序 文
最近の医療の現場では,「インフォームド・コンセント」という言葉に代表されるように,医師と患者との信頼関係がとくに重要視されるようになった.
信頼関係の始まりは,患者とのコミュニケーションを図ることである.そして,コミュニケーションの手段として言葉と応対の基本的作法を大切にしなければならない.診療所の顔といわれる受付の存在は,その意味でまず最初の重要な鍵を握ることになる.
本書は単に受付事務の知識だけではなく,歯科衛生士として,女性として当然知っておかなければならない応対や作法についても述べたつもりである.
I編基礎知識では,1章において歯科診療所における受付事務の必要性について述べ,受付の機能と患者とのコミュニケーションの手段としての話し方の重要性を説いた.2章では,患者の心の動きを理解するとともに,それに対応する心構えについて述べ,とくに医療は人間の幸福という大原則の下で論じられ研究されなければならないことを強調した.旧歯科衛生士教本にあった社会保険歯科診療報酬請求事務のことは簡略化した.3章受付の事務的な仕事では,診療録や文書の管理から物品,金銭の管理など広い範囲にわたって説明するとともに,コンピュータなどのOA機器の利用については旧歯科衛生士教本より詳しく解説した.
II編応対の実習では,1章にキャリアウーマンとしての心構えを述べた.いきいきと活動的に仕事に取り組む女性,そこには,キャリアウーマンとしての自信と誇りが満ちている.常識豊かな知性,光る感性と磨かれた動作が,洗練された魅力ある女性をつくり出す.その意味で歯科衛生士であるとともに,女性としてのあるべき基本的姿勢について述べた.2章では,日常用語の使い方,敬語の使い方,話し言葉と書き言葉について説明し,言葉はその場の状況と語句の使い方で相手の受け取り方が異なることを知る必要があることを述べた.3章では,患者応対の基本例と対象別の事例などを示したが,教育の現場では,5章にあるようにロールプレイングを取り入れればなお効果的である.専任教員はこの方法を熟知しておく必要がある.4章では,電話のもつ特性をよく認識して事務的でなく誠意のある応対を心がけるよう強調した.
本書を単に知識のみの修得に利用するだけでなく,常に患者の立場になって,ものを考える姿勢と,歯科衛生士として,女性としての基本的な作法を身につけて,患者とのよいコミュニケーションを図るために使用していただきたい.
なお,執筆はI編1〜2章を善本,3章を福田,II編1〜2章を宮脇,3〜5章を荒木が担当した.
1994年3月
著者一同
最近の医療の現場では,「インフォームド・コンセント」という言葉に代表されるように,医師と患者との信頼関係がとくに重要視されるようになった.
信頼関係の始まりは,患者とのコミュニケーションを図ることである.そして,コミュニケーションの手段として言葉と応対の基本的作法を大切にしなければならない.診療所の顔といわれる受付の存在は,その意味でまず最初の重要な鍵を握ることになる.
本書は単に受付事務の知識だけではなく,歯科衛生士として,女性として当然知っておかなければならない応対や作法についても述べたつもりである.
I編基礎知識では,1章において歯科診療所における受付事務の必要性について述べ,受付の機能と患者とのコミュニケーションの手段としての話し方の重要性を説いた.2章では,患者の心の動きを理解するとともに,それに対応する心構えについて述べ,とくに医療は人間の幸福という大原則の下で論じられ研究されなければならないことを強調した.旧歯科衛生士教本にあった社会保険歯科診療報酬請求事務のことは簡略化した.3章受付の事務的な仕事では,診療録や文書の管理から物品,金銭の管理など広い範囲にわたって説明するとともに,コンピュータなどのOA機器の利用については旧歯科衛生士教本より詳しく解説した.
II編応対の実習では,1章にキャリアウーマンとしての心構えを述べた.いきいきと活動的に仕事に取り組む女性,そこには,キャリアウーマンとしての自信と誇りが満ちている.常識豊かな知性,光る感性と磨かれた動作が,洗練された魅力ある女性をつくり出す.その意味で歯科衛生士であるとともに,女性としてのあるべき基本的姿勢について述べた.2章では,日常用語の使い方,敬語の使い方,話し言葉と書き言葉について説明し,言葉はその場の状況と語句の使い方で相手の受け取り方が異なることを知る必要があることを述べた.3章では,患者応対の基本例と対象別の事例などを示したが,教育の現場では,5章にあるようにロールプレイングを取り入れればなお効果的である.専任教員はこの方法を熟知しておく必要がある.4章では,電話のもつ特性をよく認識して事務的でなく誠意のある応対を心がけるよう強調した.
本書を単に知識のみの修得に利用するだけでなく,常に患者の立場になって,ものを考える姿勢と,歯科衛生士として,女性としての基本的な作法を身につけて,患者とのよいコミュニケーションを図るために使用していただきたい.
なお,執筆はI編1〜2章を善本,3章を福田,II編1〜2章を宮脇,3〜5章を荒木が担当した.
1994年3月
著者一同
I編 基礎知識
1章 歯科診療所における受付業務の必要性/3
I 受付の必要性……3
1.医療にかかる患者数……3
2.医療施設数……3
3.コデンタルスタッフの協力……4
4.受付の機能……5
5.受付の構造……6
II 受付の存在の意義……7
1.受診者とのコミュニケーションの役割……7
2.歯科診療の流れのなかで重要な役割を果たす……9
3.膨大な事務量を処理する役割を果たす……10
2章 受付の基礎知識と業務/11
I はじめに……11
II 受付応対の仕事……12
1.受診者……12
2.保険証の確認……15
3.外来者・来訪者の応対……18
III 社会保障と医療保険……19
1.社会保障制度の概要……19
2.医療保険の内容……20
3.医療保険の種類……23
4.療養の給付……23
5.診療報酬が支払われる仕組み……24
6.老人保険制度の概要……25
IV 診療録の作成と保管……27
1.診療録記入上の注意事項……27
2.診療録の保管……29
V 歯科医療の内容……30
1.人をなおす医療……30
2.医は仁術……30
3.歯科医療の三つの型……31
VI 予診準備……31
1.予診表の意義と目的……31
2.その他の質問表……35
VII 診療計画……35
VIII 時間約束制……37
1.時間約束制の考え方……37
2.時間約束制の長所と短所……39
3.受付における注意事項……40
IX リコール制……43
1.意義と目的……43
2.患者への説明……43
3.リコールカードの作成と整理……44
4.リコールの通知……44
3章 受付の事務的な仕事/47
I 物品の購入と在庫管理……48
1.物品の購入……48
2.物品の在庫管理……49
II 金銭の取り扱い……50
1.金銭取り扱い上の注意事項……50
2.患者日計表……50
3.収支日計表……50
4.収支月計表……53
5.歯科診療所における必要経費……53
III 文書の発行……54
1.診断書……54
2.処方箋……55
3.歯科技工指示書……55
4.患者紹介状と返事……57
5.検査依頼書……57
6.医療廃棄物処理の管理票……58
IV 患者連絡用の文書……58
1.事務用文書の書き方の要点……58
2.手紙の文例……60
V 文書・資料の整理と保管……62
1.ファイルに必要な文房具,事務用収納庫……63
2.キャビネット式整理法……63
3.その他の資料の整理と保管……67
VI 待合室の管理……68
VII コンピュータの利用……69
1.コンピュータの種類とその用途……69
2.コンピュータの歯科診療所での利用……70
3.歯科診療所におけるコンピュータ(パソコン)使用の実際……72
II編 応対の実習
1章 応対の作法/79
I 魅力ある女性……79
1.キャリアウーマン……79
2.好印象を与える女性……82
3.動作を美しくみせるために……82
II 一般的な作法……83
III 応対の要領……85
1.来客の場合……85
2.訪問の場合……88
IV 歯科衛生士の作法……91
1.診療所の場合……91
2章 日常用語の使い方/93
I 敬語……93
1.尊敬語……94
2.謙譲語……94
3.ていねい語……94
4.美化語……95
5.職場の敬語……95
6.謙譲語のむずかしさ……95
II 標準語と方言……95
III 話し言葉と書き言葉……96
1.話し言葉と書き言葉の比較……96
2.書き言葉……97
3.書くこと……98
IV 聞くこと・話すこと……98
1.聞くこと……99
2.話すこと……99
3.言葉を美しく,豊かにする……101
3章 受付応対の実際/104
I 実習の目的……104
II 患者応対の基本例……104
1.初診患者の場合……104
2.初診・急患の場合……106
3.再来患者の場合……108
4.処置内容が決まっている再来患者の場合……109
III 対象別応対の実際……111
1.小児への対応……111
2.高齢者への対応……112
3.心身障害(児)者への対応……113
IV 来客(患者以外の来院者)の応対……115
V ロールプレイング……116
4章 電話応対の実際/120
I 実習の目的……120
II 実習のポイント……120
1.上手な電話のかけ方……120
2.上手な電話の受け方……121
III 電話応対の基本例……122
1.電話をかける場合……122
2.電話を受ける場合……124
3.留守番電話の使い方……126
IV 苦情電話への対応……127
V ロールプレイング……128
1.準備するもの……128
2.役割……128
3.状況設定(電話をかける場合の例)……129
4.状況設定(電話を受ける場合の例)……129
5.評価の仕方……129
5章 総合演習/132
I 実習の目的……132
II 受付業務のロールプレイング……132
III 待合室のチェックポイント……134
参考図書……137
用語解説……139
さくいん……141
1章 歯科診療所における受付業務の必要性/3
I 受付の必要性……3
1.医療にかかる患者数……3
2.医療施設数……3
3.コデンタルスタッフの協力……4
4.受付の機能……5
5.受付の構造……6
II 受付の存在の意義……7
1.受診者とのコミュニケーションの役割……7
2.歯科診療の流れのなかで重要な役割を果たす……9
3.膨大な事務量を処理する役割を果たす……10
2章 受付の基礎知識と業務/11
I はじめに……11
II 受付応対の仕事……12
1.受診者……12
2.保険証の確認……15
3.外来者・来訪者の応対……18
III 社会保障と医療保険……19
1.社会保障制度の概要……19
2.医療保険の内容……20
3.医療保険の種類……23
4.療養の給付……23
5.診療報酬が支払われる仕組み……24
6.老人保険制度の概要……25
IV 診療録の作成と保管……27
1.診療録記入上の注意事項……27
2.診療録の保管……29
V 歯科医療の内容……30
1.人をなおす医療……30
2.医は仁術……30
3.歯科医療の三つの型……31
VI 予診準備……31
1.予診表の意義と目的……31
2.その他の質問表……35
VII 診療計画……35
VIII 時間約束制……37
1.時間約束制の考え方……37
2.時間約束制の長所と短所……39
3.受付における注意事項……40
IX リコール制……43
1.意義と目的……43
2.患者への説明……43
3.リコールカードの作成と整理……44
4.リコールの通知……44
3章 受付の事務的な仕事/47
I 物品の購入と在庫管理……48
1.物品の購入……48
2.物品の在庫管理……49
II 金銭の取り扱い……50
1.金銭取り扱い上の注意事項……50
2.患者日計表……50
3.収支日計表……50
4.収支月計表……53
5.歯科診療所における必要経費……53
III 文書の発行……54
1.診断書……54
2.処方箋……55
3.歯科技工指示書……55
4.患者紹介状と返事……57
5.検査依頼書……57
6.医療廃棄物処理の管理票……58
IV 患者連絡用の文書……58
1.事務用文書の書き方の要点……58
2.手紙の文例……60
V 文書・資料の整理と保管……62
1.ファイルに必要な文房具,事務用収納庫……63
2.キャビネット式整理法……63
3.その他の資料の整理と保管……67
VI 待合室の管理……68
VII コンピュータの利用……69
1.コンピュータの種類とその用途……69
2.コンピュータの歯科診療所での利用……70
3.歯科診療所におけるコンピュータ(パソコン)使用の実際……72
II編 応対の実習
1章 応対の作法/79
I 魅力ある女性……79
1.キャリアウーマン……79
2.好印象を与える女性……82
3.動作を美しくみせるために……82
II 一般的な作法……83
III 応対の要領……85
1.来客の場合……85
2.訪問の場合……88
IV 歯科衛生士の作法……91
1.診療所の場合……91
2章 日常用語の使い方/93
I 敬語……93
1.尊敬語……94
2.謙譲語……94
3.ていねい語……94
4.美化語……95
5.職場の敬語……95
6.謙譲語のむずかしさ……95
II 標準語と方言……95
III 話し言葉と書き言葉……96
1.話し言葉と書き言葉の比較……96
2.書き言葉……97
3.書くこと……98
IV 聞くこと・話すこと……98
1.聞くこと……99
2.話すこと……99
3.言葉を美しく,豊かにする……101
3章 受付応対の実際/104
I 実習の目的……104
II 患者応対の基本例……104
1.初診患者の場合……104
2.初診・急患の場合……106
3.再来患者の場合……108
4.処置内容が決まっている再来患者の場合……109
III 対象別応対の実際……111
1.小児への対応……111
2.高齢者への対応……112
3.心身障害(児)者への対応……113
IV 来客(患者以外の来院者)の応対……115
V ロールプレイング……116
4章 電話応対の実際/120
I 実習の目的……120
II 実習のポイント……120
1.上手な電話のかけ方……120
2.上手な電話の受け方……121
III 電話応対の基本例……122
1.電話をかける場合……122
2.電話を受ける場合……124
3.留守番電話の使い方……126
IV 苦情電話への対応……127
V ロールプレイング……128
1.準備するもの……128
2.役割……128
3.状況設定(電話をかける場合の例)……129
4.状況設定(電話を受ける場合の例)……129
5.評価の仕方……129
5章 総合演習/132
I 実習の目的……132
II 受付業務のロールプレイング……132
III 待合室のチェックポイント……134
参考図書……137
用語解説……139
さくいん……141