やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 栄養教諭制度が2005(平成17)年4月よりスタートしてから,はや3年の月日が流れました.それ以後各地で,栄養教諭の活躍が報告されています.
 栄養教諭は,管理栄養士・栄養士課程の卒業を基礎資格とした教諭職であり,栄養に関する専門性と教育に関する専門性を併せ持つことが求められます.したがって,栄養教育実習は,「教育職員免許法」に位置づけられており,これらの資質を高めるために実施されます.栄養教諭養成課程における総まとめともいえる単位です.そのため,栄養教育実習に臨む実習生には,真摯な気持ちで実習に取り組み,授業のみならず,学校教育全般にわたって積極的に係わっていただきたいのです.そして,学校教育という現場で,子どもたちと真剣に向き合い,子どもたちの範となるように行動していただきたいと思います.実習生は,学生であるとともに,児童生徒にとっては教諭でもあります.
 本書は,こうしたことを踏まえて,栄養教育実習に臨む実習生が充実した栄養教育実習行えるよう,実習のポイントを簡潔にまとめるとともに,実習内容や実習を通して研究したこと,考察したことなどについて,克明に記録する実習日誌を付記しています.そして,「ルーズリーフ形式」の本書の実習編の必要部分を,必要枚数だけ自由にコピーしてファイルにまとめ,自分だけのオリジナルな実習ノートが作成できるようにも配慮しています.一人ひとりの実習生が,この実習ノートを積極的に創り上げることにより,将来にも,役立つものとなることを願うものです.
 さらに栄養教育実習生を送り出す先生方にとっても,必要最小限で必須の知識や実習方法などを参考にして頂けるように配慮しております.
 なお,著者らは,2006(平成18)年11月に,本書の姉妹編ともいうべき,「栄養教諭のための学校栄養教育論」も出版しています.そこでは,栄養教諭養成課程における「栄養に係わる教育」に関する内容を網羅しつつ,管理栄養士・栄養士としての専門性をいかに教育に生かすかという視点で,教諭として教壇に立つための基本的な教育力を高めることをねらいといたしました.本書とともに携えて,子どもたちの生涯にわたる健康づくりを支える大きな使命を担う新しい栄養教諭の道筋を開拓する一助としていただければ幸いです.
 最後に,栄養教諭を目指す学生たちへの温かいエールと体験談をお寄せ頂きました執筆協力者の方々に厚く感謝申し上げます.下記に御名前を記して,御礼とさせて頂きます.
 時久惠子先生(高知県香南市立野市小学校長)
 小茶明子先生(坂戸市立坂戸中学校学校栄養職員)
 時山久美子先生(坂戸市立大家小学校教諭)
 北村和子先生(香美市立楠目小学校栄養教諭)
 山西 優さん(高知女子大学生活科学部健康栄養学科4回生)
 桧田千裕さん(高知女子大学生活科学部健康栄養学科4回生)
 木暮貴子さん(女子栄養大学短期大学部卒業)
 2008年3月
 著者代表 笠原賀子
 はじめに
基礎編 
I 栄養教育実習の基礎的事項(香川明夫)
 教育実習の法的根拠
  1.「栄養教育実習」実施の法的根拠
   1)養成課程における栄養教育実習
   2)現職の学校栄養職員の栄養教育実習
  2.「栄養教育実習」受入の法的根拠
   1)教育実習の受入
   2)教員養成課程の質的向上を目指す動きと教育実習
   3)受入側の法的根拠
  3.養成課程の中のカリキュラムから
   1)短期大学・専門学校(二種免許状取得レベル)
   2)管理栄養士養成課程(一種免許状取得レベル)
II 栄養教育実習の意義と目指す教師像(香川明夫)
 栄養教育実習の意義とは
 教師の理想像・教師の資質
  1.栄養教育実習の意義
   1)自分と児童生徒との距離を知る
   2)学級担任の動きを知る
   3)学校現場の全体像を知る
   4)指導方法の体験
  2.理想の教師像
   1)情熱のある教師
   2)健康である教師
   3)常に学ぶ教師
  3.教師に求められる資質
   1)「流行と不易」をとらえる事ができる資質
   2)「子ども目線」をとる事ができる資質
   3)全体像をとらえる資質
   4)意思疎通ができる資質
III 栄養教育実習の準備と心得(笠原賀子)
 はじめに
  1.栄養教育実習に臨むにあたって
   1)大学における学びの再構築
   2)実習校の特性に合わせた実習内容の把握
   3)栄養教育実習の意義の明確化・目標設定
  2.事前の準備
   1)実習校との連絡
   2)実習事前の挨拶
   3)実習巡回教員との事前打ち合わせ
   4)携行品の確認
  3.実習期間中の一般的な注意事項
   1)実習直前や実習期間の過ごし方
   2)勤務上の心得
   3)遅刻・早退・欠勤
   4)服装と身だしなみ
   5)挨拶と言葉使い
   6)その他
  4.実習におけるコミュニケーションの構築
   1)自己紹介
   2)児童・生徒への接し方
   3)先生方とのコミュニケーション
  5.教育実習の形態と関わり方
   1)観察実習
   2)参加実習
   3)授業実習
   4)学校給食を「生きた教材」として活用する食に関する指導
   5)研究授業
  6.実習記録の書き方
   1)実習記録の意義
   2)実習記録のとり方
   2)実習日誌の取扱い
  7.事後の総括・まとめ
   1)実習協力校に対して
   2)所属大学・学校において
  8.単位の認定
   1)教育実習の成績と単位の認定
   2)単位認定にあたっての注意
IV 実習計画の立て方(岩間範子)
 はじめに
  1.実習計画
   1)学校給食の年間指導計画
   2)年間指導計画の立案
   3)カリキュラムと実習計画
   4)教科との関連
   5)担任や養護教諭とのティームテーチング
   6)家庭や地域との連携
V 食に関する指導の教育理論と技術(松下広美)
 はじめに
  1.授業をするための教材研究と指導案づくりについて
   1)教材研究とは
   2)学習指導案について
   3)指導案作成の実際
  2.授業展開と工夫
   1)授業構成の工夫
   2)教材教具,資料などの作成
   3)板書計画
   4)食に関する指導全体計画
 栄養教育実習生を受け入れるにあたって(時久惠子,小茶明子,時山久美子,北村和子)
記録編
I 栄養教育実習の記録のとり方と使用上の注意-実習の準備と心得(笠原賀子)
 はじめに
  1.栄養教育実習日誌の記入の仕方
   1)一般的注意事項
   2)書き方
  2.実習の心得:チェックリスト30
II 実習にあたって必要な健康管理の知識(岩間範子)
  1.一般的注意事項
   1)睡眠時間を十分に取る
   2)規則正しく食事をとる
   3)治療中の疾患は完治させておく
   4)予防接種など過去の記録(親子健康手帳など)から免疫があるか確認をしておく
   5)健康保険などの保険者証の控えを携帯する
   6)自分の身体状況の特徴を理解しておく
   7)常備薬(飲みなれた薬,使い慣れた薬)
   8)所属大学・学校側が加入している保険を確認しておく
  2.健康障害が生じた場合の対応
   1)体調の変化を生じた場合
   2)事後対応について
  3.確認事項
   1)緊急時の連絡先
   2)健康保険証の控えまたは健康保険証のカード
III 栄養教育実習日誌
 ・実習校概要
 ・学校の教育方針
 ・給食の記録
 ・実習日程表
 ・実習計画と実施
 ・実習日誌
 ・1日の反省
 ・指導講話や学習会の記録
 ・授業の観察記録
 ・授業実習の記録1:指導案の作成と留意点
 ・授業実習の記録2:授業反省会の記録および意見
 ・授業実習の記録3:授業の反省と今後の課題
 ・個別記録用紙
 ・その他実習諸記録
 ・栄養教育実習を振り返って(総括)
 ・実習の反省と評価
 ・自主研究の記録
 ・栄養教育実習報告書
 ・栄養教育実習報告会まとめ
 ・実習生に関する記録
 ・栄養教育実習出席表
 ・誓約書
 ・栄養教育実習個別評価表
 栄養教育実習を終えて(山西 優,桧田千裕,木暮貴子)

 参考資料
  栄養教諭に関する法律(松下広美)
   1.栄養教諭制度の整備に係る経緯(国の動きなど)
   2.栄養教諭制度創設の趣旨
   3.栄養教諭制度の概要(法令上の位置付け)
   4.栄養教諭の職務内容
    1)食に関する指導
    2)学校給食管理
   5.学校栄養職員との職務内容での違い
   6.栄養教諭に期待される役割とは
   7.栄養教諭の配置
   (指導体制の充実)