第2版発刊にあたって
本書は歯学部および歯科大学において,生理学および口腔生理学を学ぶ学生が座学だけでは理解が困難な生理現象を実際に目で見,手で触れて体験することによって,より理解を深めることを目的に編纂された.
第2版では,初版の内容を大幅に変更し,より口腔生理学に特化した実習内容を増やし,歯科医師にとって必要と思われる項目を盛り込むことを念頭において改訂した.
生理学では,対象となる臓器や器官の形態,あるいはそれを構成する要素の名称を覚えるだけでなく,それぞれの臓器や器官がいかなる機能を有するか,あるいはその機能がいかなるメカニズムで発揮されるかを理解しなければならない.形態学における標本などとは異なり,生理学では機能やメカニズムを評価するため,動きや力などのエネルギー量を客観的な数値に置き換える必要がある.それゆえ,観察されたさまざまな現象を,ある単位を持ったエネルギー量として表現し,刺激に対する変化量やエネルギー量の経時的変化など,さまざまな関連因子との関係を求めなければならない.このように,形態として表すことができないエネルギー変化を座学だけで理解するのは至難の業である.一方で,生理学や口腔生理学では毎日の生活の中で自分自身がいつも経験している身体の働きや感覚を対象としているため,取り扱う内容が常に身近に存在する学問であるともいえる.本書では,日ごろ経験している全身および口腔機能のメカニズムを理解するという観点から,ヒトを対象とした実際の動きや力,あるいは感覚強度を測定し数値化する実験と,ヒトの機能を模倣した動物モデルを用いた実験を選択した.
各項目は歯科医師を目指す学生にとって特に必要と思われる内容であるが,限られた講義時間の中ですべての実験を行うことは不可能である.それぞれの講座において重要と思われる内容を選択し,講義の内容にマッチした実習スケジュールを組み立てていただければ,本書の目的は十分に達成できるものと考える.
最後に,お忙しいなかご執筆いただいた先生方に深甚なる謝意を表したい.また,医歯薬出版の諸氏に心より御礼申し上げる次第である.
2022年2月
執筆者代表 岩田幸一
本書は歯学部および歯科大学において,生理学および口腔生理学を学ぶ学生が座学だけでは理解が困難な生理現象を実際に目で見,手で触れて体験することによって,より理解を深めることを目的に編纂された.
第2版では,初版の内容を大幅に変更し,より口腔生理学に特化した実習内容を増やし,歯科医師にとって必要と思われる項目を盛り込むことを念頭において改訂した.
生理学では,対象となる臓器や器官の形態,あるいはそれを構成する要素の名称を覚えるだけでなく,それぞれの臓器や器官がいかなる機能を有するか,あるいはその機能がいかなるメカニズムで発揮されるかを理解しなければならない.形態学における標本などとは異なり,生理学では機能やメカニズムを評価するため,動きや力などのエネルギー量を客観的な数値に置き換える必要がある.それゆえ,観察されたさまざまな現象を,ある単位を持ったエネルギー量として表現し,刺激に対する変化量やエネルギー量の経時的変化など,さまざまな関連因子との関係を求めなければならない.このように,形態として表すことができないエネルギー変化を座学だけで理解するのは至難の業である.一方で,生理学や口腔生理学では毎日の生活の中で自分自身がいつも経験している身体の働きや感覚を対象としているため,取り扱う内容が常に身近に存在する学問であるともいえる.本書では,日ごろ経験している全身および口腔機能のメカニズムを理解するという観点から,ヒトを対象とした実際の動きや力,あるいは感覚強度を測定し数値化する実験と,ヒトの機能を模倣した動物モデルを用いた実験を選択した.
各項目は歯科医師を目指す学生にとって特に必要と思われる内容であるが,限られた講義時間の中ですべての実験を行うことは不可能である.それぞれの講座において重要と思われる内容を選択し,講義の内容にマッチした実習スケジュールを組み立てていただければ,本書の目的は十分に達成できるものと考える.
最後に,お忙しいなかご執筆いただいた先生方に深甚なる謝意を表したい.また,医歯薬出版の諸氏に心より御礼申し上げる次第である.
2022年2月
執筆者代表 岩田幸一
実験の心得(岩田幸一)
第1編 動物を用いた実習
1.神経の興奮伝導(小野堅太郎)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 標本の作製
II 時値の測定
III 電極入替と不応期の測定
IV 峰分れ:伝導速度と閾値
V 伝導ブロック
2.骨格筋の収縮(上阪直史)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 骨格筋収縮の生物物理学的特性の計測
3.骨格筋の膜電位(岩田幸一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 静止膜電位の計測
II 活動電位発生に対する刺激閾値および閾膜電位の測定
III 時定数(τ)の計測
IV 考察事項
第2編 ヒトを対象とした全身機能に関係した実習
4.血液(奥村 敏)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 毛細管採血
II-1 赤血球の算定
II-2 白血球の算定
III ヘマトクリット値測定
IV 出血時間の測定(Duke法)
V 血液型の判定
5.心電図,呼吸と循環(篠田雅路)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 心電図
II 肺活量測定と呼吸数測定
III 脈拍数の測定
IV 血圧の測定
6.脳波(加藤隆史)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 自発脳波
II 誘発脳波:体性感覚誘発電位
7.体性感覚(澁川義幸)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 重量感覚についてのWeberの法則
II 触-圧点と痛点
III 二点識別閾
IV 歯根膜感覚
8.誘発筋電図(H波,M波)(舩橋 誠)
A 概説
B 目的
C 実験項目
第3編 顎口腔系の機能に関係した実習
9.歯の動揺度(北川純一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 歯の動揺度の測定
10.唾液分泌(石井久淑)
A 概説
B 目的
C 実験項目
11.唾液の性状(吉垣純子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 唾液pHと酸緩衝能の測定
II ヒト唾液アミラーゼ活性の測定(DNS法)
12.皮膚および口腔の血流量測定(合田征司)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 皮膚の血流量測定
II 歯肉の血流量測定
13.舌圧・口唇圧(増田裕次)
A 概要
B 目的
C 実験項目
I 舌圧
II 口唇圧
14.味覚(重村憲徳)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 味覚閾値の測定
II PTC検査
III うま味の相乗効果
IV 味覚修飾物質に関する実験
15.嗅覚(村本和世)
A 概説
B 目的
C 実験項目
16.咀嚼運動と顎反射(井上富雄)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 顎運動
II 咀嚼筋と筋電図
III 顎反射
IV 咬合力
17.咀嚼能力(佐藤義英)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 食品の粉砕度測定法
II グルコース溶出量計測法
18.嚥下・嚥下反射(山村健介)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 水および唾液嚥下時の舌骨上筋の活動
II 水嚥下時の顎位や体位の影響
III 摂食行動に伴う咬筋,舌骨上筋群の活動
19.発声と構音(齋藤 充)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 音声解析ソフトによる声の音波の可視化
II パラトグラム(リンゴグラム)の描記
20.顔面部皮膚・口腔粘膜表面感覚(澁川義幸)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 顔面部皮膚・口腔粘膜,身体各部における感覚点分布密度とパターン検索
II 顔面部皮膚・口腔粘膜,身体各部における二点識別閾値計測
21.歯根膜感覚(澁川義幸)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 歯の位置感覚(植立部位の感覚)の検索
資料
参考文献
索引
第1編 動物を用いた実習
1.神経の興奮伝導(小野堅太郎)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 標本の作製
II 時値の測定
III 電極入替と不応期の測定
IV 峰分れ:伝導速度と閾値
V 伝導ブロック
2.骨格筋の収縮(上阪直史)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 骨格筋収縮の生物物理学的特性の計測
3.骨格筋の膜電位(岩田幸一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 静止膜電位の計測
II 活動電位発生に対する刺激閾値および閾膜電位の測定
III 時定数(τ)の計測
IV 考察事項
第2編 ヒトを対象とした全身機能に関係した実習
4.血液(奥村 敏)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 毛細管採血
II-1 赤血球の算定
II-2 白血球の算定
III ヘマトクリット値測定
IV 出血時間の測定(Duke法)
V 血液型の判定
5.心電図,呼吸と循環(篠田雅路)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 心電図
II 肺活量測定と呼吸数測定
III 脈拍数の測定
IV 血圧の測定
6.脳波(加藤隆史)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 自発脳波
II 誘発脳波:体性感覚誘発電位
7.体性感覚(澁川義幸)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 重量感覚についてのWeberの法則
II 触-圧点と痛点
III 二点識別閾
IV 歯根膜感覚
8.誘発筋電図(H波,M波)(舩橋 誠)
A 概説
B 目的
C 実験項目
第3編 顎口腔系の機能に関係した実習
9.歯の動揺度(北川純一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 歯の動揺度の測定
10.唾液分泌(石井久淑)
A 概説
B 目的
C 実験項目
11.唾液の性状(吉垣純子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 唾液pHと酸緩衝能の測定
II ヒト唾液アミラーゼ活性の測定(DNS法)
12.皮膚および口腔の血流量測定(合田征司)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 皮膚の血流量測定
II 歯肉の血流量測定
13.舌圧・口唇圧(増田裕次)
A 概要
B 目的
C 実験項目
I 舌圧
II 口唇圧
14.味覚(重村憲徳)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 味覚閾値の測定
II PTC検査
III うま味の相乗効果
IV 味覚修飾物質に関する実験
15.嗅覚(村本和世)
A 概説
B 目的
C 実験項目
16.咀嚼運動と顎反射(井上富雄)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 顎運動
II 咀嚼筋と筋電図
III 顎反射
IV 咬合力
17.咀嚼能力(佐藤義英)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 食品の粉砕度測定法
II グルコース溶出量計測法
18.嚥下・嚥下反射(山村健介)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 水および唾液嚥下時の舌骨上筋の活動
II 水嚥下時の顎位や体位の影響
III 摂食行動に伴う咬筋,舌骨上筋群の活動
19.発声と構音(齋藤 充)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 音声解析ソフトによる声の音波の可視化
II パラトグラム(リンゴグラム)の描記
20.顔面部皮膚・口腔粘膜表面感覚(澁川義幸)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 顔面部皮膚・口腔粘膜,身体各部における感覚点分布密度とパターン検索
II 顔面部皮膚・口腔粘膜,身体各部における二点識別閾値計測
21.歯根膜感覚(澁川義幸)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 歯の位置感覚(植立部位の感覚)の検索
資料
参考文献
索引