やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

編集の序
 このたび,医歯薬出版より本書『わかる!できる!心臓リハビリテーションQ&A』が出版されました.本書は,第24回日本心臓リハビリテーション学会学術集会に合わせて作成されたものです.
 社会の高齢化とともに重複した疾病・障害をもつ対象者が増え,心臓リハビリテーションの内容にも大きな変化がもたらされました.また,医療技術の進歩に伴って対象者が拡大し,リハビリテーションの内容にも多岐にわたる配慮が必要となっています.
 心疾患と闘う患者がもつ,今後の回復や再発予防への不安は計り知れません.医師の診断と治療に引き続き,日常生活へのすみやかな復帰や動脈硬化の退縮などの目的で行われる運動療法,再発を予防し健康寿命を延伸するための予防・疾病管理など,リハビリテーションへの期待は高まるばかりです.
 一方,実際の臨床現場では個々の症例に対してさまざまな問題,疑問,悩みが生じ,それらについてなかなか明確な答えや解決策が見出せないこともあります.疑問や問題が細かくなればなるほど解決方法に悩み,忙しい医師や他職種に時間を割いて教えていただくことも難しいと感じるスタッフの皆さんも多いのではないでしょうか.そのようなときには,ぜひ本書を手に取ってください.解決策の糸口が見つかるはずです.
 本書は120からなるQ&Aから成り立っています.Qは私の周囲の医療スタッフにどのような臨床的疑問や問題点に悩むことが多いか調査し厳選したものです.その調査結果を「概論」「知識」「急性期」「運動療法」「リスク管理」「指導」「終末期」の章で分け,Qに対するA(解決策や対応策)を,心臓リハビリテーションの第一線で活躍する専門家に,簡潔にわかりやすく解説していただきました.質が高く安全で効果的な心臓リハビリテーションを行い,社会からの期待や対象者のニーズに答えるためにも,多くの医療専門職者に参考にしていただきたい一冊です.
 最後に,本書を監修いただきました伊東春樹先生,百村伸一先生,出版の機会をいただいた医歯薬出版に心から感謝申し上げます.
 平成30年6月
 編集 高橋哲也
I.概論
 1.日本の心臓病治療の歴史について教えてください(百村伸一)
 2.運動負荷試験の歴史について教えてください(伊東春樹)
 3.日本の心臓リハビリテーションの歴史について教えてください(高橋哲也)
 4.心臓リハビリテーションの定義や構成要素について教えてください(後藤葉一)
 5.心臓リハビリテーションに役に立つガイドラインなどを教えてください(牧田 茂)
 6.心臓リハビリテーションチームと各職種の役割について教えてください(宮脇郁子)
 7.心臓リハビリテーションチームを立ち上げ,適切な連携を行うためにどのような工夫が必要ですか?(吉田俊子)
 8.心臓リハビリテーションの診療報酬算定に必要な条件を教えてください(上月正博)
 9.循環器疾患の経験がなく,これから心臓リハビリテーションを担当するのですが,何から勉強したらよいでしょうか?(長山雅俊)
II.知識
 10.心臓の収縮機能の評価方法と心臓リハビリテーションへの応用についてわかりやすく教えてください(民田浩一)
 11.心臓の拡張機能の評価方法と心臓リハビリテーションへの応用についてわかりやすく教えてください(民田浩一)
 12.右室の評価を心臓リハビリテーションにどう活かせばよいのでしょうか?(福田大和)
 13.左房の評価を心臓リハビリテーションにどう活かせばよいのでしょうか?(福田大和)
 14.血管機能の評価方法と心臓リハビリテーションへの応用方法についてわかりやすく教えてください(安 隆則)
 15.血管内皮機能とは何ですか?心臓リハビリテーションと関係しますか?(安 隆則)
 16.高齢者の心臓の特徴について教えてください(絹川真太郎)
 17.拡張期血圧とは何を表しているのでしょうか?心臓リハビリテーションと関係しますか?(絹川真太郎)
 18.血液検査の結果を心臓リハビリテーションにどう活かせばよいのでしょうか?(中田歩美香,北井 豪)
 19.画像診断を心臓リハビリテーションにどう活かせばよいのでしょうか?(中田歩美香,北井 豪)
 20.心エコー図検査の結果を心臓リハビリテーションにどう活かせばよいのでしょうか?(前田知子)
 21.心肺運動負荷試験の結果を心臓リハビリテーションにどう活かせばよいのでしょうか?(前田知子)
III.急性期
 22.心不全急性増悪後や心臓外科手術後に初めて離床をするときにみるべきポイントは?(櫻田弘治)
 23.スワンガンツカテーテルを挿入したまま離床を進めても大丈夫でしょうか?(櫻田弘治)
 24.薬の種類および投与量によってリハビリテーションの進行を調節するポイントは?(板垣篤典)
 25.急性期の心臓リハビリテーションを進める際に確認すべきデータは?(板垣篤典)
 26.心臓血管外科手術後の急性期リハビリテーションは,術式別で注意・工夫するポイントが異なるのでしょうか?(森沢知之)
 27.そもそもなぜ早期に離床を進めなければならないのでしょうか?早ければ早いほどよいのでしょうか?(森沢知之)
 28.リハビリテーションを円滑に進めるコツはありますか?(上坂建太)
 29.リハビリテーションが順調に進まない症例に対してどのように対応したらよいでしょうか?(上坂建太)
 30.歩行は病日ごとに距離を延長しますが,歩行スピードは考慮しなくてよいのでしょうか?(加藤倫卓)
 31.術後に不整脈が出やすい状態とは?(加藤倫卓)
 32.術後の胸水貯留,不整脈,肺炎,無気肺,腎機能障害の頻度と対応策を教えてください(飯田有輝)
 33.術後に嚥下障害,せん妄や不穏になりやすい症例の特徴を教えてください(飯田有輝)
 34.胸骨正中切開術後の胸帯はいつまで装着すべきでしょうか?そもそも必要でしょうか?(湯口 聡)
 35.術前のリハビリテーションの実施内容と注意点を教えてください(湯口 聡)
 36.急性期の神経筋電気刺激療法の適応,開始時期,効果判定アウトカムはどのようなものがありますか?(岩津弘太郎)
 37.ICU/CCUで心臓リハビリテーションを円滑に進めるコツを教えてください(角口亜希子)
 38.急性期で看護師が行う患者指導について教えてください(角口亜希子)
IV.運動療法
 39.どのような患者において運動療法の効果が最も望めますか?(窪薗琢郎)
 40.心機能が低下していても運動療法によって運動耐容能が改善するメカニズムは?(窪薗琢郎)
 41.運動療法を実施するとどの程度心筋梗塞や心不全の再発・再入院を防げますか?(折口秀樹)
 42.運動療法のデメリットはないのでしょうか?(折口秀樹)
 43.運動療法によって血圧が低下するメカニズムは?(安達 仁)
 44.運動療法によって血糖コントロールがよくなるメカニズムは?(安達 仁)
 45.運動療法によって血管内皮機能が改善するメカニズムは?(木庭新治)
 46.運動療法によってHDLが増えるメカニズムは?(木庭新治)
 47.運動療法によって抑うつが改善するメカニズムは?(石原俊一)
 48.運動療法によって認知機能が改善するメカニズムは?(石原俊一)?
 49.ウォーミングアップは必ずしなければなりませんか?(河野裕治)
 50.有酸素運動とレジスタンストレーニング,どちらを先に行えばよいでしょうか?(河野裕治)
 51.エルゴメータとトレッドミルはどう使い分ければよいですか?(渡辺 敏)
 52.心臓外科手術の胸骨正中切開の場合,いつから上肢の運動を始めればよいでしょうか?(渡辺 敏)
 53.レジスタンストレーニングはいつ始めればよいのでしょうか?(齊藤正和)
 54.レジスタンストレーニングの負荷はどのように決めればよいのでしょうか?(齊藤正和)
 55.インターバルトレーニングの適応と方法を教えてください(神谷健太郎)
 56.クーリングダウンは必要ですか?(神谷健太郎)
 57.運動中や運動後に血圧が下がることがあるのはなぜ?(内山 覚)
 58.運動は,食事の前,食事の後,内服の前,内服の後,どちらがよいでしょうか?(内山 覚)
 59.心肺運動負荷試験ができない場合の運動処方はどうすればよいですか?(田嶋明彦)
 60.心肺運動負荷試験に基づく運動処方でBorg指数13 を超える場合,運動処方と自覚的運動強度のどちらを優先すべきでしょうか?(田嶋明彦)
 61.β遮断薬を内服している場合,何を指標に運動負荷を決めればよいでしょうか?(明石嘉浩)
 62.ペースメーカで心拍数が固定されている場合,何を目安に運動を行えばよいですか?(明石嘉浩)
V.リスク管理
 63.血圧や心拍数が高すぎると,なぜいけないのでしょうか?(大宮一人)
 64.糖尿病に特有の合併症である糖尿病網膜症・腎症・神経障害は運動禁忌になりますか?(石黒友康)
 65.空腹時血糖が250 mg/dL以上だとなぜ運動療法は禁忌になるのでしょうか?(石黒友康)
 66.糖尿病患者で尿ケトン体が陽性の場合,なぜ運動療法が禁忌になるのでしょうか?(圓雅博,福間長知)
 67.重度の大動脈弁狭窄症や重度の左室流出路狭窄患者では,なぜ運動療法が禁忌なのでしょうか?(圓雅博,福間長知)
 68.有意,有意でないにかかわらず残存狭窄がある場合,運動療法で注意しなければならないことは何でしょう?(岡 岳文)
 69.大動脈瘤がある場合,運動療法で注意しなければならないことは?(岡 岳文)
 70.心機能が低下しているときに運動療法で注意しなければいけないことは?(沖田孝一)
 71.不整脈がある患者の運動療法で注意しなければいけないことは?(沖田孝一)
 72.腎機能が低下しているときに運動療法で注意しなければならないことは?(勝木達夫,酒井有紀,池田拓史)
 73.肝機能が低下しているときに運動療法で注意しなければならないことは?(勝木達夫,酒井有紀,池田拓史)
 74.ペースメーカが入っているときの運動療法で注意することは?(白石裕一)
 75.植込み型除細動器が入っているときの運動療法で注意することは?(白石裕一)
 76.超高齢者に運動療法を行う場合,どんなことに注意が必要ですか?(小山照幸)
 77.肥満患者の運動療法での注意点を教えてください(小山照幸)
 78.カテコラミンが持続投与されている患者の運動療法で注意することは?(石田岳史)
 79.β遮断薬増量など,投薬内容が変更されたときに気をつけることは?(石田岳史)
 80.貧血があるときに運動療法で注意しなければならないことは?(齋藤博則)
 81.運動中止を判断するために,どの程度の体重増加に注意すべきでしょうか?(齋藤博則)
 82.低強度の運動でも血圧上昇が著明な患者には, どのように対応したらよいでしょうか?(谷口良司)
 83.発熱があっても運動療法を行ってよいのでしょうか?(谷口良司)
 84.心電図監視は発症後(手術後),いつまで続けなければならないのでしょうか? (福田幸人)
 85.開胸手術後の胸骨圧迫は行ってもよいのでしょうか?(福田幸人)
 86.運動療法は必ず嫌気性代謝閾値以下で行わなければならないのでしょうか?(松尾善美)
 87.運動療法中は心電図以外に何をモニタリングすればよいでしょうか?(松尾善美)
 88.嫌気性代謝閾値以上の運動や労作をしてはダメですか?(西 功,小池 朗)
 89.運動療法中はどんな不整脈が問題になりますか?(西 功,小池 朗)
 90.運動中の心電図をみるポイントには不整脈以外にどんなことがありますか?(小笹寧子)
 91.心疾患患者がよく服用する薬の副作用について教えてください(小笹寧子)
 92.心臓リハビリテーションへのやる気の出ない患者にどのように対応したらよいですか?(池田こずえ)
 93.運動負荷をかけすぎたと判断する指標について教えてください(池田こずえ)
VI.指導
 94.心肺運動負荷試験の結果を生活指導に活かすコツを教えてください(佐藤真治)
 95.どのような状態になったら有酸素運動の運動負荷量を増してよいと指導してよいのでしょうか?(佐藤真治)
 96.心不全患者はどんな気持ちになりやすく,どうサポートしたらよいのか教えてください(長谷川恵美子)
 97.心臓病によって引き起こされる抑うつ症状をどのようにサポートしたらよいですか?(長谷川恵美子)
 98.サルコペニアの栄養療法について教えてください(松元紀子)
 99.虚血性心疾患患者の食事指導のポイントを教えてください(松元紀子)
 100.心不全の食事について,外食・中食の工夫点や,減塩食をおいしく食べるポイントは?(横澤尊代)
 101.入浴や夫婦生活の指導のポイントを教えてください(横澤尊代)
 102.旅行,スポーツ,余暇活動の指導のポイントを教えてください(今井 優)
 103.職場復帰時の指導のポイントを教えてください(今井 優)
 104.禁煙を成功させるコツについて教えてください.加熱式タバコでは疾病リスクは下がるのですか?(池亀俊美)
 105.外来リハビリテーション導入のコツを教えてください.どう話したら通っていただけるようになりますか?(池亀俊美)
 106.アドヒアランスとは何ですか?(山田 緑)
 107.包括的心臓リハビリテーションプログラムへのアドヒアランスを上げるコツは?(山田 緑)
 108.運動療法を行っても心肺運動負荷試験の結果(peakV4O2)が変わらない場合の指導は?(磯 良崇)
 109.維持期に民間のスポーツ施設などへ患者の情報提供を行う際の留意点は?(磯 良崇)
 110.ペースメーカ挿入後の生活指導のポイントは?(花田 智)
 111.認知機能が低下している高齢者の生活指導のポイントは?(花田 智)
 112.自覚症状が乏しい患者への運動指導のポイントは?(畦地 萌)
 113.外来通院できない患者に 自宅で運動を継続してもらうためのコツを教えてください(畦地 萌)
 114.乳幼児の心臓外科手術後に保護者にすべき生活指導のポイントを教えてください (熊丸めぐみ)
 115.学童期や青年期に対する指導のポイントを教えてください(熊丸めぐみ)
 116.和温療法とは何ですか?(宮田昌明)
 117.心臓リハビリテーションで和温療法をどう利用すればよいでしょうか?(宮田昌明)
 118.慢性心不全患者に対する神経筋電気刺激療法のエビデンスについて教えてください(岩津弘太郎)
 119.独居高齢者の生活指導のポイントは?(田中宏和)
VII.終末期
 120.末期重症心不全患者のリハビリテーションの目的や意義について教えてください(田中宏和)

 巻末資料
  Q8・表 わが国の心大血管疾患リハビリテーション診療報酬制度の変遷
  Q24・表 急性期リハビリテーション介入時に注意すべき薬剤
  Q97・表 こころとからだの質問票

 文献
 索引