やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年,社会のあらゆる分野,さまざまな業種でIT化が進む中で,われわれ歯科界においても例外ではなく確実にその波が押し寄せてきています.
 歯科界におけるIT化の筆頭にあげられるのは,いわゆる“レセコン”といわれる診療報酬明細書作成のためのコンピュータです.元来コンピュータはこのような演算処理を得意としており,歯科医師側の負担軽減という利益と合致したため,瞬く間に普及していきました.また,現在では,デジタル医療機器の発達も目覚しく,新規開業の歯科医院のおよそ8割がデジタルX線システムを導入しているとのことです.
 このようななか,押し寄せる波に翻弄されてしまわないためにも,歯科医院におけるIT化とはどのようなものかをいま一度考えてみる必要があるように感じます.
 われわれが歯科医院で扱う最も重要な情報は,言うまでもなく患者さんの情報です.IT化は,患者さんのさまざまな情報をどのように収集するのか,それらの情報をどう整理して診断・治療計画に活用するのか,そして,患者さんに情報をどう提供して理解を深めてもらうのかといったさまざまな場面で効力を発揮します.
 当然,患者さんの情報のすべてがデジタル化できるはずはなく,また,情報は患者さんと歯科医師との豊かなコミュニケーションのなかで初めて生きてくるものであることはあえて述べるまでもありません.しかし,今後,ますます高度情報化していく医療界において,質,量ともに高まっていくさまざまな情報を整理し利用するうえで,デジタル機器の効果的な活用は,必ずや歯科医院を支える大きな力となるはずです.
 本書では,第1章で歯科医院のデジタル化についての基本事項,第2章からは各論的に代表的なデジタル機器として,デジタルX線システム,デジタルカメラ,カルテコンピュータなどの特徴や活用法をまとめました.また,IT化された理想のオフィスを想定して,診療の各場面での応用例などにもふれ,実際に院内ネットワークを構築する場合に考慮する事項,デジタル化された歯科医院の実例集なども収載しました.
 この本がIT化をお考えの先生方の無駄を最小限にし,効率的デジタル機器導入と効果的活用を行うための参考になれば幸いです.
 2005年4月吉日
 中舘憲治・麻生昌秀・素村宣慶・大澤勇人
・はじめに
・目次
第1章―デジタル化の第一歩
 歯科医院におけるIT化を考える
 歯科医院で使用されるデジタル機器の種類
 デジタル化のメリット
 デジタル化の落とし穴
 院内ネットワーク
 歯科医院におけるインターネットの活用法
 Column:医院ホームページの活用
第2章―デジタルX線システム
 デジタルX線とアナログX線
 デジタルX線画像のしくみ
 デジタルX線システムのメリット
 Column:デジタル画像って何?
 デジタルX線システムのデメリット
 アナログX線写真のデジタル化
 Column:簡単スライドデュープ装置
 デジタルX線システムの種類
 デジタル口内法X線の特徴
 デジタルパノラマX線の特徴
 デジタルセファロX線の特徴
 写真管理アプリケーションソフト
第3章―歯科用X線CT
 歯科用X線CTの特徴
 Column:マイクロCTの被曝線量
 歯科用X線CTの活用例
第4章―デジタルカメラ
 主流となりつつあるデジタルカメラ
 口腔内撮影におけるデジタルカメラの特徴
 Column:デジタル撮影された画像の色調整
 Column:口腔内写真に求められる画素数
 デジタルカメラの活用法
 マイクロスコープ
第5章―カルテコンピュータ
 カルテコンピュータの利点と問題点
 カルテコンピュータの選択基準
 カルテコンピュータによる院内総合管理
第6章―IT化された理想的な歯科医院を考える
 初診からメインテナンスまで
 Column:理想的な受付のコンピュータの配置
 Column:クイックチェックエリア
 Column:理想的なカウンセリングルーム内のレイアウト
第7章―院内LANシステム構築
 院内LANの設定
 システム導入にあたっての検討事項
 診療に最適なコンピュータの環境を考える
 Column:治療室とカウンセリングルーム
 システムの安全対策
 Column:コンピュータウイルス/ファイアウォール
 便利なデジタル関連機器
第8章―院内LAN実例集
 東京お茶の水歯科クリニック/矢島歯科医院/麻布台歯科医院/高村歯科医院/たねいち歯科医院/クイントビル歯科/なかだて歯科

●デジタル機器一覧
 歯科用X線CT,CCD方式デジタル口内法X線,CCD方式デジタルパノラマX線,IP方式デジタルX線,歯科用デジタル一眼レフカメラ,口腔内カメラ
●執筆者紹介