やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集 エネルギー代謝
 企画主旨
 編集委員 飯田有輝
 エネルギー代謝は生命の営みに伴う生体と外界との間で行われるエネルギーの交換である.病気や食事摂取量低下などで総エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回る状態が続くと栄養不良となり,改善が得られないままでは予備力や恒常性の低下から患者予後の悪化を招くことになる.総エネルギー消費量は大きく分けて,基礎代謝量・食事誘発性熱産生・身体活動量の3つで構成される.この中で身体活動量は運動や日常の活動で消費されるエネルギー量であり,総エネルギー消費量に最も影響を与える因子であるとされる.過不足のない摂取エネルギーを考えるうえで,身体活動により消費されるエネルギーは厳密に設定される必要がある.リハビリテーション(リハ)栄養で定義される「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」は身体活動を含めた総エネルギー消費量とエネルギー摂取量におけるバランスの適正化であり,「攻めの栄養療法」の実践でもある.したがってリハ栄養の実施のうえで,生命予後の改善やリハにおけるより高い目標を達成するために,エネルギー代謝に関する知識をもつことには大きな意味がある.
 翻って臨床現場では,リハを行っている患者のなかで低栄養やサルコペニアの占める割合が非常に多くなっている.ある調査では低栄養を示す高齢者の割合は一般病院で4割,リハ施設で5割ほどであると報告されている.患者が高齢で身体機能が低下し予備力が少ない(いわゆるフレイル)の場合,入院して安静を強いられ低栄養に晒されるだけで廃用症候群が極端に進行し,要介護状態や寝たきりに陥ってしまう.このような状況は「医原性サルコペニア」とよばれている.病院や施設で医原性サルコペニアをつくり出さないために「リハ栄養」の考え方のもと,適切な総エネルギー消費量を設定し,相当するエネルギー量を確実に摂取できるようアプローチする必要がある.今回はエネルギー代謝の総論と各論,エネルギー代謝の評価方法,疾患・病態によってエネルギー代謝はどう変わるのか,リハ栄養の考え方と実際について知ることが本特集の主旨である.
特集 エネルギー代謝
 企画主旨
 基礎代謝量とエネルギー消費量の測定法(田和子)
 食事誘発性熱産生(西岡心大 河野真莉菜)
 運動時のエネルギー代謝(深尾直生 藤田 聡)
 活動による消費量の評価方法(二井麻里亜)
 パーキンソン症候群とリハビリテーション栄養(中村純子 福田倫也)
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)のエネルギー代謝(宮崎慎二郎)
 心不全のエネルギー代謝(木田圭亮 村田理沙子)
 急性疾患(ICU)患者のエネルギー代謝(中村謙介)
 代謝低下する疾患─脊髄損傷,甲状腺機能低下症,神経性やせ症,炎症を伴わない低栄養(藤原 大)
 片麻痺(装具使用下)での活動によるエネルギー代謝(長野文彦)

連載
リハビリテーション栄養論文紹介(9)
 (田中 舞)

【リハ栄養研究の勘所(4)】
 スコーピングレビューについて(友利幸之介)

原著 高齢整形外科疾患入院患者における摂取エネルギー量の不足と身体活動量の変化―回復期リハビリテーション病棟入院患者を対象にした縦断研究
 (清水智子 金井千秋・他)

攻めの栄養療法の概念と臨床への適用:日本リハビリテーション栄養学会管理栄養士部会によるポジションペーパー
 (西岡心大 中原さおり・他)

原著 人参養栄湯の大腿骨近位部骨折の術後経過における栄養指標および身体指標の改善効果
 (松本卓二 木村友香子・他)

症例報告 下腿部潰瘍を有するIntensive care unit-acquired weakness患者に対するリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (山内杏奈 西岡心大・他)

原著 回復期リハビリテーション病棟高齢整形外科系患者における活動時間とFIMを用いた活動係数の推定式の検討―横断研究―
 (清水智子 金井千秋・他)

原著 長期経管栄養患者における禁食と発熱日数の関連:後ろ向き観察研究
 (古賀標志 小蔵要司・他)

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
 第11回日本リハビリテーション栄養学会学術集会 抄録集
 日本リハビリテーション栄養学会誌投稿規定
 次号予告