やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文

 機能性食品は1980年代に日本の学会が提唱した概念であり,制度化についても世界に先駆けて検討され,特定保健用食品と名称を変え,機能を表示できる食品として1991年に法制化が行われた.これは,科学的根拠があると認めた食品に対して,厚生大臣が特定に保健の用途についての表示を許可する食品の制度である.
 その後,機能性食品は欧米で人気を集め,とくに米国ではDietary Supplementとして発展し,1994年にThe Dietary Supplement Health and Education Actが制定された.
 日本では厚生省の「いわゆる栄養補助食品についての検討会」が1999年4月よりもたれ,2001年3月には保健機能食品制度が創設された.保健機能食品は個別許可型の特定保健用食品と規格基準型の栄養機能食品とがある.ビタミン・サプリメントは栄養機能食品に含まれることとなった.
 最近,ビタミン・サプリメントはコンビニエンスストアなどで手軽に買えるようになり,今後,ますます市場の需要が高まると考えられる.しかし,サプリメントは食物と薬の中間に位置するもので医薬用食物と呼んでもよいものである.したがって,効果もあるが副作用も無視できない.そのため,サプリメントの専門家の育成が活発になった.サプリメントには多くの種類があるが,そのなかでビタミン・サプリメントの利用者が多い.
 そこで本書はビタミンに的を絞ってビタミンの基礎的な知識からビタミンの上手な使い方について専門家に書いていただいた.読者の参考になれば幸甚である.
 なお,第II章「ビタミン欠乏症」は,お茶の水女子大学・大塚恵助教授が担当することになっていたが,他界されたので私が代わりに担当した.将来有望な方を失った.この場を借り大塚恵氏のご冥福を深く祈る.

 2003年10月
 東邦大学医学部教授
 橋詰直孝
エキスパートのためのビタミン・サプリメント

I ビタミンの歴史 ―ビタミン物語
 最初のビタミン-水溶性Bと脂溶性Aの話-
 ビタミンB1の名づけ親になれなかった日本人
 脚気の歴史は紀元前から
 日本の脚気は「江戸煩い」
 洋食が「脚気」を防ぐ?
 ビタミンの発見の歴史はB1から
 ビタミンはアルファベット順?
 戦争中でもビタミンの発見は続く
 ぺラグラは「荒れた皮膚」
 消えたビタミン-その1-
 「抗皮膚炎予防因子」のビタミンB群
 ビタミンB群の細分化はナチスの台頭時代
 悪性貧血治療の主役は,ビタミンB12
 ヴァスコ・ダ・ガマも壊血病?
 ヒトはビタミンCをつくれない
 ビタミンA研究の歴史は,第一次世界大戦とともに始まる
 食品中のビタミンAはカロテノイド
 カロテノイド色素の意外なはたらき
 「くる病」は語源どおり,手足が「曲がる」
 日光はくる病に有効
 「抗不妊因子」のビタミンE
 消えたビタミン-その2-
 ビタミンKは頭文字
 ビタミン似だがビタミンではないビタミン様物質
 おわりに

II ビタミン欠乏症
 今どきビタミン欠乏症の患者さんているのかな?
 ビタミンA欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
 ビタミンD欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  病理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
 ビタミンE欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  病理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
 ビタミンK欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  臨床的特徴
  治療
  経過と予後
 ビタミンB1欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  病理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
  典型的または教育的な症例
 ビタミンB2欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
 ビタミンB6・パントテン酸・ビオチン欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
 ニコチン酸(ナイアシン)欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  病理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
  典型的または教育的な症例
 葉酸,ビタミンB12欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後
  典型的または教育的な症例
 ビタミンC欠乏症
  概念
  病気の成り立ち
  病態生理
  病理
  臨床的特徴
  治療,管理と予防
  経過と予後

III ビタミンのとりすぎによる健康への影響―ビタミンによる副作用
 はじめに
 脂溶性ビタミンのとりすぎ
  ビタミンA(レチノール)のとりすぎ
  ビタミンDのとりすぎ
 ビタミンと活性酸素
  抗酸化ビタミン
  ビタミンEと生活習慣病
  ビタミンEと運動
 ビタミンと先天異常
  先天異常とはなにか
  妊婦のビタミンAのとりすぎ
  葉酸による先天異常の予防
 水溶性ビタミンのとりすぎ
  ナイアシンのとりすぎ
  リボフラビンのとりすぎ
  ビタミンB6のとりすぎ
  ビタミンB12のとりすぎ
  ビオチンのとりすぎ
  ビタミンCのとりすぎ
  アスコルビン酸による疾病の予防
 高齢者とビタミン
 おわりに

IV ビタミン最近のトピックス1 ―水溶性ビタミン
 ビタミンB1(チアミン)
 ビタミンB2(リボフラビン)
 ナイアシン(ニコチンアミド,ニコチン酸)
 ビタミンB6
 葉酸
 ビタミンB12
 ビオチン
 ビタミンC(アスコルビン酸)
 パントテン酸
 ピロロキノリンキノン(PQQ)

V ビタミン最近のトピックス2 ―脂溶性ビタミン
 はじめに
 ビタミンA
  ビタミンAの代謝と生理作用
  カロテノイドの新しい作用
 ビタミンD
  ビタミンDの代謝
  ビタミンDの生理作用と作用メカニズム
 ビタミンE
  ビタミンEの抗酸化機能
  ビタミンEの体内動態と新たな機能
 ビタミンK
  ビタミンKの血液凝固促進作用
  ビタミンKの骨形成促進作用

VI ビタミンの食事摂取基準とは
 はじめに
 ビタミン所要量はどのように策定されるのか
 まとめ

VII 日本・諸外国のサプリメントの考え方
 はじめに
 サプリメントの定義
 アメリカにおけるサプリメントの取り組み方
  サプリメントの法制化
  サプリメントの表示規定
  ODSの活動
 ヨーロッパおよびその他の国々におけるサプリメントの取り組み方
  薬品としてのハーブ
 日本におけるサプリメントの取り組み
 おわりに

VIII よくわかるサプリメント ―ビタミンの上手なとり方
 第六次改定日本人の栄養所要量と食事摂取基準
 ビタミンが欠乏しやすい食事・食生活とは
 ビタミンの必要量の増大
 自他覚症状の観察とサプリメントの活用

ビタミン・サプリメント一覧
索引

用語解説目次
 日本ビタミン標準化検討協議会
 シス,トランス
 活性酸素
 フリーラジカル
 腸内細菌
 HNF-1
 C/EBP
 C-fos
 C-myc
 CD4+CD8-
 CD4-CD8+
 Th1
 Th2
 CD28
 HIV-インテグラーゼ
 グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH Px)
 ラジカル(遊離基)
 血液凝固因子
 キレート
 許容上限摂取量(UL)
 平均必要量(EAR)
 DSHEA
 EBMとEBP
 補酵素