序文
補綴物は装着したときが最良の状況で,その後,時間の経過とともに,種々の不都合の生ずることは,いわば当然のことともいえます.
しかし一方,行った処置が,所期の目的を達し,その後,患者さんと歯科医の双方が期待した期間,良好に経過し,口腔の老化傾向を平行またはゆるやかな下り勾配にとどめることが,補綴の目標と考えられます.
こうした目標をかかげるとき,行った処置の効果が十分大きくかつ侵襲が極力少ないかどうか,すなわち,治療の効果と代償とを十分に検討する必要が生じます.そこでは,“長くもつ”ことのみにこだわって過剰な処置をするよりも,ある時点または新たな疾病の発生を機に再処置にふみきることが,生涯の口腔の生態を考えたときに望ましい場合もあるのだという視点をもつ必要があるように思います.
さらに,慢性疾患への対応が必要である歯科では,物である補綴物についてのメインテナンスを含めて,治療終了後のアフターケアが必須であることは,だれもが認めるところと思いますが,そのシステムをどう構築し,さらに年齢や行った処置に応じたチェック点をどう定めるかなどについては,これまで十分論議されていないように思われます.
歯・口腔の現状をよりよく維持していくためには,むしろどうケアし,どうフォローアップしうるかを中心に治療が進められるべき時代であるとの視点に立って,どう診断し,どうアフターケア(メインテナンス)を行っているか,その結果はどうなのかを,従来のメインテナンスの領域から一歩前進させて,『口腔ケアのためのフォローアップ』というタイトルのもとに別冊を企画してみました.
本書は,臨床家の先生方によりいっそうのご理解をいただくために,フォローアップの必然性,システムの実際,対象別の対応法,その周辺の機器,フォローアップに必要な検査の五部の構成とし,必要に応じてどの項からでも読みやすいように心がけて,編集してみました.
新たな臨床の視点がすこしでも芽ばえ,患者さんを中心とした,歯科診療のみのりある一歩に,すこしでもお役に立てることを希望しています.
1996年7月 編集委員 広島県尾道市開業 中尾勝彦 長野県長野市開業 北川原健
補綴物は装着したときが最良の状況で,その後,時間の経過とともに,種々の不都合の生ずることは,いわば当然のことともいえます.
しかし一方,行った処置が,所期の目的を達し,その後,患者さんと歯科医の双方が期待した期間,良好に経過し,口腔の老化傾向を平行またはゆるやかな下り勾配にとどめることが,補綴の目標と考えられます.
こうした目標をかかげるとき,行った処置の効果が十分大きくかつ侵襲が極力少ないかどうか,すなわち,治療の効果と代償とを十分に検討する必要が生じます.そこでは,“長くもつ”ことのみにこだわって過剰な処置をするよりも,ある時点または新たな疾病の発生を機に再処置にふみきることが,生涯の口腔の生態を考えたときに望ましい場合もあるのだという視点をもつ必要があるように思います.
さらに,慢性疾患への対応が必要である歯科では,物である補綴物についてのメインテナンスを含めて,治療終了後のアフターケアが必須であることは,だれもが認めるところと思いますが,そのシステムをどう構築し,さらに年齢や行った処置に応じたチェック点をどう定めるかなどについては,これまで十分論議されていないように思われます.
歯・口腔の現状をよりよく維持していくためには,むしろどうケアし,どうフォローアップしうるかを中心に治療が進められるべき時代であるとの視点に立って,どう診断し,どうアフターケア(メインテナンス)を行っているか,その結果はどうなのかを,従来のメインテナンスの領域から一歩前進させて,『口腔ケアのためのフォローアップ』というタイトルのもとに別冊を企画してみました.
本書は,臨床家の先生方によりいっそうのご理解をいただくために,フォローアップの必然性,システムの実際,対象別の対応法,その周辺の機器,フォローアップに必要な検査の五部の構成とし,必要に応じてどの項からでも読みやすいように心がけて,編集してみました.
新たな臨床の視点がすこしでも芽ばえ,患者さんを中心とした,歯科診療のみのりある一歩に,すこしでもお役に立てることを希望しています.
1996年7月 編集委員 広島県尾道市開業 中尾勝彦 長野県長野市開業 北川原健
1 フォローアップシステムの必然性
チェンジングコンセプトの時代 中尾勝彦
私のフォローアップヘの考え方 北川原 健
フォローアップのもう一つの効用 宮地建夫
永久補綴という呪縛からの脱却と新しい目標 安田 登
社会の要請と歯科医療のゆくえ 新庄文明
社会保険の視点/36年間の日本人の口腔内の変化をよむ 中道 勇
2 フォローアップシステムの実際
フォローアップシステムを成立させるために 鈴木 尚
フォローアップシステムと術者および患者さんの変化 北川原 健
私のフォローアップシステム/ホームドクターの立場で 三上直一郎
私のフォローアップシステム 若林健史
炎症とカを意識したフォローアップ 筒井照子・筒井昌秀
3 対象別フォローアップの実際
初期齲蝕のフォローアップ 緒方克也
インレーのフォローアップ/だめになったインレーに学ぶ 鈴木祐司
MODインレー・パーシャルベニアクラウンのフォローアップ 續 肇彦
クラウンのフォローアップ/オーバーカントゥアと二次齲蝕 菅野博康
クラウンの脱落症例から考える/その原因と対策 重頭直文・岩永博行・浜田泰三
ワンユニットフリッジのフォローアップ 黒田昌彦
多数歯支台のフォローアップ/コーヌスクローネの経過から 黒田昌彦
フルマウスリコンストラクションのフォローアップ 山崎長郎
パーシャルデンチャーのフォローアップ 永田省蔵
接着修復歯のフォローアップ 鯉渕秀明・安田 登
インプラントのフォローアップとPMTC 横山隆道
自家歯牙移植歯のフォローアップ 宮崎正憲
TMD患者のフォローアップ/オクルーザルスプリントを中心に 安部倉 仁・浜田泰三
TMD患者のフォローアップ 續 肇彦
高齢者のフォローアップ/在宅診療の現場から 斎藤純一
来院できない高齢患者のフォローアップ 加藤武彦
4 フォローアップシステムの周辺
フォローアップシステムのための診療録とファイリングシステム 大竹康資
フォローアップシステムのためのパソコンソフト 眞田浩一
パーソナルコンピュータを用いてのフォローアップ 藤木省三
フッ素製剤のフォローアップ時の使用 渡邊達夫
清掃具のいろいろ 松下伸一
PMTC 矢澤一浩
唾液のpHと緩衝能 中尾勝彦・三阪智加江
床用レジンに対する義歯洗浄剤の影響 岡 伸二
デンチャープラーク 二川浩樹・浜田泰三
5 フォローアップシステムと検査
MRI(磁気共鳴映像法)検査 福島俊士・小川 匠・伊藤孝介
シロナソグラフによる咀嚼運動のフォローアップ 平野健一郎
ナソヘキサグラフ 長谷川成男・栗山 實
デンタルプレスケールを使う 北川原 健
齲蝕発病リスクの客観的評価/ミュータンス・レンサ球菌レベルの評価方法と疫学的指標による評価 松久保 隆
補綴領域におけるRdtestの応用 眞木吉信
チェンジングコンセプトの時代 中尾勝彦
私のフォローアップヘの考え方 北川原 健
フォローアップのもう一つの効用 宮地建夫
永久補綴という呪縛からの脱却と新しい目標 安田 登
社会の要請と歯科医療のゆくえ 新庄文明
社会保険の視点/36年間の日本人の口腔内の変化をよむ 中道 勇
2 フォローアップシステムの実際
フォローアップシステムを成立させるために 鈴木 尚
フォローアップシステムと術者および患者さんの変化 北川原 健
私のフォローアップシステム/ホームドクターの立場で 三上直一郎
私のフォローアップシステム 若林健史
炎症とカを意識したフォローアップ 筒井照子・筒井昌秀
3 対象別フォローアップの実際
初期齲蝕のフォローアップ 緒方克也
インレーのフォローアップ/だめになったインレーに学ぶ 鈴木祐司
MODインレー・パーシャルベニアクラウンのフォローアップ 續 肇彦
クラウンのフォローアップ/オーバーカントゥアと二次齲蝕 菅野博康
クラウンの脱落症例から考える/その原因と対策 重頭直文・岩永博行・浜田泰三
ワンユニットフリッジのフォローアップ 黒田昌彦
多数歯支台のフォローアップ/コーヌスクローネの経過から 黒田昌彦
フルマウスリコンストラクションのフォローアップ 山崎長郎
パーシャルデンチャーのフォローアップ 永田省蔵
接着修復歯のフォローアップ 鯉渕秀明・安田 登
インプラントのフォローアップとPMTC 横山隆道
自家歯牙移植歯のフォローアップ 宮崎正憲
TMD患者のフォローアップ/オクルーザルスプリントを中心に 安部倉 仁・浜田泰三
TMD患者のフォローアップ 續 肇彦
高齢者のフォローアップ/在宅診療の現場から 斎藤純一
来院できない高齢患者のフォローアップ 加藤武彦
4 フォローアップシステムの周辺
フォローアップシステムのための診療録とファイリングシステム 大竹康資
フォローアップシステムのためのパソコンソフト 眞田浩一
パーソナルコンピュータを用いてのフォローアップ 藤木省三
フッ素製剤のフォローアップ時の使用 渡邊達夫
清掃具のいろいろ 松下伸一
PMTC 矢澤一浩
唾液のpHと緩衝能 中尾勝彦・三阪智加江
床用レジンに対する義歯洗浄剤の影響 岡 伸二
デンチャープラーク 二川浩樹・浜田泰三
5 フォローアップシステムと検査
MRI(磁気共鳴映像法)検査 福島俊士・小川 匠・伊藤孝介
シロナソグラフによる咀嚼運動のフォローアップ 平野健一郎
ナソヘキサグラフ 長谷川成男・栗山 實
デンタルプレスケールを使う 北川原 健
齲蝕発病リスクの客観的評価/ミュータンス・レンサ球菌レベルの評価方法と疫学的指標による評価 松久保 隆
補綴領域におけるRdtestの応用 眞木吉信