はじめに
歯科衛生士がペリオドンタルメディシン（歯周医学）に挑戦する時代が来ています
急速な高齢社会の到来を迎え，「健康で長生き」を喜べる社会，すなわち，健康長寿社会の実現が大きな課題となっています．平成14年に成立した「健康増進法」に関する具体的計画である「健康日本21」では，歯周病が「健康を脅かす危険な状態あるいは危険因子」として位置づけられたことで，国内において歯科医療は「歯の健康」だけに焦点を合わせるのではなく，健康寿命を延ばすための医療として捉えられ始めました．さらに，一昨年（平成19年）にまとめられた「新健康フロンティア戦略」では，今後国民が自ら取り組んでいくべき9つの健康対策のなかに「歯の健康づくり」が取り上げられ，生活習慣病と歯周疾患との関係や，歯・口腔の健康と全身との関係についても言及されています．いままさに，ヘルスケアにおける口腔と全身との関連性が科学的に追求され，歯周病が全身疾患と密接に関係していることが明らかにされつつあるのです．
このような状況のなかで，本書は，歯周病と全身疾患との関係である「歯周医学（ペリオドンタルメディシン）」をひもとく教科書または臨床の指南本として，歯科衛生士をはじめとする歯科医療職の方々に向け企画されました．
1章では，いまなぜ「ペリオドンタルメディシン」なのか，その背景や視点を，2章では，臨床レポートとして，さまざまな全身疾患，全身症状，そして生活習慣を有する患者さんに対して，現場でいかに対応するかについてを，臨床の第一線に従事している歯科医師，歯科衛生士が症例を提示し解説しています．3章では，「ペリオドンタルメディシン」にかかわるさまざまなエビデンス（根拠）について，最前線の研究者がそのメカニズムをわかりやすく解説し，「Column」では，知識の補完のための最新のトピックスをまとめました．さらに4章では，患者さんの視点に立って考えたとき，臨床の現場に実際に寄せられるであろう疑問や質問とその回答の一例を提示しています．なお，本書ではそれぞれの内容が有機的につながるような工夫をし，学術用語に関しては，用語解説を各項目ごとに設けています．
本書は，どのページから読み進めていただいてもかまいません．そして，もし理解が難しい内容にぶつかった場合は，各項目末尾にある参照ページや索引で関連事項を探してみてください．きっと答えが見つかるはずです．
本書によって，1人でも多くの歯科衛生士をはじめ，歯科医療にかかわる方々に「歯周医学（ペリオドンタルメディシン）」に挑戦する勇気が与えられたなら，編集委員，執筆者一同にとってこのうえない喜びです．結びに，本書の発刊にあたりましてご協力いただきました各位ならびに医歯薬出版株式会社に感謝の意を表します．
2009年4月吉日
沼部幸博，和泉雄一
歯科衛生士がペリオドンタルメディシン（歯周医学）に挑戦する時代が来ています
急速な高齢社会の到来を迎え，「健康で長生き」を喜べる社会，すなわち，健康長寿社会の実現が大きな課題となっています．平成14年に成立した「健康増進法」に関する具体的計画である「健康日本21」では，歯周病が「健康を脅かす危険な状態あるいは危険因子」として位置づけられたことで，国内において歯科医療は「歯の健康」だけに焦点を合わせるのではなく，健康寿命を延ばすための医療として捉えられ始めました．さらに，一昨年（平成19年）にまとめられた「新健康フロンティア戦略」では，今後国民が自ら取り組んでいくべき9つの健康対策のなかに「歯の健康づくり」が取り上げられ，生活習慣病と歯周疾患との関係や，歯・口腔の健康と全身との関係についても言及されています．いままさに，ヘルスケアにおける口腔と全身との関連性が科学的に追求され，歯周病が全身疾患と密接に関係していることが明らかにされつつあるのです．
このような状況のなかで，本書は，歯周病と全身疾患との関係である「歯周医学（ペリオドンタルメディシン）」をひもとく教科書または臨床の指南本として，歯科衛生士をはじめとする歯科医療職の方々に向け企画されました．
1章では，いまなぜ「ペリオドンタルメディシン」なのか，その背景や視点を，2章では，臨床レポートとして，さまざまな全身疾患，全身症状，そして生活習慣を有する患者さんに対して，現場でいかに対応するかについてを，臨床の第一線に従事している歯科医師，歯科衛生士が症例を提示し解説しています．3章では，「ペリオドンタルメディシン」にかかわるさまざまなエビデンス（根拠）について，最前線の研究者がそのメカニズムをわかりやすく解説し，「Column」では，知識の補完のための最新のトピックスをまとめました．さらに4章では，患者さんの視点に立って考えたとき，臨床の現場に実際に寄せられるであろう疑問や質問とその回答の一例を提示しています．なお，本書ではそれぞれの内容が有機的につながるような工夫をし，学術用語に関しては，用語解説を各項目ごとに設けています．
本書は，どのページから読み進めていただいてもかまいません．そして，もし理解が難しい内容にぶつかった場合は，各項目末尾にある参照ページや索引で関連事項を探してみてください．きっと答えが見つかるはずです．
本書によって，1人でも多くの歯科衛生士をはじめ，歯科医療にかかわる方々に「歯周医学（ペリオドンタルメディシン）」に挑戦する勇気が与えられたなら，編集委員，執筆者一同にとってこのうえない喜びです．結びに，本書の発刊にあたりましてご協力いただきました各位ならびに医歯薬出版株式会社に感謝の意を表します．
2009年4月吉日
沼部幸博，和泉雄一
はじめに
1章 総説 歯周病と全身疾患とのかかわり
「歯周医学（ペリオドンタルメディシン）」が変化させた歯周病学（沼部幸博）
2章 臨床レポート─こんな患者さんが来院したら
1．糖尿病の患者さんへの歯周治療（國松和司・宇部恵理香・佐々木大輔）
2．循環器疾患の患者さんへの歯周治療
(1)心臓弁膜症患者への術前の歯科治療（大渡凡人）
(2)高血圧症患者への歯周治療（中村利明・野口和行・和泉雄一）
3．誤嚥性肺炎の既往のある方（要介護者）への歯周治療（米山武義）
4．妊産婦への歯周治療（長谷川 梢・野口和行・古市保志・和泉雄一）
5．喫煙者への歯周治療
(1)禁煙達成による歯周治療への影響（伊藤 弘・武内寛子・沼部幸博）
(2)受動喫煙による歯肉・歯面の着色への対処（稲垣幸司・酒井 優・酒井敦代・柳町美紗・原田 崇）
6．骨粗鬆症の患者さんへの歯周治療（坂野雅洋・稲垣幸司・山本弦太・野田貴弘・野口俊英）
7．メタボリックシンドロームの患者さんへの対応例（南原美幸・久保田 恵・谷本佳彦・満尾 正・田村忠司・清水洋利）
3章 歯周医学をひもとく─理論と根拠を学ぶ
1．糖尿病と歯周病（野村慶雄）
2．循環器疾患（心疾患・脳血管疾患等）と歯周病（梅田 誠・和泉雄一）
3．誤嚥性肺炎と歯周病（高柴正悟・曽我賢彦）
4．早産・低体重児出産と歯周病（古市保志・長谷川 梢・和泉雄一）
5．喫煙と歯周病（稲垣幸司・高阪利美・向井正視・小出龍郎・野口俊英・渡辺 修・近藤清美）
6．骨粗鬆症と歯周病（稲垣幸司・坂野雅洋・野田貴弘・山本弦太・野口俊英・井澤浩之・蜂谷裕道・田口 明）
7．メタボリックシンドロームと歯周病（河野隆幸・西村英紀）
4章 よく寄せられるQ&A──患者さんにこんなことを聞かれたら?（沼部幸博・和泉雄一）
Column
Column1 服用薬剤による口腔への影響と歯周治療（水谷幸嗣・和泉雄一）
Column2 歯周病原細菌と心臓疾患（感染性心内膜炎）とのかかわり（大渡凡人）
Column3 バージャー病と歯周病（梅田 誠・和泉雄一）
Column4 専門的口腔ケアの手法・考え方（米山武義）
Column5 妊産婦への口腔ケア・歯科治療の考え方（長谷川 梢）
Column6 歯周病と肥満（関野 愉・沼部幸博）
Column7 医師が考える口腔内環境の重要性（工藤一彦）
Column8 唾液検査を知っていますか?（沼部幸博）
Column9 おさえておきたい歯周病に関連する細菌の知識（竹内康雄・和泉雄一）
Column10 誤嚥性肺炎予防としての口腔ケアのあゆみ（高柴正悟・曽我賢彦）
Column11 がんと歯周病（伊藤 弘・沼部幸博）
Column12 骨粗鬆症の特徴的な症状「圧迫骨折」とは?（稲垣幸司）
参考文献
索引
執筆者一覧
1章 総説 歯周病と全身疾患とのかかわり
「歯周医学（ペリオドンタルメディシン）」が変化させた歯周病学（沼部幸博）
2章 臨床レポート─こんな患者さんが来院したら
1．糖尿病の患者さんへの歯周治療（國松和司・宇部恵理香・佐々木大輔）
2．循環器疾患の患者さんへの歯周治療
(1)心臓弁膜症患者への術前の歯科治療（大渡凡人）
(2)高血圧症患者への歯周治療（中村利明・野口和行・和泉雄一）
3．誤嚥性肺炎の既往のある方（要介護者）への歯周治療（米山武義）
4．妊産婦への歯周治療（長谷川 梢・野口和行・古市保志・和泉雄一）
5．喫煙者への歯周治療
(1)禁煙達成による歯周治療への影響（伊藤 弘・武内寛子・沼部幸博）
(2)受動喫煙による歯肉・歯面の着色への対処（稲垣幸司・酒井 優・酒井敦代・柳町美紗・原田 崇）
6．骨粗鬆症の患者さんへの歯周治療（坂野雅洋・稲垣幸司・山本弦太・野田貴弘・野口俊英）
7．メタボリックシンドロームの患者さんへの対応例（南原美幸・久保田 恵・谷本佳彦・満尾 正・田村忠司・清水洋利）
3章 歯周医学をひもとく─理論と根拠を学ぶ
1．糖尿病と歯周病（野村慶雄）
2．循環器疾患（心疾患・脳血管疾患等）と歯周病（梅田 誠・和泉雄一）
3．誤嚥性肺炎と歯周病（高柴正悟・曽我賢彦）
4．早産・低体重児出産と歯周病（古市保志・長谷川 梢・和泉雄一）
5．喫煙と歯周病（稲垣幸司・高阪利美・向井正視・小出龍郎・野口俊英・渡辺 修・近藤清美）
6．骨粗鬆症と歯周病（稲垣幸司・坂野雅洋・野田貴弘・山本弦太・野口俊英・井澤浩之・蜂谷裕道・田口 明）
7．メタボリックシンドロームと歯周病（河野隆幸・西村英紀）
4章 よく寄せられるQ&A──患者さんにこんなことを聞かれたら?（沼部幸博・和泉雄一）
Column
Column1 服用薬剤による口腔への影響と歯周治療（水谷幸嗣・和泉雄一）
Column2 歯周病原細菌と心臓疾患（感染性心内膜炎）とのかかわり（大渡凡人）
Column3 バージャー病と歯周病（梅田 誠・和泉雄一）
Column4 専門的口腔ケアの手法・考え方（米山武義）
Column5 妊産婦への口腔ケア・歯科治療の考え方（長谷川 梢）
Column6 歯周病と肥満（関野 愉・沼部幸博）
Column7 医師が考える口腔内環境の重要性（工藤一彦）
Column8 唾液検査を知っていますか?（沼部幸博）
Column9 おさえておきたい歯周病に関連する細菌の知識（竹内康雄・和泉雄一）
Column10 誤嚥性肺炎予防としての口腔ケアのあゆみ（高柴正悟・曽我賢彦）
Column11 がんと歯周病（伊藤 弘・沼部幸博）
Column12 骨粗鬆症の特徴的な症状「圧迫骨折」とは?（稲垣幸司）
参考文献
索引
執筆者一覧
