やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第5版の序
 21世紀の調理を目指して−たのしく学ぶ調理の基礎と実習
 本書は,大学や短期大学で生活学,家政学,教育学を学ぶ学生や,管理栄養士や栄養士など将来の専門職を目指す人たちを対象とし,調理学実習で利用することを念頭において,限られた時間数の中で習得すべき内容をまとめました.
 本書では,調理の基本操作や食品の基本的な扱い方から,日本料理,西洋料理,中国料理,諸外国料理まで,多岐にわたった調理法の基本が網羅されており,基本的知識を扱った基礎編と実践的な献立を扱った実習編から構成されています.基本を押さえたうえで実際に調理を体得し,幅広い分野の調理法を学ぶことを通じて,様々な食文化の理解が深まることも願っています.
 また,各料理において,主食,主菜,副菜,汁物,菓子を幅広く掲載しており,それらを組み合わせて献立作成ができるのが特色です.専門職を目指す学生として,各々の料理の調理法を習得するだけでなく,さらにそれらを組み合わせてバランスの良い献立を作成できるようになることが重要です.
 第1版の発行から25年経過し,第4版の発行から8年を経て,このたびさらに改訂を行いました.今回の改訂ではまず,2015年に改訂された「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に準拠して,すべての献立の栄養価の再計算を行いました.また,食塩の摂取量が生活習慣病に与える影響が大きいと注目されているのを受け,すべての献立に食塩相当量を掲載しました.さらに,執筆者が一部交代しました.そして,「たのしい調理」というタイトルにふさわしく,カバーデザインを刷新しました.
 現代社会においては,加工食品・市販食品の増加,コンビニエンスストア・外食産業の普及などによって,調理離れはさらに増大しています.女性の就業機会の増加,家族環境の変化,調理環境の多様化などにより,従来の調理法は必ずしも実行可能ではなく,21世紀の調理法はこれらの変化に対応し,単純化,簡便化が求められております.しかし,その反面,本来の調理の大切さや意義が失われつつあることが懸念されます.調理をすることは生きていく知恵であり,生きていく力です.まずは基礎をしっかり学んだ後に,簡便かつ美味しくバランスの良い,新しい調理法を創っていって欲しいと思います.本書を通して様々な食分野で将来活躍する学生が,調理の楽しさや大切さを実感し,将来それらを教え伝えていってくれることを願っています.
 著者一同


初版の序
 調理,食文化伝承の重要性
 調理は地球上のさまざまな地域の気候,風土,宗教などを背景に,その地域にもっとも適した食品の食べ方として受け継がれてきた文化遺産である.つまり,調理の技術は経験と“カン”および“コツ”として家庭や調理人らによって次の世代へと伝承されてきたのである.
 ところで,現代は産業構造の変化と技術革新によってさまざまな調理素材,半加工調理品が氾濫し,さらには,食の社会化により手軽に世界の料理を賞味できる反面,家庭内調理の比重が軽くなり,個人の調理技術は極端に低下してきている.
 一方,学校教育においては,家庭科の男女共修にみるように生活技術としての調理,あるいは食文化の伝承としての学校調理実習の必要性が改めて説かれているときでもある.
 もともと調理技術は長い経験の積み重ねと反復練習の結果得られるものであるが,学校教育では,調理の“コツ”を科学的に取り扱い,理論に基づいて,短時間に再現性の高い技術を習得することを目指している.そのためには適切な実習書と優れた指導者が必要である.
 以上の観点から,本書は,大学の家政学部,教育学部および短期大学の家政学科,生活学科などの学生を対象に,基礎的実習に重点をおいた調理実習書として編集したものである.
 日本料理,西洋料理,中国料理,さらに保存食,病人食を加えて4単位の実習に使用できるようにした.また,ほとんどの料理に「応用」として材料などの互換を付け,「コツ」「参考」の欄には実習していく際の参考事項を付して学生の学習の便をはかった.西洋料理名は主としてフランス語を用い,中国料理名には慣用的な文字を用い,それぞれにルビと日本語訳をつけた.巻末付録に載せた約50種の献立例は実習時の参考とされたい.
 本書が調理技術を習得するための教科書としていくらかでも役立てば幸いである.
 1991年3月
 著者一同
 第5版の序
 初版の序
第1章 序論
 (安藤真美,村上 恵)
 1 はじめに
  1)調理実習をはじめるにあたって
  2)計量
  3)調理設備と道具類
  4)器具とふきんの洗浄
  5)実習後の記録
  6)栄養価計算の方法
 2 調理の基本操作
  1)調理材料の下処理
  2)加熱操作
  3)その他の操作
  4)調理による成分・材料の変化
 3 基本的な調理材料
  1)調味料
  2)基本的材料
第2章 日本料理
 基礎編(久木野睦子)
  1 日本料理の形式と献立
   1)日本料理の形式と献立
   2)日本料理の食事作法
   3)日本料理の食器(和食器)
  2 飯物
   1)炊飯の原理
   2)味付け飯
   3)すし
   4)もち米の調理
   5)どんぶり物
  3 めん類
   1)めんの種類
   2)めん類の調理法
   3)めん類の供食法
  4 煮だし汁
   1)煮だし汁の材料
   2)煮だし汁の取り方
  5 汁物
   1)汁物の種類
   2)汁物のつくり方
   3)汁物の盛り付け
  6 煮物
   1)煮物の種類
   2)煮物の方法
   3)煮物の盛り付け
  7 蒸し物
   1)蒸し物の種類
   2)蒸す方法
   3)蒸し物の供し方
  8 焼き物
   1)焼き物の種類
   2)焼き物の方法
   3)焼き物の盛り付け
  9 揚げ物
   1)揚げ物の種類
   2)揚げ物の方法
   3)揚げ物の盛り付け
  10 和え物・酢の物・浸し物
   1)合わせ酢の種類
   2)和え物・酢の物・浸し物のコツ
   3)和え物・酢の物・浸し物の盛り付け
  11 寄せ物・練り物
   1)寄せ物・練り物の種類
   2)寄せ物・練り物の調理法
   3)寄せ物・練り物の盛り付け
  12 和菓子と飲物
   1)和菓子の種類
   2)和菓子の材料
   3)和菓子用器具
   4)和菓子の用い方
   5)緑茶の種類といれ方
 実習編(山内知子)
  1 ご飯物
   白米飯・赤飯(おこわ)
   炊きおこわ・グリンピース飯・五目飯
   そぼろ飯・たけのこ飯
   いなりずし・親子どんぶり
   ちらしずし
   巻きずし
  2 汁物
   菊花豆腐のすまし汁・いわしのつみれ汁
   えびしんじょの椀盛り・吉野鶏とみつばの吸い物
   かきたま汁・はまぐりの潮汁・油揚げとわかめのみそ汁
   かつおのすり流し汁・かす汁・さつま汁
   けんちん汁・のっぺい汁
   雑煮(すまし仕立て)・雑煮(白みそ仕立て)
  3 煮物
   ふろふきだいこん・さといもの含め煮
   かぼちゃの甘煮・にんじんのうま煮・ふきの青煮
   しいたけの煮しめ・茶せんなすの揚げ煮・れんこんの酢煮
   きんかんの砂糖煮・煮豆(黒豆)・高野豆腐の含め煮
   がんもどきの含め煮・かれいの煮付け
   さばのみそ煮・いわしの梅煮・たづくり
   こんにゃくのおかか煮・鶏肉団子の揚げ煮
   鶏レバーのしょうゆ煮・鶏肉のじぶ煮
   炒りどり・うどのきんぴら・かぼちゃのそぼろあんかけ
   ひじきの煮物・青菜の煮浸し
  4 蒸し物
   卵豆腐・二色卵
   茶碗蒸し・白身魚のかぶら蒸し
  5 焼き物
   あじの姿焼き・ぶりの照り焼き
   あまだいの銀紙焼き・まながつおの西京焼き・いかのうに焼き
   のしどり・牛肉の八幡巻き
   だし巻き卵・薄焼き卵
   だて巻き卵・ふくさ焼き
  6 揚げ物
   かき揚げ・てんぷら
   さばの竜田揚げ・わかさぎの南蛮漬け
   揚げなすのとりみそあん・しいたけの陣笠揚げ・揚げ出し豆腐
  7 和え物・酢の物・浸し物
   たけのこの木の芽和え・ほうれんそうのごま和え
   白和え・あおやぎとわけぎのぬた
   いかときゅうりの吉野酢和え・かずのこの土佐じょうゆ和え・湯引きささ身の黄身酢和え
   焼きなすのごま酢みそ和え・たたきごぼう・五色なます
   レタスとわかめの酢の物・あじときゅうりの酢の物
   しゅんぎくとしめじのお浸し
  8 寄せ物・練り物
   ごま豆腐
   そうめん寄せ・きんとん
  9 めん類
   冷やしそうめん
  10 漬物
   セロリーのレモン漬け
   ちぐさ漬け(即席漬け)・小かぶの即席漬け・菊花かぶの甘酢漬け
   酢どりしょうが・はりはり漬け
  11 和菓子
   泡雪かん・水ようかん
   果汁かん(夏みかん寄せ)・おはぎ(ぼたもち)
   桜もち(薄焼き)・桜もち(道明寺)
   草もち・くずもち・うぐいすもち
   じょうよまんじゅう・利久まんじゅう
   フルーツ白玉・茶巾しぼり・いもかりんとう
第3章 西洋料理
 基礎編(富永しのぶ
  1 西洋料理の形成と作法
   1)西洋料理の種類とその特徴
   2)西洋料理の様式と献立
   3)西洋料理の食事作法
  2 フォン,ルウ,リエゾン
   1)フォンFonds
   2)ルウRoux
   3)リエゾンLiaison
  3 ソース
   1)ソースの種類
   2)基本ソースのつくり方とその応用
   3)基本ソースを土台としないソースのつくり方
   4)冷ソースの種類とその応用
  4 スープ
   1)スープの種類
   2)スープの調理法
   3)スープの供し方
  5 オードブル
   1)オードブルの種類
   2)オードブルの調製法
   3)オードブルの盛り付け
  6 魚料理
   1)魚料理の調理法の種類
   2)魚の調理法
   3)魚料理の盛り付け
  7 肉料理
   1)肉料理の調理法の種類
   2)肉の調理法
  8 野菜料理
   1)野菜料理の調理法による種類
   2)ガルニチュール
  9 サラダ料理
   1)サラダの種類
   2)サラダのつくり方
   3)サラダ料理の供し方
  10 卵料理
   1)卵の調理法の種類
   2)卵料理のコツ
  11 米・めん・パンの料理
   1)米料理
   2)めん(パスタ)料理
   3)パン料理
  12 甘味料理
   1)甘い菓子類の種類
   2)菓子の調理
   3)菓子類の供し方
  13 果物
  14 飲物
   1)飲物の種類
   2)飲物の供し方
 実習編(丸山智美)
  1 Hors-d'oeuvre(前菜)
   卵の詰め物・きゅうりのイクラ詰め・わかさぎの酢油漬
   はつかだいこん・小えびのカクテル・トマトの詰め物
   カナッペ
  2 Potage(スープ)
   せん切り野菜入りコンソメ
   ロワイヤル入りコンソメ・冷やしコンソメ
   コーンスープ・グリンピースのポタージュ
   卵黄スープ・冷たいポテトスープ
   オニオングラタンスープ・クラムチャウダー
  3 Poisson(魚料理)
   あじのムニエル・ひらめの包み焼き
   わかさぎのフライ・えびのフリッター
  4 Entree(肉料理)
   ハンバーグステーキ
   ビーフシチュー・仔牛肉薄切りウィーン風カツレツ
   豚肉のハワイ風・鶏肉のクリーム煮
   鶏肉のクリームコロッケ
   若鶏の蒸し焼き
   チキンガランチン
   テリーヌ・カレーライス
  5 OEufs(卵料理)
   オムレツ・ほうれんそう入りココット焼き
  6 Salades(サラダ)
   ポテトサラダ・豆のミックスサラダ
   グリーンサラダ・マカロニサラダ
   マセドアンサラダ・フルーツサラダ・小えびのトマト詰めサラダ
  7 米・めん・パンの料理
   ピラフ・パエリャ
   スパゲティのミートソースかけ・はまぐりソースかけ
   マカロニグラタン・ピザ
   サンドイッチ・ロールサンドイッチ
  8 Entremets(甘味料理)
   ブラマンジェ・オレンジシャーベット
   抹茶のムース・ババロア
   カスタードプディング・ワインゼリー・フルーツゼリー
  9 その他の菓子類
   いちごのショートケーキ・チーズケーキ
   スィートポテト・シュークリーム
   ブッシュドノエル
   アップルパイ
   クッキー〈型抜き〉・〈絞り種〉
  10 飲物
   コーヒー・紅茶・ココア
   フルーツポンチ
第4章 中国料理
 基礎編(杉山寿美)
  1 中国料理の形式と作法
   1)中国料理の種類とその特徴
   2)中国料理の様式と献立
   3)中国料理の食事作法
  2 中国料理の材料と食器・調理器具
   1)中国料理の材料
   2)中国料理の食器
   3)調理器具
  3 中国料理名の成り立ち
   1)基本的な組合せ
   2)特殊な組合せ
  4 前菜(冷盆)
   1)冷盆の種類
   2)冷盆の調製法
   3)冷盆の盛り付け
  5 だし(做湯)
   1)做湯の種類
   2)湯の取り方(800ml分)
  6 汁物料理(湯菜)
   1)湯菜の種類
   2)湯菜の調理と供し方
  7 炒め物料理(炒菜)
   1)炒菜の種類
   2)炒菜のコツ
  8 揚げ物料理(炸菜)
   1)炸菜の種類
   2)炸菜のコツ
  9 あんかけ料理(溜菜)
   1)溜菜の種類
  10 蒸し物料理(蒸菜)
   1)蒸菜の種類
   2)蒸菜のコツ
  11 煮込み料理(ウェイ菜)・煮物料理(焼菜)
   1)ウェイ菜・焼菜の種類
   2)ウェイ菜のコツ
  12 直火焼き料理(カオ菜)
   1)カオ菜の種類
   2)カオ菜のコツ
  13 鍋料理(鍋)
  14 冷菜
  15 点心
   1)点心の種類
   2)中華めん(切麺)
   3)飯(飯)
   4)粉製品(粉)
   5)中国菓子(甜菜)
  16 茶・酒
   1)中国茶
   2)中国酒
  17 薬膳料理
 実習編(赤石記子)
  1 湯菜
   うずら卵のスープ・とうがんのスープ
   ゆばのスープ・ザー菜と豚肉のスープ
   はくさいと肉団子のスープ・かにと卵のスープ・たいの薄くずスープ
   中華寄せ鍋
   豆腐入りコーンスープ
  2 炒菜
   ピーマンと牛肉の炒め物
   かにたま・チンゲンサイの炒め物
   いかのうま煮・小えびと豆腐の煮込み
   豚肉と野菜の炒め物・豚挽肉と豆腐のとうがらし炒め
   野菜の五目炒め・鶏肉とナッツの炒めもの
  3 炸菜
   鶏肉の空揚げ・魚の衣揚げ
   えびの卵白衣揚げ・はるまき
   えびのパン揚げ
  4 蒸菜
   挽肉の卵巻き
   魚すり身の卵巻き蒸し・魚の姿蒸し
   もち米団子の蒸し物・はくさいとベーコンの煮込み
   えびの蒸し煮
  5 焼菜・ウェイ菜
   大正えびのとうがらし炒め
   豚肉の角煮・鶏とじゃがいもの煮物
  6 カオ菜・燻菜
   魚のいぶし焼き・焼き豚
  7 溜菜
   酢豚・そら豆のあんかけ
   肉団子の甘酢あんかけ・魚のトマトあんかけ
   魚と野菜の甘酢あんかけ
  8 冷菜
   きゅうりの和え物・はくさいの甘酢漬け
   きゅうり,はるさめ,ハムの酢の物・くらげの酢の物
   卵の茶葉煮・いかの和え物
   鶏肉のごまだれ和え・豚肉の水煮辛味ソースかけ
  9 点心
   四色しゅうまい・ビーフンの炒め物
   ぎょうざ
   わんたん・冷やし五目めん
   肉まん,あんまん
   炒めご飯・もち米のかやくめし・ごま入りクッキー
   蒸しカステラ・杏仁かん
   菊花型揚げ・さつまいものあめ煮・あん入り揚げごまだんご
第5章 諸外国料理
 (村上 恵)
 基礎編
  1 諸外国料理の形式
   1)アフリカ地域
   2)ロシア地域
   3)中東地域
   4)アジア地域
   5)南アメリカ地域
   6)オセアニア地域
 実習編
  1 アフリカ地域
   クスクス・オ・プーレ
   カチュンバリ
   チャイ
  2 ロシア地域
   ボルシチ
   べフ・ストロガノフ
   スィールニキ
   ピロシキ
  3 中東地域
   メルジメック・チョルバ
   チョバン・サラタス
   イマム・パユルドゥ
  4 アジア地域
   トムヤムクン
   ゴイ・クォン
   パックブン・ファイデン
   ナシゴレン
   ナムル・ビビンパ

 付録(安藤真美,村上 恵)
  1 日本料理の献立例
  2 西洋料理の献立例
  3 中国料理の献立例
  4 諸外国料理の献立例
  5 行事食の献立例
  6 材料の切り方(基礎)
  7 材料の切り方(応用)
  8 魚介類の扱い方
  9 西洋料理で使用される特殊材料(調理用材料)
  10 西洋料理で使用される香辛料
  11 パスタの分類

 索引