やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

改訂に当たって

 平成11年に第六次日本人の栄養所要量が策定されました.さらに個人の日常生活や集団給食の場で実際に利用出来るように,食事摂取基準の活用方法が具体的に例示されました.
 一方,18年ぶりに食品成分値が改定され五訂食品成分表が公表されるなど,栄養学分野における基礎的な情報が次々と改正されています.
 以上のような状況の変化を契機に,本書も抜本的に内容の見直しと修正を行いました.中でも新しい食品の利用や成分値の紹介,集団給食の栄養基準値の変更に伴う献立の修正,すべての献立にわたり栄養価計算の修正などに留意しました.
 最近,子どもたちの食生活は多くの問題を抱えています.生活が不規則になったための朝食欠食者の増加,バラバラに食事をする家族が増えたことによる孤食への影響,食欲不振者の増加,心のケアの問題など,対応を迫られる課題が山積しております.
 子どもたちに人生のスタートでの『食』と出会いを良くし,心と体を健やかに育む『食生活』についての教育を行う者への期待は今後ますます高まって来ることでしょう.
 本書が食教育や保育を担当される方々の一助となることを願ってやみません.
 平成13年12月 著者一同

まえがき

 小児,なかでも乳幼児期における栄養の適否は,健全な成長・発育を左右し,将来の健康づくりの基礎となる.しかも,栄養補給源である食物の摂り方はまったく受動的で,保育にたずさわる者たちが選び与える食形態である.換言すれば乳幼児の健康は保育担当者によって支配されるという特性をもっている.また,同時に人生の出発点から,食との出会い,楽しみ,喜び,そして食習慣など,人間生活の基礎がこの年代に芽ばえ,はぐくまれていく.
 これらの点からも,小児期の保育担当専門者となる保母や,幼児教育者の役割と責任は非常に重大であろう.
 現在,保母および幼児教育者養成課程では,教科目として厚生省規定による小児栄養実習1単位を開講している.しかし小児栄養の重要性と食物の成立,摂食過程を考えれば,栄養学・食品学・調理学等,各分野の基礎をふまえ,特殊栄養学・集団給食,そして栄養指導等の応用学的分野と密接な関係をもっている.
 このたび本書を執筆するにあたり,1単位の履習では時間的に困難と思われるが教科目としての必要不可欠部分をとりあげてみた.また内容的には次の点に考慮した.
 1 全体を総論,各論に分類し,総論は理論面,各論では実習面を重視した.
 2 保育担当者が乳幼児の栄養教育に果たす役割の重要さから,この領域を重視した.
 3 紙面の都合で献立や演習用の空表は最少限に割愛した.
 4 限られた時間内での教育のため,内容は要点的に簡潔化を試みた.
 小児期は乳幼児期から学童期までと広く,さらに厚生省カリキュラム基準では妊産婦栄養も重視しているところから小児期に加え妊産婦栄養も解説した.したがって年代的・内容的にも広域におよぶが教科用テキストとしてのみでなく,現場においても幅広く活用していただきたい.
 本書出版にあたり医歯薬出版をはじめ諸兄姉の御指導,御協力に厚くお礼申しあげます.また,学識的にも未熟な点が多いことながら,今後とも諸先生方のご教示,ご叱正を賜われば幸いに存じます.
 昭和53年3月 著者一同
I 総 論
 第1章 /序 論
   1.栄養の意義
   2.小児栄養の特徴
     1)小児期の分類
     2)小児栄養の特異性
     3)成長と発育
 第2章 /エネルギー代謝(熱量代謝)
   1.エネルギーとカロリー
     1)エネルギー
     2)カロリー
   2.食品のエネルギーと生理的燃焼値
     1)食品のエネルギー
     2)生理的燃焼値
   3.エネルギー所要量
     1)基礎代謝
     2)エネルギー所要量
     3)生活活動強度
     4)成長に伴う体重増加のために必要なエネルギー
 第3章 /栄養素
   1.糖 質
     1)栄養学的意義
     2)代謝および栄養生理
   2.脂 質
     1)栄養学的意義
     2)代謝および栄養生理
   3.たんぱく質
     1)栄養学的意義
     2)代謝および栄養生理
     3)アミノ酸およびたんぱく質の栄養価について
   4.無機質と水
     1)栄養学的意義
     2)水の代謝
     3)無機質の役割
   5.ビタミン
     1)栄養学的意義
     2)脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの役割
 第4章 /消化・吸収
   1.小児の消化管の特徴
   2.消化酵素とその作用
   3.栄養素と消化吸収
 第5章 /栄養所要量
   1.栄養所要量の算定
     1)エネルギー所要量
     2)脂肪のエネルギー比率
     3)たんぱく質所要量
     4)ビタミン所要量
     5)無機質所要量
     6)食品構成
   2.国民栄養の推移と現状
     1)これまでの栄養素等摂取状況ならびに食品群別摂取状況
     2)最近の国民栄養の現状
     3)身体状況
 第6章 /食 品
   1.食品の成分
   2.食品の分類
     1)植物性食品
     2)動物性食品
     3)油脂類
     4)甘味食品
     5)嗜好飲料類
     6)調味料および香辛料類
     7)強化食品
     8)調理加工食品

II 各 論
 第1章 /献立・調理
   1.献 立
     1)献立の意義
     2)献立作成の手順
     3)栄養価算定
     4)食品の発注および購入
   2.調 理
     1)調理の意義
     2)調理の方法
     3)調理の基礎
     4)実習心得
 第2章 /対象別栄養
   1.乳児期栄養
     1)乳児期栄養の特性
     2)乳児の栄養所要量
     3)授乳栄養
     4)離乳栄養
   2.幼児期栄養
     1)幼児期栄養の特性
     2)幼児期の栄養所要量と食品構成
     3)のぞましい食事のとり方
     4)幼児期栄養の問題点
   3.学童期栄養
     1)学童期栄養の特性
     2)学童期の栄養所要量および食品構成
     3)のぞましい食事のとり方
     4)学童期栄養の問題点
   4.妊産婦栄養
     1)妊産婦栄養の特性
     2)妊産婦の栄養所要量および食品構成
     3)のぞましい食事のとり方
     4)妊産婦栄養の問題点
 第3章 /集団給食
   1.集団給食の意義
   2.保育所給食
     1)保育所給食の意義
     2)保育所給食の特性
     3)保育所給食の留意点
     4)保育所給食の実際
     5)保育所給食の効果判定
   3.その他の児童福祉施設給食
     1)児童福祉施設給食の意義
     2)児童福祉施設給食の栄養所要量
     3)各施設の特殊性および留意点
     4)給食の実際
   4.学校給食
     1)学校給食の意義
     2)学校給食の種類
     3)学校給食の実際
 第4章 /幼児の栄養教育
   1.栄養教育の意義
   2.栄養教育の基本
     1)栄養教育の基礎知識
     2)集団給食における食習慣指導
   3.栄養教育の実際
     1)栄養教育の方法,技術
     2)教育媒体
   4.評 価
     1)評価の意義
     2)評価の種類
   5.集団給食管理
     1)給食管理の意義
     2)幼児の食事調査
     3)給食管理の実際
     4)研究の推進

 参考文献