やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

この絵本の利用法

 歯のはなしなんの歯この歯の絵本で,(1)楽しく歯の保指導ができます.(2)歯のなりたち(形態と構造)とおいたち(発生と進化の歴)の知識が広がります.(3)子どもたちあこがれの宇宙飛行士の資格のひとつが取れます.
 この絵本は,歯のことをもっとひろく知りたいという,(1)小学高学年以上の読み物として,(2)おさん,お母さん,幼稚園や保育園の先生が,子どもたちに読み聞かせる歯の本として,(3)歯科医師,歯科衛生士,養護教諭の皆さんが楽しく歯の保指導ができることを願って,つくったものです.そのために,(1)ヒトと動物の歯の絵,(2)クイズ,(3)Q &A ,(4)用語解説もついています.本書は,ヒトの口のなかに生えている歯のなりたち(形態と構造)とおいたち(発生と進化の歴)について,発生(個体発生)と進化(系統発生)の両面から解説したものです.
 歯には5億年におよぶ歴があります.歯は,セキツイ動物(からだをささえるセボネのある動物)の進化のなかでつくられ,さまざまにつくりかえられてきました.歯は,はじめアゴのない魚の皮膚の甲らの一部としてつくられました.アゴができるとともに,歯はエサをとるための捕食器としてアゴのうえにつくられました.サカナが水中生活から陸上生活へうつり,冷血動物であるハ虫類(からだがい角質の表皮でおおわれたトカゲなどの動物)から温血動物であるホ乳類(乳を飲ませて子どもを育てる動物)への進化にともなって,歯は大きく変化します.
 ヒトの歯は大人の歯のすべてが生えそろうまで,20年以上の年月がかかります.歯は,お母さんのおなかにいるとき,つまり胎児のときにつくりはじめられます.0歳から3歳にかけて生えるのが子どもの歯(乳歯)で,6歳からは大人の歯(永久歯)へと少しずつ生えかわります.
 11歳(小学生)から14歳(中学生)にかけて前から数えて7番目の歯(永久歯の第二大臼歯)が生えると,ヒトはほぼ大人のからだになります.さらに,最後の8番目の歯(永久歯の第三大臼歯,親知らずともいいます)は,はやい人は18歳をすぎてから,おそい人は20代なかばに生えてくることもあります.20数年というながい年月にわたってつくられる器官は,ヒトのからだのなかでは,歯のほかにはありません.
 このように,ヒトの歯は進化のうえでも発生のうえでも,ながい歴をもっています.でもヒトの歯は,人類の歴のなかではしだいに小さくなってきました.道具や火をって,やわらかいものを食べるようになったからです.いまこそ,セキツイ動物の先祖がアゴと歯をもつことによって,積極的な動物に変身したことを思いおこす必要があります.子どもたちがあこがれる宇宙飛行士になるには,ムシ歯が1本もなく,夫な歯であることが資格のひとつにされています.
 この絵本が歯についての理解を深め,歯の保指導や,子どもたちが宇宙飛行士になろうという夢をかなえるためのお役にたつことを,こころから願っています.
 2001年6月4日 歯の衛生週間のはじまる日に 後藤仁敏
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子どもの歯(「歯」の字の由来)……4
大人の歯……5
歯のない赤ちゃん……6
歯のない無顎類……7
赤ちゃんのさいしょの歯……8
ジョーズの歯……9
歯をもつ動物の出現:無顎類から顎口類へ……10
乳歯から永久歯へ:無学類(?)から学校類(?)へ……11
サメの歯の秘密……12
いろいろなサメの歯……13
歯とアゴの骨……14
サメの歯・サカナの歯(クイズ:なんの歯この歯1)……15
シーラカンスの歯……16
両生類の歯(クイズ:なんの歯この歯2)……17
いろいろなハ虫類の歯……18
恐竜の歯……19
ハ虫類の歯……20
ホ乳類の歯……21
いろいろなホ乳類の歯……22
サルの歯からヒトの歯へ……23
道具と火の使用(クイズ:なんの歯この歯3)……24
ヒトの歯の退化……25
Q & A(クイズの答)……26
用語解説……27〜28