やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

医院のあるべき姿
 ワーキングプア,歯科医院閉院などの言葉が飛び交う近年の厳しい歯科情勢は,過去最悪であるといえるでしょう.コンビニの数より歯科医院が多いといわれるなか,「このままでよいはずがない」と思っている歯科医師の皆様も多いのではないでしょうか?
 一昔前までは医院主導であった医療が,現在は患者中心の医療へと変化してきています.インフォームドコンセント,インフォームドチョイス,全人的医療,Quality of Life,チーム医療などは,どれもが患者中心の医療のなかで使われるようになった言葉でしょう.また,メディアの発達とともに,患者様の歯科医療に対する知識や意識も向上しており,高い医療技術とともにホスピタリティをも求められる時代へと変化してきています.
 では,これからの歯科医院のあるべき姿とは,どのようなものでしょうか? まずは,人としての基本(マナーや常識)がしっかりと根づいている歯科医院であることが必要でしょう.そして,ハード,ソフト両面において,医療技術と設備,ホスピタリティの三拍子が備わった歯科医院であることが求められるでしょう.
 また,特徴を活かした医院作りも重要で,自分の医院がどのような体制で医療に取り組んでいるかを患者様に知っていただくことが重要だと思います.
 たとえば,痛みだけ取り除いてほしいといって来院される患者様と,歯のことで真剣に悩み苦しんでいて,人生を賭けて歯科医院に通院されようとする患者様とは,意識も歯にかける想いも全く違うわけです.
 そういった意味からも,患者様を受け入れる側のコンセプトをしっかりと提示する必要があるといえます.そうすることにより,その医院のコンセプトに共感してくださる方が訪れるようになり,医院のブランド化が図れるのではないでしょうか?
 そのような医院のブランドイメージのもと,第一印象を担うのが受付です.受付は,医院の看板であり医院の鏡であるといえます.もちろん,受付だけで歯科医院のイメージがよくなるといっているわけではありません.舵取り役である歯科医師のもと,歯科衛生士,アシスタント,歯科技工士などもチームの一員として同じ方向を向いていなければ,受付という医院の看板は,役に立つものではありません.
 来院時に,受付で「この医院に通ってみたい」と思っていただける対応をし,診療室に入っても「この医院にきてよかった」と感じていただき,お帰りの際には,満足感と幸福感に満ち,誰かに紹介したくなるような歯科医院であることを,皆,願っているのではないでしょうか.
 そのような歯科医院でありたいという想いを込めて,この本を執筆いたしました.
 歯科医師,受付,歯科衛生士のすべてが女性ばかりの歯科医院の「想い」や「気配り」を,受付の役割を通して余すことなくご説明したつもりです.この本を手にとってくださった皆様にとって,本書のどこか一つでも明日からの診療のお役に立ち,そして患者様のため,また今後の歯科界の発展に寄与できれば幸いに存じます.
 2010年 夏の日に
 歯科・林 美穂医院 院長 林 美穂
第1章 働く意味/どう働くのか?
 1.受付への期待・院長の立場から
  受付はコンシェルジュ
  女性の感性を磨く
  経営感覚をもった受付に
  歯科治療についての知識をもって説明をする
  プロフェッショナルな受付を目指す
 2.社会に出て「働く」ということ
 受付という仕事の魅力
  受付の役割
  意識レベルを上げる
  楽しいと感じながら働く
 3.目標をもつ
  自分は将来,どのような女性になりたいのか?
  自己分析
  憧れの人をもつ
  1日の小目標を決める
  振り返ってタイム
  受付日記
  目標設定図
 4.ホスピタリティ
  歯科医院にも接客サービスが必要な時代
  相手のことを思いやる気持
  患者様お一人おひとりを大切に
第2章 受付は医院の顔/好印象を与えるために
 1.外見と第一印象
  第一印象は大切
  医療人としての身だしなみ
  就業前の身だしなみチェック
  余裕をもつ
 2.立ち居振る舞い
  常に「見られている」という意識をもつ
  距離感
  手先の動き
  ながら動作の禁止
 3.挨拶がかけ声になっていませんか?
  笑顔でいつも気持よく
  笑顔は最高の身だしなみ
  気持を込めることの大切さ
  お辞儀の種類
 4.電話での応対
  自分の第一声が医院のイメージに直結する
  電話マニュアル
  電話の相手だけでなく……
 5.来客への対応
  笑顔で明るくさわやかに
  Welcomeの姿勢で
  どんな方にも変わらない対応を
  名刺の管理
  席次
  茶菓のサービス
 6.言葉使い
  人間はその人の使う言葉のような人になる
  明るい話題を
  言葉の置き換え
  言葉の力
  敬語について
第3章 始業前の準備と受付業務
 1.始業前の準備・準備8割仕事2割の心構え
  情報チェック
  カルテチェックとシミュレーション
  予約表の管理
  仕事モードONスイッチ
 2.環境整備と清掃
  待合室
  香りと音
  水回りやゴミ箱のチェック
 3.お出迎え
  挨拶とプラスアルファのお声がけ
  受付グッズ
  診療室との連携〜インカムの活用〜
  お待ちいただくとき〜先手の行動〜
  待ち時間のお伝え
  ドリンクお好み表〜来客にも対応〜
  いただき物リスト
 4.会計業務
  治療が終わったら
  会計は迅速・正確・確実に
 5.予約業務
  予約の入れ方は医院経営に直結する
  初診の方への予約システムの説明
  キャンセルのご連絡
 6.確認の連絡と対応事項
  患者様へのご連絡
  患者様からの予約の電話
  診療金額を尋ねられた場合
  予約時間に遅れるという連絡をいただいた場合
  院内での対応
 7.お見送り
  傾聴
  次回につながる接客
  記憶に残る,印象に残るお見送り
  ささやかなプレゼント
  患者様とのつながり
  患者様もたまには……
  実際に治療を受けてみると……
 8.クレームへの対応
  まずは謝罪する姿勢が大切
  報告と情報の共有
  最後にお詫びと感謝を
 9.秘書的業務
  院長の補佐役として
  守秘義務
 10.受付は営業マン
  リコールのご連絡
  電話
  葉書・メール
  お礼状
  未来院の患者様へのご連絡
  報告・連絡・相談
  院外でも営業マン
  医院のファンを大切にする
 11.受付における会話
  ついしてしまいがちなこと
  患者様との会話
第4章 受付としての心のもち方
 1.リフレーミング
  鏡をよく見る
  リフレーミングとは
 2.日々の心がけ
  感性を磨く
  医院の周辺に詳しくなる
  変化を心がける
  頼りになる友人たち

 あとがきにかえて

 ●COLUMN
  ・受付は患者様との架け橋に
  ・余裕をもつことの大切さ
  ・スタッフ全員で清潔チェック
  ・受付の気配り
  ・「伝えた」と「伝わった」の違い
  ・たまには演技力も必要!
  ・「気づき力」アップ
 ●チェックポイント
  ・就業前の身だしなみ
  ・お辞儀の仕方
  ・茶菓についての決まりごと
  ・明るい表現/言葉の置き換えの例
  ・基本的な敬語
  ・接遇用語
  ・院内の環境整備
  ・会計時には
  ・予約システムの説明