やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき
 近森病院では,週に1回金曜日の朝に管理栄養士が集まって,自分たちの経験した症例の検討会を行っています.これらの症例検討の積み重ねが本書「近森栄養ケアCase Study」に結実しました.まさに管理栄養士の視線で患者を診て病態を理解し,栄養学的に判断して行う栄養サポートの実践が症例ごとに具体的に述べられています.今回の「近森栄養ケアCase Study」では,「近森栄養ケアマニュアル」では書ききれなかった,管理栄養士が患者を診るために必要な栄養サポートの知識や経験が,より自由に述べられています.
 近森病院では新しく入職した管理栄養士や長期研修生に対し,2段階の教育システムで研修を行っています.まず管理栄養士の先輩が勉強会や症例検討会,病棟での屋根瓦方式(先輩がマンツーマンで新人に教え,成長した新人が次の新人に教える方式)の臨床研修などを通じて,実務的な栄養サポートの知識や技術の教育を行い,栄養評価や栄養プラン作りを標準化して,徹底的にルーチン業務で行えるよう訓練しています.その上に医療専門職になるための教育として,私や各病棟のNST担当部長のラウンドやカンファレンスを通じて,病棟で患者や医師,看護師はじめ他の医療専門職とのコミュニケーションがとれるように姿勢や表情(笑顔),声の出し方といった立ち居振る舞い,医療人の常識として共通言語としての医療用語,検査データ,画像,共通概念として病気がもたらした病態,とくに臓器不全や敗血症,脱水,ショックといった病態を教えています.なによりも,この患者を良くしたいという共通の価値観を大事にしたいと思っています.これら2段階の教育システムにより,今まで患者を診たことがない管理栄養士でも病態を理解し,栄養サポートができるようになります.
 高齢社会を迎え,入院患者の半数に栄養サポートが必要となっている現在,数少ない栄養の専門医が主体となって栄養サポートするよりも,全国の管理栄養士が栄養士の視点で患者を診て,栄養士主体の栄養サポートするほうがはるかに患者にとって良い栄養サポートができると信じています.そのためにも管理栄養士も患者を診てその病態を理解して,栄養サポートすることが求められています. この「近森栄養ケアCase Study」は,まさに管理栄養士の管理栄養士による管理栄養士のための実践的な栄養サポートのバイブルであり,現在,近森病院の病棟や外来で生き生きと働いているすべての管理栄養士の知恵が詰め込まれています.本書が全国の管理栄養士が病棟に出て患者を診る時代のきっかけになればと願っています.
 2013年6月
 近森正幸
 社会医療法人近森会近森病院
 院長・同NST Chairman
 まえがき(近森正幸)
疾患別栄養ケア Case Study
1 消化器疾患
 1 胃切除後(吉田麻優美)
 2 外科手術後腸疾患(佐藤亮)
 3 炎症性腸疾患(福間睦美)
 4 肝疾患(五十嵐久実)
 5 膵疾患(五十嵐久実)
2 循環器疾患
 1 心不全(宮島 功)
 2 心臓血管外科(真壁香菜)
 3 急性心不全(鈴木絵梨奈,宮島 功)
3 高血糖性高浸透圧昏睡
 (上村二美)
4 呼吸器疾患
 1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)(谷口梨奈,宮島 功)
 2  ARDS & ALI(由良知子,宮島 功)
5 脳神経疾患
 1 脳梗塞(横畠 文)
 2 クモ膜下出血(内山里美)
 3 筋萎縮性側索硬化症(ALS)(廣田友香)
 4 ギラン・バレー症候群(GBS)(池上七帆,内山里美)
6 腎疾患
 1 慢性腎臓病(CKD)(友原妃東美,宮島 功)
 2 透析(中西 花)
 3 連続携行式腹膜透析(CAPD)(中西 花)
7 摂食・嚥下障害/摂食障害
 1 摂食・嚥下障害(鈴木香代)
 2 摂食障害(吉田妃佐)
8 がん
 (川ア麻由)
9 整形外科疾患
 (小西沙苗)
10 その他
 1 外傷・熱傷(谷村由衣)
 2 褥瘡(真壁 昇)

 付録 栄養剤・栄養補助食品・輸液製剤一覧
 索引