やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき
 超高齢社会における歯科医療体制のあり方に社会的な関心が寄せられるなか,日本の未来を担う子どもたちの口と歯の健康は,誰がサポートするのでしょうか.子どもの齲蝕は減少したというものの,ハイリスクの子どもはまだまだ数多く,また発達障害児など特別な対応が必要な子どももたくさんいます.さらに,硬い食べ物が苦手な“噛まない“子どもや,“お口ポカン”の子どもなど,口腔機能の低下も大きな問題です.
 臨床現場では治療よりも予防処置や保健指導の比重がより多くなってきています.また,医療界全体が「モノから人へ」と転換を進めている現在,小児歯科医療者にも子どもと保護者に寄り添い,相手を思い,心をつかむことこそがより求められています.しかし,「先生の言っていることがよくわからない」「スタッフが忙しそうで相談しにくい」といった,患者さんと医療者との意思伝達がすれ違ってしまう話をしばしば耳にします.また歯科医師は,おもに患者さんの口の中や検査結果を見て診断を下しますが,それだけではわからないことはたくさんあります.そこで,歯科医師と子どもや保護者との間に位置する歯科衛生士こそが,患者さん側の心情に寄り添い,思いを受け止めたうえで,歯科医師と協働して対応できる,大きな役割を担っていると思います.そのためには「子どもの生活環境も含め,まるごと相手をよくみる」ことが大切なポイントとなりますが,それはまさしく歯科衛生士の仕事なのです.
 本別冊は,子どもの口腔内だけでなく,心身も含めた成長発育について写真やイラストでわかりやすく解説されており,さらにその基本的な知識を学んだうえで歯科的対応とチェアサイドでのコミュニケーションのあり方を学べる企画となっています.特にChapter 2,3では,日本小児歯科学会の認定歯科衛生士に協力をいただき,臨床現場でよくある悩みや相談に対し,生の声でわかりやすく,読者の皆さんと同じ視点から説明しています.小児専門の歯科医院はもちろん,一般の歯科医院に勤務する歯科衛生士にとっても,現場ですぐ役立つ一冊となることを願っています.
 最後に,本別冊発刊にあたり,神奈川歯科大学はじめ,全国の小児歯科開業医の先生方,またそこにお勤めの認定歯科衛生士の皆さま方の多大なるご協力に厚く感謝申しあげます.そして,写真の掲載をご快諾いただいた患者さんと保護者の方に,心よりお礼を申しあげます.
 2017年3月
 全国小児歯科開業医会会長
 犬塚勝昭
 まえがき
 Introduction なぜいま,小児歯科を学ぶ必要があるのか
Chapter1 子どもの口腔内をつかもう
 各項目内容
  口腔内と心身の発育状態を知ろう!
  “歯”への対応を知ろう!
  軟組織への対応を知ろう!
  口腔機能への対応を知ろう!
 (1)0歳〜3歳(Hellmanの歯齢IA〜IC期)
 (2)3歳〜5歳(Hellmanの歯齢IIA期)
 (3)6歳〜7歳(Hellmanの歯齢IIC期)
 (4)7歳〜8歳(Hellmanの歯齢IIIA期)
 (5)9歳〜11歳(Hellmanの歯齢IIIB期)
 (6)11歳〜12歳(Hellmanの歯齢IIIC期)
Chapter2 子どもの心をつかもう
 (1)待合室で泣く子ども
 (2)興奮して暴れる子ども
 (3)落ち着きがない,じっとしていられない子ども
 (4)何もしゃべらない子ども
 (5)不安で泣きそうだけど,我慢している子ども
 (6)処置にあたって口を開けてくれない子ども
 (7)処置を始めようとした途端に泣き出す子ども
 (8)治療の必要性はわかっているけど,治療ができない子ども
 (9)過保護,過干渉な保護者の子ども
 (10)保護者が無関心にみえる子ども
Chapter3 保護者の心をつかもう
 現代の保護者の特徴〜“ いまどきのお母さん” を理解しよう
 (1)子どもを案じて不安になっている保護者〜電話対応の段階から
 (2)過保護な保護者
 (3)歯科医院に不信感をもっている保護者
 (4)歯科への恐怖心をもっている保護者
 (5)子どもに歯科受診をさせたいのに,できない保護者
 (6)あまり子どもにかまう時間がもてない様子の保護者
 (7)子どもの口に無関心にみえる保護者
 (8)親の代わりに祖父母が連れてくる場合
 (9)歯科の情報をたくさんもっている保護者
 (10)子どもを一人で来させる保護者
 (11)遅刻・無断キャンセルが多い保護者
 (12)担当歯科衛生士の変更を希望する保護者
Chapter4 歯科衛生士が解決! 小児歯科の臨床でよくあるQ&A
 ホームケア編
 齲蝕編
 歯科治療編
 習癖編
 食事編
 歯の交換編

 Column
  (1)母子健康手帳の活用と注意点
  (2)COとCeについて
  (3)自閉スペクトラム症の子どもたち
  (4)モンスターペアレントとは?〜実態と適切な対応を知ろう
  (5)知っていますか? 日本小児歯科学会認定歯科衛生士
  (6)母乳と齲蝕の関係〜母乳は二度変身する! ?
  (7)子どもの“ 食” の悩み

 参考文献
 さくいん
 執筆者一覧