やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯科矯正学は近年目まぐるしい発展を遂げており,楽しみ尽くすことのない奥の深い学問です.私が歯科矯正学を学び始めたころは,数えるほどしかなかった関連書籍も今や多数存在しますが,残念ながら玉石混合で科学的根拠の乏しいものも散見されます.その中で信頼できる書籍を選んで網羅することは容易ではありません.
 近年の厳しい歯科医師国家試験を受験する学生にとっては,歯科矯正学の中でも歯科医師として具備すべき知識および技能を重要度の高い順に効率よく習得することが必要です.しかし国家試験のために改めて教科書を開いても,その内容は膨大で,項目の重要度,優先度の記載はなく,さらに教科書は歯科矯正学を系統的に章として記載しており,数章にまたがる内容の関連性や付随事項についての記載もわずかです.章を超えて関連項目を包括的に学習することで,理解が深まり応用力が格段に身につくものと考えられます.
 このような考えのもと,本学では歯科医師国家試験対策として長年に渡り歯科矯正学の重要項目をまとめ,学生教育に利用してきました.その内容を“歯科国試パーフェクトマスターシリーズ”として,2016年に第1版を発刊し,6年間好評をいただいておりましたが,このたび第2版としてリニューアルすることとなりました.第2版出版にあたり,歯科医師国家試験出題基準に準拠した内容を精査し,教科書だけでは読者の皆さんが理解しにくい点や間違いやすい点を,写真や図表を多く用いてわかりやすく解説するとともに,関連性の深い項目については章を超えて連結することで,包括的応用力を身に着けられるようにしました.さらに毎年出題される新問題についても詳細に検討し,記載内容の加筆,修正,図の変更,追加などにより漏れのない内容としました.また,臨床実地問題対策として頻出の症例をまとめて付録とし,各症例の特徴,分析値の読み方,治療方針立案,治療による変化などを解説することで,臨床に即した応用力を習得し,タクソノミーII,III型問題にも対応できるようにしました.
 本書をニューアルしたことで歯科矯正学を一層効率よく理解できる力強い1冊になったと自負しております.本書を歯科医師国家試験対策書として活用していただくのはもちろんのこと,ベーシックな歯科矯正学の参考書として歯科医療に携わる多くの方々に利用していただければ望外の喜びです.
 2022年5月
 清水典佳
Chapter 1 成長発育
Chapter 2 咬合
Chapter 3 不正咬合の原因
Chapter 4 診断
Chapter 5 検査・分析
Chapter 6 矯正歯科治療における抜歯
Chapter 7 矯正力
Chapter 8 矯正力に対する生体反応
Chapter 9 固定
Chapter 10 矯正用材料
Chapter 11 矯正用器械・器具
Chapter 12 矯正装置
Chapter 13 乳歯列期・混合歯列期の治療
Chapter 14 永久歯列期の治療
Chapter 15 保定

 付録1 絶対押さえておきたい国試頻出の症例
 付録2 解ける!歯科矯正学
 文献
 索引