やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

改訂の序

 本書の初版が上梓されてから19有余年.この間,多くの栄養士養成施設における教科書として,また,集団給食施設などでの献立立案・作成のサブノートとしてご利用いただいてきた.ここに著者一同,改めて厚くお礼申しあげる次第である.
 ところで,本書もそろそろ成人を迎えることになるが,われわれを取り巻く栄養界では,1997年に,ご存知のように「成人病」の呼称が「生活習慣病」に変更され,また,1999年には,「第六次改定日本人の栄養所要量─食事摂取基準」が策定され,新しい概念の導入などから,一時期,献立作成にあたって戸惑いを生じさせられたこともあった.2000年には,21世紀のわが国を,すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするため,壮年期死亡の減少,健康寿命の延伸および生活の質の向上を実現することを目的とした「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が2010年度を目処として示され,栄養・食生活などに対して具体的な達成目標が設定された.また,同年,われわれの永年の念願であった栄養士法の一部改正が実現し,管理栄養士の登録制が免許制に改められ,あわせて,栄養士・管理栄養士の業務が明確化され,業務内容の具体的方向性が示された.また,献立作成面に直接かかわり合いをもつ食品成分表が,1982年の四訂成分表公表以来,実に18年ぶりに新しい知見などに基づき「五訂日本食品標準成分表」として公表された.
 これらの施策に対応すべく,本書のほぼ全面的改訂を次のような視点から行った.すなわち,
 1.五訂日本食品標準成分表の公表に伴う訂正を行った.
 2.各献立例は,問題点を挙げて,その改善例まで示した.
 3.判型を大きくして紙面構成を刷新し,また2色刷りにしてより見やすく,理解しやすく,利用しやすいマニュアルを目指した.
 4.それぞれの専門分野に新しい執筆者を加えて,各項目の充実を図った.
 献立論の理解,献立の立案・作成の手引きとして,今後とも大いにご利用,ご活用いただければ幸いである.
 2002年2月
 著 者

はしがき

 給食管理業務は,すべて献立を中心として展開される.それは計画・立案にはじまり喫食に至るまでの,実に数多くのファクター一つ一つの集積であり,いうなれば,献立は栄養学をはじめとした食品,衛生,調理,経済,心理学等々が,それぞれ,たて糸,よこ糸として織りなされた織物であるともいえよう.それだけに,このたて糸,よこ糸の種類,組み合わせ,また,織り方によって,実にいろいろの織物ができ上がる.
 喫食者の嗜好に迎合すれば,栄養上からみて好ましくない献立になりかねないし,逆に,あまりにも栄養面にこだわると喫食者の嗜好を無視した内容の献立にもなりかねない.さらに,経済というものを考えれば,使用食品・予算制約といったことに頭を悩ますこともある.また,このような料理を献立に盛り込みたいと思っても,施設・設備ないしは人手の面でままならない.
 “食べる“ということは,きわめて日常性の高い行動であり,いわば泥くさいものである.このようなこともあってか,“食事づくり”がややもすれば,実験科学などにくらべて軽く見られがちである.しかし,われわれの健康の維持・増進,疾病の治癒ないし促進は食べることなくしてはあり得ない.
 献立は,どのような理論のうえに立って,具体的には,どのようなものを,どのくらい,どのようにして食べてもらうか,の一つの指標ともなるべきものである.この指標づくりには,理論はいうまでもなく,日常の訓練と経験の集積に負うところもすくなくない.それと同時に,料理のレパートリーを大いにひろげておくことも必要であろう.座右のノートとしてご活用いただければ幸甚である.
 終わりに臨み,発刊にあたって終始ご尽力いただいた医歯薬出版株式会社の方々に厚くお礼申し上げる次第である.
 昭和58年2月
 著 者
第1章 献立作成にあたって 赤羽正之
 1.献立とは
 2.献立の考え方
 3.献立の要件
  1)栄養の問題
  2)食品の問題
  3)料理・おいしさの問題
   (1)化学的感覚
   (2)物理的感覚
   (3)心理的感覚
   (4)生理的感覚
  4)食費の問題
  5)安全の問題
第2章 献立作成の理論と実際 富岡和夫
 1.献立立案までの基礎計画
  1)集団給食の目的
  2)献立作成までの手順
  3)給与栄養基準量
   (1)給与栄養基準量とは
   (2)給与栄養基準量の決定方法
   (3)日本人の栄養所要量
   (4)給与栄養基準量の求め方
  4)食品群別荷重平均栄養成分について
   (1)食品群とは
   (2)食品群別荷重平均栄養成分とは
   (3)五訂日本食品標準成分表
   (4)栄養量の求め方
   (5)食品群別荷重平均栄養成分の求め方
  5)食品構成
   (1)食品構成と食品構成表
   (2)食品構成をまとめるにあたって
   (3)食品構成表をつくるための準備
   (4)食品構成をつくる
 2.献立表の役割と様式
  1)献立表の役割
  2)献立表の様式
 3.栄養出納計算
  1)栄養出納とは
  2)栄養出納計算に必要な書類
   (1)食品類別分類名
   (2)献立表の様式
   (3)栄養出納表
  3)栄養出納の計算と判定の要領
第3章 献立の見方,読み方,考え方
 1.献立の立案と献立計画 中川 悦
  1)献立の種類
   (1)定食献立
   (2)複数献立
   (3)カフェテリア形式の献立
  2)献立立案の留意点
  3)献立立案と献立表
  4)献立計画
   (1)献立計画の基本的事項
   (2)年間計画
   (3)月間・旬間計画
   (4)1週間の計画
   (5)1日3食の栄養配分
 2.予定献立の作成 桂きみよ
  1)献立表の種類
  2)予定献立作成の手順
   (1)型紙を利用した献立作成
   (2)記載の仕方
  3)記入上の注意
 3.献立の評価の仕方
  1)評価の重要性
  2)評価のための留意点
  3)評価の実践
  4)献立の評価
第4章 施設別献立の特徴と献立作成
 1.学校給食の献立作成 冨田教代
  1)学校給食の目的と特徴
  2)学校給食の種類
  3)学校給食の運営
   (1)単独校調理方式
   (2)共同調理場方式
  4)献立作成の要点
   (1)所要栄養量基準と標準食品構成表
   (2)献立作成にあたっての留意点
  5)献立の評価
 2.事業所給食の献立作成 大島恵子
  1)事業所給食の目的
  2)事業所給食の特徴
   (1)対象者
   (2)経営形態
   (3)給食形態
   (4)健康づくりへの取り組み
  3)事業所給食の種類
   (1)オフィス給食
   (2)工場給食
   (3)事業所付属施設給食
  4)献立作成の要点
   (1)給与栄養基準量の算定
   (2)食品構成
   (3)献立作成にあたっての留意点
  5)献立の評価
 3.社会福祉施設給食の献立作成 飯樋洋二
  1)社会福祉施設給食の目的と特徴
  2)献立作成の要点
   (1)児童福祉施設における給食
   (2)高齢者を対象とした社会福祉施設における給食
  3)献立の評価
 4.病院給食の献立作成 西川貴子
  1)病院給食の目的と献立作成の意義
  2)病院給食の特徴
   (1)入院時食事療養制度
   (2)食事の種類
   (3)約束食事箋
  3)献立作成の要点
   (1)給与栄養基準量と食品構成
   (2)献立作成にあたっての留意点
   (3)献立展開の留意点
  4)献立の評価
    献立作成が上手になるために 富岡和夫
 付表
  1.調理による食品の重量変化率(五訂日本食品標準成分表)
  2.調理方法の概要(五訂日本食品標準成分表)
 索引