やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 医学部をもつ各大学には,教員や技術者が長年にわたり作り続けた組織学の実習標本がある.前版では,私が当時勤めていた新潟大学医学部の実習標本を元に組織学アトラスを作成した(1990年).その27年後に作製したこのアトラスは,北海道大学の医学生が使っている実習標本を元に作成した.ここに掲載した図431枚のうち,8枚だけ旧版のものを用いた.標本のおおよその種類は新潟大学のものと同じであるが,用いた組織の固定条件や染色法が異なるし,みえるものが違ってくるのは当然のことである.
 新版では,最もポピュラーなヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本の割合を増やし,弱拡大・中拡大の写真を多くした.そのほうが実習の助けになると思うからである.また,ややくどい説明文の量を減らし,総ページ数も減らした.
 実習時間の減少,教員や技術者の削減,教員の強い研究指向などが背景にあり,組織学実習をパソコン画面上で行うバーチャル実習を行う大学が増えてきている.1枚のできのいい標本があれば,それを学生全員が共有できるメリットはある.しかし,自然博物館で模型やCGだけをみるようなもので,実感がわかない.また百数十人全員が同じ組織像をみて,モニター画面上でスケッチするのも気味が悪い.実際の「なま」の標本でしかも世界に1枚しかない実物(ホンモノ)を,手を動かしてスケッチすることで,観察がより深くなることが期待できるし,発見や感動も伴うはずである.このアトラスが,そういった実際の標本に触れる組織学実習に役立つことを期待してやまない.
 アトラスを編むにあたり適当な標本が北海道大学にはない場合には,新潟大学医学部・歯学部の実習標本をお借りして補充した.こころよく提供していただいた新潟大学医学部の牛木辰男教授,歯学部の前田健康教授には感謝申し上げる.
 平成29年7月
 北海道大学 岩永敏彦
総論
第1章 細胞
 1 細胞小器官(1)
  A 神経細胞のゴルジ装置 B 分泌細胞のゴルジ装置
 2 細胞小器官(2)
  A,B ミトコンドリア
 3 細胞小器官(3)
  A 水解小体 B 分泌果粒
 4 細胞質封入体(1)
  A 皮膚のメラニン色素 B リポフスチン色素
 5 細胞質封入体(2)
  A グリコゲン果粒 B 脂肪滴
 6 細胞骨格
  A アクチンフィラメント B ケラチンフィラメント
 7 微絨毛
  A 線条縁 B 刷子縁
 8 線毛と不動毛
  A 線毛細胞 B 不動毛
 9 細胞分裂とアポトーシス
  A 細胞分裂 B アポトーシス
第2章 上皮組織
 1 単層の扁平上皮と立方上皮
  A 単層扁平上皮 B 単層立方上皮
 2 単層円柱上皮と多列上皮
  A 単層円柱上皮 B 多列上皮
 3 移行上皮と重層扁平上皮
  A 移行上皮 B 重層扁平上皮
 4 上皮間の接着装置
  A タイト結合 B 細胞間橋
 5 腺上皮(1)―上皮内腺
  A 多列上皮の上皮内腺 B 分泌上皮層
 6 腺上皮(2)― 外分泌腺の形のさまざま
  A 管状腺 B 胞状腺
 7 腺上皮(3)― 分泌物のさまざま
  A 漿液腺 B 粘液腺
 8 腺上皮(4)
  A 混合腺 B 細胞間分泌細管
 9 腺上皮(5)
  A,B 唾液腺の介在部と線条部
 10 腺上皮(6)
  A 離出分泌 B 筋上皮細胞
 11 腺上皮(7)
  A,B 脂腺と全分泌
第3章 結合組織
 1 線維成分
  A 膠原線維と弾性線維 B 細網線維
 2 疎性および密性結合組織
  A 疎性結合組織 B 密性結合組織
 3 細網組織
  A 細網細胞 B 細網線維
 4 膠様組織と脂肪組織
  A 膠様組織 B 脂肪組織
 5 脂肪組織
  A 脂肪染色 B 脂肪細胞の細網線維
 6 褐色脂肪と肥満細胞
  A 褐色脂肪 B 肥満細胞
 7 結合組織の遊走細胞
  A マクロファージ B 形質細胞
第4章 軟骨組織
 1 ガラス軟骨
  A,B ガラス軟骨
 2 弾性軟骨と線維軟骨
  A 弾性軟骨 B 線維軟骨
第5章 骨組織
 1 骨(1)
  A 骨の研磨標本 B 骨の脱灰標本
 2 骨(2)
  A オステオン B 骨細胞
 3 骨の発生(1)
  A 骨の発生―膜内骨化 B 膜性骨の一部拡大
 4 骨の発生(2)
  A,B 骨の発生―軟骨内骨化
 5 関節軟骨と骨の改築
  A 関節軟骨 B 骨の改築
第6章 筋組織
 1 筋組織(1)
  A 平滑筋の縦断 B 平滑筋の横断
 2 筋組織(2)
  A 骨格筋の縦断 B 骨格筋の横断
 3 筋組織(3)
  A 筋腱接合部 B 筋紡錘
 4 筋組織(4)
  A 心筋の縦断 B 心筋の横断
第7章 神経組織
 1 ニューロン(1)
  A,B 多極神経細胞
 2 ニューロン(2)
  A ニッスル小体 B ニューロフィラメント
 3 グリア(1)
  A,B 星状膠細胞
 4 グリア(2)
  A 星状膠細胞 B 希突起膠細胞
 5 グリア(3)
  A 上衣細胞 B 脈絡叢
 6 神経節
  A 神経節 B 神経節の衛星細胞
 7 神経線維(1)
  A 髄鞘 B シュミット・ランターマン切痕
 8 神経線維(2)
  A 髄鞘とシュワン細胞 B シュワン細胞
 9 神経線維(3)
  A 神経周膜 B 神経内膜
 10 神経線維(4)
  A 自由神経終末 B 知覚装置―マイスネル小体
 11 髄膜
  A 髄膜 B クモ膜と軟膜
各論
第8章 血液と骨髄
 1 血液塗抹標本(1)
  A 好中球 B リンパ球
 2 血液塗抹標本(2)
  A 単球 B 好酸球
 3 血液塗抹標本(3)
  A 好塩基球 B 果粒白血球のペルオキシダーゼ
 4 血液塗抹標本(4)
  A 巨核球と血小板 B 網状赤血球
 5 骨髄
  A,B 骨髄
第9章 循環器
 1 動脈
  A 弾性型動脈 B 筋型動脈
 2 小動脈
  A 小動脈 B 小動脈とほかの脈管
 3 内皮
  A 弾性型動脈の内膜 B 毛細血管
 4 静脈
  A 下大静脈 B 大腿静脈
 5 動静脈吻合とリンパ管
  A 動静脈吻合 B リンパ管
 6 心臓(1)
  A 洞房結節 B 房室結節
 7 心臓(2)
  A,B プルキンエ線維
 8 心臓(3)
  A 心臓の弁 B 内分泌器官としての心房筋
第10章 リンパ性器官
 1 リンパ球浸潤とリンパ小節
  A リンパ球浸潤 B 孤立リンパ小節
 2 リンパ節(1)
  A リンパ節 B リンパ節の皮質
 3 リンパ節(2)
  A 辺縁洞 B 髄洞
 4 リンパ節(3)
  A 胚中心 B 細網細胞
 5 扁桃(1)
  A,B 口蓋扁桃
 6 扁桃(2)
  A 口蓋扁桃 B 高内皮細静脈
 7 胸腺(1)
  A 胸腺の全体像 B 皮質と髄質
 8 胸腺(2)
  A 髄質 B 上皮性細網細胞
 9 脾臓(1)
  A,B 脾臓の弱拡大
 10 脾臓(2)
  A 脾柱動脈から脾髄動脈 B 白脾髄と中心動脈
 11 脾臓(3)
  A 筆毛動脈 B さや(莢)動脈
 12 脾臓(4)
  A 脾洞 B 脾臓の銀好性線維
第11章 歯
 1 エナメル質
  A エナメル質 B エナメル小柱
 2 象牙質(1)
  A 石灰化球と球間区 B 球間区
 3 象牙質(2)
  A 象牙細管 B 象牙前質と象牙芽細胞
 4 セメント質
  A セメント質 B セメント細胞
 5 神経
  A 歯髄の神経 B 象牙前質の神経
 6 歯根膜と歯肉
  A 歯根膜 B 歯肉
 7 歯の発生(1)
  A,B 歯胚
 8 歯の発生(2)
  A,B 歯胚
第12章 口腔
 1 口腔(1)
  A 口唇 B 糸状乳頭
 2 口腔(2)
  A 茸状乳頭 B 有郭乳頭
 3 口腔(3)
  A 葉状乳頭 B 味蕾
 4 唾液腺(1)
  A,B 耳下腺
 5 唾液腺(2)
  A 顎下腺 B 舌下腺
第13章 消化管
 1 食道
  A 食道 B 食道の筋層
 2 胃体
  A 胃体部 B 胃体部の粘膜
 3 胃腺(1)
  A 胃腺の構成細胞 B 胃腺の粘液分泌細胞
 4 胃腺(2)
  A 壁細胞と主細胞 B 主細胞と頚粘液細胞
 5 幽門腺
  A,B 幽門腺
 6 腸管(1)
  A 十二指腸 B 十二指腸腺と陰窩
 7 腸管(2)
  A 絨毛と陰窩 B 腸の上皮細胞
 8 腸管(3)
  A パネート細胞 B 大腸
 9 腸管(4)
  A 粘膜下神経叢 B 筋間神経叢
 10 腸管(5)
  A,B 基底果粒細胞
第14章 肝臓,胆嚢,膵臓
 1 肝臓(1)
  A,B 肝小葉
 2 肝臓(2)
  A 小葉間結合組織 B 肝細胞板と類洞
 3 肝臓(3)
  A 脂肪摂取細胞 B 肝臓の銀好性線維
 4 肝臓(4)
  A,B クッパー細胞
 5 肝臓(5)
  A 毛細胆管 B 胆嚢
 6 膵臓(1)
  A 膵臓の外分泌と内分泌 B 介在部と導管
 7 膵臓(2)
  A 終末部と腺房中心細胞 B 膵臓の内分泌部
 8 膵臓(3)
  A〜C 膵島の3種の内分泌細胞
第15章 呼吸器
 1 鼻腔と喉頭
  A 鼻腔の呼吸部粘膜 B 喉頭
 2 気管
  A 気管 B 気管の粘膜上皮
 3 肺(1)
  A 区域気管支 B 細気管支
 4 肺(2)
  A 終末細気管支 B 呼吸細気管支
 5 肺(3)
  A クララ細胞 B 肺胞管
 6 肺(4)
  A 肺胞上皮 B 肺胞マクロファージ
 7 肺(5)
  A 肺の弾性線維 B 肺の内分泌細胞
第16章 泌尿器
 1 腎臓の皮質と髄質
  A 皮質 B 髄質
 2 腎小体
  A 腎小体 B 腎小体の血管極
 3 糸球体を構成する細胞
  A サルの腎臓 B ラットの腎臓
 4 尿細管と集合管
  A,B ヒトの腎臓
 5 髄質
  A 外帯 B 内帯
 6 尿管と膀胱
  A 尿管 B 膀胱
第17章 男性生殖器
 1 精巣の支持組織
  A 白膜と精巣縦隔 B 精巣中隔
 2 精上皮
  A,B 精上皮
 3 セルトリ細胞と間質細胞
  A セルトリ細胞 B 間質細胞
 4 直精細管と精巣網
  A 直精細管 B 精巣網
 5 精巣上体
  A 精巣輸出管 B 精巣上体管
 6 精索
  A 精管 B 蔓状静脈叢
 7 副生殖腺
  A 精嚢 B 前立腺
 8 尿道球腺と尿道腺
  A 尿道球腺 B 尿道腺
 9 陰茎
  A 陰茎海綿体 B 尿道海綿体
 10 亀頭,尿道の内分泌細胞
  A 亀頭 B 尿道の内分泌細胞
第18章 女性生殖器
 1 卵巣(1)
  A,B 卵胞の発達段階
 2 卵巣(2)
  A 胞状卵胞 B 放線冠
 3 卵巣(3)
  A 卵胞膜 B 閉鎖卵胞
 4 卵巣(4)
  A,B 黄体
 5 卵管
  A 卵管 B 卵管上皮
 6 子宮
  A 子宮内膜 B 子宮腺とらせん動脈
 7 胎盤(1)
  A 胎盤 B 絨毛と脱落膜
 8 胎盤(2)
  A 絨毛膜絨毛 B ホーフバウエル細胞
 9 子宮頚管と膣
  A 子宮頚管 B 膣
 10 陰核
  A 陰核 B 陰核海綿体
 11 大陰唇と小陰唇
  A 大陰唇 B 小陰唇
第19章 皮膚
 1 手掌型の皮膚
  A 指腹の皮膚 B 表皮と真皮乳頭
 2 腋窩の皮膚
  A 腋窩の皮膚 B ランゲルハンス細胞
 3 汗腺
  A エックリン汗腺 B アポクリン汗腺
 4 毛
  A 毛の縦断像 B 毛の横断像
 5 毛球と立毛筋
  A 毛球 B 立毛筋
 6 皮膚の知覚終末装置
  A マイスネル小体 B パチニ小体
 7 爪と動静脈吻合
  A 爪 B 動静脈吻合
第20章 内分泌器官
 1 下垂体(1)
  A 腺下垂体 B 神経下垂体
 2 下垂体(2)
  A 腺下垂体 B 下垂体前葉
 3 神経分泌
  A 漏斗から下垂体後葉へ B 弓形核と正中隆起
 4 松果体
  A 松果体 B 松果体細胞
 5 甲状腺
  A 濾胞 B 濾胞傍細胞
 6 上皮小体
  A,B 上皮小体
 7 副腎(1)
  A 副腎 B 副腎皮質
 8 副腎(2)
  A 副腎髄質 B 髄質細胞
 9 頚動脈小体
  A,B 頚動脈小体
第21章 感覚器
 1 嗅覚器
  A 鼻粘膜の嗅部 B 嗅上皮
 2 視覚器(1)
  A 角膜 B 水晶体
 3 視覚器(2)
  A,B 虹彩
 4 視覚器(3)
  A 虹彩角膜角 B 毛様体
 5 視覚器(4)
  A 網膜 B 脈絡膜
 6 視覚器(5)
  A 網膜内のグリア要素 B 視神経円板
 7 視覚器(6)
  A,B 上眼瞼
 8 視覚器(7)
  A  瞼板腺 B 眼瞼の腺
 9 平衡聴覚器(1)
  A 外耳道 B 鼓膜
 10 平衡聴覚器(2)
  A,B 平衡斑
 11 平衡聴覚器(3)
  A 膨大部稜 B 膨大部稜の上皮
 12 平衡聴覚器(4)
  A 蝸牛 B らせん器

 和文索引
 欧文索引