やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

「歯科補綴学専門用語集 第4版」の発刊に寄せて
 歯科補綴学専門用語集は2001年に第1版が刊行され,その後2004年に第2版,2009年に第3版が発刊されました.それぞれの版の序文に述べられているように,歯科補綴学専門用語集の刊行は日本補綴歯科学会に置かれた歴代の用語検討委員会が中心となって進められてきました.今回の第4版の出版にあたっても,これまでと同様に第3版の刊行後すぐに用語検討委員会において改訂に向けて準備が進められました.すなわち,2009-2010年期には佐々木啓一理事長・魚島勝美用語検討委員会委員長のものとで,2011-2012年期には古谷野潔理事長・二川浩樹用語検討委員会委員長のもとで改訂作業が進められ,さらに2013-2014年期には佐藤 亨用語検討委員会委員長を中心に精力的に改訂作業が推し進められ,その強力なリーダーシップの下でついに改訂作業が完了し,6年ぶりにようやく第4版の刊行を迎えることができました.まずは,佐藤委員長ならびに用語検討委員会の諸先生方に満腔の謝意を表したいと思います.
 私が公益社団法人日本補綴歯科学会理事長を拝命するにあたりまして佐藤亨用語検討委員会委員長に依頼したことは,高齢者に対する歯科補綴に関する用語の充実を図ることおよび年々進む国際化に対応するため用語の英語表記をできるだけThe Glossary of Prosthodontic Terms Eighth Edition(GPT-8)と合させることの2点でした.超高齢社会となった我が国では今後ますます高齢者や全身疾患をもつ者の増加が見込まれることから,この領域に関連した歯科補綴学用語を新たに加えるとともに英語表記は常にGPT-8に掲載されている用語とその定義を参考に修正を加えていただきました.
 学術用語は,その学問分野の発展に欠かせないツールとなるものであり,専門用語集の果たす役割はきわめて大きいと言えます.さらに歯科領域における専門用語集は,我が国における歯学教育の根幹をなす歯科医学教授要綱,歯学教育モデル・コア・カリキュラムおよび歯科医師国家試験出題基準の3つで使用される学術用語のソースとなる役割も担っています.私も今期の用語検討委員会にはほぼ出席させていただき,その責任の重さを双肩に感じながら改訂作業を微力ながらお手伝いさせていただいたことを大変にうれしく思います.
 用語はまさに生き物であり,時代の変化とともに使用される学術用語も変わっていくことが予想されます.したがって,専門用語集の編纂には終わりはありません.この第4版の発行の後も引き続き用語検討委員会において第5版の作成に向けて活動を開始していただかなければなりません.会員諸氏におかれましては,本専門用語集をさらに利用価値の高いものにするために引き続きご意見を頂戴できれば幸いと存じます.
 最後に,歯科補綴学専門用語集第4版の完成に向けてご尽力いただいた3代にわたる用語検討委員会諸氏にもう一度厚く感謝を申し上げて結びとさせていただきます.
 2015年1月
 公益社団法人日本補綴歯科学会
 理事長 矢谷博文


第4版 序
 歯科補綴学専門用語集第3版1刷は2009年3月に発行,2013年2月には5刷が発行され,当該学術分野に不可欠な専門用語集として利用されてきました.
 矢谷博文理事長の「出版に寄せて」にもありますとおり第3版1刷発刊後,魚島勝美委員長(2009-2010年度),二川浩樹委員長(2011-2012年度)のもと改訂作業が進められ,2013年度に発足しました本委員会において第4版を発刊する運びとなりました.
 今回の改訂作業の原則は第2版,第3版と同じですが,あわせて矢谷理事長からの「高齢者への歯科補綴学治療に関する用語の充実を図る」,「英語表記をできるだけThe Glossary of Prosthodontic Terms Eight Edition(GPT-8)に整合させる」というご指示のもと,第4版の改訂作業を行いました.
 本委員会で実施した主な改訂編集作業は以下の通りです.
 1)第3版の照査
 「解説用語は簡潔かつ的確に体言止めで表記」「歯科補綴専門医レベルまでの専門用語の解説」を基本原則として,用語とその解説の確認修正を行いました.併せて第3版における表現,関連用語との整合性等について再検討を行いました.
 また英語表記をできるだけThe Glossary of Prosthodontic Terms Eight Edition(GPT-8)と整合させました.
 2)新規採用用語の追加
 前委員会から引き継いだ新規採用用語案の確認と協議を行い,これらについて本学会代議員に対してパブリックコメントを求め,新規採用用語および解説文を作成しました.また,既収載用語との統一性,整合性を取るべく,既収載用語の見直しを行いました.
 3)同義語,索引の整理
 同義語,索引に新規採用用語を含めるとともに,それらの確認,修正を行いました.
 上記の作業は委員長・委員の交代を経つつ6年間の長きにわたり引き継がれて行われて参りました.歴代の委員長であります魚島勝美先生,二川浩樹先生と,そのもとで作業にあたられた委員の御努力に報いることができましたことを嬉しく存じますとともに,感謝申しあげます.また,精力的に編集作業に取り組んでくださいました本委員会の委員各位と,絶えず御指導いただきました矢谷博文理事長に深く御礼申しあげます.
 また今回の改訂作業に際して,多くの会員の皆様の御協力を賜り,また,沢山の御意見・御指摘を頂戴しました.ここに,深甚なる感謝を申しあげます.
 最後に発刊にあたり多大な便宜を図っていただいた医歯薬出版株式会社関係各位に厚く御礼申し上げます.
 2015年1月
 公益社団法人日本補綴歯科学会
 用語検討委員長 佐藤 亨 記

 公益社団法人日本補綴歯科学会 用語検討委員会
 2013年度〜2014年度委員
 委員長  佐藤 亨
 副委員長 越野 寿
 委 員  萩原芳幸
      佐藤利英
      田上直美
 幹 事  野本俊太郎

 2011年度〜2012年度委員
 委員長  二川浩樹
 副委員長 岡崎定司
 委 員  隅田由香
      萩原芳幸
      松山美和
 幹 事  玉本光弘

 2009年度〜2010年度委員
 委員長  魚島勝美
 副委員長 前田芳信
 委 員  小出 馨
      塩山 司
      谷口 尚
 幹 事  富塚 健


「歯科補綴学専門用語集 第3版」の発刊に寄せて
 ここに,われわれの社団法人日本補綴歯科学会による標記書籍が上梓されました.先ずは,多大なご尽力をいただきました谷口 尚・用語検討委員会委員長をはじめとする委員会委員の諸先生へ感謝を申し上げます.
 本学会における用語の整理は1980年代の半ばに開始されました.そして1997年4月,小林義典・会長,田中貴信・用語検討委員会委員長のもとで「歯科補綴学専門用語集」の発刊へ向けての作業が開始されました.当時の200名を超える評議員に対するアンケート調査を踏まえて,2001年2月に田中久敏・会長,田中貴信・委員長(2期連続担当)のもとで,医歯薬出版株式会社から「第1版」が発行されました.これは,数千語の中から歯科補綴学の専門用語として使用される719語を厳選し,専門学会として明確な解説を加えた140頁からなる書籍でした.その後,2003年2月に川添堯彬・会長,井上 宏・委員長のもとで,101語を収載した小冊子「歯科補綴学専門用語集―疾患・病名・検査編」が発行され,2004年10月に大山喬史・理事長,田中貴信・委員長のもとで,新しい用語を追加した944語とその解説文を収載した「第2版」が発行され,今日に至っております.
 2001年の「第1版」の出版以来,「歯科補綴学専門用語集」は歯科医学教授要綱,歯科医師国家試験出題基準,歯学教育モデル・コア・カリキュラム:教育内容ガイドライン,共用試験CBT問題・同OSCE課題などで公的に使用されております.最近,医歯薬出版株式会社から相次いで5つの歯科専門学会から専門用語集が発刊されましたが,その意図,内容,体裁などの多くの点で,われわれの補綴歯科学会がその先鞭を付けたといえます.
 「第1版」にも記載されている通り,言葉は生き物です.学術用語であっても時代とともに変化すべきものであり,たゆまぬ見直しが必要です.そこで,2007年4月に小生が理事長を拝命するにあたり,用語検討委員会に対して「第2版」の改訂への着手をお願いいたしました.そして2年間にわたるご苦労をいただき,ここに「第3版」の発刊に至った次第です.
 「第3版」では,インプラントならびに顎顔面補綴学関連用語などが新たに追加され,1,005語が収載され,その各々に解説が記載されております.「同義語として認める用語」も若干増えて121語となりました.また日本語および外国語索引数が3,400語を超えております.改めて歯科補綴学の奥の深さと補綴歯科治療の守備範囲の広さを痛感いたします.
 本書の発刊と時をほぼ同じくして,「Journal of Prosthodontic Research」と「日本補綴歯科学会誌」が従来からの和文誌(補綴誌)と英文誌(Prosthodont ResPract)に変わりました.両機関誌は学会の最新の学術的知識と技術についての情報を公開し,それらを共有する重要な役割を担うことになります.これらの中で使用される用語を統一する意味で,本用語集は不可欠な資料の一つになるはずであります.また,本書が歯科界のみばかりではなく,さらに広い諸分野で利用されることを期待します.
 2009年2月
 社団法人日本補綴歯科学会
 理事長 平井敏博


第3版 序
 私たちの学会が発行してきた歯科補綴学専門用語集は,第1版および第2版とも,田中貴信・委員長のもとで,一貫した方針のもとにさまざまな修正がなされ,さらに充実したものとなっております.
 専門用語は当該学術分野の進歩・発展を促すために必要な情報交換のツールとして不可欠であります.そのため,学術分野の専門用語集は当該分野ならびに関連分野の進歩・発展に追随して,可能な限り早期に見直し,修正がなされなくてはなりません.
 今回,平井敏博・理事長から歯科補綴学関連の用語について,教育・診療・研究・国民生活を包含する観点から全体的に見直し,関連分野との整合性を踏まえて整理・統合・発展させるよう命じられました.特に,今期用語検討委員会においては,「歯科補綴学専門用語集 第3版」の発刊を軸に活動することとなり,第1版,第2版での経緯を十分反映させ,ここに第3版の発刊となりました.今回の改定で実施しました編集内容は以下の通りです.
 1)第1版,第2版の照査
 必要に応じて第1版を含め,第2版における誤植,不適切な表現,関連用語との整合性,凡例との整合性などに関して再検討を行い,会員ならびに社員からの指摘,要請を踏まえ,可及的に用語の掲載順序および文言の修正,ならびに削除を行いました.
 2)新規用語の追加
 収載用語は解説文付き用語と解説文のない同義語から構成されています.第2版では,解説文付き用語848語,同義語96語の計944語が収載されましたが,第3版では,解説文付き用語884語,同義語121語の計1005語を収載しました.
 同義語に関しては,今回の新規追加に伴い追加されたものと,会員の要請により使用が望ましくない用語から復帰させたものとがあります.
 3)「補綴物」関連用語
 第2版では,「補綴物」関連用語を解説文付き用語,「補綴装置」関連用語を同義語としましたが,第3版では,「補綴装置」関連用語を解説文付き用語,「補綴物」関連用語を同義語としました.
 4)索引の整理
  (1)同義語に解説文付き用語番号を付与しました.
  (2)付録番号をすべて反映させました.
  (3)人名索引を別途設けました.
 最近,学術分野の専門用語集が相次いで発刊されており,類似した体裁のものでも,その内容は相違する点が散見されます.本用語集が,関連する他の学術分野の専門用語集の動向と協調しながら,機会あるごとに修正・充実され,歯科医学の進歩に多大な貢献をすることを願いつつ,委員一同,今回の改定作業に際して,ご指摘,ご意見,ご要請などさまざまなご協力いただきました会員の皆様に心から感謝申し上げます.また,発刊にあたり多大なる便宜を図っていただきました医歯薬出版株式会社関係各位に厚く御礼を申し上げます.
 2009年2月
 日本補綴歯科学会用語検討委員会(2007年度〜2008年度委員)
 委員長  谷口 尚
 副委員長 尾関雅彦
 委 員  久保吉廣
      永井栄一
      依田正信
 幹 事  隅田由香


歯科補綴学専門用語集の第2版の発刊に寄せて
 先ずは,『第2版 歯科補綴学専門用語集』の発刊に際して多大なご尽力を頂きました田中貴信用語検討委員会委員長はじめ委員の先生方に心よりお礼を申し上げます.
 本用語集の編纂が企画されましたのはかなり前と伺っておりますが,具体的に始動しましたのは小林義典元日本補綴歯科学会会長時代で,その作業は次代田中久敏日本補綴歯科学会会長に引き継がれ,ようやく2001年「歯科補綴学専門用語集」として上梓されるに至りました.この背後には,その二代の会長に仕え,当該委員会委員長として率先励行の労を執られ,奮迅の努力をされた田中貴信先生の強いリーダーシップと委員会委員の努力があったことを忘れることはできません.それまでは,本来共用されているべき専門用語に同義語,同意語が多々あり,必ずしも共通の理解・了解が得られなく混沌としていた時期が続いていたと言えましょう.そのような状況の中で,田中貴信用語検討委員会が勇気と決断をもって初版本を発刊したところであります.この刻苦に補綴学会員として心より敬意を表するものであります.風聞ではありますが,その初版本がきっかけで他の学会でも専門用語集の編纂に踏み切ったと伺いました.もしそうだとしたら,大変うれしい話です.
 その後,川添堯彬前日本補綴歯科学会会長時代,井上 宏用語検討委員会により,見直し検討がなされてきました.最近では,こうして整理・精査された専門用語も日本補綴歯科学会機関誌,学術大会において,立派に共通語として市民権を得てきたように思います.
 2003年,わたくしが日本補綴歯科学会会長を仰せつかるにあたり,再度田中貴信先生に用語検討委員会委員長をお願いし,改訂版としての第2版の発刊に向けて,井上 宏前委員会の検討事項を踏まえたところで,引き続き見直し検討をお願いしたところであります.そしてこの度,井上 宏前委員会,田中貴信現委員会の活発な委員会活動と粉骨砕身のご努力により,ここに改訂版としての第2版が出版される運びになりました.殊に,専門用語の統一の至難さもさることながら,時の流れとともに変遷を辿るのが常なるが故に難しい専門用語の統一・選択とその解釈付け,これには委員会の並々ならぬ刻苦勉励の賜物と心より敬意を表したいと思います.歯科医学の主流でもある歯科補綴学会がいち早くこの編纂を手がけたこと,また生きた専門用語を厳選・網羅し,かつ平易に詳解がほどこされた歯科補綴学専門用語集を,ここに手に出来たことは日本補綴歯科学会員としてこのうえもない喜びであり,また誇りであります.長きに渡り,誠心誠意ご尽力頂いた用語検討委員会の委員長,委員の先生方に心より感謝申し上げます.
 おわりに,この歯科補綴学専門用語集がたゆみなく見直し・検討がなされ,時に応じ日本補綴学会の研究結果も追補され,歯科界で活躍する関係者に広く日常的に活用されることを期待して止みません.
 平成16年9月
 日本補綴歯科学会
 会長 大山喬史


改訂版 序
 初版の歯科補綴学専門用語集は平成13年2月に刊行されたが,日本補綴歯科学会会員はもちろん,多くの臨床家からも比較的高い評価を得てきた.また,専門用語に限定して専門学会として責任ある解説も加えられた実用性の高い用語集として,他の専門学会からも注目され,その中の幾つかの学会では,現在それぞれ本書に準じた用語集の編纂が企画されていると聞く.
 しかし初版本では,編集時間の制約から,日本補綴歯科学会の保有する用語資料の一部の検討・掲載を断念せざるを得なかった経緯があり,また,前期用語委員会から内部資料として報告された,疾患・病名・検査・診察・経過観察などに関する用語の整理も必要であった.もちろん,多くの利用者から指摘された沢山の疑問箇所の蓄積もあった.
 大山喬史会長から本用語集の再検討を命ぜられた今期の用語検討委員会においては,上記の懸案事項の処理を主眼とした編集作業を行った.その具体的内容は以下の通りである.
 1)初版本の照査
 従来の用語集に関して,単純ミス,不適切な表現,関連用語との整合性,などに関して全面的な再検討を行い,可及的に語句の修正を行った.また,会員から寄せられた各所の疑義に関しても十分な検討を行った結果,大幅な修正を行った用語は52語となった.
 2)追加
 下記の資料について委員会で審議の結果,新規採用として126語を選択し,それらの解説文に関しては,委員自身で分担執筆した.
  (1)歯科補綴学用語集資料(坂東永一委員長,平成9年発行)の「古語,新語,固有名詞等」の239語
  (2)歯科補綴学専門用語集(井上 宏委員長,平成14年発行),I疾患・病名・検査編の229語,II診察・検査・経過観察編の101語
  (3)評議員のアンケートとして,追加希望;14名からの114語,修正希望;15名からの71語
 3)英語表記の確認
 初版本の用語も含め,英語表記の全面的チェックを行ったが,これに関しては,当時海外に留学中の,沢山の若手会員の協力を仰いだ.
 4)索引の整理
 従来の日本補綴歯科学会としての用語資料のすべてに関する検討が修了したため,本書に採用した以外の用語は,すべて索引から除去した.
 本用語集が今後も機会あるごとに修正・充実され,歯科医学の進歩に多大な貢献をすることを願いつつ,委員一同,今回の編集作業に関してさまざまなご協力をいただいた関係者に,心から感謝申し上げます.
 平成16年9月
 日本補綴歯科学会用語検討委員会(平成15年度〜平成16年度委員)
 委員長  田中貴信
 副委員長 三浦宏之
 委 員  清野和夫 豊田 實
      長岡英一 坂東永一
 幹 事  金澤 毅


歯科補綴学専門用語集の発刊に寄せて(初版)
 この度,日本補綴歯科学会は用語検討委員会を中心として,歯科補綴学ならびに関連用語について整理を行い,共通の土俵で補綴学を考えることのできる用語集を出版する運びとなりました.
 数千語に及ぶ補綴学用語から厳選し,専門用語として用いられるものを明確に解説を加えた編集業務の影には,十数年に及ぶ用語検討委員会ならびに関係各位の幾多の労力が秘められております.
 言葉は現実社会の鏡でもあり,文化,教養を高めるためのツールでもあります.同様に,補綴学の発展には用語の整合性が必須であり,それが達成された時に専門性が発揮されることになると信じます.補綴用語も新しい言葉が生まれるまでには多くの研究と医療の長い歴史があり,おいそれと整えることは至難の業です.特に訳語に至っては全能の指揮官の息のかかった用語を変更しようとしても,なかなかうまく変えることができず,一見あきらめムードさえ感じる場面もありました.また,用語の中には未消化どころか,噛み(いや失礼咬み)砕かれていないまま医療現場に浸透したものもあり,地球規模(Globalization)の学術交流の叫ばれる今日に至っても,感覚的に統一見解を得るのが難しいのが現状です.したがって,未だ多くの整合性の不十分な箇所も多くみられるものと推察されます.
 今回,簡にして要を得た日本語をモットーに手際良く整理することができたのも偏に用語検討委員会委員長田中貴信教授のリーダーシップのもとで,委員会各位のご努力により達成されたものと敬意を表します.
 今後の発展に向けて学会員諸氏の御批判と御指導を賜れば幸いと存じます.最後になりますが,本学会員ならびに委員会諸氏の御援助と御努力に対し,厚く御礼申し上げます.
 平成13年2月
 日本補綴歯科学会
 会長 田中久敏


序(初版)
 日本補綴歯科学会において,歯科補綴学専門用語の検討は発会当初より随時試みられてきたであろうが,現在のような用語検討委員会が組織され,総合的な用語の整理が始まったのは,昭和59年の三谷春保委員長下の第一期用語検討委員会としての活動が端緒である.それ以降に限っても,本件に関しては実に長期間,幾多の先人の多大なエネルギーが注がれてきたことになる.
 これらの委員会のご努力の結晶として選別された膨大な数の歯科補綴関係用語は,山下敦委員長により「中間報告」として,また,それを引き継いだ坂東永一委員長により「用語集資料」として,それぞれ会員に提示された.それらの経緯と我々を取り巻く昨今の社会環境を考慮して,本委員会は,今こそ専門学会としての責任の下に編纂され,実用性も備えた「専門用語集」が必要であると考え,新用語集としての具体的内容について検討してきた.この機会に,あるいは性急に,またあるいは強引に,我々なりに具体的な一つの形を提示して,今後はそれを骨子として本学会の用語集を順次充実させてゆくことが最良であろうと判断したものである.特に今回は,これまでのように単なる学会の内輪の資料に留めず,日本補綴歯科学会の公式見解として,広く世に公表することとした.幸い医歯薬出版(株)のご協力も得て,一般書籍として立派な体裁で刊行できたことは,委員一同にとっても望外の喜びである.
 本書が末永く諸兄の座右に置かれ,日々ご活用戴けることを心から願うものである.
 本用語集出版に関して,本用語検討委員会における編纂作業の大筋は以下の通りである.
 1)用語の整理
 一般的に用語集の類はその語彙数を誇る傾向がある.あたかも,それがその専門分野のレベルの高さを表示するが如き評価をする者もいる.しかし,たとえ我々が専門的な意味を有しない用語をどのように整理しようとも無意味である.また,用語は所詮符号であり,コミュニケーションの手段に過ぎない.国文学者でもない我々にとっては,用語そのものに意味があるのではなく,それを用いて何を伝えるかが重要である.さらに,複雑怪奇な専門用語は学術活動にとってマイナスでこそあれ,その益するところは少ない.今我々に必要なものは,高度な学術情報を誤解なく伝達できる,簡便な専門用語である.
 このような基本理念に基づいて,本委員会の最初の作業は,関係用語の分類に主眼を置いた.先ず,たとえ我々の臨床・研究現場で頻用される用語であっても,特別な解説を必要とせず,誰にでも正しく理解されるはずの用語は,一般用語として専門用語のリストから削除した.次に,解剖用語,保存・矯正用語などは,それぞれの専門学会の責任において管理されるべきものとして,歯科補綴専門用語からは除いた.さらに,多くの材料関係の用語もまた,歯科理工学会などの判断に委ねるべきであると判断した.
 要するに,本用語集での掲載用語は,日本補綴歯科学会として責任を持てるもの,あるいは責任を負うべきものに限定した,と言うことである.結果として,本用語集には主項目として719語を採用したが,当学会にとっては現時点が未だ専門用語の整理期であることを考慮して,過去の本学会用語集に掲載された約3,000語の用語についても,そのすべてを索引欄に掲載した.
 2)同義語の整理
 たとえば文学の世界では,微妙な季節の移ろいの様相などを多様に表現することが評価される.また,同じ表現の繰り返しは退屈であると批判される.しかし,自然科学の分野では,そのようなデリケートな表現はむしろ有害である.我々にとっては事象をただ端的にかつ正しく表現することが,必要かつ十分であると考える.
 従来認められてきた歯科補綴用語の中には,10種に近い同義語を有するものも散見された.これは教える側,学ぶ側のいずれにとっても無駄でしかなく,学術大会の場においても混乱の原因となる.しかし,個々の用語にはそれぞれ大きく重い背景もあるため,それらの取捨選択は容易でないことは自明であり,過去の委員会においてもそこが作業上の大きな関門であった.
 今回はこの積年の問題点を,評議員によるアンケート調査という方法で処理したが,今後に若干の問題を残す可能性も否定できない.しかし,関係者によってそれが建設的かつ前向きに評価され,我々の意図を正しく理解していただけるなら,比較的多数の専門家の支持を得た用語が,それぞれ最も正当な用語として,時の経過とともに自然に定着するものと確信している.
 なお,同義語のアンケート調査結果については,付録として改めて巻末にその一覧表を提示した.
 3)解説文の充実
 専門用語を選択しても,それぞれの意味合いについて専門家同士の合意が得られていなければ,それを用いた情報交換において誤解が生ずることになる.また,この種の用語集を誰がどのような場合に利用するかを考えた場合,単に用語を羅列しただけのものでは,その実用性が極めて低いことも認めざるを得ない.そこで,本用語集においては,すべての用語に関して現在最も妥当と思われる定義,あるいはその臨床的意義などに関する解説文を付与した.英語表記に関しても,幾多の表現の中から,最も適当と思われるものを選出した.これらはいずれも,特に学生や若い臨床家にとって有用なものとなろう.
 なお,その意味合いに諸説があるものについては,解説文に項目番号を設けて併記した.
 古くから言われるように,言葉は生き物であり,基本的に日々変化する可能性を含んでいる.すなわち,いかなる用語集も辞書・辞典も,まさに発行のその日から,内容の見直しを迫られる宿命を負うことになる.用語検討委員会の作業に終わりはない.とは申せ,当面この用語集の価値が広く認識され,今後の編集委員会などにおける用語規制に関する基盤となり,いずれはより公的な教授要綱や国家試験の出題基準に関する基本資料ともなることを願っている. 今回は時間の制約上,日本補綴歯科学会用語検討委員会報告書(歯科補綴学用語集資料:平成9年度発行)の中の,古語,新語,固有名詞の項は検討対象から割愛せざるをえなかった.これらについては,今後の委員会による継続的かつ詳細な検討に基づいて,順次整理されることを期待する.
 最後に委員一同,これまで用語検討にご尽力された歴代の委員会各位のご努力に深甚なる敬意を払うとともに,今般本用語集の出版という事業を高く評価され,終始多大なご協力とご鞭撻を賜った小林義典前会長,田中久敏現会長を始めとする日本補綴歯科学会の理事各位,アンケート調査や原稿執筆にご協力いただいた評議員各位,および,多忙の中鋭意ご尽力いただいた医歯薬出版(株)の担当諸氏に,衷心より感謝申し上げる次第である.
 平成13年2月
 日本補綴歯科学会用語検討委員会 平成9年度〜平成12年度委員(2期)
 委員長 田中貴信
 委 員 甘利光治 木村幸平 小林喜平
     清野和夫 寺田善博 平井敏博
     細井紀雄 安田 登 山縣健佑
 幹 事 金澤 毅
 「歯科補綴学専門用語集 第4版」の発刊に寄せて
 第4版 序
 「歯科補綴学専門用語集 第3版」の発刊に寄せて
 第3版 序
 歯科補綴学専門用語集の第2版の発刊に寄せて
 改訂版 序
 歯科補綴学専門用語集の発刊に寄せて(初版)
 序(初版)
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