やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 クラウンブリッジ補綴の守備範囲は,1歯の歯質欠損から多数歯の欠損に及び,これらに対する補綴装置の種類は部分被覆冠のように比較的歯質の削除量の少ない小型の装置から多数歯にわたる大きなブリッジに至るまで多岐にわたる.また,国民の歯に対する関心の高まりから,各年齢層における有歯本数は着実に改善され,クラウンブリッジ補綴の対象者数は確実に増加していると思われる.
 こうした状況を踏まえ,各歯科大学(歯学部)はそのカリキュラムにおいて,少なからぬ時間をクラウンブリッジ補綴の講義と実習に割いている.しかし,クラウンブリッジ補綴の診療ならびに技工ステップは複雑で,補綴装置の種類も多いため,限られた実習時間内に履修できる内容はごく基本的なものに留まっている.
 本書は,歯学生の実習副読本として編まれたもので,さまざまな補綴装置について,各大学の基礎実習に利用しうる臨床および技工操作のステップ写真で構成されている.学生諸君は,ごく基本的な補綴装置についてはもちろん,最新の補綴装置についても,製作工程の全体をつぶさに見て取ることができるであろう.したがって,本書は単に歯学生の実習副読本としてばかりでなく,臨床研修歯科医をはじめとする若い歯科医師,歯科技工士をはじめとするコデンタルワーカーの参考書としても活用していただけるものと考えている.
 本書の企画は,平成18年の秋に提起され,およそ2年間かけて,全国29大学のクラウンブリッジ補綴学にかかわる教授の先生方の一致協力によって成就された.その間,全大学におけるクラウンブリッジ基礎実習のアンケート調査を実施し,できるかぎりその共通項を連ねた目次を作成し,絵コンテ案を準備して検討を重ね,実際にステップ写真を撮影し,手分けして説明文をつけた.これらの過程は決して平坦ではなかったが,参加してくださったすべての大学が協力的であり,建設的であった.
 また,本書の作成に際して,多くの大学の多数の教員,歯科技工士が「執筆協力者」としてメラミン歯の支台歯形成やろう型の採得・埋没・鋳造そして写真の撮影などにそれぞれ全力を傾注してくださった.これらの方々の積極的な参画がなかったなら本書が日の目をみることはなかったであろう.
 このように本書の上梓は,多くの方々の協力の所産である.本書が世に広く受け入れられ,クラウンブリッジ補綴教育の発展に寄与し,ひいては国民の健康に貢献できることを期待する.
 最後に,本書の制作にあたり,終始忍耐強くわれわれをリードしてくださった医歯薬出版(株)の諸氏に深謝いたします.
 2008年8月
 編集委員 石橋寛二 伊藤 裕 川和忠治 寺田善博 福島俊士 三浦宏之
第1章 クラウンブリッジ補綴とは
 A.クラウンブリッジの臨床的意義
  1 クラウンによる顎口腔機能の回復
  2 クラウンと歯周組織の関係
 B.クラウンブリッジの要件
  1 適合
  2 咬合関係
  3 隣接接触関係
  4 頬舌面形態
 C.クラウンブリッジの種類
 D.クラウンブリッジの補綴歯科治療の流れ
第2章 支台歯形成
 A.支台歯形成の原則
 B.全部鋳造冠のための支台歯形成
 C.前装鋳造冠のための支台歯形成
  1 前歯部
  2 小臼歯部
 D.オールセラミッククラウンのための支台歯形成
  1 前歯部
  2 大臼歯部
 E.クラウンのための支台歯形成
 F.接着ブリッジのための支台歯形成
  1 前歯部ブリッジ((3)2(1))
  2 臼歯部ブリッジ((7)6(5))
第3章 支台築造
 A.鋳造支台築造
 B.分割支台築造
 C.レジン支台築造
  1 ファイバーポストを利用する方法(直接法,1)
  2 ファイバーポストを利用する方法(間接法,4)
  3 既製金属ポストを利用する方法(直接法,1)
第4章 印象採得
 A.単一印象法(個人トレー)
 B.連合印象法
 C.二重同時印象法
 D.個歯トレー印象法
 E.咬合印象法
第5章 プロビジョナルレストレーション
 A.既製プラスチッククラウン応用法
  1 直接法(1前装鋳造冠)
 B.即時重合レジン応用法
  1 直接法
  2 間接法
第6章 シェードセレクション
第7章 顎間関係の記録(咬合採得)
 A.咬頭嵌合位の記録
  1 パラフィンワックスを用いたインターオクルーザルレコードの採得
  2 ビニルシリコーンラバー印象材を用いたインターオクルーザルレコードの採得
  3 その他の顎間関係の記録
 B.頭蓋に対する上顎歯列の三次元的位置関係の記録
 C.偏心咬合位の記録と咬合器の調節
第8章 作業模型の製作
 A.模型の製作
  1 歯型を含む歯列模型の製作
  2 対合歯列模型の製作
 B.咬合器装着
 C.歯型の分割とトリミング
 D.ダウエルピンの後付けによる製作法
 E.ガム付き模型の製作
第9章 ろう型形成
 A.盛り上げ法
 B.浸漬法
 C.圧接法
 D.ドロップオンテクニック
第10章 埋没・鋳造・模型上の調整・研磨
 A.埋没
 B.鋳造(遠心鋳造)
 C.模型上の調整
 D.研磨
第11章 レジン前装鋳造冠の製作
 A.ろう型採得
 B.鋳造体の処理
 C.レジンの築盛および重合
 D.形態修正,研磨
第12章 陶材焼付鋳造冠の製作
 A.ろう型採得
 B.埋没,鋳造
 C.メタルコーピングの試適
 D.メタルコーピングの前処理
 E.陶材の築盛および焼成
 F.仕上げ・研磨
第13章 レジンジャケットクラウンの製作
第14章 オールセラミッククラウンの製作
第15章 ポーセレンラミネートベニアの製作
 A.支台歯形成
 B.印象採得
 C.耐火模型の製作
 D.陶材の築盛および焼成
 E.ラミネートベニアの接着
第16章 ブリッジの製作
 A.レジン前装ブリッジ
  1 前歯部ブリッジ((3)2(1))
  2 臼歯部ブリッジ((7)6(5))
 B.陶材焼付ブリッジ((3)2(1))
 C.全部鋳造冠支台ブリッジ((7)6(5))
 D.オールセラミックブリッジ((5)6(7))
 E.ろう着
  1 石膏コアによる方法
  2 即時重合レジンによる方法
 F.接着ブリッジ
  1 前歯部ブリッジ((3)2(1))
  2 臼歯部ブリッジ((7)6(5))
第17章 口腔内試適と装着
コラム
 1 クラウンの現在
 2 ラウンデッドショルダー―シャンファーとショルダーの狭間に
 3 プロビジョナルレストレーション
 4 ポストの方向が異なる支台築造窩洞の印象
 5 ダイスペーサーの有無とクラウンの適合
 6 ろう型形成法―ワックスの付着と形態の付与
 7 陶材焼付鋳造冠の前装範囲―パーシャルベイク,フルベイク
 8 レジン前装鋳造冠の前装範囲―レジン前装とメタルバッキング
 9 急速加熱型クリストバライト埋没材による鋳造法
 10 ポンティック基底面形態

 索引