序言
21世紀を迎え,医学医療はますます高度な発展を遂げようとしている.
先端医療が進むにつれ,医療の分野では細分化,機能分担がより進められることになるだろう.その結果,特殊な専門知識や技術をもつ職種が積極的に医療の前面に立つと思われる.従来は医師が医療の主導権を握っていた.しかし,一人の医師が発揮できる知識・技能にはおのずと限界がある.多くの専門職種の意見を聞き,協力を仰がなければ,高度の医療はもはやなしえない状況になっている.
すなわち,医師のみならず,看護職員,薬剤師,栄養士,臨床検査技師,診療放射線技師,臨床工学士,作業療法士,言語療法士,視能訓練士など,多くのコメディカル職員が協力し,一人の患者をケアすることが必須なのである.
チーム医療を行うとなれば,互いの職種が綿密な連携をとらなくてはならない.患者の診断や治療をめぐり,専門が違うというだけの理由で相反する医療が実施されようものなら,高度な医療はおろか,満足な医療とはほど遠くなってしまいかねない.そうした弊害をなくすには,患者の病態や治療方針については,カンファレンスなどを通じて,すべての医療職が議論をし,一致した見解のもとで医療を行うことが欠かせない.
さて,現代の医療で主役をなすのは,診療科のいかんを問わず,薬物療法である.薬物療法については,医師あるいは薬剤師は精通している.しかし,ほかのコメディカルとなれば,縁が遠いのではないだろうか.実際,コメディカルの人と治療方針について議論する場合,薬物療法に対する意見はコメディカルの人からあがってくることはほとんどない.それは,十分な教育を受けてなく,かつ実際に自らが薬物療法を行う機会がないためであろう.
しかし,チーム医療を実践するには,すべての医療行為について,ある程度の知識をもっておくことは重要である.共通言語を有さなければ,いくらカンファレンスを開いても,議論がかみ合うことはなく,時間の浪費に終わってしまう.オーケストラを演奏するのに,共通の音符が必要なのと同じである.奏者すべてが音符を読めないのでは,オーケストラが成立しようはずがあるまい.
本書では,以上のような観点から,薬物療法がどのように行われているのか,ポピュラーな疾患について解説することにした.薬物療法がいかに行われているのか,ぜひコメディカルの職員に理解してもらいたいのが本書の趣旨である.もちろん無限にもある薬物をすべからく紹介することはできなかった.しかし,この本で基礎知識を身に付けていただければ,あとは薬物の解説書を読んでいただくこともわけがなくなると思う.
本書は,2000年に出版した「看護・栄養指導のための臨床検査ハンドブック」の姉妹書である.同書は,やはりコメディカルを対象に,臨床検査の基礎的知識を解説した.著者の意図が理解されたのか,わずか1年間に3刷を重ねるほどの好評を博した.おそらくすべての医療職員が,種々の角度から病態を把握することの重要性を理解していただいたことと思う.
本書についても,看護婦(士),薬剤師,栄養士,臨床検査技師など,多くのコメディカルスタッフに読んでいただき,医療の現場で役立てていただきたいと思う.また,コメディカルスタッフを養成する大学,短期大学,専修学校などの教育施設で,教科書としてご利用いただければ幸いである.
なお,本書の企画・編集には,医歯薬出版(株)編集部にご協力いただいた.ここに深謝したい.
2001年 初春 奈良信雄
21世紀を迎え,医学医療はますます高度な発展を遂げようとしている.
先端医療が進むにつれ,医療の分野では細分化,機能分担がより進められることになるだろう.その結果,特殊な専門知識や技術をもつ職種が積極的に医療の前面に立つと思われる.従来は医師が医療の主導権を握っていた.しかし,一人の医師が発揮できる知識・技能にはおのずと限界がある.多くの専門職種の意見を聞き,協力を仰がなければ,高度の医療はもはやなしえない状況になっている.
すなわち,医師のみならず,看護職員,薬剤師,栄養士,臨床検査技師,診療放射線技師,臨床工学士,作業療法士,言語療法士,視能訓練士など,多くのコメディカル職員が協力し,一人の患者をケアすることが必須なのである.
チーム医療を行うとなれば,互いの職種が綿密な連携をとらなくてはならない.患者の診断や治療をめぐり,専門が違うというだけの理由で相反する医療が実施されようものなら,高度な医療はおろか,満足な医療とはほど遠くなってしまいかねない.そうした弊害をなくすには,患者の病態や治療方針については,カンファレンスなどを通じて,すべての医療職が議論をし,一致した見解のもとで医療を行うことが欠かせない.
さて,現代の医療で主役をなすのは,診療科のいかんを問わず,薬物療法である.薬物療法については,医師あるいは薬剤師は精通している.しかし,ほかのコメディカルとなれば,縁が遠いのではないだろうか.実際,コメディカルの人と治療方針について議論する場合,薬物療法に対する意見はコメディカルの人からあがってくることはほとんどない.それは,十分な教育を受けてなく,かつ実際に自らが薬物療法を行う機会がないためであろう.
しかし,チーム医療を実践するには,すべての医療行為について,ある程度の知識をもっておくことは重要である.共通言語を有さなければ,いくらカンファレンスを開いても,議論がかみ合うことはなく,時間の浪費に終わってしまう.オーケストラを演奏するのに,共通の音符が必要なのと同じである.奏者すべてが音符を読めないのでは,オーケストラが成立しようはずがあるまい.
本書では,以上のような観点から,薬物療法がどのように行われているのか,ポピュラーな疾患について解説することにした.薬物療法がいかに行われているのか,ぜひコメディカルの職員に理解してもらいたいのが本書の趣旨である.もちろん無限にもある薬物をすべからく紹介することはできなかった.しかし,この本で基礎知識を身に付けていただければ,あとは薬物の解説書を読んでいただくこともわけがなくなると思う.
本書は,2000年に出版した「看護・栄養指導のための臨床検査ハンドブック」の姉妹書である.同書は,やはりコメディカルを対象に,臨床検査の基礎的知識を解説した.著者の意図が理解されたのか,わずか1年間に3刷を重ねるほどの好評を博した.おそらくすべての医療職員が,種々の角度から病態を把握することの重要性を理解していただいたことと思う.
本書についても,看護婦(士),薬剤師,栄養士,臨床検査技師など,多くのコメディカルスタッフに読んでいただき,医療の現場で役立てていただきたいと思う.また,コメディカルスタッフを養成する大学,短期大学,専修学校などの教育施設で,教科書としてご利用いただければ幸いである.
なお,本書の企画・編集には,医歯薬出版(株)編集部にご協力いただいた.ここに深謝したい.
2001年 初春 奈良信雄
薬物療法の基本
1 薬物療法の位置づけ・意義…… 2
2 薬物療法を実施するうえでの注意点…… 3
3 与薬のプロセス…… 4
4 服薬指導…… 5
5 薬物の種類…… 8
6 薬物の作用と副作用(副反応)…… 19
7 食物の影響…… 20
疾患別 薬の使い方
1 消化器疾患…… 24
■逆流性食道炎…… 24
■急性胃炎…… 26
■慢性胃炎…… 28
■胃・十二指腸潰瘍…… 30
■急性腸炎…… 32
■過敏性腸症候群…… 34
■クローン病…… 36
■潰瘍性大腸炎…… 38
■便秘症…… 40
2 肝・胆道・膵疾患…… 42
■急性肝炎…… 42
■慢性肝炎…… 44
■肝硬変…… 46
■急性胆炎…… 49
■胆石症…… 51
■急性膵炎…… 53
■慢性膵炎…… 55
3 心臓・循環系疾患…… 58
■不整脈…… 58
■心臓弁膜症…… 62
■心不全…… 65
■狭心症…… 68
■急性心筋梗塞…… 71
■高血圧症…… 74
■低血圧症…… 78
■動脈硬化症…… 80
4 呼吸器疾患…… 82
■かぜ症候群,インフルエンザ…… 82
■気管支喘息…… 85
■急性気管支炎…… 88
■慢性気管支炎…… 90
■肺炎…… 92
■肺結核症…… 96
5 代謝性疾患…… 98
■肥満…… 98
■糖尿病…… 100
■高脂血症…… 103
■高尿酸血症,痛風…… 106
■ビタミン欠乏症…… 108
6 内分泌疾患…… 112
■先端肥大症…… 112
■尿崩症…… 113
■甲状腺機能亢進症…… 114
■甲状腺機能低下症…… 116
■クッシング症候群…… 118
■アジソン病…… 120
■原発性アルドステロン症…… 122
7 腎・泌尿器疾患…… 124
■急性糸球体腎炎…… 124
■慢性糸球体腎炎…… 126
■ネフローゼ症候群…… 128
■腎盂腎炎…… 130
■急性腎不全…… 132
■慢性腎不全…… 134
■尿路結石症…… 136
■膀胱炎…… 138
■前立腺肥大症…… 140
8 血液疾患…… 142
■鉄欠乏性貧血…… 142
■巨赤芽球性貧血…… 144
■自己免疫性溶血性貧血…… 146
■再生不良性貧血…… 148
■特発性血小板減少性紫斑病…… 151
■無顆粒球症…… 153
■急性白血病…… 155
■慢性白血病…… 158
■悪性リンパ腫…… 160
■多発性骨髄腫…… 162
■血友病…… 164
9 免疫異常症・アレルギー性疾患…… 166
■慢性関節リウマチ…… 166
■全身性エリテマトーデス…… 168
■全身性硬化症…… 170
■多発性筋炎・皮膚筋炎…… 172
■ベーチェット病…… 174
■シェーグレン症候群…… 176
■薬物アレルギー…… 178
10 脳・神経系疾患…… 180
■脳出血…… 180
■脳梗塞(脳血栓,脳塞栓)…… 182
■脳炎…… 184
■髄膜炎…… 186
■パーキンソン病…… 188
■多発性硬化症…… 190
■重症筋無力症…… 192
11 骨・関節・筋肉疾患…… 194
■骨粗鬆症…… 194
■骨軟化症(くる病)…… 196
■肩関節周囲炎(五十肩)…… 198
12 皮膚疾患…… 200
■白癬…… 200
■アトピー性皮膚炎…… 202
■じんま疹…… 204
■帯状疱疹…… 206
13 感染症…… 208
■敗血症…… 208
■溶連菌感染症(含猩紅熱)…… 211
■細菌性食中毒…… 213
■細菌性赤痢…… 216
■腸チフス…… 218
■コレラ…… 220
■麻疹…… 222
■りん病…… 224
■梅毒…… 226
14 心因性疾患…… 228
■うつ病…… 228
■自律神経失調症…… 230
■不眠症…… 232
15 眼疾患…… 234
■結膜炎…… 234
■麦粒腫…… 236
16 耳鼻疾患…… 238
■外耳炎…… 238
■中耳炎…… 240
■メニエール病…… 242
■アレルギー性鼻炎,花粉症…… 244
■副鼻腔炎…… 246
17 婦人科疾患…… 248
■月経困難症…… 248
■更年期障害…… 250
■子宮内膜症…… 252
■乳腺炎…… 254
18 小児科疾患…… 256
■熱性痙攣…… 256
■急性乳児下痢症…… 258
索引……261
1 薬物療法の位置づけ・意義…… 2
2 薬物療法を実施するうえでの注意点…… 3
3 与薬のプロセス…… 4
4 服薬指導…… 5
5 薬物の種類…… 8
6 薬物の作用と副作用(副反応)…… 19
7 食物の影響…… 20
疾患別 薬の使い方
1 消化器疾患…… 24
■逆流性食道炎…… 24
■急性胃炎…… 26
■慢性胃炎…… 28
■胃・十二指腸潰瘍…… 30
■急性腸炎…… 32
■過敏性腸症候群…… 34
■クローン病…… 36
■潰瘍性大腸炎…… 38
■便秘症…… 40
2 肝・胆道・膵疾患…… 42
■急性肝炎…… 42
■慢性肝炎…… 44
■肝硬変…… 46
■急性胆炎…… 49
■胆石症…… 51
■急性膵炎…… 53
■慢性膵炎…… 55
3 心臓・循環系疾患…… 58
■不整脈…… 58
■心臓弁膜症…… 62
■心不全…… 65
■狭心症…… 68
■急性心筋梗塞…… 71
■高血圧症…… 74
■低血圧症…… 78
■動脈硬化症…… 80
4 呼吸器疾患…… 82
■かぜ症候群,インフルエンザ…… 82
■気管支喘息…… 85
■急性気管支炎…… 88
■慢性気管支炎…… 90
■肺炎…… 92
■肺結核症…… 96
5 代謝性疾患…… 98
■肥満…… 98
■糖尿病…… 100
■高脂血症…… 103
■高尿酸血症,痛風…… 106
■ビタミン欠乏症…… 108
6 内分泌疾患…… 112
■先端肥大症…… 112
■尿崩症…… 113
■甲状腺機能亢進症…… 114
■甲状腺機能低下症…… 116
■クッシング症候群…… 118
■アジソン病…… 120
■原発性アルドステロン症…… 122
7 腎・泌尿器疾患…… 124
■急性糸球体腎炎…… 124
■慢性糸球体腎炎…… 126
■ネフローゼ症候群…… 128
■腎盂腎炎…… 130
■急性腎不全…… 132
■慢性腎不全…… 134
■尿路結石症…… 136
■膀胱炎…… 138
■前立腺肥大症…… 140
8 血液疾患…… 142
■鉄欠乏性貧血…… 142
■巨赤芽球性貧血…… 144
■自己免疫性溶血性貧血…… 146
■再生不良性貧血…… 148
■特発性血小板減少性紫斑病…… 151
■無顆粒球症…… 153
■急性白血病…… 155
■慢性白血病…… 158
■悪性リンパ腫…… 160
■多発性骨髄腫…… 162
■血友病…… 164
9 免疫異常症・アレルギー性疾患…… 166
■慢性関節リウマチ…… 166
■全身性エリテマトーデス…… 168
■全身性硬化症…… 170
■多発性筋炎・皮膚筋炎…… 172
■ベーチェット病…… 174
■シェーグレン症候群…… 176
■薬物アレルギー…… 178
10 脳・神経系疾患…… 180
■脳出血…… 180
■脳梗塞(脳血栓,脳塞栓)…… 182
■脳炎…… 184
■髄膜炎…… 186
■パーキンソン病…… 188
■多発性硬化症…… 190
■重症筋無力症…… 192
11 骨・関節・筋肉疾患…… 194
■骨粗鬆症…… 194
■骨軟化症(くる病)…… 196
■肩関節周囲炎(五十肩)…… 198
12 皮膚疾患…… 200
■白癬…… 200
■アトピー性皮膚炎…… 202
■じんま疹…… 204
■帯状疱疹…… 206
13 感染症…… 208
■敗血症…… 208
■溶連菌感染症(含猩紅熱)…… 211
■細菌性食中毒…… 213
■細菌性赤痢…… 216
■腸チフス…… 218
■コレラ…… 220
■麻疹…… 222
■りん病…… 224
■梅毒…… 226
14 心因性疾患…… 228
■うつ病…… 228
■自律神経失調症…… 230
■不眠症…… 232
15 眼疾患…… 234
■結膜炎…… 234
■麦粒腫…… 236
16 耳鼻疾患…… 238
■外耳炎…… 238
■中耳炎…… 240
■メニエール病…… 242
■アレルギー性鼻炎,花粉症…… 244
■副鼻腔炎…… 246
17 婦人科疾患…… 248
■月経困難症…… 248
■更年期障害…… 250
■子宮内膜症…… 252
■乳腺炎…… 254
18 小児科疾患…… 256
■熱性痙攣…… 256
■急性乳児下痢症…… 258
索引……261