「孫子の兵法」から思考する 合理的根管処置〜ENDOの兵法
本書は『孫子』の一節「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」に想を得て,「知彼」「知己」を思考の基幹として根管処置技法の実践について解説したものである.『孫子』は呉王,闔盧(在位BC514〜 496)に仕えた軍師,孫武によって著された13 篇から成る兵法書,「戦いに勝つための書」である.2500 年以上も前の兵法書であるが,ナポレオンが座右の書とし,武田信玄が同書出典の「風林火山」を旗印としていたように,洋の東西を問わず世界中で精読されてきた.『孫子』は情勢判断に重きを置く兵法書のため,現代に通じる普遍的な内容を包含している.合理的思考への示唆に富む『孫子』を,組織運営や経済活動などの実践指針として解説する書籍が,数多く出版されている.
「戦略」(strategy)や「戦術」(tactics)という元来の軍事用語が,歯科治療の論考の際にも使われるが,“Strategy wins wars,tactics wins battles.”と例示されるように,前者が包括的指針,後者を具体的実践策の分野を指す.『Endoの兵法』を掲げる本書の大部分は,根管における「戦術」級の戦い方に焦点をおいたものである.すなわち患歯への根管処置実施を決定後,局所的な「情報の収集と解析」と「臨機応変で柔軟な対応」とをいかに考え,どう実戦するかを主としている.対象として歯科臨床研修を終えた卒後2 年目程度の若い歯科医師を想定した.ひととおりの臨床技法を経験したとはいえ,経験面ではBeginnerに属するであろう歯科医師に,筆者の考える実践的根管処置の基本戦術を語るものである.
『孫子の兵法』は13 篇全文が約6,000 字に過ぎず,短く簡潔,明瞭にまとめられている.それに比して本書は,臨床現場での根管局所における戦い方に限定したにもかかわらず,いささか長いものとなってしまった.できるだけ平易な記述による「戦術」級兵法書を目指したゆえ,冗漫なところがあるかもしれないが,ご容赦いただきたいと思う.
2015年4月
加藤広之
本書は『孫子』の一節「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」に想を得て,「知彼」「知己」を思考の基幹として根管処置技法の実践について解説したものである.『孫子』は呉王,闔盧(在位BC514〜 496)に仕えた軍師,孫武によって著された13 篇から成る兵法書,「戦いに勝つための書」である.2500 年以上も前の兵法書であるが,ナポレオンが座右の書とし,武田信玄が同書出典の「風林火山」を旗印としていたように,洋の東西を問わず世界中で精読されてきた.『孫子』は情勢判断に重きを置く兵法書のため,現代に通じる普遍的な内容を包含している.合理的思考への示唆に富む『孫子』を,組織運営や経済活動などの実践指針として解説する書籍が,数多く出版されている.
「戦略」(strategy)や「戦術」(tactics)という元来の軍事用語が,歯科治療の論考の際にも使われるが,“Strategy wins wars,tactics wins battles.”と例示されるように,前者が包括的指針,後者を具体的実践策の分野を指す.『Endoの兵法』を掲げる本書の大部分は,根管における「戦術」級の戦い方に焦点をおいたものである.すなわち患歯への根管処置実施を決定後,局所的な「情報の収集と解析」と「臨機応変で柔軟な対応」とをいかに考え,どう実戦するかを主としている.対象として歯科臨床研修を終えた卒後2 年目程度の若い歯科医師を想定した.ひととおりの臨床技法を経験したとはいえ,経験面ではBeginnerに属するであろう歯科医師に,筆者の考える実践的根管処置の基本戦術を語るものである.
『孫子の兵法』は13 篇全文が約6,000 字に過ぎず,短く簡潔,明瞭にまとめられている.それに比して本書は,臨床現場での根管局所における戦い方に限定したにもかかわらず,いささか長いものとなってしまった.できるだけ平易な記述による「戦術」級兵法書を目指したゆえ,冗漫なところがあるかもしれないが,ご容赦いただきたいと思う.
2015年4月
加藤広之
「孫子の兵法」から思考する 合理的根管処置〜ENDOの兵法
Introduction 彼を知り己を知る
Part 1 根管形態の把握−情報収集と解析
Chapter 1 「普通の根管」と根管形態イメージ
根管形態「イメージ」の現状確認
「普通の根管」−標準的な主根管形態
さまざまな根管の捉え方
Chapter 2 根管形態バリエーションと臨床分類
根管形態診断の現状把握
実践的な根管形態の臨床分類とは
「知彼」−主根管形態の局所診断
「知彼」−根管彎曲の捉え方
Column 「歯根サロン」(1)《3 根の下顎第一大臼歯》
Technique Tips1 根管形態把握の武器
Chapter 3 X線画像からの根管形態情報抽出
ENDOの視点からのX線情報解析
主根管分岐のX線画像診断
根管処置に役立つ術前X線写真撮影法
Column 「歯根サロン」(2)《上顎第一小臼歯の根面溝》
Chapter 4 根管形態の探索−根管口から「診る」
根管はどこまでみえるか
根管口部をきちんとみるために
根管口から情報を引き出す
Column 「髄室サロン」(1)《上顎第一大臼歯の髄室側壁》
Part 2 根管処置での切削操作−設計と実践
Chapter 5 髄室開拡の技法−切削指標と手順
髄質開拡の基本原則
「歯軸」−髄質への水先案内人
ガイドグルーブと初期窩洞形成
初期窩洞と髄角を指標とした天蓋除去
髄室開拡時の切削エラー
Column 「髄室サロン」(2)《遠心口蓋根のある上顎大臼歯》
Chapter 6 根管形成の設計と根管口部の施工
根管への切削操作を区分する
根管形成で付与する形態
第2 のアクセスオープニング
ISO規格を根管歯冠側 の形成に活かそう
GatesとPeesoの切削特性を知る
Technique Tips2 ENDOの武器;根管切削用具
Chapter 7 根尖孔への道−経路探索の基本
根管根尖側 の探索−パスファインディング
根尖孔への道を妨げるものは何か
根尖孔部の解剖学的データ
根管経路の探索・確保の基本操作
Chapter 8 根管形成のための作業長設定
根尖側 の根管形成に必要な情報
根管長測定と作業長決定の要点
X線的根管長測定での偏心投影法
Chapter 9 根尖側 の根管形成と切削指標
根尖側 の根管切削−設計と指標
根尖側 での切削操作の要点
根尖部形成時の臨床上の注意事項
Part 3 根管内の無菌的環境の獲得と維持
Chapter 10 根管の清掃−効果判定と薬剤応用
根管切削による清掃効果と薬剤応用
根管形成後の根管壁面チェック
根管の化学的清掃
根管治療剤の応用と役割
仮封処置の重要性
Chapter 11 側方加圧充填法−再現性の高い技法
根管充填の役割
根管形成とGPのISO規格
側方加圧の充填効果と実態
側方加圧の実践上の要点
Technique Tips3 根管内環境を維持する「城壁」
Practical Essentials 要点整理「彼を知り己を知る」
Endodontic Tactics 根管処置技法−実践上の要点
根管の基本形態からの切削方針
根管のX線情報抽出と形態推定
「歯軸」を指標とした髄質開拡技法
髄質開拡時の治療環境
根管の清掃と無菌的環境の獲得
根管の閉塞と加圧操作
文献
索引
あと書き
Introduction 彼を知り己を知る
Part 1 根管形態の把握−情報収集と解析
Chapter 1 「普通の根管」と根管形態イメージ
根管形態「イメージ」の現状確認
「普通の根管」−標準的な主根管形態
さまざまな根管の捉え方
Chapter 2 根管形態バリエーションと臨床分類
根管形態診断の現状把握
実践的な根管形態の臨床分類とは
「知彼」−主根管形態の局所診断
「知彼」−根管彎曲の捉え方
Column 「歯根サロン」(1)《3 根の下顎第一大臼歯》
Technique Tips1 根管形態把握の武器
Chapter 3 X線画像からの根管形態情報抽出
ENDOの視点からのX線情報解析
主根管分岐のX線画像診断
根管処置に役立つ術前X線写真撮影法
Column 「歯根サロン」(2)《上顎第一小臼歯の根面溝》
Chapter 4 根管形態の探索−根管口から「診る」
根管はどこまでみえるか
根管口部をきちんとみるために
根管口から情報を引き出す
Column 「髄室サロン」(1)《上顎第一大臼歯の髄室側壁》
Part 2 根管処置での切削操作−設計と実践
Chapter 5 髄室開拡の技法−切削指標と手順
髄質開拡の基本原則
「歯軸」−髄質への水先案内人
ガイドグルーブと初期窩洞形成
初期窩洞と髄角を指標とした天蓋除去
髄室開拡時の切削エラー
Column 「髄室サロン」(2)《遠心口蓋根のある上顎大臼歯》
Chapter 6 根管形成の設計と根管口部の施工
根管への切削操作を区分する
根管形成で付与する形態
第2 のアクセスオープニング
ISO規格を根管歯冠側 の形成に活かそう
GatesとPeesoの切削特性を知る
Technique Tips2 ENDOの武器;根管切削用具
Chapter 7 根尖孔への道−経路探索の基本
根管根尖側 の探索−パスファインディング
根尖孔への道を妨げるものは何か
根尖孔部の解剖学的データ
根管経路の探索・確保の基本操作
Chapter 8 根管形成のための作業長設定
根尖側 の根管形成に必要な情報
根管長測定と作業長決定の要点
X線的根管長測定での偏心投影法
Chapter 9 根尖側 の根管形成と切削指標
根尖側 の根管切削−設計と指標
根尖側 での切削操作の要点
根尖部形成時の臨床上の注意事項
Part 3 根管内の無菌的環境の獲得と維持
Chapter 10 根管の清掃−効果判定と薬剤応用
根管切削による清掃効果と薬剤応用
根管形成後の根管壁面チェック
根管の化学的清掃
根管治療剤の応用と役割
仮封処置の重要性
Chapter 11 側方加圧充填法−再現性の高い技法
根管充填の役割
根管形成とGPのISO規格
側方加圧の充填効果と実態
側方加圧の実践上の要点
Technique Tips3 根管内環境を維持する「城壁」
Practical Essentials 要点整理「彼を知り己を知る」
Endodontic Tactics 根管処置技法−実践上の要点
根管の基本形態からの切削方針
根管のX線情報抽出と形態推定
「歯軸」を指標とした髄質開拡技法
髄質開拡時の治療環境
根管の清掃と無菌的環境の獲得
根管の閉塞と加圧操作
文献
索引
あと書き