やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

PREFACE
 歯科衛生士の皆さんは,直接診療に携わる歯科医師あるいは歯冠修復物の製作を担う歯科技工士に比較して,自分たちが審美歯科治療にかかわる機会は少ないと思っているかもしれません.そのためか,歯科衛生士に向けた審美歯科に関する情報や話題は,決して多いとはいえないのが現状ではないでしょうか.審美歯科は歯科医師の領域のものであり,ホワイトニングや高額なセラミックスなどを用いた修復・補綴治療がほとんどで,ハイジニストワークとは異なるものと捉えられがちです.つまり,これまで審美歯科治療は,特殊な技量をもった歯科医師が,設備が整った診療室で行うものであるとの認識が一般的であったといえるかもしれません.
 しかし,歯科治療の本来の目的は「失われた形態と機能を回復するとともに,審美性をも獲得すること」であり,口腔の審美性あるいは美しさは,保険診療か自費診療かといった区別を超えて,あらゆる歯科治療の到達目標であるはずです.患者さんの口腔内に「健康」と「美」を共存させることは,歯科治療の本来のあり方の1つであり,何も特殊な診療領域ではなく,日常行われている診療そのものが「審美歯科」として捉えることができるのです.そうであるからこそ,そこに歯科衛生士の力が不可欠であり,皆さんの存在が審美歯科治療の成否の鍵の1つを握っているのです.
 本書は,審美歯科治療が特別な診療内容を含むものではないという考え方を前提に構成されています.したがって,まずPart1では,診療補助の精度の向上や,基本的な治療技術あるいは器材に関する知識をもつことの重要性について記載されています.すなわち,日々行われている業務一つひとつを正確に行うことが審美性を意識した診療につながる.あるいはその始まりであることを解説しています.毎日の診療のベーシックスキルを向上させるだけでも,審美歯科にぐっと近づくことをご理解いただけると思います.続くPart2では,審美歯科治療を支える重要な診療項目について,特にアシスタント時に考慮すべき事項を中心に,個別の診療内容に沿って詳述しています.Part3では,審美歯科治療で重要な位置を占めるハイジニストワークについて解説されています.どのような治療においてもメインテナンスは重要であり,とりわけ審美歯科治療ではその重要性は高くなります.本章では,ハイジニストワークによって審美歯科治療の効果を最大限に引きだし.それを維持するために必要な知識と技術について,症例を通してわかりやすく紹介しています.
 これまで,ハイジニストワークにおいて話題とされることが少なかった「審美歯科治療」ですが,あらゆる治療同様,審美歯科治療においても本当に重要な役割は歯科衛生士が担っています.そして,その役割を皆さんが果たすことによってはじめて,本当の審美が実現できるはずです.
 編者代表 日本大学歯学部保存学教室修復学講座
 宮崎真至
 PREFACE
Part1 審美歯科ハイジニストワーク・ベーシック
 1.カウンセリング・コンサルテーションの基本(宮地理津子)
 2.審美歯科治療成功の鍵を握るプラークコントロール・歯周基本治療(里見美佐)
 3.概形印象採得と石膏注入の基本(高橋英登・遠山佳之・小森朋栄)
 4.歯科衛生士として知っておきたい修復・補綴関連器材の特性と注意点(宮崎真至)
 5.CR充填時のアシスタントワーク(青島徹児)
  column1 いま歯科医院に求められている「サービス」の視点(矢口倫子)
Part2 審美歯科ハイジニストワーク・アドバンス
 1.審美性をはかる基準とは(北原信也)
 2.プロビジョナルレストレーションの役割を理解していますか(北原信也・土屋和子)
 3.精密印象採得を支えるアシスタントワーク(松尾幸一)
 4.Q&Aで学ぶ ホワイトニング成功の鍵(大森かをる・宮崎真至・大谷一紀・土屋和子・田島菜穂子)
 5.接着操作時のアシスタント ここがポイント(天川由美子)
  column2 オベイトポンティックのメインテナンス(土屋和子)
Part3 症例から学ぶ審美性を維持・向上させるハイジニスト・ワーク
 1.審美性を維持するためのブラッシング指導(河野葉子・太田理恵)
 2.補綴物や軟組織へのダメージを最小限に抑えた歯周基本治療・メインテナンスを目指して(前田千絵)
 3.「目的」としてのホワイトニングから「手段」としてのホワイトニングへ(石川絵麻)
 4.健康で美しい口腔を実現するためのコミュニケーション(川崎律子)
 5.メインテナンス時,私はここを見ています(今 麻樹子)
  column3 歯間空隙の形態に合わせた清掃器具選び(土屋和子)