やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 乳房超音波検査は,多くの領域が対象となる超音波検査のなかでも,現在もっとも注目され,飛躍的に普及している分野であろう.その背景にはわが国の乳癌の増加があり,このことはマスコミにも取り上げられ,一般の方々の関心も高まりつつある.ほぼ定着した専門病院内の検査に加え,近年では乳癌検診における超音波の役割も重要視されてきている.おそらく,近い将来にはさらに重要な使命を担うことになると思われる.ぜひ,今のうちに乳房の世界へ足を踏み入れていただくことをお勧めしておく.
 本書のキーワードは“実践“である.よって執筆は,まさに現場の第一線で活躍されている若い先生方にお願いした.それぞれの分野の最高峰の先生方に,あらゆる角度から頭脳を刺激していただき,乳房疾患に取り組む総合力が身につくようなものを目指した.また本書の試みとして,超音波の項は各疾患別に解説することをやめ,画像のパターンから入るようにした.限局型腫瘤,中間型腫瘤,浸潤型腫瘤,びまん性病変,乳管内病変と大まかに分類をし,それぞれを見たときにどのように考えていくべきなのか,その診断プロセスに重点をおいた解説がされている.まさに実践である.そして,通常の分担執筆ではありえないほど執筆者間の基本理念が一致している点も本書の特長といえる.そのいくつかをあげると,“乳房疾患の大半を占める腫瘤性病変をまずマスターするべき”“超音波の基本は白黒画像である““各検査結果を対比させ総合判断のできるチーム医療が大切”,といったところであろう.
 また,何事でもそうだと思うが,超音波検査も簡単に手っ取り早くマスターする方法などはない.実際の臨床において似たものはあるが,まったく同じ像を呈する症例はない.そういう意味では,明日遭遇する症例は常に“見たこともない症例”なのである.その手ごわい相手に立ち向かうためには,単なる知識の蓄積ではなく,画像を見抜く感性といったものを身につけることが大切である.そのためには本書を上手に活用していただきたい.各執筆者の本心が見え隠れしているところが随所にある.その行間を読むことで,きっと感性が磨かれてくることであろう.
 平成17年9月
 編集代表 佐久間 浩
総論
 乳腺疾患の基礎知識
  1 乳腺病理の基礎(秋山 太)
  2 乳腺疾患への取り組み方―誤診を防ぐ診断の進め方―(秋山 太)
  3 わが国における超音波による乳癌検診(橋本秀行)
各論I
 乳房超音波検査[基礎編]
  1 超音波診断装置と検査法(尾羽根範員)
  2 用語と診断基準(水谷三浩)
各論II
 乳房超音波検査[臨床編]
  1 乳房の正常解剖(水谷三浩)
  2 超音波画像における乳腺疾患の形態分類(佐久間 浩)
  3 限局型腫瘤(佐久間 浩)
  4 中間型腫瘤(尾羽根範員)
  5 浸潤型腫瘤(白井秀明)
  6 びまん性病変(白井秀明)
  7 乳管内病変(白井秀明)
  8 転移の検索(佐久間 浩)
  9 ドプラ法の意義と活用(橋本秀行)
各論III
 知っておきたい他の検査法
  1 マンモグラフィ(高橋かおる)
  2 細胞診(池永素子)
  3 乳管内視鏡(蒔田益次郎)