,2002年4月から新カリキュラムにそった管理栄養士養成が始まった.食品に関わる学習は,専門基礎分野の「食べ物と健康」という新しい科目区分に入れられ,そこで取得すべき単位数は従来の科目である食品学,食品加工学,食品衛生学,調理学を合わせて最低8単位とされた.
 この新科目区分内での学習内容や単位の配分,また単位を増加することは各養成施設校の自由裁量であるが,必要最低単位数が大幅に削減されたことで,栄養士に必要とされる食品学の知識量が減ったというわけでは全くない.食品についての幅広くかつ深く確かな基礎知識なくして栄養学の十分な理解はありえないし,実のある栄養教育に生かすこともできない.また食品科学研究の進展により食品の健康機能についての知見も増加し,さらに食と健康を理解するために「食料と環境」や「食文化と健康」の視点が付け加えられており,学習すべき内容はむしろ増えている.
 このような状況では,限られた時間内での体系的,効率的な学習が要求されると考えて本書を編集した.「食べ物と健康」のなかで食品衛生学と調理学を除き,従来の食品学(総論,各論)および食品加工学,食品機能学をまとめて一冊とし,これらを分冊とした場合にありがちな内容や記述の重複をできる限り避け,学習内容全体を見渡して個々の項目の学習が効率的にできるように配慮した.読者諸賢のご批判,ご指導をいただければ幸いである.
 なお,本書の末尾に付した管理栄養士国家試験練習問題の解答・解説には,切り取り線が入れてあり,その部分のみ切り取ることが可能である.また,ガイドライン用語を赤字で表記するなど索引にも工夫を凝らしている.ご活用いただければ幸いである.
 本書により食と健康について学び,社会に役立てていただきたいと願うものである.
 本書を上梓するにあたり,ご多忙の中,編集方針をご理解くださりご執筆くださいました各位にこの場を借りて厚くお礼申し上げます.
 2004年11月
 編著者 長澤治子
 第3版改訂の序
 第2版改訂の序
 序
Chapter.I 人間と食べ物
 1.食文化とその歴史的変遷
  1)人類の誕生と食べ物 2)産業革命以降の食料の生産・輸送
  3)加工食品の登場
 2.食物連鎖
 3.食生活と健康
 4.食嗜好の形成-人間の食性,食習慣,食文化の影響
 5.食料と環境問題
  1)フードマイレージ(食料総輸送距離)の低減と地産地消
  2)食料生産と食料自給率 3)食べ残し・食品廃棄の低減(川端康之)
Chapter.II 食品の分類と食品成分表の理解
 1.生産様式による分類
 2.原料による分類
 3.主要栄養素による分類
  1)六つの基礎食品 2)食事バランスガイド 3)三色食品群
  4)四つの食品群 5)主要成分による分類 6)食品成分表による分類
  7)国民健康・栄養調査食品群別表による分類
  8)国際連合食糧農業機関(FAO)による分類 9)食料需給表による分類
  10)アメリカのフードガイド:マイプレート
 4.食習慣による分類
  1)主食,副食(主菜,副菜)
 5.その他の分類
  1)インスタント食品,加工食品,調理済食品,コピー食品,健康食品,その他
  2)用途による分類 3)法令による分類(中野隆之)
 6.食品成分表の理解
  1)日本食品標準成分表の沿革 2)日本食品標準成分表の構成と内容
  3)食品成分表利用上の注意点(長澤治子)
Chapter.III 食品の機能
 1.食品の機能性
  1)一次機能 2)二次機能 3)三次機能(白土英樹)
 2.食品の一次機能
  1)たんぱく質(和田律子) 2)炭水化物 3)脂質(市川和昭)
  4)ビタミン 5)ミネラル(無機質)(白土英樹)
  6)その他の成分
   (1)水分(和田律子) (2)毒性成分(白土英樹)
 3.食品の二次機能-おいしさの科学
  1)食品の色 2)食品の味と呈味物質 3)食品のにおい
  4)食品の物性とテクスチャー 5)官能検査(竜口和恵)
 4.食品の三次機能-生理調節機能
  1)消化管内で作用する成分とその機能
  2)消化管吸収後の標的組織での生理調節機能(長澤治子)
 5.保健機能食品(food with health claims)
  1)「いわゆる健康食品」の概略 2)「健康食品」に係る制度の見直し
  3)保健機能食品の表示 4)特別用途食品
  5)栄養強調表示(nutrition claims)と健康強調表示(health claims)(長澤治子)
Chapter.IV 食品保存・加工に伴う食品成分の変化と栄養
 1.酸化反応による食品成分の変化と栄養
  1)脂質の酸化 2)油脂の酸化防止 3)たんぱく質の酸化
  4)ビタミンの酸化
 2.加熱による成分変化
  1)炭水化物の加熱変化 2)炭水化物の加熱分解
  3)たんぱく質の加熱変化
 3.酵素による成分変化
  1)酵素的褐変 2)酵素的褐変の防止 3)酵素による糖質の変化
  4)酵素による脂質の変化 5)酵素によるたんぱく質の変化
  6)酵素によるヌクレオチドの変化 7)酵素によるフレーバーの形成
 4.非酵素的褐変
  1)アミノ-カルボニル反応 2)その他の非酵素的褐変反応
  3)褐変の防止
 5.成分間反応で生じる有害物質
  1)亜硝酸との反応により生成するニトロソ化合物
  2)加熱により生成する有害成分(吉田博)
Chapter.V 食品の生産・加工・保存・流通と栄養
 1.食料生産と栄養
  1)生産条件と栄養
 2.食品の流通・保蔵と栄養
  1)流通環境と栄養成分変化 2)食品の流通・保蔵技術(阿部一博)
 3.食品加工と栄養
  1)食品加工の意義・目的 2)食品加工処理方法
  3)食品の加工方法 4)主な加工食品
 4.包装
  1)容器の材料 2)包装容器の形態 3)包装による栄養成分の変化
  4)無菌充填食品(山本愛二郎)
Chapter.VI 食品の表示と規格基準
 1.国内規格
 2.国際規格
 3.期限表示
 4.成分表示
  1)栄養表示 2)JAS
  3)アレルギー物質(アレルゲン)を含む食品に関する表示
  4)食品添加物表示
 5.基準
  1)成分規格 2)製造・加工および調理基準
  3)保存基準 4)器具および容器包装における規格基準
 6.その他
  1)JHFA(Japan Health Food Authorization)認定マーク 2)缶マーク
  3)飲用乳表示 4)特殊容器の表示(通称マルショウマーク)
  5)PSCマーク(高松伸枝)
Chapter.VII 各種食品の栄養特性・機能特性
 1.農産食品
  1)穀類cereals 2)イモ類potatoes 3)マメ類pulses
  4)種実類nuts and seeds 5)果実類fruits
  6)野菜類vegetables(中河原俊治)
 2.畜産食品
  1)食肉類 2)卵類 3)乳類(川端康之)
 3.水産食品
  1)魚介類 2)藻類(木村万里子)
 4.油脂類
  1)食用油脂の特徴 2)食用油脂の製造と精製 3)植物性油脂
  4)動物性油脂 5)加工油脂(川端康之)
 5.調味料
  1)甘味料 2)食塩類 3)食酢類 4)醤油類
  5)味噌類 6)旨味調味料(化学調味料) 7)だし類
  8)風味調味料 9)ウスターソース類 10)トマト加工品類
  11)ドレッシング類
 6.香辛料
  1)辛味性香辛料 2)芳香性香辛料(香味性香辛料)
  3)着色性香辛料 4)調合香辛料(混合調味料)
 7.嗜好飲料
  1)アルコール飲料 2)非アルコール飲料
 8.調理加工食品類
  1)レトルトパウチ食品 2)冷凍食品
  3)インスタント食品(中野隆之)
 9.その他の食品
  1)きのこ類 2)山菜類 3)ハーブ類 4)漬物(長澤治子)

 索引