やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

 ペリオドントロジーの進歩は近年めざましいものがあります.私たち臨床に携わる者は,これらの進歩を単なる知識のままおいておくのではなく,科学に基づく臨床として具体化していかねばなりません.
 しかし近年の生物学,免疫学などの進歩は非常に急激なため,科学の進歩を臨床にうまく生かしていくことは,実は大変難しいことなのです.
 そのためこの本では,科学的な知識をわかりやすくまとめ,豊富な臨床例や臨床疫学データを使いながら,現場でペリオドントロジーをどう実践していくかを整理してみました.
 カリオロジーの導入により,従来の事後処理型の歯科医療の問題点が浮き彫りにされ,その結果,疾患のプロセスに介入し,健康を守り育てる歯科医療へと大きなパラダイムシフトが起こってきています.
 ペリオドントロジーの知識や技術も,従来は重症の症例に対して適用されることが多かったように思います.重症の症例にいかに手術をするのか,どのようにして組織を再生させるのか,補綴はどうするのかというようなことももちろん大切です.しかしそれだけではなく,歯周病の発症のプロセスに介入し,疾病を発症させることなく,あるいは発症したとしても再発させることなく,健康を守り育てるという視点こそがさらに重要です.
 つまり,ペリオドントロジーの進歩を重症の歯周病のためだけに使うのではなく,歯周病を発症させないようにするために用いるという発想を持ちたいと思うのです.
 第1章ではこのような考え方がなぜ大切なのかを,私たちの臨床疫学データを用いて示したいと思います.
 第2章では,歯周病の成り立ちやリスクファクターなどを整理し,そのうえで歯周病の検査や診断についてまとめたいと思います.
 第3章では,1つの症例を通して,初診で来院した歯周病患者を,どのように問診し,診査,診断,治療,メインテナンスしていくのかを考えたいと思います.
 第4章では,さまざまな歯周炎のケースを,特に長期症例から選び,読者の方に疑似体験していただきたいと思います.
 ペリオドントロジーというとあたかも難しい学問のように思いがちですが,臨床の大きな担い手は歯科衛生士です.その実践において,この本が皆さんの今後の活躍の参考になれば幸いです.
 また先に発刊された「わかる!できる!実践カリオロジー」とあわせて読んでいただき,健康を守り育てる歯科医療を実践する歯科衛生士として多くの方が活躍され,結果として日本の国民の口腔の健康が向上することを期待しています.
 1999年11月 岡 賢二
 はじめに
 編著者略歴

1章 データに見る歯科医療の実態
 世界の状況I―歯周病の有病率と臨床実感の乖離
 世界の状況II―WHOのデータより
 日本の状況
 高等学校における学校歯科健診の結果
 データ管理の意義と入力時の基準
 日吉歯科診療所の患者統計からI―初診時データ
 日吉歯科診療所の患者統計からII―メインテナンス時データ
 私たちはどこに力を注ぐべきか―データの考察から

2章 絵で見る歯周病の病因論
 歯周病の病因論の歴史
 歯周病原性細菌
 細菌の攻撃における重要な新しい知見と考え方
 歯周組織の破壊
 リスクファクター
 歯周病の診査(診断検査)の分類
 診断検査の臨床における考え方
 プロービング
 歯周病の分類と多様性
 病因論に基づく歯周治療の要点

3章 ペリオドントロジー実践のための「イロハ」
 治療の流れ
 初診時の対応
 再診時の対応(2度目の来院)
 歯周初期治療
 1回目の再評価
 2回目の再評価
 Supportive Oral Therapy(SOT)
 メインテナンス

4章 症例で見てみよう
 CASE 1/初期歯周炎への対応
 CASE 2/中等度歯周炎への対応
 CASE 3/重度歯周炎への対応
 CASE 4/炎症のコントロールにより口腔内が変化したケース
 CASE 5・6/歯周炎と喫煙が関連するケース
 CASE 7/歯周炎とホルモンが関連するケース
 CASE 8・9/早期発現型歯周炎が疑われるケース
 CASE 10/家族単位で歯周病をみる意義

付録
 お助けQ & A
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 参考文献・参考図書
 おわりに