やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第7版 改訂の序
 このたび,第7版を上梓することになった.
 初版以来30数余年,ご利用いただいた皆様方に,心より感謝の意を表したい.
 本書は,発刊以来今日まで,栄養士・管理栄養士の専門科目としてカリキュラムに提示された教育目標を基軸に,章立てと項目の検討および内容の充実を行ってきた.なかでも一貫して意図してきたことは,以下のとおりである.
 1.公的機関から発表された資料・データに早急に対応し,内容を刷新する.
 2.栄養に関する学問は,人の生活に活かされてこそ価値がある.その点からも,人々の暮らしにも目を向け,関連する項目を一部取り込んでいる.
 3.栄養学は時と場合により,膨大なデータの解析も必要となってくる.統計ソフトも幅広く利用されてはいるものの,基礎的な数値の扱いは確実に理解してほしいとの願いから,栄養統計を取り込んでいる.
 4.栄養士・管理栄養士の教育養成の教科のみならず,「食に関するプロフェッショナル」として,職場でも活用できる内容にする.
 以上は本書の特徴でもあるといえる.
 栄養教育論は,栄養士・管理栄養士教育の基礎教科・専門教科をすべて包括した,集大成ともいえる科目である.また,理論を実践の場に連結させる教科でもある.さらに,栄養学は関連する理論を基に,人々の生活のなかで実用化されてはじめて意味をもつ.栄養学の最終的な実現の場は「食」である.一方「食」は,人の命を繋ぎ,体をつくると同時に,人々の「和」を育み,「輪」を広げていく.それらのことから栄養学は,科学の一部であると同時に文化の面も多々関連しており,学問分野も広範囲にわたる.換言すれば,栄養学は,理論と実践の側面をもつと同時に,科学と文化が融合した内容ともいえる.
 人がいるところに「食」があり,そこには栄養学が存在する.その栄養学を「食」として実践するために,主として関連する教科は「栄養教育論」である.
 多岐多様にわたるこの教科を,着実に習得するために,本書をお役立て頂ければ幸いである. 今回の改定に当たり,多大なるご尽力を頂いた医歯薬出版株式会社に謝意を表します.
 2017年1月
 著者一同


第6版 改訂の序
 平成14年より,管理栄養士・栄養士養成施設における教育は,新カリキュラムに沿って実施されてきたが,4年を経た今日,ほぼ定着してきた感がある.
 栄養教育論は専門分野に位置づけられ,専門分野総数32単位(講義または演習を含む)のなかで6単位が必須となっている.各学校内の裁量で実験・実習を組み入れれば,さらに単位の増加が見込まれ,管理栄養士教育における栄養教育論の占める割合は大きい.
 今回,本書改訂に際し,カリキュラムの改正と同時に教科の教育目標も提示されたことから,それらの点を考慮し,章立てと項目の検討および内容の充実を意図した.
 近年わが国では,少子高齢社会の到来をはじめ,食をとりまく環境の変化,人々の生活習慣の多様化により,生活習慣病をはじめとする各種疾病の増加など,国民の健康上の課題は多い.それら諸問題に対して法律の見直しや新設が行われた.一方,諸疾患の発症や進行を防ぐ手立てとして,生活習慣のなかでもとくに食生活の改善が重要視されている.
 国民の食生活改善の啓蒙と教育推進の担い手は管理栄養士・栄養士である.また,管理栄養士・栄養士の業務は,栄養学の知識をもとに科学的かつ食文化的に望ましい食事を提供することにもある.
 栄養学は科学の一部であると同時に実践学である.栄養学の学問的な理論が,人々の日々の暮らしのなかに実用化されてはじめて意義をもつ.その点を考慮すると,科学的根拠に基づいた栄養学の知識が実践活動に活用されることが必要条件となってくる.しかし,高度で膨大な栄養学の知識を,今日の社会で生活を続ける人々に適用し,指導・教育を行い,支援していくには多くの困難を伴うことが予想される.卓越した技量とともに,人間生活の場に対応した総合的な判断力はむろん,人を動かし心を動かすほどの人柄の魅力も求められる.
 食は健康の基盤であり,健康は福祉の原点である.高度で専門的な知識と実践力を備え,指導者にふさわしい人格の形成など,人間的にもバランスのとれた,食を極める専門家として,質の高い管理栄養士・栄養士を目指されることを念じてやまない.
 今回の改訂にあたり,次のことを行った.
 1.教科目の「栄養指導論」が「栄養教育論」に変更され,管理栄養士・栄養士業務に食育が重要視されてきたことから,書名を変更した.
 2.栄養教育論の教育目標が実践活動の場でも必要であることを踏まえて,カウンセリング,行動科学の分野を加え,できるだけ現場で役立つ演習・実習を例示した.
 3.医学的検査法について,新しい情報資料を基に加筆・修正を行った.
 4.「日本人の食事摂取基準(2005年版)」,「食事バランスガイド」などの公表に対応し,関連する箇所の加筆・修正を行った.
 なお,栄養教育論の教育目標に提示されている「ライフステージ・ライフスタイル別栄養教育」については,紙面の都合上本書では割愛しているが,別書『ライフステージ実習栄養学-健康づくりのための栄養と食事 第3版』(大里進子・城田知子・林 辰美・安武 律・矢野治江著,医歯薬出版)で取り上げているので,そちらを紹介させていただきたい.
 本書は演習書である.その目的に沿った内容とするため,理論は最小限にとどめ,演習に重点をおいている.関係部分を軸に随時,応用展開され,栄養学の理論を実践するための手引き書として,引き続きご活用いただければ幸いである.
 2006年3月
 著者一同



 このたび,演習・栄養指導書を刊行するはこびとなった.
 本教科栄養指導は厚生省(現 厚生労働省)規定を基本とし,講義,演習,学内・学外実習など,各栄養士養成施設裁量による開講と教育がなされているが,概念的に共通している点は栄養士教育の要であり,総括(集大成)ともいえることであろう.
 一方,栄養士業務における栄養指導は,指導現場における煩雑な職務のうちでも中枢的位置を占めている.すなわち,栄養士本来の業務が人々の健康を守り,はぐくむための適切な食生活のあり方を指導することから推察して必然の結果であり,相応に位置づけられるべき教科と考える.
 現代の食生活は,社会構造の変化,科学技術の進歩と発展,生活の多様化に加え,氾濫する情報に伴ってますます複雑多岐となり,人々の健康を指標とした食のあり方はまさに重要な今日的課題となっている.その広範囲な食生活分野の指導者を養成するにあたっては,栄養学の理論を基盤とした実践化の手法を的確に,かつ系統的に教育する指導方法が重要となってくる.
 本書は限られた時間内で,栄養士に必要な学理と技術を演習教科の範疇で最大限に消化するべく,効果的教育に重点をおいた.また,内容は可能な限り整理を行い,具体的には以下の点に留意した.
 (1)各章中,必要な領域に演習を設けて問題を提起し,自主演習の型で展開ができるようにした.
 (2)調査用紙は頁数の関係もあったのでモデルを示した.必要に応じ準備いただきたい.
 (3)統計の章では昨今のコンピュータ普及に伴い,数値に関する問題は機械に依存しやすいという危険性を防ぐため,数値の意味,扱いなど,栄養指導に関する統計処理の基礎を確実に理解させることを意図した.
 (4)総括の章では,ライフサイクル別に食生活上の問題点をあげ,指導教育や改善対策,研究課題などの資料提供とした.
 本書が教育施設のみならず,指導現場においても広く御利用いただければ幸いである.なお,不備な点も多いことと思うので,諸先生方の御意見を賜りたいと存ずる次第である.
 終わりに,刊行にあたり御尽力下さった医歯薬出版株式会社に謝意を表したい.
 1983年12月
 著者一同
 第7版改訂の序
 第6版改訂の序
 序
CHAPTER 1 演習栄養教育の基本概念
 1 演習栄養教育とは
 2 栄養教育とは
CHAPTER 2 栄養教育の基礎知識
 1 食事摂取基準について
  (1)推定エネルギー必要量の算定
 2 食品成分表の使い方
 3 食品群別荷重平均成分値の求め方
 4 食品構成の作成
  (1)つくり方の手順
  (2)既成の食品構成表
 5 献立作成
  (1)記載の仕方
  (2)栄養量の計算方法
  (3)食事摂取基準の日内配分
 6 健康づくりのための指針
  (1)食生活指針
  (2)食事バランスガイド
  (3)健康日本21(第二次)
  (4)健康づくりのための身体活動基準・身体活動指針(アクティブガイド)
  (5)健康づくりのための休養指針
  (6)健康づくりのための睡眠指針
  (7)世界各国の食事指針
 7 食品の安全性
  (1)食品安全基本法とは
  (2)食品安全における関係者の責務と役割
  (3)食品安全委員会の設置
  (4)消費者庁の発足
CHAPTER 3 実態把握の方法
 1 栄養・食事調査
  (1)国民健康・栄養調査
  (2)食物摂取状況調査
  (3)嗜好調査・残食調査
 2 生活調査
  (1)生活時間調査
  (2)生活環境調査
  (3)生活経済調査
  (4)わが国における高齢社会とその対策
  (5)食料の需給
 3 身体状況調査
  (1)健康調査
  (2)身体計測
  (3)身体計測に基づく判定
  (4)自覚症状による判定
 4 体力測定
  (1)最大酸素摂取量の間接測定
  (2)新体力テスト
  (3)万歩計による方法
 5 エネルギー消費量
 6 心理テスト
CHAPTER 4 医学的検査法
 1 生化学的検査
  (1)栄養状態の充足傾向を示すもの
  (2)機能の変化を示すもの
 2 生理機能(生体)検査
  (1)血圧・脈拍
  (2)心電図(ECGまたはEKG)
 3 臨床診査
 4 疾患別栄養指導
CHAPTER 5 栄養アセスメント
 1 栄養診断の方法
  (1)食物摂取状況調査
  (2)食習慣診断
  (3)食事診断の流れ
  (4)塩分診断
  (5)栄養比率
  (6)食品比率
  (7)たんぱく質の化学的評価法
  (8)脂質の質的評価法
 2 栄養評価の方法
  (1)評価の意義
  (2)評価の目的
  (3)評価の種類
  (4)評価の必要性
  (5)評価の方法
CHAPTER 6 栄養教育法
 1 栄養教育の方法
  (1)個人を対象とした教育
  (2)集団を対象とした教育
 2 栄養教育指導案の作成
 3 栄養教育における媒体
  (1)媒体の使い方・つくり方
 4 カウンセリング
  (1)カウンセリングの概略
  (2)カウンセリングの栄養教育への応用
  (3)接遇
  (4)学習段階の発展
 5 食行動変容
  (1)食行動変容と行動科学
  (2)個人の態度と行動変容に関する理論
  (3)個人間の関係と行動変容に関する理論
  (4)集団や社会の行動変容に関する理論
  (5)行動変容技法
  (6)健康行動理論の組み合わせ
CHAPTER 7 食生活に関する情報の収集
 1 活字情報
  (1)図書目録・出版案内
  (2)事典・辞典・便覧
  (3)年鑑
  (4)政府刊行物
  (5)自治体刊行物
  (6)雑誌
  (7)新聞
  (8)その他出版物
 2 音声・映像情報
 3 情報機関
 4 栄養関係法規
CHAPTER 8 情報処理と栄養統計
 1 情報処理とコンピュータ
  (1)栄養教育とコンピュータの役割
  (2)コンピュータの機能と構成
  (3)コンピュータ利用の実際
  (4)個人情報の保護について
 2 栄養教育と統計学
  (1)標本データ
  (2)理論的分布
  (3)標本分布論と推定
  (4)仮説の検定
  (5)相関
  (6)回帰
  (7)χ2検定
CHAPTER 9 調査研究のまとめ方
 1 論文の種類
 2 論文の構成
 3 論文の書き方,まとめ方
  (1)表題
  (2)緒言
  (3)研究方法
  (4)研究結果
  (5)考察
  (6)結論
  (7)文献
  (8)抄録

 演習
 付表
 文献
 索引