やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 接着ブリッジの歯質削除量は少なく,支台歯のダメージは小さい.理念として大変望ましいが,接着ブリッジを臨床で適用する歯科医師は思いのほか少ないと聞く.これは不良な経過を辿ったケースの経験があるか,あるいは感覚的に脱離のリスクを恐れているためと思われる.
 一方,この30 年余の間に材料の開発と改良が重ねられるのと並行して,数多くの研究成果と臨床例が蓄積され,接着ブリッジは成熟した技法へ進化した.近年の接着ブリッジの臨床成績は,従来型のブリッジと比べて遜色ないことが明らかとなっている.
 しかしながら,接着ブリッジの適用に際しては,厳守しなければならない事項がいくつかあることもわかってきた.このなかには,従来の歯冠補綴にはなかった概念やテクニックが含まれる.そこで,これらを解説しつつ現時点での到達点と限界を示す記事を『歯界展望』2014 年の1〜 8 月号に連載した.本書はこれをベースに構成したものである.
 Lesson1からLesson8まで8 コマの講義を受講するような感覚で順に読み進めば,ひと通りの知識が得られるようになっている.タイトルにあるように,筆者は,これから取り組もうかと考えておられる歯科医師に特に読んでほしいと願っている.接着ブリッジの臨床実施にあたり,本書が幾ばくかでもお役に立つならば,筆者として無上の喜びである.
 2015 年10 月
 九州歯科大学口腔機能学講座生体材料学分野
 清水博史
 はじめに
Lesson 1 接着ブリッジ総論
 (清水博史)
 接着ブリッジとは
 ガイドライン
 適応症
Lesson 2 検査
 支台歯の検査
 欠損部の検査
 咬合の検査
 口腔衛生状態と指導
Lesson 3 前歯接着ブリッジの基本的デザインと支台歯形成
 接着界面は剪断と剥離に弱い
 デザインで考慮すべき事項
 前歯の基本的デザイン
Lesson 4 臼歯接着ブリッジの基本的デザインと支台歯形成
 臼歯のデザイン
 初期のメリーランドブリッジ型
 L字型
 D字型
Lesson 5 咬合を考慮したデザイン
 咬合を考慮した臼歯のデザイン
 咬合を考慮した前歯のデザイン
Lesson 6 印象と歯科技工
 (清水博史・福井淳一)
 印象採得と咬合採得
 作業用模型
 ワックスアップと鋳造,前装および完成
Lesson 7 前処理と装着およびメインテナンス
 (清水博史・松村英雄)
 試適とリテーナー内面の汚染
 リテーナーの前処理
 支台歯の前処理
 装着
 メインテナンス
Lesson 8 接着ブリッジの歴史と今後の展望
 (清水博史・松村英雄)
 なぜ補綴領域で接着の発想が生まれたか
 接着ブリッジ誕生までの歴史
 接着ブリッジの歴史
 今後の展望

 文献
 索引