やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 歯科においても高齢者,有病者,在宅寝たきり者などの治療を行う機会が増加しています.このような患者さんに歯科治療や局所麻酔に対する過度の不安・緊張や疼痛が加わると,予期せぬ偶発症が生じ,時には生命に関わる事態に陥る場合があります.特に,心肺停止時の対処は適切かつ迅速であることが重要なため,歯科医師をはじめとするすべての歯科医療従事者は,マネキン人形を使用した心肺蘇生法の ABCのトレーニングを繰り返し(1年に1回以上)行うことにより,手技に習熟しておくことが必要です.
 このたび,心肺蘇生法のガイドラインが改訂されたことに伴い,前作のビデオ「歯科医院における救急蘇生法の ABC」を全面的に改訂しました.
 また,第2部として偶発症の予防法を加え,問診の重要性,内科対診のポイント,バイタルサイン測定のポイント,笑気吸入鎮静法の有用性について解説しました.さらに,偶発症発生時の対応の基本として酸素投与法と注射法のポイントについても解説を加えました.
 ビデオと本冊子を併用することにより,偶発症を予防することに最善の方策を講じ,不幸にも偶発症が発生した場合には適切な対応を行っていただきたいと願っています.
 2001年8月 日本大学歯学部歯科麻酔学教室助教授 見崎 徹
はじめに

■第1部 救命処置(心肺蘇生法)
歯科治療中に心肺停止になり得る場合
 1.心肺蘇生法の定義と目的
 2.心肺蘇生法の手順(概要)
 3.心肺蘇生法のABC
   1)意識の確認
   2)気道の確保
   3)人工呼吸
   4)心臓マッサージ
   5)心肺蘇生法のABCで起こり得る合併症
   6)心肺蘇生法のABCを中断してもよいとき
   7)死の徴候(心肺停止時の臨床症状)
 4.一般市民に提唱する心肺蘇生法のおもな変更点
 5.救急車の出動を要請するときの留意点
■第2部 偶発症の予防と対応
 1.歯科治療時における全身的偶発症の予防法
   1)予診表について
   2)対診について
   3)バイタルサイン測定のポイント
   4)高血圧の新しいガイドラインと局所麻酔薬の選択
   5)脈拍〔心拍〕測定のポイント
   6)酸素投与の重要性
   7)歯科治療時における動脈血酸素飽和度測定装置(パルスオキシメーター)の有用性
   8)心電図を理解するためのポイント
   9)高血圧症を有する患者さんの歯科治療時における注意点
   10)虚血性心疾患(心筋虚血)を有する患者さんの歯科治療時における注意点
 2.歯科治療時における全身的偶発症へのおもな対処法
   1)気管・食道異物への対処法
   2)救急薬品を投与する際の注意点
   3)救急薬品の投与法(注射法)
   4)救急薬品と使用法
   5)救急用品・薬品のリスト
参考文献

■安全な歯科治療のための提案