やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 万が一,あなたが治療中の患者さんが突然,不調を訴えたり,意識をなくしてしまったらどうしますか?
 高齢化社会に伴い,歯科医療の現場においても治療中やその前後に医療事故が起こる危険性が増加しています.一般的には問診票の記入,バイタルサインの測定などにより偶発症の大半は予防できるといわれていますが,診療前に待合室で,あるいは診療待ちのチェア上で患者さんが意識をなくしてしまったり,心肺停止状態になった事例も報告されています.
 予期せぬアクシデントに直面した際,医師の応援を要請したり,救急車などの出動を依頼することも重要ですが,救急車の到着を待つ間,歯科医師だけでなくその場にいるすべてのスタッフが,目の前の患者さんに適切な救命処置や救急処置を行うことが求められています.
 しかし,実際に患者さんの様子が急変したとき,落ち着いて全身状態を評価して,的確に対応するということは容易ではありません.
 そこで本書では,まず症状別にフローチャートを示し,それぞれの対処法が書かれている「I.症状からみた対処法」,「II.救命処置」のページをすぐに開けるよう工夫し,「そのとき」何をしたらよいかを,ひと目でわかるように原因,症状,対処法に分けてまとめました.
 さらに,「III.偶発症予防のためにできること」では,そもそも偶発症が起こらないようにするために,日頃からどのようなことに気をつけて診療すればよいか,問診や対診のポイントからバイタルサインの見方と評価までを,わかりやすく示しました.
 一人でも多くの歯科医師およびスタッフが,医療人の一人としてさまざまなリスクのある患者さんに対して,時代に則した安全な歯科医療を実践できるように,本書を存分に活用していただきたいと思います.
 2008年9月
 見崎 徹
 伊東隆利
 渋谷 鑛
 はじめに
 症状からみたフローチャート
 救急薬品の管理および使用時の注意
I 症状からみた対処法
 循環器
  1 血圧が急激に上昇したら
  2 血圧が急激に低下したら
  3 頻脈がみられたら
  4 徐脈になったら
  5 不整脈に気づいたら
  6 胸痛や胸部不快感を訴えたら
 脳・神経
  7 患者の応答が鈍くなってきたら(意識レベルの低下・意識喪失)
  8 頭痛を訴えたら
  9 吐き気を訴えたり,嘔吐したら
  10 けいれんが起こったら
 呼吸器
  11 呼吸困難や窒息感がみられたら
  12 呼吸が弱くなったら
  13 チアノーゼがみられたら
  14 気管・食道に異物が落ちたら
  15 気道閉塞が起こったら
  16 ぜんそく(気管支喘息)発作がみられたら
 その他
  17 四肢冷感・冷汗がみられたら
  18 アナフィラキシーが疑われたら
  19 出血が止まらなくなったら
  20 興奮がみられたら
  21 浮腫・気腫がみられたら
II 救命処置
 心肺蘇生法のABCDフローチャ-ト
  意識の確認 気道確保 人工呼吸 胸骨圧迫(心臓マッサージ) 除細動 小児(1〜8歳)の心肺停止時の対応について バイタルサインの測定 救急薬剤の投与 翼状針を用いた静脈路確保 静脈留置針を用いた静脈路確保
III 偶発症予防のためにできること
 1 安全な歯科治療のための提案
 2 問診(医療面接)のポイント
 3 内科(主治医)対診のポイント
 4 カルテ開示を求められた際の対応
 5 訪問歯科診療を安全に行うためのポイント
 6 バイタルサインの見方と評価
  1 脈拍
  2 血圧
  3 動脈血酸素飽和度
  4 呼吸
  5 心電図モニタ

 文献
 索引