やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 マイナンバー制度(「社会保障・税番号制度」)が平成28年1月から始まります.また,平成27年6月に,マイナンバーとは別に医療等分野における番号制度(医療等ID,仮称)を今後導入することが決定しました.
 国は成長戦略の一つとして,ICT技術を利用した施策によるIT立国を謳っており,その中の最重要項目が医療分野のICT化と言えます.医療ICT化は,社会保障制度改革に大きく関わっており,ICT基盤としての番号制度は大きな意味を持っています.
 筆者は,平成23年度から日本歯科医師会常務理事として,厚労省等の審議会,特にIT関係の様々な会議に出席してきました.マイナンバー制度に関しては,社会保障分野における番号制度の利活用に関する審議会に,歯科医師会代表として出席し,制度の立ち上げに関わってきました.
 そこで本書では,マイナンバー制度に対する医療機関の対応とともに,医療等分野の番号制度の持つ意味について解説いたします.
 マイナンバー制度の一番の特徴は,政府関係者が「小さく産んで大きく育てていく制度」と説明しているように,マイナンバーの利活用範囲の拡大を前提とした制度ということになります.
 マイナンバー法では,医療分野では事務手続きにしか使えないようになっていますが,法成立後も,国は様々な利用拡大策を打ち出しています.
 利用範囲の拡大を目的としたマイナンバー法の改正(平成27年9月),さらに6月に改訂された日本再興戦略においては,マイナンバーカードに健康保険証機能を持たせることが決定しました.
 超高齢社会の到来とともに,日本の社会保障制度・医療保険制度が大きく変わろうとしています.その推進に医療ICT化は必須であり,連携基盤としてのマイナンバーと医療等IDという二つの番号制度についての理解が本書を通して進むことを願っております.
 2015.11
 冨山雅史
 はじめに
第1章 マイナンバー制度
 I マイナンバー制度
  1 マイナンバー制度と医療等分野における番号制度(医療等ID)
   1─マイナンバー制度
   2─医療等分野における番号制度(仮称:医療等ID)
  2 マイナンバー制度とは
   1─仕組み
   2─医療等分野におけるマイナンバーの利用
   3─個人番号(通称:マイナンバー)
   4─法人番号
   5─安全対策(特定個人情報の保護措置等)
    1)制度面における保護措置
    2)システム面における保護措置
  3 マイナンバーカードと情報提供ネットワーク
   1─個人番号カード(通称:マイナンバーカード)とは
   2─マイナンバーカードの使用方法
    1)平成28年からの使用方法
    2)その後の予定
   3─マイナンバーの利用場面
    1)マイナンバーの利用の具体例
   4─マイナポータル(情報提供等記録開示システム)と情報提供ネットワーク
    1)マイナポータル
    2)情報提供ネットワーク
  4 平成29年7月以降に医療保険のオンライン資格確認
  5 民間事業者(歯科診療所等)
第2章 歯科診療所の安全管理体制
 II 歯科診療所の安全管理体制
  1 歯科診療所で準備しておくこと
   1─準備のスケジュール
    1)平成28 年1 月までにしておきたいこと
    2)平成28 年1 月から行うこと
    3)平成29 年1 月から行うこと
   2─マイナンバーが必要な書類
    1)社会保障関係
    2)税務関係
   3─マイナンバー関連業務の洗い出し
   4─従業員への研修
  2 安全管理体制の整備
   1─基本方針及び取扱規定等の策定
    1)基本方針に定める項目
    2)取扱規定
   2─事務取扱担当者と事務取扱責任者の選定
   3─組織的安全管理措置
   4─人的安全管理措置
   5─物理的安全管理措置
   6─技術的安全管理措置
   7─外部委託
  3 マイナンバー取得
   1─マイナンバーを取り扱う場合の注意事項
    1)利 用
    2)提 供
    3)収 集
    4)保 管
    5)廃 棄
    6)取 得
   2─マイナンバーの保管と漏えい時の罰則
    1)保存期間
    2)罰 則
  4 社会保障,税務関連書類の提出様式の変更
   1─社会保障関係の申請書へのマイナンバーの記載時期
   2─社会保障分野で予定されている変更様式
    1)健康保険・厚生年金保険事務で変更される様式
    2)雇用保険で変更される様式
    3)年金関連書類の変更点
   3─税務関係書類へのマイナンバーや法人番号の記載方法および時期
  5 政府ホームページ
第3章 医療と番号制度
 III 医療と番号制度
  1 検討経緯
  2 医療等分野における番号制度(医療等ID)
   1─医療分野等ID導入に関する検討委員会「医療分野等ID導入に関する中間とりまとめ」(平成27 年7 月)
    1)医療分野におけるマイナンバーの取り扱いについて
    2)医療等IDの考え方について
    3)医療等IDの発番方法について
    4)医療等IDの記載・格納媒体について
    5)今後の必要な検討事項
   2─産業競争力会議の課題別会合と日本再興戦略改訂2015
    1)第6回産業競争力会議の課題別会合(平成27年5月29日)
    2)日本再興戦略改訂2015(平成27年6月閣議決定)
     (1)医療等分野における番号制度の導入
     (2) 地域医療情報連携ネットワーク/電子カルテの普及促進
     (3)医療等分野政策へのデータ活用の一層の促進
     (4)IT利活用を推進するための新たな法制上の措置
   3─医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会
  3 番号制度と医療情報の共有化との関係
第4章 ICT活用の将来像
 IV ICT活用の将来像
  1 医療等分野におけるICT活用の将来イメージ
   1─将来イメージ
   2─医 療等分野での番号を用いた情報連携のユースケース
    1)医療保険のオンライン資格確認
     (1)仕組み案1
     (2)仕組み案2
    2)保険者間の健診データの連携
    3)医療機関・介護事業者等の連携
     (1)地域ごとの医療連携ネットワーク間での番号の活用
     (2)医療機関等の連携の利用場面での番号の活用
    4)健康・医療の研究分野
    5) 健康医療分野のポータルサービス
     (1) 予防接種歴の管理や本人が予防接種歴を確認できる仕組み
    6)全国がん登録
    7)大規模災害時での対応
第5章 歯科界の対策
 V 歯科界の対策
  1 医療ICTへの対応
   1─医療ICTの目標
   2─医療等情報の標準化
   3─医療等情報連携の推進
   4─保健医療政策へのデータの一層の活用

 参考文献