やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 歯科関連の書籍も多岐にわたって出版されており,手軽に手に取れるものから洋書に至るまでさまざまなものがある.その中でも,コンポジットレジン修復に関する書籍は多く出版されており,臨床に必要な情報が容易に得られるようになっている.とくに,臨床テクニックに関しては,いわゆるフィーリングで身につくものではなく,文章を読み解くことが確実な理解につながるものと考えられ,その観点から書籍の重要性が喧伝されるところである.動画は,確かに臨場感があるものの,ストリーミングとして流れていくために記憶に残りにくいという欠点を有している.その点,書籍は理解を促すとともに,それによって記憶に残るものであり,これが重要な点となる.
 コンポジットレジン修復の臨床においては,(1)原形態の回復,(2)残存歯質との色調の調和,そして(3)エナメル質様の質感の付与,という3つの重要な事項を満たすことが求められる.本書は,特に(2)の色調調和における考慮事項を,色彩学の基本に戻って解説を加え,シェードを選ばないユニバーサルシェードのコンポジットレジンについて理解を深めることを主眼として企画されたものである.自らが使用する材料の基本を理解することで,その材料の有している効果を最大限に発揮することが可能となり,そのことが良好な予後にもつながるはずである.そして,これらの理解によって,臨床で使用されているコンポジットレジンペーストの特性を把握し,臨床における適材適所の判断ができるであろう.
 歯科臨床では,その症例において必要な材料というものがある.これまでの経験を通して言えることであるが,材料特性を理解すること,そしてその取扱いに習熟することこそが,目的の審美性とともに機能性に富んだ修復を可能とする.ぜひとも,患者が心から喜ぶ修復処置のためにも本書を活用いただければと,心より願っている.
 令和3年10月 宮崎真至
PART I 今さら聞けない! 色に関する基礎知識
  CHAPTER 1 なぜユニバーサルシェードは単色で色調再現できるのか(宮崎真至(日本大学歯学部))
   ユニバーサルシェードの種類
   おさえておきたい光の特徴
   やはりレジンペーストの組成は大切
   構造色をしっかり理解する
  CHAPTER 2 一つ上の審美修復を行うための歯の色に対する理解(宮崎真至(日本大学歯学部))
   明度の理解はとても大切
   わかったようで,わかっていない色の世界
   質感という天然歯らしさの表現
PART II 今だから聞きたい ユニバーサルシェードの特徴
 メーカーが臨床での疑問に答える
  CHAPTER 1 オムニクロマ(秋積宏伸(株式会社トクヤマデンタル))
  CHAPTER 2 クリアフィルマジェスティESフロー(石原周明(クラレノリタケデンタル株式会社))
  CHAPTER 3 ビューティフィルユニシェード(宮田俊介(株式会社松風))
 基礎編
  CHAPTER 4 使いこなしのテクニック(宮崎真至(日本大学歯学部))
   各製品の特徴を把握する
   歯頸部修復
   臼歯部修復
   前歯部修復
PART III 目からウロコの臨床テクニック
  CHAPTER 1 オムニクロマシリーズを用いた臨床(田代浩史(田代歯科医院))
   Case 1 前歯部修復
   Case 2 臼歯部修復
   Case 3 歯頸部修復
  CHAPTER 2 クリアフィルマジェスティESフローを用いた臨床(保坂啓一(徳島大学大学院))
   Case 1 臼歯部修復
   Case 2 前歯部修復
  CHAPTER 3 ビューティフィルユニシェードを用いた臨床(秋本尚武(秋本歯科診療所))
   Case 1 前歯部修復
   Case 2 臼歯部修復

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