やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第6版 序
 『基礎歯科生理学』が版を重ねて第6版となりました.本書は第1版が1987年に刊行されて以来,約25年間にわたって生理学・口腔生理学を学ぶために必要な標準的な教科書として多くの歯科大学・歯学部で好評をもって受け入れられてきました.その間,ほぼ5年に1回ずつ改訂を行い,常に医科学の進歩,教授要綱の改訂にも従うよう配慮がなされてきました.
 本来,生理学は,「ノーベル賞:医学・生理学賞」の名称にも用いられているように生命科学の根幹をなす学問であり,生命を保つために営まれる個体や各器官,組織,細胞レベルで起こる様々な生命現象とその仕組みを明らかにすることを目的としています.科学史のなかでは,解剖学,病理学,生化学がそれぞれ,形態的,病的,物質的側面に特化する学問領域として派生しています.近年の脳科学や分子生物学などの発展により,その生理学で学ぶべき生体の機能と仕組みは分子から脳や行動に至る幅広いレベルで多くの情報が得られてきており,よりわかりやすく理解できる基盤が築かれつつあります.歯科医学を含めあらゆる生命科学の理解には,その根幹をなす生理学の知識が不可欠です.一方,歯科医学により深く関連する口腔生理学は,顎・口腔・顔面が関与する摂食・発語など口腔機能を中心にその仕組みの解明を目的としています.近年,この口腔領域においても,摂食に関わる咀嚼・嚥下・感覚受容・栄養吸収の調節に,神経系やホルモンなど液性系を介して口腔・脳・腸・内臓器官が連携して働く仕組みなど,口腔から全身の健康につながる生理機構の研究が進展しています.また,摂食・嚥下障害についても臨床生理的メカニズムの理解と臨床面での対応などが進みつつあります.本書は,歯科医学を学ぶ学生にとって必要な生理学,口腔生理学の知識をバランスよくかつ効率よく系統立てて理解できるよう,初版より下記の一貫した編集方針で企画されています.また,歯科医学の新しい展開に寄与できる内容になるよう生命科学の発展,医療の変化など最新の情報を反映させ,改訂が行われており,本版もそれに準拠しています.
 本書の基本的な編集方針の特色は,次の4点になります.(1)構成は,「歯科医学教授要綱」に則ったものとする,(2)内容は,生理学・口腔生理学で習得しなければならない最も基本的な事項に限る,(3)教室での講義の素材としての使用に便利なように,図を多用する,(4)理解を容易にするため,図は原則としてシェーマとして,色刷りにすることです.
 さらに今回,改訂第6版を刊行するに当たり,以下の3つを新たな編集方針として追加しました.(5)「歯科医師国家試験出題基準」に則った目次だてとする,(6)用語については『生理学用語集』(日本生理学会編)に準拠する,(7)学生が重要な点を理解しやすいよう,チェックポイントを箇条書きで示し,かつキーワードを掲載することです.
 また,執筆者には,「歯科医学教授要綱」,「歯科医師国家試験出題基準」,「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」等を踏まえたうえで,初めて生理学,口腔生理学を学ぶ学生に対しても,生体機能のメカニズムの基本を平易な解説で読みやすく理解しやすいように努力していただきました.本第6版も,歯科医学を学ぶ多くの人の生理学,口腔生理学の標準的な教科書として活用しえるものに完成したと考えています.
 最後に,本書の執筆に携わっていただきました皆様と編集にあたり多大なるご尽力をいただきました医歯薬出版株式会社に心より感謝申し上げます.
 2014年1月
 編 者

第1版 序
 わが国の歯学教育の普遍的な基準として,昭和22年に歯科教授要綱が制定された.これは昭和42年に歯学教授要綱として改訂され,ついで昭和48年には補訂が施された.その後,近年の歯科医学の急速な進歩発展に対応して,昭和59年には再度改訂が行われ,今後の歯学教育の実践のための明確な基準が定められた.
 この教授要綱は,歯学教育における生理学の位置づけについて,“人体は細胞から構成され,組織,器官,個体のレベルで構造的に統合されており,これに対応して生理学では,細胞から個体の行動に至る各レベルの構造の,正常な働きおよびそのメカニズムを対象とする.したがって,生理学の学習は,解剖学で学ぶ人体の構造に関する知識を前提としている.また,生理学では,生体の働きを,運動,力,電気,光,熱などの物理的現象を手掛かりにして取り扱い,生体のそれらの物理的現象の基盤にある分子レベルの過程は,生化学で取り扱われるので,原則として対象としない“ と述べている.また,おなじく口腔生理学については,“口腔生理学では,正常な咀嚼機能の形成及び維持を目標とする歯学の基礎として,顎・口腔・顔面領域の構造を,咀嚼器官系としてみる立場から,その運動・感覚・自律機能について学習する.運動機能としては,咀嚼運動を中心として,顎,舌,顔面の運動の神経・筋メカニズムを対象とし,感覚機能としては顎・口腔・顔面領域の体性感覚とともに味覚・嗅覚も取り扱う.また,自律神経としては,唾液分泌のメカニズムを中心として学習する” と,記している.
 このように,生理学・口腔生理学教育実践のための基準が明文化されているにもかかわらず,この最新の教授要綱に沿った生理学・口腔生理学の教科書はまだ出版されていない.
 この教授要綱にあるように,生理学は一般に生体機能のありのままの現象を対象にして,そのメカニズムならびにそれを支配する法則を探求する学問であり,首尾一貫した論理的推論の積み重ねによって現象からそのメカニズムあるいは法則に到達する.それゆえ,生理学はすぐれて論理性の高い学問分野であり,諸概念の整合性をそなえた論理的積み重ねによって体系づけられている.このため生理学は,学生諸君にとって往々にしてとっつきにくい科目のひとつに数えられるが,基礎的概念を把握すればこれほど学習しやすい科目はない.この事情はいろいろなスポーツのルールを学ぶのと同じで,たとえば,フットボールであれサッカーであれ,ルールを知らなければゲームを見ていても,動きの意味が分からないのでさっぱり面白くないが,いったんルールを理解してしまえば,見ていて心から楽しむことができるのと同じである.逆に,基礎的概念の理解のないところ,生理学の修得はありえない.そこで,生理学の学習に当たっては,そこで用いられる言葉としての概念を明確に理解することがもっとも重要なことになる.生理学ならびに口腔生理学の教科書で名著といわれる書物は,いずれも基礎的概念を明確に把握できるように努力して成功したものである.しかし,生理学の最近の飛躍的発展を反映して,多くの教科書はややもすれば高度の内容の詳細な羅列的記述に傾き,教科書としてよりもむしろ参考書としての性格が強くなっている.学生諸君は,重要な基礎的概念とそれから派生した概念との関係が理解できず,膨大な情報洪水に埋もれて,生理学の理解よりも個々の記載の単なる記憶に追われ,生理学に対する興味を失うという結果を招きかねない.また,大部の教科書は,教室での講義の素材としての教科書としては必ずしも使いよいものではない憾みがあった.
 このような観点から,歯学教授要綱に沿ったスタンダードで,基礎的概念の理解に重点をおく,使いやすい教科書を作ることは,歯学における生理学・口腔生理学の教育の実をあげるために意義あることと考え,本書の出版を企画した.編集にあたっては次のような特色をもたせることを志した.
 (1) 構成は,歯学教授要綱に則ったものとする.
 (2) 内容は,生理学・口腔生理学で習得しなければならないもっとも基本的な事項に限る.
 (3) 教室での講義の素材としての使用に便利なように,図を多用する.
 (4) 理解を容易にするため,図は原則としてシェーマとして,色刷りにする.
 幸いにも,ご執筆いただいた方がたは,編者らの意図を十分におくみ取りいただき,ご担当いただいた項目を簡にして要を得た内容にまとめてくださった.また,医歯薬出版株式会社の編集部は,読みやすい教科書とするために体裁の面で多大の努力を傾けられた.これらの方がたに心から謝意を表する.
 本書がわが国の歯学の生理学・口腔生理学の教育におけるスタンダードな教科書として利用され,学生諸君の役に立つことを念願している.
 1987年7月25日
 坂田三弥
 中村嘉男

第2版 序
 本書初版が出版されてから6年が経過した.その間,本書は数多くの歯科大学・歯学部で教科書に採用され,版を重ねて今日に至っている.これも,ひとえにご執筆いただいた方がたのご尽力によって,本書が読みやすく,簡潔にまとめられた教科書として評価されたためであろう.
 科学の進歩は一時たりとも留まることを知らない.本書発行以降の生理学の進歩も目を見張るものがある.そして,生体の機能およびその機構の理解にも革命的変化が現れている.とくに細胞レベルの研究領域における膨大な知識の集積により,器官・器官系・個体レベルの機構の理解は飛躍的に深まってきている.生理学の教科書に求められる基本的要件は,これらの機構に関する基本的概念を最新の知見に基づいて明快に叙述することであろう.このような観点から編者らは,本書初版の出版以降の進歩を取り入れた改訂を企画した.
 改訂にあたって編者らの意図したのは次の2点である.第1点は,初版の編集方針を堅持することである.すなわち,(1)歯学教授要綱に則って構成し,(2)取り上げる内容は生理学・口腔生理学で学ぶべきもっとも基本的事項に限り,(3)講義の素材として使用に便利なように図を多用し,(4)基礎的概念の理解に重点をおいた簡潔な教科書とするとの方針である.第2点は,基本的事項の明快な理解に必要な最近の進歩を広く取り入れた点である.
 この方針に従って改訂を進めるために編者らは,本書全般にわたって改訂すべき事項に関してすべての執筆者に意見を求めた.幸いにも執筆者各位から絶大なご協力が得られ,担当の項目だけでなく,他の項目についても,教科書としてご使用になった経験を含めて,数多くのご意見を頂戴した.そこで執筆者各位に,寄せられたこれらのご意見を参考にして改訂作業を進めていただくようにお願いしたところ,これらのご意見を十分に取り入れた改訂版ができあがった.
 第2版では,生理学の基本的概念の理解を深めるためにぜひ必要と考えた細胞の構造と機能に関する事項を,最近の進歩を含めて拡充し,新たに独立の章とした.他の事項については,項目は初版と同一であるが,全般にわたって最近の進歩に基づいて大幅な改訂がなされている.それにもかかわらず,第2版のページ数の増加は,最小限に抑えることができた.これは執筆者各位が最近の進歩を取り入れるに当たって,記述内容を厳しく取捨選択された賜である.執筆者各位のご協力により簡潔な教科書をめざす本書の特色は堅持することができた.本書第2版が初版と同様に,多くの歯科大学・歯学部の学生諸君の生理学・口腔生理学の学習のために役立つことを心より祈念している.
 第2版を準備中の今年3月,徳島大学教授高田 充先生が急逝された.先生は生前すでにご担当の章の改訂を終了なさっていらっしゃったので,ご遺稿を2版に生かすことができた.先生の教育への情熱に改めて深い敬意を覚えるとともに,心からご冥福をお祈りするものである.
 6年制一貫教育制度の導入に伴って,歯科大学・歯学部では現在新しいカリキュラム編成の最中である.また,これと関連して,歯科大学学長会議による歯学教授要綱の改訂も進行中である.これらの作業も近い将来に終了し,新しい体制で,新しい内容の歯科医学教育が全国一斉にスタートすることになろう.その場合にも本書がわが国の歯科医学教育における生理学・口腔生理学のスタンダードな教科書として,学生諸君の役に立つものであることを念願している.そのために,読者諸賢のご意見,ご批判に十分耳を傾けて改訂を加え,本書をますます良い教科書にしていく所存である.
 おわりに,本書を読みやすい教科書とするために,内容および体裁の面からそれぞれ多大のご尽力を賜った執筆者各位ならびに医歯薬出版株式会社編集部に深甚の謝意を表する.
 1993年12月15日
 坂田三弥
 中村嘉男

第3版 序
 “基礎歯科生理学” が版を重ねて第3版になった.第2版が出版されてからわずか4年であるが,今回版が改められたのにはいくつかの理由がある.まず,平成6年に歯科医学教授要綱の改訂があったので,この改訂されたガイドラインにしたがって版を改める必要が生じたこと.さらに,初版が出版されてから10年,その間の生物科学の進歩は著しく,現代の新しい知見を盛り込む必要のあること.とくに細胞間情報伝達,膜の受容機構,細胞内情報伝達機構を含めた分子生物学の急激な知識の増加,遺伝子レベルの知見の増加が著しい.これらの知識の増加は生理学にも大きい影響を与えており,生命現象の生理的機構を分析して説明しようとすれば,最終的に分子レベルまで到達し,解剖学,生理学,薬理学,生化学との学際的な領域になるため,解説しなければならない知見の量も著しく多くなってきている.さらに,脳科学研究の進歩もこれに劣らず著しい.したがって,本書では章によって,これらの分子レベルでの知見や脳科学の知見がとりあげられている.
 しかし一方では,大学改革の一貫としていずれの歯科大学・歯学部でも教育の改革が行われ,基礎系教育にも変化が及んでおり,従来と同じ議義時間あるいはより短い時間でこれらの知見を伝えなければならなくなっており,そのためさらに簡潔で要領よく知識を伝える必要性が大きくなっている.
 一般生理学の教科書や参考書は最近随分多く出版されており,内容も詳しくなっている.しかし,これらの知識を要領よく歯科大学・歯学部の学生に伝えられるよい教科書が少ないのが現状である.特に,口腔生理学についてはそうである.
 本書は,一般生理学,口腔生理学の知見をガイドラインにしたがって簡潔に要領よくまとめたものであり,歯科大学・歯学部学生をはじめ口腔科学に関心のある人には最適の生理学および口腔生理学のテキストであるといえよう.
 初版が出版されてから今日までの間に退任された執筆者もいるため,編者を含めて大幅に執筆者が変更された.しかし,いずれの執筆者も編集方針を十分くみ取っていただいて,各項目を読みやすく理解しやすいように努力をしていただいた.これらの方がたに心から謝意を表するとともに,本書の作成に尽力いただいた医歯薬出版株式会社に感謝申し上げる.
 1997年12月15日
 中村嘉男
 森本俊文

第4版 序
 このたび“基礎歯科生理学” の第4版改訂版を刊行することになりました.前版の発刊からすでに5年が経過し,この間に生理学は大いに進歩しています.とくに高次脳機能や細胞内情報伝達機構などについての知見が増してきたので,それに伴って内容的にも改訂したほうがよいと思われる箇所が出てきました.また,第3版発刊のときからいくつかの大学の口腔生理学講座では新しい教授が就任され,執筆陣を変更して新しい知見に基づいた教科書の作成が必要になったことなど,改訂の必要性が増してきました.そこで,編集に山田好秋が加わるとともに,ご退職になった方がたに代わって教授に就任された方がたにご執筆をお願いすることにして,新しい態勢で第4版を出版することになりました.新たにご執筆をお願いした方がたは,全執筆者のほぼ三分の一にあたる12名にのぼります.
 生理学は,解剖学,生化学とともに人体の構造と機能との関係を明らかにするための学問領域であります.とくに,生理学はヒトや動物の生命がどのようにして維持されているのかその仕組みの詳細を主として物理学的な観点から明らかにすることを目的としています.生命維持の仕組みを分析的に追求していくと分子レベルに達しますが,人体は無数のこのような分子レベルの機構を統合して一つの命を保っています.したがって生理学では,このような分子レベルから個体レベルに至るまでの幅広い生命現象を扱うことになります.また病気はこのような生命維持の仕組みが障害された現象として理解することができます.このような理由から,生理学を理解することは医学のみならず歯科医学を学ぶものにとって欠かすことのできない重要な要件であります.
 “歯科医学教授要綱“ には生理学,口腔生理学として学部学生が学ぶ際の基本的に必要な項目が取り上げられています.本書は,この教授要綱に準拠していますが,それだけではなく“歯科医師国家試験出題基準” にも準拠しています.さらに,平成14年度から共用試験(CBT)の発足に伴う最低限必要な知識としてのコア・カリキュラムが設定されましたが,このことをも考慮していただくことを執筆者にはお願いしています.
 本書の目的は,歯科医学を学ぶ学生にとって必要な生理学,口腔生理学の知識を効率よく理解する助けとなることにあります.とくに口腔生理学の知識についてまとめた成書は少ないため,ぜひ本書を活用して生理学,口腔生理学の理解を深められることを期待しています.
 最後に本書の作成に尽力いただいた医歯薬出版株式会社に感謝申しあげます.
 2003年1月28日
 編者

第5版 序
 『基礎歯科生理学 第5版』が完成しました.第4版発行から5年が,そして坂田三弥先生と中村嘉男先生による初版が発刊されてから20年が経過しています.この間の科学の進歩はいうまでもなく,口腔生理学に対する社会の期待も大きく変化してきました.たとえば日本は世界一の高齢社会となり,これに伴い高齢者の生活の質(QOL)をどのように維持していくかが問題となっています.そのなかで摂食や発語といった顎・顔面・口腔が関与する日常の行動が重要視されています.高齢者だけではありません.嚥下はもとより咀嚼という用語も歯科独特の読みにくい用語ですが,最近では新聞や雑誌,テレビなどのメディアにも日常的に取りあげられ,健康維持に重要な機能の1つとして広い年齢層に認知されてきています.
 口腔生理学は医学用語として一般国民にはなじみのない言葉です.しかし,「口腔機能」という言葉は歯科衛生士はもとより,意外にも介護施設などで活躍する介護福祉士・理学療法士・言語聴覚士などの専門職の間では日常的に使われています.これは高齢社会に向け導入された介護保険が見直され,改正介護保険法が2005年6月に成立したことにより,介護予防サービスのメニューの1つとして「口腔機能の向上」が位置づけられたためです.口腔生理学の分野で培われた知識が「口腔機能」という形で歯科界だけでなく社会一般に認知され,その研究成果が社会に還元されていることが理解できます.このような社会環境のなかで,口腔機能を口腔生理学の専門家が系統立てて解説する本書の役割は重いといえます.
 さて,本書の主目的は歯科医師を養成する際に求められる生理学の基本知識を学生にわかりやすく解説することにあります.このため卒前・卒後に設定されている共用試験(CBT)や歯科医師国家試験に対応した内容であることも求められています.したがって,本書の項目を決定する際には『歯科医学教授要綱』,『歯科医師国家試験出題基準』,『歯学教育モデル・コア・カリキュラム』に準拠することにも配慮しました.同時に,高齢社会に対応できる歯科医師を育てることも重要と考え,「生理機能の加齢変化」や「臨床と密接に関連した事項」を取り入れる努力を執筆者にお願いしてきました.限られたページ数ではありますが,執筆者の努力により未来の歯科医師養成に耐えうる教科書が完成したと考えております.
 最後になりましたが,第5版の編集にあたり,フルカラー化を実現して下さった医歯薬出版株式会社に感謝申し上げます.
 2008年1月
 編者
第I編 生理学
第1章 生理学総論
 I 生命現象と生体恒常性(山田好秋)
  1 生理学とは
  2 生物の進化と内部環境の恒常性
  3 外部環境との相互作用(=行動)
  4 健康と病気
  5 歯科医学と生理学
  6 なぜ生理学・口腔生理学を学ぶのか
 II 細胞の一般的機能(奥村 敏)
  1 細胞の発見
  2 細胞の種類
  3 細胞の基本構造
 III エネルギー代謝
  1 外呼吸と内呼吸
  2 ATP
  3 内呼吸の過程
  4 エネルギー変換効率
  5 脂質の分解
  6 タンパク質の分解
  7 エネルギーの利用系
第2章 興奮性組織(神経・筋)
 I 細胞膜の生理学-細胞膜と膜輸送(佐原資謹)
  1 生体膜の構造
  2 細胞膜を通しての物質輸送
  3 細胞膜を横切るイオンの動き
 II 興奮性膜
  1 神経細胞の機能
  2 活動電位の発生
  3 イオンチャネルの構造と機能
 III 興奮伝導
  1 無髄神経線維における興奮伝導
  2 有髄神経線維における跳躍伝導
  3 活動電位の記録法
  4 神経線維の分類
  5 興奮伝導の3 原則
 IV シナプス伝達(杉田 誠)
  1 シナプス伝達序論
  2 電気的シナプス伝達
  3 化学的シナプス伝達
 V 筋の収縮(骨格筋・心筋・平滑筋)
  1 筋細胞の分類
  2 骨格筋
  3 心 筋
  4 平滑筋
第3章 体 液
 I 間質液(吉垣純子)
 II 血 液
  1 血 漿
  2 赤血球
  3 白血球
  4 血小板と止血
  5 血液型
 III その他の細胞外液
  1 脳脊髄液
  2 リンパ液
 IV 体液の恒常性
  1 浸透圧と体液量の調節
  2 pHの調節
 V 尿の生成と排泄(腎機能)(舩橋 誠)
  1 体液の排泄と腎機能の概要
  2 腎臓の構造と機能
  3 尿の生成機構
  4 腎臓における物質の輸送
  5 腎機能の調節
  6 尿の一般的性状
  7 蓄尿と排尿
第4章 体液の循環
 I 心 臓(西川泰央)
  1 心臓の構造
  2 心筋の性質
  3 活動電位
  4 興奮伝導系
  5 心電図
  6 心周期
  7 心拍出量
  8 心筋の長さ-張力関係
 II 血液循環とその調節(佐藤義英)
  1 血液循環
  2 循環調節
第5章 呼 吸
 I 呼 吸(松本茂二)
  1 呼吸器
  2 換 気
  3 換気力学
 II ガス交換
  1 ガス分圧
  2 ガス交換
  3 換気と血流の適合
  4 血液中のガスの運搬
 III 呼吸の調節
  1 呼吸調節
  2 呼吸の化学的調節
  3 反射による呼吸への神経性調節
第6章 体 温
 I 体熱の産生(平場勝成)
  1 エネルギー代謝
  2 ふるえ熱産生と非ふるえ熱産生
 II 体熱の放射
  1 発 汗
  2 熱放散と皮膚血管
 III 体温の調節
  1 温度受容
  2 体温調節中枢
  3 体温の異常
 IV 体温適応
第7章 内分泌・生殖
 I ホルモンの一般的特徴(岡部幸司・岡本富士雄)
  1 ホルモンと内分泌腺
  2 ホルモンの分類
 II 内分泌学各論
  1 視床下部-下垂体系
  2 甲状腺と副甲状腺
  3 膵 臓
  4 副 腎
  5 性 腺
  6 その他のホルモン
 III ホルモンとホメオスタシス
  1 ホルモンによる血漿カルシウム濃度の調節
  2 ホルモンによる血糖の調節
  3 循環調節とホルモン
  4 ストレスとホルモン
第8章 感覚機能
 I 受容器と感覚(田ア雅和)
  1 感 覚
  2 感覚の分類
  3 刺激の種類と受容器
  4 刺激に対する応答
  5 受容野
  6 求心性伝導路
 II 視 覚(原田秀逸)
  1 眼
  2 光学系
  3 光受容系
  4 色 覚
  5 視覚および視覚伝導路・視覚中枢
  6 視覚情報処理
  7 眼球運動
  8 加齢変化
 III 聴 覚
  1 音の性質
  2 音の受容器官
  3 音の受容,聴覚伝導路と聴覚中枢
  4 難 聴
 IV 平衡感覚
  1 前庭器官
  2 中枢神経系
  3 めまい
 V 内臓感覚(岩田幸一)
  1 臓器感覚
  2 内臓痛覚
  3 内蔵反射
 VI 痛 覚
  1 疼痛の分類
  2 痛みの末梢機構
  3 痛みの上行路
  4 下行性疼痛変調機構
  5 痛みの加齢変化
 VII 感覚情報の中枢処理
  1 各種感覚入力の中枢投射経路
  2 感覚入力の大脳皮質における再現
第9章 運動機能
 I 運動と制御のしくみ(山村健介)
  1 運動とは
  2 随意運動と不随意運動
  3 運動制御システムの階層性
 II 運動ニューロンと脊髄
  1 脊髄の構造
  2 運動ニューロンと運動単位
  3 脊髄反射
 III 脳幹の機能と姿勢の調節
 IV 運動機能の加齢変化
第10章 脳と行動
 I 運動制御(泰羅雅登)
  1 皮質運動関連領域
  2 大脳基底核
  3 小 脳
 II 高次脳機能
  1 大脳皮質の機能局在
  2 皮質連合野
  3 学習と記憶
 III 情 動
  1 情動の学説
  2 情動と大脳辺縁系
  3 情動的攻撃と捕食攻撃
  4 快情動
 IV 睡 眠(加藤隆史)
  1 睡 眠
  2 覚醒・睡眠の調節機構
  3 睡眠と各生理活動の変化
 V 言 語(入來篤史)
  1 大脳皮質における言語機能の局在
  2 脳内言語情報処理
第11章 自律機能
 I 自律神経系(稲永清敏)
  1 自律神経系とは
  2 自律神経系の構造
  3 自律神経系遠心路の性質
  4 自律神経系の働き
  5 自律神経反射
 II 自律神経の中枢性調節
  1 脊 髄
  2 下部脳幹
  3 視床下部
  4 大脳辺縁系・小脳・大脳皮質
 III 加齢変化
第II編 口腔生理学
第12章 口腔生理学総論
  1 口腔生理学とはどのような学問か(森本俊文・山田好秋・二ノ宮裕三・岩田幸一)
  2 口腔生理学を学ぶ目的はなにか
  3 口腔機能の特色と重要性
  4 口腔生理学の未来展望
第13章 顎・口腔・顔面の体性感覚
 I 顔面皮膚・舌・口腔粘膜・口唇(増田裕次)
  1 顔面皮膚の感覚
  2 舌の感覚
  3 口唇の感覚
  4 口腔粘膜感覚
 II 歯根膜
 III 口腔・顔面の痛み(岩田幸一・篠田雅路)
  1 歯 痛
  2 口腔粘膜・顔面皮膚の痛み
  3 顎関節の痛み
  4 舌の痛み
  5 顎口腔顔面の筋痛
  6 頭 痛
  7 三叉神経侵害情報の中枢投射経路
第14章 味 覚
 I 味覚の特徴(二ノ宮裕三・吉田竜介)
  1 味 質
  2 味覚閾値
  3 順 応
  4 PTC味盲
  5 味覚修飾物質
  6 歯科臨床と味覚
 II 受容機構
  1 味覚受容器
  2 味覚受容機構
  3 味覚受容体の一塩基多型
  4 全身における味覚受容体の発現
 III 味覚情報の伝達
  1 味覚伝導路
  2 大脳皮質味覚野
 IV 味覚情報の処理
  1 アクロスニューロンパターン説とラベルドライン説
  2 末梢での味覚情報処理
  3 一次味覚野における味覚地図
  4 味覚末梢における味覚調節
 V 味覚と摂食行動(硲 哲崇)
  1 摂食可否の判断行動
  2 摂食可否判断に関与する脳部位
  3 栄養状態と味覚
 VI 味覚異常
  1 味覚の異常とその種類
  2 味覚臨床検査法
  3 味覚異常の原因
  4 加齢と味覚異常
第15章 嗅 覚
 I 嗅覚の特徴(村本和世)
  1 嗅覚の意義
  2 ニオイ物質と嗅覚
  3 嗅覚閾値と順応
 II 受容機構
  1 嗅覚器の構造
  2 ニオイの受容機構
 III 中枢機構(吉村 弘)
  1 嗅球と嗅皮質
  2 ニオイ情報の統合・分析
  3 嗅覚と情動
第16章 顎運動
 I 顎反射(森本俊文)
  1 下顎張反射
  2 歯根膜咀嚼筋反射
  3 口腔粘膜刺激による閉口反射
  4 開口反射
 II 顎位(下顎位)
  1 下顎安静位
  2 下顎位と咬合
  3 顎関節の構造と下顎の限界運動
  4 下顎の限界運動
  5 下顎の位置感覚
 III 顎運動の神経・筋機構
  1 咀嚼筋と顎運動
  2 咀嚼筋の性質
  3 咀嚼筋の神経支配と顎運動の神経機構
第17章 舌運動
 I 舌反射(森本俊文・増田裕次)
  1 舌の役割
  2 舌筋とその支配神経
  3 顎舌反射
  4 舌粘膜・舌筋反射
 II 舌運動の神経・筋機構
  1 咀嚼時の舌運動
  2 舌運動と顎運動の協調
第18章 口唇・頬・顔面運動
 I 口唇・顔面(頬)運動とその役割(森本俊文・増田裕次)
  1 口 唇
  2 頬
  3 口 蓋
第19章 咀 嚼
 I 咀嚼とは(井上富雄)
 II 咀嚼能力の評価
  1 咬合力と咀嚼力
  2 食品の粉砕度の測定
  3 咀嚼能力を計測するその他の方法
  4 咀嚼能力に影響する要因
 III 咀嚼運動の調節
  1 動物の食性と咀嚼パターン
  2 咀嚼運動の調節要素
  3 咀嚼過程
  4 咀嚼のパターン形成機構
  5 上位脳の役割
  6 咀嚼運動中の反射の変調
  7 咀嚼筋活動量の調節
  8 咀嚼機能の生後発達・加齢
第20章 吸 啜
 I 吸啜の概念(井上 誠)
 II 吸啜運動の特徴
 III 吸啜運動の経過
 IV 吸啜運動の発生機序
 V 吸啜から咀嚼への移行
 VI 病 態
第21章 嚥 下
 I 嚥下の概念(山田好秋)
  1 摂食・嚥下の流れ
  2 嚥下関連器官
  3 嚥下に伴う諸器官の動き
 II 嚥下運動の特徴
  1 摂食過程における嚥下
  2 嚥下運動と食塊の動き
  3 気道の防御
  4 嚥下時の咽頭内圧変化
 III 嚥下の神経機構
  1 嚥下の開始
  2 中枢性制御機構
  3 末梢性制御機構
 IV 病 態
第22章 嘔 吐
 I 嘔吐の概念(石井久淑)
  1 嘔吐とは
  2 嘔吐の原因と役割
  3 嘔吐の症状
 II 嘔吐の機序
 III 嘔吐の神経機構
  1 嘔吐中枢
  2 嘔吐の誘発機序
第23章 唾液・唾液腺
 I 唾液腺の構造(松尾龍二)
  1 耳下腺
  2 顎下腺
  3 舌下腺
  4 小唾液腺
 II 唾液分泌機構
  1 唾液分泌量
  2 唾液の生成
  3 唾液分泌の調節
 III 唾液の性状
  1 物理的性状
  2 化学的性状
 IV 唾液の機能
 V 唾液と口腔疾患
  1 唾液と齲蝕・歯周疾患
  2 唾液と粘膜疾患
 VI 唾液腺機能と加齢
第24章 消化と吸収
 I 消化器の基本的機能(宗形芳英)
  1 消化の全過程と関連器官
  2 消化管の一般構造
  3 血液循環
  4 リンパ
  5 神経支配
  6 水の出納と消化酵素の分泌
  7 消化管ホルモン
  8 消化管運動
  9 消化管の加齢変化
 II 胃(二ノ宮裕三)
  1 胃の運動
  2 胃液の分泌
  3 胃の活動の制御機構
 III 十二指腸
 IV 肝臓と胆嚢
  1 胆 汁
  2 胆汁分泌の制御機構
 V 膵 臓
  1 膵 液
  2 膵液分泌の制御機構
 VI 小 腸
  1 小腸の運動
  2 消化と吸収
 VII 大 腸
  1 便の形成
  2 排便機構
  3 腸内細菌
第25章 発声と構音
 I コミュニケーション,言語,スピーチ(舘村 卓)
  1 コミュニケーション-情報伝達
  2 言語-シンボルと約束ごと
  3 スピーチ-耳に聞こえる「ことば」
 II 発 声
  1 呼吸器(肺)-エネルギー源
  2 喉頭-発声器
  3 構 音
  4 喉頭原音-母音の音源
  5 母音構音
  6 子音構音
  7 構音機能の聴音的印象
  8 構音機能の発達
  9 加齢変化
 III 鼻咽腔閉鎖機能
  1 鼻咽腔閉鎖運動の特徴
  2 鼻咽腔閉鎖機能の調節

 索引