やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

シリーズの序
 本シリーズは当初,単独で出版された『イラストでわかる小児理学療法』『イラストでわかる人間発達学』,さらに『イラストでわかる発達障害の作業療法』が多くの方から支持されたことによりシリーズ化されることになりました.すなわち本シリーズは,多くの養成校の教科書として採用された実績によって 作られた企画です.きっと,キャンパスでたくさんの学生が本書を抱えて歩いていることでしょう.
 本書は,編集の先生方に,「イラストでわかるシリーズ」の共通した内容である,理学療法士・作業療法士養成校の学生に合った内容で,「わかりやすい」・「興味がもてる」・「ポイントを絞った」を目標に,平易な文章でイラストを多用しコンパクトにまとめていただきました.加えて,具体的な内容については編集者の「伝えたい思い入れ」に従って構成していただきました.そのため,テキストによっては,若干,構成が異なる内容になっていると思います.
 監修にあたり,できるだけ読みやすくすることを心がけました.また,不適切な用語がありましたらご教授いただければうれしく思います.最後に,ご多忙のところ監修者のお願いをこころやすく聞き入れてくださいました編集者・著者の先生方,および出版に労をいとわずにご尽力をくださった医歯薬出版株式会社編集部担当者に深くお礼申し上げます.
 2019年5月
 監修者 上杉雅之


編集の序
 編集者が学生,新人理学療法士時代の呼吸障害のリハビリテーションは,「肺機能訓練」とよばれ,今現在行われている「リハビリテーション」とは,理論,解釈,治療の方向性などが随分異なっていました.その他内部障害のリハビリテーションもまだまだ発展途上の段階にあり,「経験的なこと」「創造的なこと」で治療が進められていました.当然,治療の方向性を示したガイドラインもなく,出版されていた書籍もごくわずかでした.
 しかし,ここ20年でこの領域はグローバル化し,大きな変革と発展を遂げました.評価や治療に関するエビデンスが確立され,科学的な根拠をもとに治療が進められるようになりました.また,それに伴い心臓リハビリテーション,呼吸リハビリテーションでは疾患別診療報酬の算定が可能となりました.さらに,各学会から種々のガイドラインが提示され,対象読者,ニーズなどさまざまな特徴を兼ね備えた書籍が発刊されるようになりました.近年では,これまでの呼吸器疾患,循環器疾患,代謝疾患(糖尿病)に加え,新たに腎機能障害に対するリハビリテーションのエビデンスも確立されつつあり,内部障害のリハビリテーションは,リハビリテーション領域の中でも変革・発展し続けている領域です.
 内部障害者を診療対象とする施設数が増加し,内部障害をもつ患者を担当するセラピストが増える一方で,十分な知識と理論をもとにリハビリテーションプログラムを提供できていないケースも多いのではと感じています.その一因として卒前教育の脆弱さがあります.内部障害を専門とする教員が在籍している養成校ではグローバルな変化に対応できますが,そうでない養成校では,旧態依然とした理論・内容のままで教育がされているのが実情です.内部障害を専門とする教員が少ないという問題もありますが,この領域の卒前教育の標準化,充実が喫緊の課題であると考えます.
 本書を編集するにあたり養成校の学生,新人セラピストをはじめ,内部障害のリハビリテーションに興味のある他職種の皆様にわかりやすく,「イメージ」しやすい書籍を心がけました.イラストを多用し,難解な言葉はできるだけわかりやすい言葉に置き換えるなど工夫をしました.一人でも多くの方が内部障害のリハビリテーションへの理解を深め,内部障害をもつ患者を担当するすべてのセラピストが本当に必要なリハビリテーションプログラムを提供できるようになってほしいと切に願い,本書を出版いたしました.
 編集者は理学療法士という仕事が大好きです.誇りももっています.一人でも多くのセラピストが編集者と同じ思いをもって,内部障害のリハビリテーションに貢献されることを楽しみにしています.
 最後に,お忙しいなか編集者の無理な要望に快く対応いただきました著者の先生方,多くの無理難題を受け入れ編集作業にご苦労いただきました医歯薬出版株式会社編集担当者に深く感謝いたします.
 2019年11月
 編集者 堀江 淳
 執筆者一覧
 シリーズの序
 編集の序
序章 内部障害総論
 (堀江 淳)
 エッセンス
 代表的な内部障害者の症状
 内部障害者数の推移
 内部障害と理学療法
 内部障害における高齢化と重複障害
第1章 呼吸器疾患─解剖学・生理学
 (堀江 淳)
 エッセンス
 呼吸生理
  呼吸とは
  外呼吸と内呼吸
  肺循環と体循環
  血液によるガス運搬
  肺性心
  呼吸中枢
  呼吸調整に働く受容器
  血液ガスの情報をキャッチする受容器(化学調節)
  CO2ナルコーシス
  物理的刺激を感知する受容器(神経調節)
  行動調節と随意調節
  運動時の呼吸応答
 呼吸器系の解剖
  肺葉と肺区域
  肺と心臓
  気道
  気管と気管支
  気管支壁の構造
  肺胞
  肺胞壁
  呼吸器系の防御機構
  胸郭
  呼吸筋
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第2章 呼吸器疾患─知識・検査データ・治療
 (阿波邦彦・堀江 淳・江越正次朗)
 エッセンス
 知識
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  概要
  病態
  臨床症状
  臨床検査
  治療
  気管支喘息合併のCOPD(Asthma and COPD overlap:ACO)
 間質性肺炎(IP)
  概要
  病態
  臨床症状
  臨床検査
  治療
  気腫合併肺線維症(CPFE)
 気管支喘息(BA)
  概要
  病態
  臨床症状
  臨床検査
  治療
 気管支拡張症
  概要
  病態
  臨床症状
  臨床検査(画像所見)
  治療
 検査データ
 呼吸機能検査
  肺気量分画検査
  最大吸気量と動的肺過膨張
  フローボリューム検査
  病期分類
  フローボリュームカーブ(フローボリューム曲線)
 動脈血ガス検査
  呼吸不全
  低酸素血症の原因
  高二酸化炭素血症の原因
  酸素解離曲線
  酸塩基平衡
  血中pHの調節
  代償機能
 胸部画像所見
  胸部X線画像読解の手順
  シルエットサイン
 治療
 安定期の呼吸器疾患の薬物療法
  COPDの薬物療法
  気管支喘息の薬物療法
  吸入薬の使い方
 酸素療法
  目的
  適応
  目標
  合併症
  吸入方法の分類
  在宅酸素療法
 人工呼吸療法
  人工呼吸療法の目的
  人工呼吸器の原理
  人工呼吸器の基本構造
  人工呼吸器の設定
  人工呼吸器の生体への影響
  人工呼吸器の合併症
  人工呼吸器装着患者への理学療法
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第3章 呼吸器疾患─障害評価と理学療法プログラム
 (田平一行)
 エッセンス
 理学療法評価
  問診
  身体診察(フィジカルアセスメント)
  呼吸筋力
  胸郭拡張差
  運動耐容能
  日常生活活動(ADL)
  健康関連QOL(Health-Related Qualityof Life:HRQoL)
  呼吸器疾患患者の障害構造
  理学療法プログラムとゴール設定
 呼吸器疾患患者の理学療法
  包括的呼吸リハビリテーションと理学療法
  理学療法の概要と基本方針
  コンディショニング
  運動療法
  ADLトレーニング
 理学療法を進めるうえで配慮すること
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第4章 呼吸器疾患─障害評価と作業療法プログラム
 (野崎忠幸)
 エッセンス
 作業療法の目的
 作業療法評価
  面接
  ADL評価
  呼吸器疾患患者の認知機能
  精神機能
  健康関連QOL
 目標設定
 作業療法アプローチ
  呼気と動作の同調
  動作を分ける
  動作方法の変更
  環境整備
 ADLアプローチの実際
  食事
  歯磨き
  洗顔
  上衣
  下衣
  入浴
  トイレ
  掃除
  炊事
  洗濯
  外出
 指導上の留意点
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第5章 循環器疾患─解剖学・生理学
 (木村智子)
 エッセンス
 心臓の構造と機能
  心臓の構造
  心臓の機能
 血管の構造と機能
  動脈系
  静脈系
  毛細血管系
  その他
 心臓の栄養血管
  冠循環
  冠動脈(冠状動脈)
  冠静脈(冠状静脈)
 固有心筋と特殊心筋
  固有心筋(作業心筋)
  特殊心筋(刺激伝導系)
 循環器系の調節機構
  神経性調節
  体液性(ホルモン)調節
  局所性(非神経性)調節
 運動時の循環応答
  循環血流量
  血流の再分配
 確認してみよう!・解答
第6章 循環器疾患─知識・検査データ・治療
 (小川真人・北村匡大・下雅意崇亨)
 エッセンス
 知識
 心不全について
  心不全の定義,病態概要
  症状,臨床像
  心不全の分類
  診断,分類
  経過,予後
 虚血性心疾患について
  虚血性心疾患の定義,病態概要
  急性心筋梗塞
  狭心症
  弁膜疾患
 大動脈疾患について
  大動脈疾患の定義,病態概要
  大動脈瘤
  大動脈解離
 閉塞性動脈硬化症(ASO)について
  閉塞性動脈硬化症の定義,病態概要
 検査データ
 心電図
  心電図とは
  刺激伝導系と心電図,基準値
  12誘導心電図
  モニター心電図
  心拍数の数え方
  不整脈
  期外収縮
  心房性期外収縮
  心室性期外収縮
  洞不全症候群
  房室ブロック
  頻脈性不整脈
  虚血性心疾患の心電図変化
  狭心症
  心筋梗塞
 生化学検査
  心筋梗塞
  心不全
  合併症
  肺うっ血
 心臓超音波検査(心エコー)
  断層法
  Mモード
  ドプラ法
 心臓カテーテル検査(冠動脈造影,左室造影)
  血行動態
  冠動脈造影(Coronary angiography:CAG)
  左室造影
 胸部X線検査
  心不全
  大動脈解離
 造影CT検査
 核医学検査(心筋シンチグラフィ)
  虚血性心疾患
 足関節上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)
  閉塞性動脈硬化症
 治療
 循環器疾患における薬物療法
  強心薬・昇圧薬
  血管拡張薬
  交感神経遮断薬(b遮断薬)
  抗不整脈薬
  利尿薬
  抗血栓薬
 その他の循環器疾患に対する治療
  心臓カテーテル治療
  植込み型デバイス治療
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第7章 循環器疾患─障害評価と理学療法プログラム
 (笠原酉介・井澤和大)
 エッセンス
 理学療法評価
 理学療法評価の目的
  各疾患に共通する項目
  疾患に特異的な情報
  運動機能評価
  心理・認知機能
  配慮する点(リスクの層別化)
 Phase(時期)ごとのゴール設定と理学療法プログラム
  急性期
  回復期前期
  回復期後期から維持期
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第8章 代謝障害─解剖学・生理学
 (木村智子)
 エッセンス
 膵臓の構造と機能
  膵臓の構造
  膵臓の機能
  膵臓が機能不全に陥った場合
 腎臓の構造と機能
  腎臓の構造
  腎臓の機能
  腎臓が機能不全に陥った場合
 栄養とエネルギー代謝
  栄養
  エネルギー代謝
 身体活動時の代謝応答
 確認してみよう!・解答
第9章 糖尿病─知識・検査データ・治療
 (野村卓生・河野健一)
 エッセンス
 知識
 糖尿病とは
 糖尿病の合併症
 糖尿病の治療
 基本治療である運動療法の臨床問題
 合併症の重症化予防の重要性
  糖尿病網膜症
  糖尿病腎症
  糖尿病足病変
 検査データ
 糖尿病の診断に用いられる検査
  糖尿病「型」の診断
  糖尿病の診断
  糖尿病の成因(発症機序)の分類
  糖尿病診断のための検査法
  血糖検査の解釈
 糖尿病の管理に用いられる検査
  血糖管理のための検査
  自己検査
  合併症管理のための検査
 治療
 薬物療法
  経口薬療法
  注射薬療法
 その他の薬物療法
  低血糖
  食事療法
  運動療法
  シックデイとその対応の原則
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第10章 糖尿病─障害評価と理学療法プログラム
 (河辺信秀・渡部祥輝)
 エッセンス
 糖尿病の運動療法
  身体活動の考え方
  運動の効果
  生活活動に対する介入の効果
  評価
  運動療法の実際
  患者教育
 糖尿病足病変に対する理学療法
  病態とリスク
  内的要因
  外的要因
  足病変の評価
  理学療法
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第11章 腎不全─知識・検査データ・治療
 (音部雄平・平野康之・堀田千晴・堀田一樹)
 エッセンス
 知識
 腎不全とは
 CKDとは
  定義
  CKDの重要性および合併症
  原因
  症状
  治療
 検査データ
 尿検査
  蛋白尿
  血尿
 血液検査
  クレアチニン(Cr)
  シスタチンC
  尿素窒素(BUN)
  尿素窒素/クレアチニン比(BUN/Cr比)
 腎機能検査
  糸球体濾過量(GFR)
  イヌリンクリアランス
  クレアチニンクリアランス(CCr)
  推算糸球体濾過量(eGFRcreat,eGFRcys)
  腎血漿流量(RPF)
 その他
  尿中バイオマーカー
 治療
 透析を導入するタイミング
 血液透析と腹膜透析の違い
 血液透析の原理
 バスキュラーアクセスとは
  自己血管内シャント
  人工血管内シャント
  表在化動脈
  長期型バスキュラーカテーテル
 ドライウェイトとは
 血液透析患者に起こりやすい合併症
  心不全
  骨・ミネラル代謝異常
  透析アミロイドーシス
  バスキュラーアクセスのトラブル
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第12章 腎不全─障害評価と理学療法プログラム
 (平木幸治)
 エッセンス
 評価
  情報収集
  身体機能評価
  ADL評価
  身体活動量
 リスク管理
  保存期CKD患者のリスク管理
  血液透析患者のリスク管理
 理学療法プログラム
  運動療法の効果
  ゴール設定
  保存期CKD患者の理学療法プログラム
  血液透析患者の理学療法プログラム
  CKD患者に対する監視下運動療法
  在宅での非監視下運動療法
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第13章 がん─知識・検査データ・治療
 (加藤祐司・鈴木昌幸)
 エッセンス
 知識
 がんについて
  がん(悪性腫瘍)とは
  「がん」と「癌」
  がんのステージ分類
  がんの転移
  がんの治療法
 検査データ
 がんの自覚症状
  がん検診
  がんの精密検査
  病期および病型の判定
  腫瘍に対する治療効果の判定
 治療
 概論
 各論
  外科的治療
  化学療法(抗がん剤)
  放射線治療
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第14章 がん─障害評価と理学療法プログラム
 (池田聖児・島 雅晴)
 エッセンス
 がんのリハビリテーションの対象と目的
  対象
  目的
 がんのリハビリテーションの評価とリスク管理
  評価
  注意点
  リスク管理
 化学療法・放射線治療中の理学療法
 脳腫瘍の理学療法
 消化器がん(手術)の理学療法
 骨軟部腫瘍,転移性骨腫瘍
 進行がん,末期がんの理学療法
 リンパ浮腫の理学療法
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
第15章 がん─障害評価と作業療法プログラム
 (島ア寛将・谷口小百合)
 エッセンス
 乳がん(周術期)の作業療法
  術式
  術後に生じる機能障害
  作業療法
  ゴール設定
  作業療法を行ううえで配慮する点
 頭頸部がん(周術期)の作業療法
  術式
  術後に生じる機能障害
  作業療法
  ゴール設定
  作業療法を行ううえで配慮する点
 脳腫瘍の作業療法
  原発性脳腫瘍
  転移性脳腫瘍
  症状
  作業療法
  ゴール設定
  作業療法を行ううえで配慮する点
 原発性骨軟部腫瘍の作業療法
  上肢の骨軟部腫瘍(周術期)
  作業療法
  ゴール設定
  作業療法を行ううえで配慮する点
  下肢の骨軟部腫瘍(周術期)
  作業療法
  ゴール設定
  作業療法を行ううえで配慮する点
  転移性骨腫瘍(骨転移)
  作業療法(化学療法や放射線治療中)
  ゴール設定
  作業療法を行ううえで配慮する点
 血液がんの作業療法
  治療中に起こりうる症状
  作業療法
  退院に向けて
 進行がんに対する在宅支援
  作業療法
 終末期の作業療法
  作業療法
  作業療法を行ううえで配慮する点
 確認してみよう!・解答
 先輩からのアドバイス
 トピックス
付章 症例報告のサンプルとヒント
 (井出 宏・田平一行・河野健一・森尾裕志)
 慢性期の慢性閉塞性肺疾患症例
  症例発表用レジュメ作成のポイント
  症例報告
  問題点の概要とリハビリテーションプログラム
 糖尿病の症例
  症例報告(1)
  症例報告(1)の評価結果
  症例報告(2)
  症例報告(2)の評価結果
  症例をまとめる(症例報告のレジュメを作成する)ポイント
  おわりに
 心筋梗塞後の症例
  症例報告(1)
  症例報告(2)
  症例報告(1)の評価結果
  症例報告(2)の評価結果
  症例をまとめる(症例報告のレジュメを作成する)ポイント
  おわりに

 巻末資料 気管吸引(堀江 淳)
 索引